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第七話「エド暗躍、そして頼もしき仲間達」⑤

「……双方そこまでっ! ……とりあえず、どちらも武器をしまってくれないかな……あと、すまん……10秒だけ待ってくれ」


 そう言って、ゼイゼイと息継ぎをする俺を呆然と見つめる6人。

 

 くそ……我ながら締まらねぇ!

 

「な、なにもんだ……てめぇら!」


 空気を読んでくれたらしく、本当に10秒きっかり待っててくれた黒革鎧のほうが慌てたように叫ぶ。

 こっちはマフィア系列のチンピラと大差ない連中。

 

 黒ローブは帝国諜報局かな? 昨日、裏路地でご挨拶に来た連中と同じ雰囲気をまとってる。

 どちらもスリーマンセル……装備は双眼鏡と測距儀、望遠レンズ付きの写真撮影機材、武装は護身用の短剣のみ……となると、狙撃狙いのスナイパーなどではなく情報収集が目的だろう。

 

 どちらも言わば同業者同士ってとこか……確かに、高いとこの方が監視には好都合。

 こんな人も居なくて、高い建物……そりゃ人気物件にもなる。

 

「俺達は冒険者ギルドの者だ……この建物はうちの管理物件でねぇ。勝手に騒ぎを起こされちゃ迷惑なんで、やりあうならどこかよそでやってくれや」


 この廃屋は、屋根も崩れかけて、床や壁も穴だらけ……住むのは無理がある……だから無人。

 だからこそ、この手の物件は、我がギルド名義で管理権を押さえているのだ……おかげで、こう言う理由で介入が可能となる。


「そうはいかねぇよ……俺達も仕事なんでな……事情は良く解らんが、あそこでドブ攫ってるガキ共を監視しろって依頼を受けてな。ここがちょうどいいと思ったら、先客がいやがった上にいきなり剣なんぞ抜きやがった……てめぇら、いい加減何とか言えよ!」


 どうやら、黒ローブ側は終始無言でやる気満々……いきなり武力行使前提とか穏やかじゃない……。

 目撃者は消すとでも言うつもりなのだろうか? 何というか思慮が足りないと言う印象だ。

 

 帝国諜報局……こんなベタな物件を監視ポイントに選んでおきながら、この対応。

 この時点で、ホントにこいつら大丈夫かと言う気分になってくる。


 ……西方情報軍に言わせると、素人集団と酷評されてるんだが……まぁ、そう言われてもしょうがない。

 黒革鎧のマフィアは……冒険者の裏稼業版みたいなもんだから、こっちも荒事は厭わないだろう……。

 

 ……まったく、五十歩百歩のみみっちい争いだけど、ほっとくとこいつら……この場で殺し合いを始めるだろう。

 

「まったく……お前らが何処の組織とか詮索はしねぇけど、ここがうちの管理物件である以上、この場はうちが仕切る……いいから、話を聞けっ!」


「なんで、俺達がてめぇらの指図受けねぇといけねぇんだ!」


 黒革鎧のリーダーっぽい奴が一歩前に出ると凄む。

 うっ……顔が怖い……思わず、一歩下がりそうになる。

 

 代わりにとばかりに、血の気の多いサティが剣に手をかけて前に出ようとするので、手で抑える。

 

 ……理由は主に俺の男としてのプライド。

 腕については、心配しちゃいないが、自分より小さい女の子にかばわれるとか……さすがに、カッコ悪いだろ。

 

「そこは、大人しく話くらい聞いとけよ……ったく! もういいコードS! やってやれ……実力行使! と行きたいが、まずは威嚇射撃からだ! ちょっとしたデモストレーションってとこだな……お前ら見てろよ?」


 そう言って、俺はいつも持ち歩いてる名刺を右手で掲げる……音もなく名刺の上半分が吹き飛んで、壁にビシッと穴が開く。

 少しの間を置いて、遠く銃声が響き渡る……どうせこの街の連中は銃声くらいじゃ騒ぎもしない。

 

 ……シュタイナの腕なら、これくらい余裕……解ってるけど、音があとから来る狙撃ってめっちゃこええなっ!

