第六話「皇女殿下の冒険者生活体験版!」②
「初めましてぇ……皇女殿下様でいらっしゃいますねぇ」
唐突に間延びした口調で話しかけられた。
振り返ると、綺麗な長いブロンドのなんかでっかい人……そんな印象の人がいた。
「は、初めましてです……えっとどなたでしょう? まだ名前と顔が全然一致しなくて……」
昨日見た冒険者名簿で、見覚えはあるんだけどね……。
「あらあらぁ……じゃあ、覚えてくださいね……わたくし、プロシアと申しますの。星光教会奉仕騎士団の団長を務めてますわ……冒険者ギルドにも冒険者の一人として登録させてもらってますので、お仲間でございます……今後共よしなにですわぁ」
そう言って、膝をついて深々と頭を下げられる……見事なまでの臣下の礼だった。
わたしもとりあえず、頭を下げる。
考えてみれば、こんな臣下の礼もされた事無いし、教会関係者への答礼ってどうやったっけ……。
「……せ、聖光神の御心のままに……」
とりあえず、同じように跪いて、祈りを捧げる……皇城にあった礼拝堂のステンドグラスの絵柄の真似だけど、たぶん、これであってるはず。
顔を上げたプロシアさんがにこやかに微笑む……どうやら、礼を失する事はなかったらしい。
ちなみに、星光教会について簡単に説明すると。
「夜天の星王」と呼ばれるはるか昔、星の世界から来たと言われる神様を崇める宗教団体のひとつになる。
星の世界の王が空から幾つもの巨大な星を下ろして、海しか無かったこの世界に大地を作り、植物を植えて、動物と人を大地にばら撒いた……それが星光教会が世に伝える創世神話。
なんか、見解によっては、歴史上何度も登場する魔王と同一視されてたり、この大陸の巨大な内海を作り出した張本人だって話もあるんだけど。
まぁ、神様なんて立場が変われば、善にも悪にもなるから、そんなもん。
この辺は、各国に伝わる神話や伝承、歴史なんかを書物で読んでたから、何となく解る。
一方で守護神扱いされてる神様が、敵対者側では破壊神呼ばわりとか……そんな調子の話は珍しくない。
星光教会の教義自体は、世のため、人のため、正義のためとか言って、割りとまとも。
信者へ課す義務と言っても、一日一回星空に向かって星光神に感謝の祈りをとかそんな調子で、戒律なんかもはっきり言って緩い。
各地で無償のボランティア活動をしたり、独自の武装組織を抱えて魔物退治をしたり、悪い奴らの所に乗り込んでいって、改心させたり……何というか正義の味方って感じの人達。
怪我や病気を治療する治癒術とか聖術と呼ばれる魔術についても、星光教会が独自開発し普及させたと言う経緯があるので、冒険者パーティーに必須と言われる聖術使いは、大抵この星光教会と関わりがある。
聖術自体は別に信仰心とか関係ない単純な技術なので、発動触媒となる十文字を象った魔道具とそれなりの先生がいれば、簡単なものならば、大抵の者が使いこなせるようになる。
……なのだけど、大体の人が先生たる教会関係者の影響とかで、星光教会の教えにハマるか、何らかの影響を受ける。
そして、聖術使いは優秀な医者でもあるので小さな村なんかにも大抵、一人くらいは使い手がいる。
そんな訳で、星光教会は特に東方諸国ではものすごくメジャーな存在だった。
西方の方でも、人の世に多くの技術や魔術をもたらしたと言われる現人神を崇める宗教団体があって、似たような魔術が法術と呼ばれ有名らしい。
けど、法術って魔術体系的には聖術によく似ているらしい……どっちかがパクリかもしれないって思うのは、さすがに深読みのし過ぎかな?
