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第九話「悪い奴らと悪巧み!」④

 ホスロウも席を立つと、恭しく胸に拳を当てて、腰を折る西方式の敬礼をする。


「ははっ……こりゃ参った……アイリュシア皇女殿下、お目通り叶い恐悦至極! 小官まさに光栄の極みっ! 我が名はホスロウ・アデリュクス……西方情報軍特務少佐でございます。このような場所での御拝謁……誠に遺憾ではございますが……。出来得る限りの歓待をさせていただきます! もちろん、御身の安全は我らの名誉に懸けて保証いたします故……何卒これまでのご無礼、ご容赦いただきたく存じ上げます」


 さすが情報軍の特務少佐……ちゃんと外交儀礼に則った答礼を心得ていた。

 けどホスロウ……目が泳いでる……こいつがここまで動揺するのって初めてだ……はっきり言って見ものだった。


「……ホスロウ……一応、非公式会談と言うことになると思うから、あまり大袈裟にしないで欲しい。アイシアも別にカッコつけなくてもいいぞ? ここでは誰とも会ってないし、外に出たら見聞きした事は忘れたことにする……ここはそう言う場所なんだ」


「そ、そう? エドお兄ちゃんがそう言うなら、そうする……疲れるんだよね……これ……。あと今日一日ほとんど立ちっぱでさすがに疲れたから、ちょっと座りたいな……エドお兄ちゃん、そこ座って……」


 アイシア様、皇女モード終了のお知らせ。

 やっぱ、カッコつけだったらしい……まぁ、こっちの方が俺としても気を使わなくていいから気楽だ。


 言われるがままに椅子に腰を下ろすと、アイシアが無理矢理、俺の膝の上に座り込んできた。

 

 ……なんだこれ? それと二人きりの時以外はお兄ちゃん禁止って言わなかったっけ?

 

「ア、アイシア様……?」


 どうにも安定しないようなので後ろから腕を回して支えると、後ろから抱きしめるような感じになってしまう。


「……椅子が二つしかないのではこうするしかあるまい? それにこれなら高さもちょうどピッタリ……実にいいな……コレは……一応、言っておくが重たいなどと、失礼な事を言うでないぞ?」


 ……別に重たいどころか、ものすごく軽い……俺の腕力でも余裕で持ち上がりそうだった。

 強いて言えば、体温が高いらしく暑苦しい……冬場はよさげだけど、今は初夏……暑いぞ?

 

 けど、これ傍から見たらどう見えるんだ? ホスロウ……何で目を逸らすんだっ!

 

「……あら、二人ってそんな仲だったのね……でも皇女様、それいいわね……エド椅子! お値段プライスレス! ねぇ、あたしも使ってもいいかな!」


「駄目……これはわたし専用……なにせお兄ちゃんだからね! エドは! 実は先程、皆で夕ご飯を食べてた時にこうやってる兄妹を見かけて、いいなって思ったんだけど……悪くないわね!」


 そう言って、アイシアは満面の笑みを浮かべた。


 ホスロウは微笑ましいだか、困ってるんだかと言った複雑な顔だった。

 お前らどう言う関係なんだと言わんばかりだったが、むしろ俺が聞きたいくらいだ……。

 

 とりあえず、助けろと言わんばかりに目線を送る。

 

「こ、これは気が利かず申し訳なかった。奥に共和国式の座敷部屋があります故、そこに場所を移しませんかな? エドもリーザ姐さんもそれでどうだ?」


 さすがホスロウ……俺のアイコンタクトに応えるように、生真面目な表情を崩さず助け舟を出してくれた。

 くそっ……また借りが増えたな……覚えてろよ。


「共和国式のお座敷……知ってますよ! 皇城にも共和国のお客様用に応接間が設けられてたんで、お座敷のマナーとか解りますよ! でも、正座は足がしびれるんで苦手なんですよね……」


 アイシア本人は意外と乗り気だった。

 さすが皇族……共和国の風習にも通じてるようだった。

 なお、俺は全然知らん……。


「良くご存知で……我らは共和国の要人を迎えることもありまして、そのような用意があります……まぁ、お互い共和国人でもないので、適当に寛ぎながら……と言うことで」


 そう言って、ホスロウが笑いながら、奥の座敷に案内してくれる……。

 

 さぁ……俺達の悪巧みが始まる訳だ。

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