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第十話「アイシア殿下の御前会議」①

 そんな訳で、わたし達はホスロウさんに案内されて、座敷部屋へと移った。

 お兄ちゃん椅子も悪くなかったけど、ちょっと困ってた感じだったから、自重した。

 

 まぁ、今度二人きりのときにでも心ゆくまで堪能したいと思う。

 

 部屋の中は、床は一面畳という藁の一種を編み上げた敷物が敷かれており、履物は脱いで上がるのが常識。

 履物もちゃんと揃えて畳の縁を踏まないとか、エドお兄ちゃん達へ注意してたら、ホスロウさんにしきりに感心された。

 だから、知ってるんだってば。

 

 ちなみに、本来は服装も独特な民族衣装みたいなのを着るべきらしいんだけど。

 共和国人じゃあるまいし、そこまでは拘らなくていいよね。


 いっぺん着てみたことあるんだけど、下着は履いちゃ駄目らしく何とも落ち着かなかったけど、色合いとかわたしみたいな黒髪の女性が着ることを前提にしてるらしくて、とってもいい感じだった。

 エドお兄ちゃんになら、見せてあげたいな……なんてね。

 

 奥には床の間とか言う板張りの空間があり、共和国の文字がかかれた掛け軸があった。

 かなり崩した独特の書体なので、ちょっと読みにくいんだけど「一心不乱」と書いてある。

 

 ……一つの事に集中して、他の事に気をとられないことなんだけど、なんで掛け軸にこの単語を使うのか良く解らない。

 

 ちなみに、エドお兄ちゃんはもちろん、ホスロウさんも意味は解らなかったらしい。

 まぁ、この共和国の漢字って共和国でもあまり使われてないから、普通は知らない。


 わたしも全部はとても読めないのが実情……たまたま、書物に出てきたから読み方知ってたってだけ。

 言語体系的にも既存のどの言語ともかけ離れてるから、異世界の文字と言う説もまんざら間違ってないと私も思ってる。

 

 そして部屋には長く低いテーブルが一つドーンと置いてある。

 床の間に近いほうを上座と言い身分が高い人が座る……と言うことで、自動的にわたしの席になりそうになった。

 けど、本来主催者にあたるホスロウさんが座るべきなんで、そう言って譲った。

 

 と言うか、わたしはお兄ちゃんの隣が良かったので、これでいいのだ!

 

 そんな訳で、ホスロウさん、両隣の角にわたしとリーザさん、わたしの隣がお兄ちゃんとなった。

 座り方は適当……正座と言う拷問みたいな座り方が正式らしいんだけど、10分もすれば大抵の人が音を上げるので、その辺は本場の人もうるさく言わない。

 

 給仕さんが皿いっぱいのクッキーとジャムを持ってきてわたしの前にドーンと置く。

 更に紅茶を全員分に配って回るとすぐに恭しく礼をして出ていった。

  

 クッキー! すごく美味しそうっ!

 エドお兄ちゃんに、食べていいのかな? と目で訴えたら、無言で頷ずいてくれたので、遠慮なくいただく。

 思わず笑顔になるくらいには美味しかった。

 

 甘いものはやっぱり最高……紅茶にもバサッバサッと景気良くお砂糖入れて……うん! 美味しい!

  

 ホスロウさんもまんざらではない顔で、お兄ちゃんに向かってニヤリと笑った。

 

 お兄ちゃんは、お砂糖4杯目辺りであわあわしてたけど、普通だと思うんだけどなーこれくらい。

 

「さ、さて……まずこれが近辺の地理だな……ここまでは解るだろ? アイシア……現時点での東方と西方の物流や人の行き来はどうなってるか知ってるか? まぁ、試すようで悪いが、情勢の理解度確認ってとこだな」


 わたしが一息ついたのを確認して、お兄ちゃんが地図を広げて見せてくれた。

 まぁ、近隣の地図だというのはひと目で解った。

 

 なるほど、わたしがどの程度情勢とか解ってるかってとこだね。

 

「そうね……まず、お互いの領域への往来は原則禁止。東方側も西方側も中立のこの街……グランドリアまでは来れる……建前上、ここは誰もいないって事になってるし、出国審査はゆるゆるだから、街への出入り自体は誰でも自由。でも、お互いここが行き止まりになってるのよね……」


 この辺は、昨日のうちにギルドの資料を読んでたから解る。

 書庫の資料にはいい加減な記述しかなかったけど、ご当地なだけに精度はバッチリだった。

 公式にはグランドリアなんて、街は存在しないことになってるからって、帝国側の認識は本当にあやふやなのだ。

 あくまで建前上、存在しないだけで住民もいれば、帝国の組織した警務隊なんてのもいるんだから、ちゃんと管理して欲しいところなんだけど……本当にそんな程度の認識なので、まさに無法地帯だった。

 

「その通り、国境線の警備は出るのはほぼフリーパスだけど、入るのは極めつけレベルに厳重な上に、指揮官も兵もガチガチだから、密入国も事実上不可能……検問も超厳しいから物品の持ち込みは厳しく制限されてるのが実情……賄賂のたぐいも両陣営から監視要員が派遣されてるから、一切のお目こぼしが利かない……実に難儀な話だ」


 うん、この辺もよく解る。

 どちらかが抜け駆けしようにも相手側の監視要員が目を光らせているので、どちらも厳しいものにせざるを得なくなっているんだよね。


 なぜそこまで厳しくする必要があるのか?

 

 その理由は簡単で、公式には東西両陣営はあくまで休戦しただけであって、戦争継続中という事になっているから。


 その気になれば、どちらかが一方的に休戦協定を破棄して、戦争の再開が出来る状況なのよね……。

 このあたりが空白地帯と指定されてるのも、単に偶発的な事故を防止するため。

 お互いの領域へは、長距離砲だって届かないようになってる。

 

 もっとも戦争なんて事実上終わっているので、通商条約や貿易協定の要望も双方の民間商人や諸侯達からも出ているのだけど……その為にはまず前提として和平交渉を経て、両陣営間の和平を成立させる必要がある。

 

 要は国同士の手続き上の問題なのだけれども、肝心なその和平交渉が頓挫してしまっている為、結局何も進展していない……。


 そんな状況がもう3年も続いていた。

この話、元々エド視点でしたけど、急遽アイシア様視点で書き直しました。

なんか知らんけど、アイシア様視点のほうがPVとかブクマも伸びる傾向があるのです。(笑)


それと作者と言う生き物は、読者様の評価やブクマ、感想なんかを燃料に生きています。

出来れば、そう言うのをいただければ励みになりますんで、是非よろしく!

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