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第四話「今日から、わたしがぎるどますたあ……って何?」②

(うそぉっ! さっきの人じゃない! こ、これってまさか運命の出会いって奴!)


 思わぬ展開に、顔が真っ赤になって、顔を上げられなくなってしまう。

 けど……向こうは、わたしの事なんか気にもしないと言った様子で、ちらりと視線を送って来ただけだった。

 

 あれー? 何、この素気ない反応……。

 

「……まったく、執務室前で待ってろって言うから、何かと思ったら……なげぇよ……もういい加減、帰って寝ようかと思ってたぜ」


 もっと理知的な口調を想像してたのに、口を開くなり何とも雑な口調……あくびを噛み殺しながら、背中を曲げてズポンのポケットに手を突っ込んで……実に面倒くさそう……いつもこんなんだろうか。

 

「エディ……まず最初に言っておくが、口の利き方と態度に気をつけるように……」


「ああっ? 何を今更……っと……なんだ? このチンチクリンのチビ娘は! オヤジ……まさか誘拐でもしてきたのか?」


 チ、チンチクリン……チビ娘……酷い言われようだ……。

 ぐぬぬ……不敬罪の適用基準って、皇族貴族が、不快に思ったかどうか……だったよね?


「エディ……いいかよく聞け! このお方は「アイリュシア・ファロ・ザカリテウス」……お前なら、この名前だけで、誰かもう理解できただろ? もう一度言うぞ、口の利き方と態度を気をつけろ……まずは背筋を伸ばせっ! 返事っ!」


 アレクセイ氏が半ば怒鳴るようにわたしを紹介すると、優男さんの顔が引き攣り、慌てたように姿勢を直す。

 

「イ、イエッサーッ! アイリュシア……う、噂の第三位の皇女様? な、何でこんなところに! いや……そ、その……し、失礼しましたぁっ!」


 ビシっと背筋を伸ばして、気をつけの姿勢……けど、眼鏡がずれ落ちて、いまいち締まらない。

 うーん、メガネ直してあげたい……そんな風に思ったので、一歩前に出てツイッと指を伸ばして、直してあげる。

 

「……あ、すまんな……あ、ありがとう」


「どういたしまして……さっきのチンチクリン呼ばわり……別に不敬罪とか言わないから、安心してね」


 そう言って笑いかけるのだけど、なんか引きつった顔をされた……そんなに怖がらなくてもいいのに……こう言うのって……なんか嫌だな。

 

「エディ……俺が皇帝陛下と若い頃からの親友だって事はお前も知ってるだろ?」


「あ、ああ……そうだったな。……で、そうなると陛下直々に皇女殿下の面倒を頼まれたとか……そんなところか?」


「その通り! お前は何かと察しが良いから、毎度、説明の手間が省けるのは実にいいな! でだ……これから、お前にはすごく大事なことを伝えるから、心して聞けよ? ん?」


「……な、なんだよ……おい、まさかっ!」


 ああ、そうか……この人サブマスターとか言ってたから、わたしがマスターになると直属の部下って事になるのか……。


 うん……けど、悪くない……かな。

 ちょっと好みのタイプだし! わたしもインドア派だからこう言う理知的な男の子の方が気が合うと思う。


 何と言っても……さっきの出会いに、わたしは運命的なものを感じたのだ……。

 年も近いってのもポイント高い……同年代の友達とか欲しかったし!

 

 ナイト様と言うには、華奢だけど……。

 なんだかんだで助けてくれたし……でも、覚えてないのかな……わたしのこと。


 なんか、わたし一人勝手に舞い上がってたけど……顔も覚えられてなかったとか、馬鹿みたい……。

 それとも双子のお兄さんとかいるのだろうか?

 

「察したか? 相変わらず勘だけはいいな……俺は今日付けでギルドマスターを引退するっ! 後任はこのアイリュシア皇女殿下にお任せする! これは決定事項であるっ! 貴様の異論は聞かーん!」


「はぁっ! なんだそりゃ! そんな大事な事……勝手に決めるんじゃねーよっ!」


「異論は聞かんと言っただろ? そもそも、俺がトップだ! 俺の進退は俺が決める! 後任を誰にしようが俺の勝手だ! 貴様は以後、殿下の忠実なる部下として、今まで通りギルド運営をこなせ……なぁに、お前なら出来るって! 実際、俺が手を出さずとも、なんとかしてきたじゃねぇか!」


「て、てめぇ……確かにこの一年くらいは、ギルドの事も全部俺が取り仕切ってたよっ! どっかの誰かさんが仕事しねぇから!」


「はっはっは! 実を言うとこの一年……お前の成長ぶりを見るために、敢えて俺は一線を退いていたのだよ! それとも何か? オメェは相変わらず、引退間際のロートルジジイに泣きつかなきゃ、ギルド一つ仕切れねぇってのか? そもそも、俺がせっかく次期ギルドマスターにテメェを推薦してやったのに、それを蹴ったのは何処のどいつだ?」


「……けっ! 俺はトップなんてガラじゃねぇんだよ……俺はあくまでナンバーツー向けだからな」


「なら、丁度いいじゃないか……殿下はその気みたいだからな……オメェは引き続き、補佐役だ! やるこたぁ何ひとつ変わらねぇだろ? 俺はオメェがこの街の裏稼業の連中と渡りをつけて、色々仕切ってたりしてるのだって、知ってるんだぞ? その手腕……見事なもんだと感心すらしてたんだ……まぁ、これからは皇女殿下をしっかり支えてやるんだなっ!」


 そう言って、優男さんの背中を思い切り平手でぶん殴るアレクセイ氏……バチコーンとか、ものすごい音がして、優男さんが床を転げ回る……義理の親子らしいけど、仲いいんだなぁ……とちょっとだけ羨ましくなった。

 

「さて、殿下……申し訳ない……すっかりお待たせしましたが、早速ながらギルドマスター引き継ぎの手続きを致しましょう……エディ、引き継ぎ関係の書類まとめてもってこい! ささ、殿下……今日からここが貴女の執務室になりますから、どうぞお座りください」


 そう言って、清々しい笑顔と共に、アレクセイ氏が大きな執務机の椅子を引いてくれる。

 

 さっそく、腰掛けてみるのだけど……困ったことに、椅子の高さが足りなかった。

 机の高さと肩の高さが同じ……これで書類にサインとかかなりしんどい。

 

 うーん、分厚い本でも敷いてクッションとか重ねるとかしないと駄目だね……これ。

 

 山のような書類やら資料の束を抱えて戻ってきた優男さんが、その光景を見て天を仰ぐ……そ、そんな哀れんだ目で見ないで……。

 

 ……わたしは心の底からもっと背丈が欲しいと思った……。


 だって、隣に並んで胸のあたりに頭が来るって……色々釣り合わないし……。

 

 ああ、もうっ! 体質改善ついでに背が伸びたりしないかなっ!

皇女様は恋に恋するお年頃なのです。

本ばっか読んでるから、恋愛小説とか読みまくり……。


地味な話ですが、面白いと思ったらブクマでもください。(笑)

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