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第十話「アイシア殿下の御前会議」⑤

「やれやれ……帝国ってのは訳が解らんな……俺達だって、アグレッサ湖は帝国の生命線って事は理解してたんだぜ? けど、あれをぶっ壊しまったら帝国が持たねぇ……だから、せいぜい脅しの材料に使うってとこだったんだがな。共和国の奴らは容赦なくやりやがった……いくら戦争でもやっちゃいけねぇ事はあるんだがな……」


「うん、明らかにやり過ぎだよね……あれは、二度と再現できない帝国の屋台骨を支えてる貴重な遺産……壊されたのが堰堤の一部だけで済んだのが不幸中の幸いだったけどね」


「ああ、やり過ぎだった。あの一件で戦時中にも関わらず、俺達西方も共和国からは距離を置く方針に切り替えた位だ……共和国ははっきり言って歪な国なんだ。あくまで推測なんだが、連中の技術は地道な進歩を重ねたモンじゃねぇ……拾い物とか、借り物……そんな気がしてならん。そもそも、あの国自体、自分達の持つ力の強大さや影響力を良く理解してないフシがある。はっきり言ってヤバイ連中だな」


「……自分達の力を解ってない奴らは、何をしでかすか解らんからなぁ……」


「そう言う事さ……その点、皇女殿下は悪くない。自分の能力を理解して、それを笠に着て暴走するような様子もない……例えばなんだが、皇女殿下が俺達に帝国を自分のものにする手伝いをしろ、さもなくば西方を滅ぼすなんて言い出してみろ。俺達は従うほか無い……その程度には皇族の力ってのは強力だと認識されてるんだぜ?」


「ほぇ? わ、わたしが……ですか? か、考えたこともなかったです。そもそも、皇族の力なんて言われてますけど……所詮借り物だと思うんですよね……これ。正体も良く解らないし、一歩間違えたらあっさり制御不能になりますからね……父上の様子からも代償があるのは確実だし……出来れば二度と使いたくないです」


 これはわたしの本音だった。

 

 それに、わたしは……わたしが望んだ訳でも無いのだけど、もう何人も暗殺者を返り討ちにしてしまったし、巻き添えだって何人も出してしまっている。

 

 後悔してもしょうがないし、どうにもならなかったのだけど……それがわたしの罪だということは自覚している。

 

 ごめんなさい……ごめんなさい。

 心のなかでもう幾度となく、繰り返した言葉。

 

 でも、こんな言葉だけの反省や謝罪なんてどこか嘘くさい……。

 

 馴染みの侍女や侍従が巻き添えで死んだ時、わたしは涙一つ出なかった……今だって、どこかまるで他人事のように考えてる自分がいる。

 

 ちらりとエドお兄ちゃんを見つめる……お兄ちゃんもわたしが巻き込んじゃったんだよね……。

 そのうち……あの時みたいに、エドお兄ちゃんも……。

 

 そんな事を考えていると、エドお兄ちゃんはフッと笑うと、その手がぽんと頭の上に乗せられる。

 

「解った……なら、その方針で行こう……原則、アイシア殿下の力は頼らないし、使わせない……ホスロウもそれでいいだろ?」


 なんか、ズルいね……お兄ちゃんって……。

 こっちが何も言わないのに、わたしの思いを解ってくれて代弁してくれるなんて……。

 

 あ、こう言うのが理解者って言うのかも……。

 髪の毛越しに手の暖かさが伝わって来て、なんとも幸せな気分になる。

 

 なんか、まぶたがじんわりと熱くなってきた気がするんだけど……今は泣いちゃダメだって!


「ああ、それがいいな……強大な力ってのは、別に積極的に使う必要なんて無いんだぜ? いざとなったら切れる切り札を持っとくだけでも、敵は対応するカードがないと勝負に出られなくなる……要は抑止力って考え方だな」


 ホスロウさんは、知ってか知らずか淡々と説明してくれる。

 

 なるほど、勉強になるね。

 使わないと決め込んだ武力でも、使うかもしれない思わせることで、武力として機能する。

 そう言う話なら、解る。


 兄上達がほぼ寝たきりの父上を排除出来ないのも、父上の力を恐れてのこと……。

 毒殺とかも多分試したんだろうけど、わたしを例に出すまでもなく毒なんて効果なかったんだろう。

 

 それ以前に、父上も先が長くないのは、誰にだって解ってることだから、余計なリスクはおかさずじっとその時を待っているのだ。

 