 

 共和国製、超高速弾仕様の最新型狙撃銃を手に入れたって聞いてたが、おっそろしい代物だなぁ……。

 しかも、壁の穴の大きさからこれでも弱装弾……本番用の強装弾だったら、たぶん俺の手首から先がなくなってる。

 

「……そ、狙撃だ……と? それも銃声が後から聞こえるなんて……バカな……どんな距離から撃ってきたんだ……」


 とっさに伏せた黒ローブの一人が顔色を変える……黒革鎧も慌てて、窓の外を警戒しているようだが、見つかるわけがない。

 

 無線越しの射撃音と実際聞こえた銃声のタイムラグからすると恐らく1km以上は離れてる。

 相変わらずとんでもない腕だった。

 

「……状況を理解したか? だから、もう実力行使とかはやめとけ! ひとまず、俺の提案……お前ら、どっちもここで監視を続けてくれて構わん……場所なんて、お互い譲り合えばいいだろ? 俺達としては、お前らがどこの誰だろうが、とにかく余計な揉め事起こさなきゃそれでいい」


 ここで全員追い出しても、あまり意味がない……最悪、一般人の家に押し入って住民を始末。

 こいつらなら、それくらいやりかねない。

 

 そもそも別に皇女殿下を監視するだけなら、なんら問題ない。

 ……ドジっ娘ぶりに呆れ返るかもしれんが、それが事実なんだからしょうがない。

 

 だから、敢えてここは連中に場所を提供すると言うことで、こちらも譲歩の姿勢を見せる。

 ……連中への要求は、シンプルに騒ぎを起こすなと言う一点のみ。


 圧倒的に優位を見せつけた上で、譲歩すると言うのが大事なのだ。

 甘い対応かもしれないが、こうする事で俺達が積極的に敵を排除する方針で無いことも伝わる。

 

 それに、皇女様の周囲の守りを固めてる俺達の実力の片鱗も味わったんだ……その辺も含めて、ちゃんと上に報告して欲しいもんだ。


「解った……承知した」


 黒ローブ、流石に聞き分けが良かった。

 

 まぁ、一応味方だと公言している事だし、本来こいつらを優先させてやっていいくらい。

 帝国諜報局の奴らには、出来るだけ貸しを作りたい。

 

 黒革鎧も仕事だって言ってるからな……その辺の事情は鑑みてやらないといけない。

 マフィア連中だって、犯罪者共をある程度仕切ってくれているのだがら、言わば必要悪だ。

 

 どうせ、ろくでも無い連中なのだろうけど、こいつらだって好き好んで裏稼業やってる訳でもないだろうから。

 

「あ、ああ……解った。畜生、なんなんだよ……こいつら。おい、てめぇら……俺らの邪魔すんじゃねえぞ!」


「お互い様だ……一応、警告しておくが、命があるだけマシだと思うべき状況だぞ? それも判らんようならただのド素人だな……」


「ほざけ! 解ってるから、大人しくコイツの言う事聞いてるんだろうが! テメェらもいきなり剣を抜くとか、んなもんド素人のやり方だっての! 今度から、気ぃ付けろやっ!」


 罵り合いながら、広くもない窓辺に並んで、監視を再開する6人。

 たしかに狭そうだが、その辺は上手くやってくれ。

 

「ロボス……すまんが、この建物の前でしばらく待機しててくれ……こいつらが性懲りもなく騒ぎを起こすようなら、無線で知らせろ……一応、新型の通信魔道具を支給しとくよ」


「了解です! あとはおまかせください!」


 うん、ロボスは真面目だ……星光教会の聖騎士フレドリック卿に弟子入りさせたんだけど、どっちも生真面目だから上手くやってるらしいが、順調に感化されてるらしい。

 

