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第九話「悪い奴らと悪巧み!」①


 貧民街の片隅にある怪しげな奴らが集う、怪しげな酒場の更に地下にある極めつけに怪しげな一席……俺はいつもの怪しげな奴と二人きりで酒を酌み交わしていた。

 

「……いやはや、面白いことになってるじゃねぇか……エド! とにかく、今日は俺の奢りだ……飲め飲め!」


 上機嫌で俺の向かいでジョッキを傾ける中年オヤジ……こいつの名はホスロウと言う。


「ホスロウ……俺を酔い潰しても何もねぇぞ……そっちに提供できる情報は昨日話したので全部だぜ?」


「……ははっ! 昨日は深夜にいきなり呼びつけて悪かった! そうだな……こっちも日がな一日、例の皇女殿下の様子を見てたんだが……ガキ共の人気者……例のおっかねぇ力の片鱗も見せねぇ……緩すぎてこっちが拍子抜けだ! まぁ、本国からのオーダーもあまり刺激するな……出来ればお近づきになれって事でな……つまり、俺達の行動方針は上にも容認されたって事だ。オメェにもその事を伝えたくて呼びつけた訳だ。どうだ朗報だろ?」


 確かに朗報だった……こいつらを敵に回すのは、西方全てを敵に回すのと同義だからな。

 元々個人的にも色々貸しがあるし、借りもある……そんな仲だから、友情のようなものを感じていない訳でもない。


「確かに良い知らせだ……お前ら敵に回すなんて、考えただけでゾッとする」


「はははっ! まぁ、今度ともよろしくってとこだ兄弟っ! そんな訳で、ここはひとつ皇女殿下に菓子折り持参でご挨拶でもしたいんだがどうよ?」


「そいつはお断りだ……お前みたいな奴に会わせるなんて、殿下の教育上よろしくない」


「ツレねぇ事言うなよ……まったく。そもそも、この街を仕切ってる4大組織の一角、冒険者ギルドのギルドマスターが交代ともなれば、俺達から出向いて挨拶に伺うのがスジってもんだろ? アレクセイの野郎にはこっちも色々世話になったからな」


 そう言って、ホスロウは煙草に火をつけると美味そうに燻らせる。

 

 ホウキみたいな髪をバンダナでまとめて、眼帯、鷹のような鋭い目つきの悪人顔の中年オヤジ……たぶん、アイシアが見たら泣く。

 

 限りなく盗賊やら海賊の頭目のような雰囲気の男だが……実は、西方情報軍の特務少佐殿……この街に潜入している西方側の諜報員の元締めだ。

 

 こいつとの付き合いは……大戦中、こいつが捕虜になってた所を逃してやったって事があって……。

 その後、逆に俺が西方軍の捕虜になった時に再会……逃してもらった……そんな経緯がある。

 

 まぁ、放棄された捕虜収容所で何故かコイツだけ忘れられてて、なんとも可哀想になったから逃してやっただけなんだが。

 こいつなりに恩義を感じているらしく、未だにこんな風に付き合いがあった。

 

 この酒場もこいつの部下連中がガッツリ周辺を固めており、ここには誰も近づけさせないようにしてくれている。

 一応、極秘会談ということにはなっているからな。

 

「と言うか……どう紹介しろって言うんだよ……西方情報軍なんて、殿下から見たら思い切り敵じゃねぇか……まさか飲み仲間とでも言って紹介させるつもりかよ?」


 言いながら、空いたコップにエールを注いでやる。

 まぁ、俺はアイシアの立場も考えなきゃいけないんだからな……立ち回りは慎重過ぎる程でもちょうど良い……その程度は弁えていた。


「いいじゃねぇか……俺とおめぇの仲だろ? ちょっとしたお友達って言って紹介してくれよ……別に取って食ったりしねぇからよ」


 言いながら、グラスを向けられたので、乾杯! と言って一杯付き合う。

 特に意味はないが、友人でもある事は否定しない。


 まぁ、会わせるのは構わんが、極秘の非公式の会談にせざるを得ないし、俺達から呼び付けると言う形式にしないといけない。

 実利的には何ら意味はないのだけど、格式や様式……外聞なんかにも気を使わないといけない。

 皇族に仕えると言うのは、なかなかに難儀な話なのだよ。


「お前とお友達とか、俺の品性が疑われるな……まぁ、そのうち機会があればって事で……な? 色々形式なんかにもこだわらんといかんしな。ちなみに、手土産は甘いものだったら、大体なんでも喜ぶと思うぞ」