 わたしが兄上達に正面切って挑めなかったのも同じ理由……だから、逃げるという選択肢を選んだんだ。

 まぁ、わたしの場合……戦いとかしたくないってのもあるんだけど。

 

「これまで、状況が動かなかったのも、その抑止力がお互いかかってるからって訳?」

 

 そうお兄ちゃんに尋ねてみる。

 

「そう言う事さ……西方はもちろん、共和国や東方も大戦で消耗しきったってのもあるが、皇族の力があまりに強大だったもんで、誰もが迂闊に動けなくなった……そんな状況が自然と出来ちまってたんだ。けど、状況が大きく動きかねない要因が増えた……それがアイシア、お前さんって訳さ」


「そうだな……皇帝陛下の崩御と共に一気に帝国情勢が動くだろうってのは俺達も予想してたんだが、時期が読めねぇ上に刻一刻と帝国の状況は悪化してやがる……なのに、あの皇太子共は自分達の国の事なんかまるでお構いなしだからな……俺達西方は基本的に受け身なんだが、東方が無秩序状態になるとか大規模内戦おっ始めるとか、どっちにせよ勘弁して欲しいぜ……」


 ……身内としてぐうの音も出ません。

 兄上のバックがどんな連中なのか良く解らないけど、国内情勢とか民の窮状とか解ってないような気がする。

 

「つまり、アイシア殿下のこれからの動き次第で情勢は大きく変わるって訳だな! お前らとしちゃ、ここはひとつ殿下に相乗りして、少しでも有利な情勢に持っていきたい……やたらと協力的な理由しちゃそんなとこだろ?」


「まぁ、はっきり言うとそうなんだが……もう少し、マシな表現は無かったのか? それじゃ俺達が利害関係でしか動かない下衆な奴らっぽく聞こえるんだが……」


 ホスロウさんが引きつった顔で無理やり笑ってる。


「うん、むしろすごく全うな理由だね……俗物的だけど、確かにそう言う事情があるなら信頼に値する。けど……そうなると、お兄ちゃんは、なんでわたしに協力的なの?」


 一応、褒めてみたつもりだったんだけど、ホスロウさんはなんとも言えない顔で苦笑してた。

 

 でも、もう一つの質問は……わたしとしては、結構核心的な質問なんだけど……どうなんだろ? 気になるーっ!

 

「俺か? まぁ、アレクセイの親父に殿下のことを押し付けられたってのもあるけど、俺は誰かを見捨てるとか正しくないことは嫌いなんだ……関わっちまった以上は最後までトコトン面倒を見る……そんなとこだな。それに……俺もこの荒みきった世の中を変えたいって思ってたからな……お前に未来の可能性を見たから……そんな理由じゃ駄目かな?」


 なんとも照れくさそうに目線を逸し、鼻の頭を掻きながらのセリフ。

 

 ん……? これって口説き文句っぽくない? 

 とそこまで考えてたら、なんかほっぺたが熱くなる。

 

 どうせなら、そこは君を愛してるからとか、ずばり言ってほしかったけど……それはまだ早いのかな。

 もっと、盛り上がったとこでビシっと決めて欲しい……期待してるからねっ!

 

「よしっ! あたしはだなー!」


 人がちょっとロマンチックな気分に浸ってたら、リーザさんが勢い良く立ち上がった。


「お前は、アイシア様の忠臣宣言してるんだろ? 改めて、同じ事を言わなくていいぞ?」


「なっ! エド! そこは最後まで言わせろよーっ!」


 何というか……ちょっといい感じだったのに台無しだ。

 

 けど、何だかんだ言って、この二人も結構仲いいような気がする。

 と言うか、お兄ちゃんって昼間会った冒険者の女の子達なんかからも割と評判いいんだよね……面倒見がいいとか……イケメンだとか。

 

 まぁ、それだけエドお兄ちゃんが信頼されてるって事なんだろうなぁ……なんとなく、胸がチリチリするような気もするけど。

 

 これがヤキモチって気分なんだろうか……はぁ、この歳まで恋愛沙汰とか本の世界の憧れってだけだったから、自分の気持ちすらもよく解かんない。

 

 と言うか……考えてみれば、色恋沙汰で色ボケしてられるような立場じゃないんだよね……わたし。

うーん、会話だけでの情勢説明とかやっぱ冗長になるなぁ……。

そろそろ、カットしようかと検討中。


そろそろ、派手な展開とか期待されてんだろーな。(汗)

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