ちなみに、その現人神ってのも、やっぱり魔王と同一、或いは関係者だと言う説もあったりもする……魔王の痕跡とかって、この大陸の至る所にあって、ホント、歴史や伝承の色んなところに頻繁にその名が出てくる。
絶対悪として描かれる事が多いのだけど、別の大陸からの侵略者を撃退したり、東西の大戦の真っ只中へ軍を率いて乱入して、調停しちゃったり、巨大な魔物を打ち倒した……そんな話も残ってる。
この回廊地帯にも少なくとも二度、居城と共に現れて両軍を完膚なきまでに蹴散らした……それが通称魔王戦争と呼ばれる魔王との戦いの経緯。
その存在は、歴代皇帝の残した言葉や歴史書の端々にも出てくるので、実在したのは間違いなかった。
けれど……500年前の魔王と人々の戦い……第二次魔王戦争を境に、その痕跡はぷっつりと消えている……何があったのかは、不自然なまでに当時の記録が残されていないので、もはや誰にも解らない。
その時期を境に、帝国は傍流だったはずの我がザカリテウス家が皇帝の座に付き、必然的に国名も変わりと色々政変があったので、記録についてはますます怪しげだった。
ちなみに、プロシアさんに話を戻すと……昨日読んだ資料だと確かAクラス認定のトップクラスの聖術師で「聖女」なんて二つ名持ち。
お兄ちゃん補足で「善意が服着て歩いてるような人」とか書いてあった。
「あはは……うん、皆さんの資料は読ませてもらってます……ギルド十傑のひとり「聖女」プロシア様ですね! 一度会ってみたいって思ってました!」
女性にしては背丈がめちゃくちゃ高い……180cmくらいはありそう。
わたしだと、もう完全に見上げるような有様で、一歩下がってやっと首が楽になる。
「あらあら……お世辞が上手な方なんですね……わたくしなんて、聖女様なんて呼ばれるような資格はありませんよ。まだまだ精進が必要です……。噂では皇女殿下は病弱な方だと聞き及んでますが……なんだか、思ったよりもお元気そうですねぇ」
「わたしもそう思ってたんだけど……皇族の力に目覚めちゃってから、超健康体になったんです! もう病気知らずで走ろうが飛ぼうが息切れ一つしないとか、もう健康な身体って最高です!」
そう言って、力こぶを作ってみる……まぁ、わたしの細腕だと、そんなもの出来ないんだけど。
わたしも体鍛えたりしようかな?
「……きっと星光神のご加護をお受けになったのでしょうね……素晴らしいことですわ! それに、とっても可愛らしい人なんですね……えいっ!」
そう言うなり、ぎゅーっと抱きしめられる。
神様のご加護って……ちょっと違うような気もするけど、わたし達の守護者の力の正体も実のところよく解ってない。
書庫の禁書のたぐいにも、魔王との同盟の見返りとか、そんな記述があった程度で詳細な記録は残されていなかった。
教会の人だと、自動的に神のご加護とかそういう見解になるのかな……まぁ、そうなるよね。
と言うか、このプロシアさん、ホント色々でっかい……主に胸とか。
なんか、法衣がはち切れそうな位のバインバイン。
羨ましいなぁ……これだけ背も高いと世界とか違いそうだ。
それに、胸が揺れるってどんな感じなんだろ? わたしにとっては未知の感覚だった。
と言うか、実際なんだか世界が高くなってる……。
(……って、地面から足離れてるし、おっぱい様に顔が埋まって、息ができないんですけど……たーすーけーてー!)
……わたしの助けを求める声は、誰にも届きそうもなかった……。
ついでに、一つ解った事がある。
わたしの加護の力は、わたしが味方だと認識した相手には反応しないらしい。
まぁ、無差別攻撃とか怖すぎるしね……寝床で添い寝してくれたソフィアさんが寝ぼけて、蹴飛ばされた時に反応しなくて、ちょっと不思議だったんだけど、なるほど……これは確定だ。
そんな発見をしたものの、急速に薄らいでいく意識……あれー? ちょっとまってくださいーっ!
本日、二度目アップ!
ちなみに、新キャラのプロシアさんは、ティルズのミントをでかくした感じの人です。
特技:おっぱい固め、路上生着替え。(笑)