 つまり、正義バカ街道まっしぐら。


「……おいおい、うちの通信魔道具……ここまで小型化したのかよ……リーザってやっぱ凄ぇな……」


 ……シロウくん、それが解るようになったのだな……いっぱしの魔術師らしくなってきたなぁ。

 

 ハーフエルフなんて、どっち付かずの微妙な生まれなんだが……師匠代わりのリーザも大らかだからその辺は拘らない。

 もっともリーザは人に物を教えられるようなタイプじゃないから、もっぱら独学、たまに元素魔術の指導をしてもらってるらしい。

 

「ごめんなさいです……私達、何のお役にもたてずに……」


「そうだよ! あたしも戦えるんだからさ! 今度はカカシ役とかじゃなくて、もっとでかい仕事回してよ!」


 カティとサティも相変わらずだった。

 こいつら双子で髪型も同じ赤毛のおかっぱで、顔も一緒なんだけど、性格がぜんぜん違う。

 違いとしては、一房だけ髪を結ってて、右がカティ、左がサティ。


 気弱でヘタレなカティと無駄に強気で向こう見ずなサティ。

 二人合せて二で割れば、ちょうどいいんだけど……正反対とかおもしれー。

 

「サティ……お前解ってねぇな……奴らだって、プロだぞ? プロは相手の実力くらいひと目見て判断できる……そいつらがお前らとシュタイナの技を見て、実力的に勝てないと判断したから、おとなしく言うことを聞いてくれたんだぜ。お前らが弱かったら威嚇にもならねぇっての……十分役に立った」


「あ、そう言うことだったんだ……そうなるとあたしらって結構強い?」


「少なくとも俺はサティに勝てる気はしないなぁ……Dランク認定されてるなら、もう新米は卒業だろ……明日は別の仕事回すから、楽しみにしてろ」


「おーっ! いいね! このサティちゃんに、お任せなさい!」


 サティもアイシアに負けず劣らずのチンチクリンだけど、腕は確かだ。

 彼女の先生役は十傑Aランクの双剣スタンボルト……バケモノの一人。

 

 ……実際、前にサティの剣の練習台にされた時は、踊るように振り回す短剣の連撃に、俺は手も足も出なかった。

  

「まぁ、せいぜい頑張れよ……俺に勝つくらいなら、自信持っていい。それとさっき俺をかばって前に出ようとしくれたろ? ちょっと心強かったぜ」

 

「あはは! 私を褒めても何も出ないよ? そもそも、エドに勝てても自慢にならないしねー! 大体さっきもちょっと怒鳴られた位で下がりそうになってたし……思わず、私が前に出ちゃったよ!」


「……サティ、エドさんは私達と違って、非戦闘員なんですから、私達がお守りするのは当然です。でもあの時、剣抜こうとしてたでしょ! 早まるなっていつも言ってるのに……エドさん、ごめんなさいっ!」


 カティは素直で優しい子だねぇ……サティとは大違い!

 思わず、頭を撫でてやるけど嫌な顔ひとつしないで嬉しそうに身体を寄せて、目を細める。

 

 ……こないだ間違えてサティにこれやったら、グーで殴られたけどな。

 

 こいつら戦災孤児組もかなりの比率になってきている。

 他のギルドに比べて平均年齢がやたら低い保育園ギルドとかバカにされる事もあるけれど……。


 うちのガキ共はどいつもこいつも将来有望なんだ……何より、俺と同じように大戦で全てを失った戦災孤児だからな。

 あの戦後の混乱を同じように耐え忍んだんだ……裏も表も何もない……心から信頼出来る仲間達だ。

 

 こいつらを一人前の冒険者に育て上げて、ゆくゆくは皇女殿下の親衛隊でも組織するのも悪くないかもしれないな……。

 

 さて……皇女様の護衛ミッション再開といきますか!

カティ&サティのロリ双子は今後も出ます。(笑)


十傑集まとめ。


閃光のシュタイナ

白銀のリーザ

鉄血スタンボルト

聖女プロシア

執行者フレドリック

不死者バルサ


とりあえず、名前と簡単な設定だけ決まってる人達。

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