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第七話「エド暗躍、そして頼もしき仲間達」④

「安心しろ、俺にも解らん! それと奴さんから警告、頭一つ下げろとか言ってるぞ……不自然に影が揺らめくから居場所がバレバレらしいぞ……エルフ様」


 先程の報告ついでのシュタイナからのメッセージを伝えてやった。

 

「マジですか……あたし、透明化の術式使ってるんだけど……前言撤回するわ……お手上げよ! 人間様スゲーっ!」


 リーザ白旗宣言。

 と言うか、シュタイナは何故透明化し潜伏しているエルフを捕捉できるのだろう?

 相変わらず、謎が多すぎる。


「あの旦那の隠蔽術はもはや神がかってるからな……今度頭下げて教えでも乞いてみたらどうだい?」


「やれやれ、まったく、敵いませんなー! ところで皇女殿下がドブ板踏み抜いて、顔からダイブしてるけどアレ……放っといていいの?」


 言われて様子を見ると、側溝に顔からダイブして、全身泥まみれになっていた。

 

(うわーっ! 髪の毛までドロッドロじゃねぇか! どうすんだよっ! あれっ!)

 

 ガキどもに汚いとかからかわれて、どうするのかと思ったら、言ったガキンチョに自分から抱きつきに行った……。

 ベッタリとヘドロをなすりつけれた、ガキンチョは涙目状態だった……。

 

 ……最悪だな皇女様っ!

 

 なんかキョロキョロしてるけど、まさか俺を探してたりしないよな?

 いま抱きつきに来られたら、色んな意味で全力逃亡の道を選ぶ。

 

「こちらでも確認してる……ま、まぁ……あの程度ならほっとこうか……あいつの加護って、毒や病気どころか、暑さ寒さすらも平気らしいからな……風邪ひいたり、変な病気になるような心配は無用だ」


「……色んな意味で凄いね……それ、どんな原理なんだろ? けど……何やってんだかねぇ……なんとも楽しそうじゃない。昨日はギルドの女子寮でも色々あったみたいね……」


「ああ、寮長のソフィアがやたら気に入ったみたいで、聞いてもいないのに延々皇女殿下の話ばっかりしててなぁ……」


「あははっ! 全く皇族なんて、どんなお高く止まったバケモノが来るかと思ってたら、全然普通じゃない……あたしもあとで、お近づきにならないとね」


 ……人間嫌いのリーザからこんな言葉が出るとは珍しい。

 けど、ソフィアに限らずあの皇女様と接した連中は大体似たようなことを言っていた。

 

 裏表を使い分けるほど、器用じゃないから……誰だろうがお構い無しで、全身でブチかましてくる。

 素直に笑って、素直に泣いて、好きなように怒って、拗ねる。

 

 大抵のやつは、先入観で身構えてるから、あの無防備さに肩透かしを食らうのだ……まったく。

 

「そうだな……ただ色々常識に欠けてるからなぁ……その辺はお前みたいな大人の女が教育してやってくれ……言っとくが要らんことは吹き込むなよ? とにかく、ひとまず引き続き、周辺警戒よろしく!」


「心得たぜっ! まぁ、エドも色々前途多難だろうけど、あたしらも色々手伝ってやるからさ……ふひひっ! んじゃ、まったねぇ! エドお兄ちゃん!」


 リーザからの通信が切れる……なんとも色々含みのある言葉を残していった。

 と言うか、最後のエドお兄ちゃんってなんだ! なんで、アイツが知ってるんだ!

 

 ……アイシア様……外ではお兄ちゃん呼ぶなと言ってたのに、結局お構いなしだもんな。

 女子同士のネットワークで噂になってるのかもしれん……だとすれば、もう手遅れのような気がしないでもない。

 

 続いて、シュタイナ先生からコール。

 

「こちらコマンド……コードS、何か?」


「こちらコードS、お客さん同士でトラブルのようだ……場所はポイントα2だな……うちの管理物件のようだがどう対処する?」


 さすがシュタイナ……無駄口は一切ない。

 無愛想な御仁ながら腕は超一流。


 若者を立てる主義だとかで、あまり自己主張はしないのだけど。

 ここぞと言うところで絶妙なフォローをしてくれたり、いざという時に臆さず先頭に立つその姿は誰よりも頼もしい。

 誰もが一目置くギルドの重鎮でもあった。

 

 状況としては、大方どこぞの諜報員同士が監視ポイントを巡って鉢合わせってとこか……。

 監視に向いたポイントなんて限られてるから、この手のトラブルは想定の範囲内。

 

 この時間帯だと、ポイントα2付近に街路巡回中のDランクパーティがいるはずだった。

 そいつらを引き連れて、調停役として、ご挨拶に出向くとするか。


「こちらコードL! こっちでも確認してるよ……どっちもやる気満々、けど近所迷惑だから一発打ち込んで牽制する? この場の仕切りはあたしらだって、しっかり警告しなきゃ舐められるっしょ!」


 リーザからも通信……要約すると早く仕掛けさせろと。

 けど、リーザは俺の事前説明聞いてたのかな……伏兵役だから、軽はずみに動くなと。


「まぁ、待ちなさいって……ひとまずコードLは現状維持……周辺警戒を続行。ロボス隊が現場に近いから、俺が合流して直接対応する……コードSは、俺のバックアップ頼む」


「コードS了解」


 シュタイナから、短く応答。


「コードLも了解……もう……次はあたしにやらせてよね!」


「解った解った……そっちは任せたから、よろしく!」


 通信を終えて、ポイントα2付近へ走る……通りの角を曲がったところで、Dランクのロボス隊と遭遇。

 

「おう、予定通りに行動してたようだな……お前ら、俺に付き合え! 緊急ミッションだ! 実戦可能性ありだ……そのつもりでいろ」


 会うなり早口でまくし立てる。


「エ、エドさん? わ、解かりました……おい、皆! エドさんの手伝いだってよ! ううっ……実戦可能性あり……しかも対人戦かぁ……大丈夫かな? い、いくぞっ! 皆、気を引き締めろ!」


 一瞬、戸惑った様子ながらすぐに立ち直って、仲間たちへ指示を出す。

 うん、良いリーダーだな。


「は、はいっ! じ、実戦ですか! がんばりますっ!」


「よっしゃぁっ! 実戦! 待ってましたぁっ!」


「まぁ、エドの兄貴と一緒なら大丈夫だろう……OK、背中は任せときな」


 それぞれ威勢のいい返事が返ってくる……余計な質問などは一切ない。

 

 ……このロボス隊も、戦災孤児達同士で組ませたパーティーの一つだった。

 まぁ……俺の子飼いの連中と言えなくもない。

 

 メンバーは巨人族の重剣士ロボスと聖術師のカティと双剣使いのサティの双子姉妹とハーフエルフの魔術師のシロウ。

 

 全員、15にも満たない子供ばかりだけど、皆やる気もあるし、連携も良く戦力的にもまずまず。

 

 全員Dランクながら、何かと目をかけているパーティーのひとつだ。

 

 ゴブリン程度ながら何度か実戦も経験しているし、それぞれ十傑連中に弟子入りさせているので、将来的にはもっと伸びるだろう。

 

 うすらデカいロボスはともかく、他はまだまだ背も小さいけれど、普段から鍛えているらしく俺の全力疾走に平然とついてくる……むしろ、俺が足を引っ張ってるとか……屈辱!

 

 目的地の3階建ての廃屋に到着……階段を一気に上る。

 最上階の部屋に乗り込むと、黒いローブの三人組と、帯剣した黒い革鎧の同じく三人組が対峙していた。


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