「ふむ……皇女殿下は甘党……まぁ、悪くねぇ情報だな……いただきだな!」


 ものすごくどうでもいい話だと思うのだけど、こんな情報でも価値を見出して、何らかの形で有効活用する。

 それが西方情報軍のやり口だ。


「そんな程度でいいなら、いくらでも教えてやるさ……。とりあえず、もうちょっと落ち着いたら、挨拶でもなんでも好きにさせてやるから、今日明日とか言うのは勘弁してくれよ」


「やれやれ、まったくガードが堅いねぇ……早速腹心面とは感心する事しきりにだぜ! まぁ、一応帝国の皇族様相手だしな……格式とかは確かに重要だ。それにしても、お前に幼女趣味があったなんてな……実に笑えるぜ!」


「ば、馬鹿野郎っ! 俺はあくまで保護者であって、そう言うんじゃねぇよ……ったく! バ、バカ言ってんじゃねぇ! つうか、お前不敬だぞ! 不敬っ!」


「へっへっへ……そう言う事にしといてやるよ。まぁ、確かになかなかの美人さんだったな。もう5年、いや3年もすれば、かなりの上玉になる……こいつは俺が保証してやる。おまけに将来、帝国の皇帝陛下になるかもしれん……こりゃ是非とも皇女殿下には色々貸しを作っておかねぇとな……全くたのしくなりそうだな!」


「悪巧みもいいが程々にな……頼むぜ?」


「人のこと言えるか……このコウモリ野郎がっ! だがそうなると、おめぇも将来帝国の重鎮になるかもしれん……なら、今後共、良きお付き合いを続けさせていただきたいもんだな。」


「……出来れば、程々のところで縁を切りたいんだがな……お前と話ししてると疲れるんだよ」


「そうか? 何かと刺激的でいいだろ? まぁ……今日は昨日の情報の礼ってとこだからな……こまけぇ事は気にせず、気軽に食って飲んでけ!」


 ガハハと豪快に笑うと、ホスロウは一際高そうなワインのボトルを開けるとダバダバと空いたグラスに注ぐと、俺の目の前に置く。


「まぁ、そう言う事なら遠慮しねぇさ……ったく、いい酒用意してやがるな……このワイン……結構な上物だろ?」


 そう言いながら、ワインを一息に煽る……コクがあって、雑味が無く、程よい酸味とフルーティーな香りが広がる。

 念入りに濾してあるらしく葡萄の皮だの種なんかが混ざってることもない。

 恐らく、本来ならば王侯貴族が飲むとかそう言う代物だろう。


「ハッハッハ! ペリュジャンっていや、解るだろ? その一杯で銀貨が数枚飛ぶような代物さ」


 そう言って、手酌でクイッと煽るとニヤリと笑う。


「おい、実はテメェが飲みたかったってだけだろ! この飲んだくれが!」


「実に鋭いねぇ……わりぃがご相伴に預からせてもらってるぜ! なんせ、この手の接待の酒代は必要経費って事でどうとでもなるからな……ハッハッハ!」


「ああ、俺……接待されてたのか……気付かんですまんな」


「そこは気付いて欲しいところだぞ? まぁ、お前らしい……ハッ!」


「馬鹿言うなっての……こんな怪しげな一室でてめぇみたいな怪しいおっさんと酌み交わすとかどんな接待だっての!」


「なんだ? 綺麗どころお姉ちゃんの酌の方が良かったなら、初めからそう言えよ。おめぇがその気ならいい店があるから、なんなら今から連れてってやろうか? ん?」


「俺にハニートラップなんぞ通用せんぞ? そもそも、そう言うのには興味がない」


「相変わらず、堅物だねぇ! まぁ、その方が皇女殿下も安心だろうさ……俺も浮気はお勧めしねぇぞ」


「お前もしつこいね……そう言うんじゃないって言ってんだろ! この不良中年がっ!」


 ……そんな風にホスロウとしょうもない馬鹿話をしていると、酒場の入り口のほうがざわつき始める。

細々と修正してます。

ホスロウの髪型はキングオブファイターズのジョー東みたいな感じ。(笑)

イメージ的にはスネェエエク! な感じですが、CV付けるなら大塚だろーと思ってるのでやっぱりスネェエエクじゃねぇか。(笑)

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