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第七話「エド暗躍、そして頼もしき仲間達」②

 三年前の大戦のあまりにも理不尽な結末。

 前時代な近衛の重装騎兵なんぞが、戦車の大群を蹴散らしたとか、意味が解らない。

 

 皇帝陛下の加護の力は、自らの身のみならず、近衛騎士達にもおよび……戦車砲弾を弾き返す理不尽の塊のような数千人の無敵の騎士が数十万の機甲化された軍勢を蹴散らした……そんな馬鹿げた戦場が現出したのだ。

 

 それがただの一個人よりもたらされた力と言う時点で、もはや常軌を逸している。

 

 数十万の兵も……積み重ねた技術の結晶と言える鋼鉄の獣も……それの前には何の意味もなかった。


 文字通り戦争を消し飛ばした超常の力。

 古の魔王の伝説になぞらえられるほどだろう。

 

 ……だからこそ、皇族の異能の力の秘密を知りたいと考える者は多い。


 文字通り、世界を制しかねない力。

 

 その正体を知り、攻略法を見つける、もしくは、その力を我が物とする……それが西方や共和国の共通した思惑だろう。

 

 その一番の近道は犠牲を恐れず、一戦交える事。

 

 例え勝てなくとも、その能力の片鱗くらいは見える……犠牲を積み重ねようがそれは無駄にならない。

 積み重ねが、いつの日にか実を結ぶ時が来るかもしれないから。

 

 その為なら、中立緩衝地帯だろうが、一般人がどれだけ巻き込まれようが関係ない……そんな風に考えている奴らはいる。

 

 東方側にしても、皇族の守護者の力については、当事者たる皇族達にもよく解っていないらしい。

 

 なにせ連中はまともに実戦を経験していないのだ……辺境のモンスター相手に一戦交えるなど、その気になれば機会はいくらでも用意できると思うのだけど……その手の話は聞いたことがない。

 

 ……モンスター討伐ともなれば、武勲として喧伝して良い話だから、そんな事があれば噂話にくらいはなるのだろうが……それがないとなると、恐らく周りがそれを認めないか……何らかのリスクがあるか。

 そのいずれかだろう。

 

 アイシアの話だと、色々個人差もあるようだし、鉄壁の守護と言っても限界があるはずだった……けれど、限界知るなんてのは、要は命を賭けるようなものだ。 

 

 そんなリスクを率先して負いたがる連中だとは、思えなかった。


 だからこそ、アイシアは誰にとっても仕掛けやすいターゲットなのだ。

 万が一死なれても誰も困らない……加護の力の限界やその潜在能力……陣営問わず知りたい事はいくらでもあるだろう。

 

 まるで、花の蜜に群がる虫のように……アイシアの敵は数限りなくいて、今後いくらでも湧くだろう。

 

 アイシアから聞いた限りだと、皇城であったアイシアの暗殺騒ぎについても、実験データ取りと言う意味があった可能性が高いと俺は踏んでいる。

 

 それくらいには、執拗に様々な手段が繰り返し試みられたようだし、周囲の犠牲などお構いなしのようだった。

 アイシアが気づかなかっただけで、彼女を殺そうとした試みは、凄まじい数に及んだはずだ。

 

 ものの数日で音を上げて、逃げ出したそうだけど……その判断は正解だった。

 

 それに、中立を旨とする冒険者ギルドのギルドマスターと言う立場になったのも、恐らく最善の手だった。

 

 中立が建前と言えど、冒険者ギルドは大陸全土はもちろん、海の向こうの共和国にまでその影響力は及んでおり、冒険者ギルドの会員は国境を超えて自由に活動できることを保証されている。

 

 ギルドマスターともなると帝国と言えど、簡単には手出しできない……西方諸国……共和国ですら同様だ。

 

 ギルドマスターに手を出すと言うことは、冒険者ギルド全体を敵に回すと同義なのだ。

 冒険者ギルドと国家が衝突した場合は、全支部が足並みを揃えてありとあらゆる手段で報復すると取り決めがなされている。

 

 この条項は建前ではなく、実際そんな事例も過去には存在し、何より抑止力として、その確実なる履行がギルド憲章にて定められているのだ。

 

 ちなみに、その冒険者ギルドに喧嘩を売った東方同盟側の独裁国家は歴史の舞台から姿を消しており、その首都は遺跡として今に残るのみだ。

 

 実際は、商人達の協力と冒険者達の手によって、物流を徹底的に締め上げられて、国民が飢えて四散し、反乱祭りの末に瓦解したらしいのだけど。


 ……冒険者ギルド側は国々への抑止力として、この話を喧伝し、各国もそれを教訓として、今なお伝えている。

 

 もちろん、帝国の皇族がギルドマスターになるなんてのは、ギルド側も想定外なのだけど。

 過去の前例というものがある上に、皇帝陛下と前任者が推薦してる時点でハク付けとしては十分だった。

 

 軽はずみに妙な前例を作るものではないという教訓かもしれないが、ありがたい話だった。

 

 恐ろしく巧妙な企て……その判断を下したのは、恐らく皇帝陛下とアレクセイのオヤジ。

 旧知の二人が協力して、アイシアを迂闊に手出しできない立場にさせたのだ。

 

 まぁ、そのしわ寄せをひっかぶったのは俺なんだがな!

 

 実際、昨日の時点で早速、俺となぁなぁの関係になっているこの街の西方情報軍関係者が俺に接触してきた。

 

 幸い長年の付き合いで、ある程度の信頼関係というものが出来ていたので、包み隠さずこちらの知り得た情報を提供することで、余計な手出しはしないと約束はしてもらえたが。

 

 問答無用で、拉致監禁紛いの扱いを受けたので、連中への貸しと言う事にしてやった。


 基本的に西方の連中は荒事を嫌っている上に、何より誠実かつ礼儀正しい。

 立場的には、本来は敵対関係ではあるのだが、西方側は俺をえらく高く評価しているらしく、至って友好的な関係を築けている。


 西方情報軍の方針は極めてシンプルで、とにかく、あらゆる情報をかき集めると言う目的で動いている。

 情報を得られるのであれば、手段は一切問わないと言う解りやすい方針なのだ。

 

 そのやり方は、力づくではなく信頼関係を構築して、何気ない会話などから情報を引き出していくと言うもので……。

 世間話をしながら、平然とカマかけなんかもしてくるので、連中との会話は油断が出来ない。

 

 ちなみに、殺しや力づくはあまりやらないらしい……。

 その理由もやっぱりシンプルで、死体からは情報は引き出せないから。

 

 ……古来から西方は情報を重視する傾向があり、情報軍は西方軍でもかなり高い位置にある。

 西方の陸、海軍も、情報軍の情報ありきを前提として動くので、事実上情報軍の下位組織のようなものらしい。

 

 その手腕は、帝国の上を行く柔軟性と言うべきものを持っており、過去の大戦でも何度も帝国は情報軍に煮え湯を飲まされている。

 前大戦でも情報軍は共和国を引き込み、敗色濃厚だった戦争の流れを完全に変えるなんてことをやってのけている。


 ……実に手強い奴らだ。

 この連中が今のところアイシアの敵に回っていないのは僥倖と言えた。

 

 ただ、西方の中には、やる気満々の組織もあって……そいつらが情報軍の連中と同じように紳士的かどうかは疑わしいようだった。

 

 西方と言っても一枚岩には程遠いし、話のわかる奴もいれば、わからん奴もいる。

 

 東方側もそのあたりの事情は似たようなもの……実に、面倒くさい話だった。

 





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