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33話

 皆がこっちに来る前に早く人形を変化させないと!半分本気モードで頑張るしかない。

「色々省略、スケープ・ゴート!」

 慌ててエリュトロンにハンドサインをしながら、人形を獣人達の身代わりにしていく。一度に沢山の獣人達のコピーが完成していく。

 それに合わせて私の魔力が凄いスピードで減っていくけれど、途中で中断して休憩する時間なんてない。やばい、倒れそう。

 魔法鞄を漁って指輪を取り出し、Aランクのマジックポーションを一気飲みする。言葉だけは挑発的にする。

「どれだけ小悪魔を召喚しても無意味だよ?」

「これで倒せるとは思っていませんよ。単純に嫌がらせですから。うふふ、恐い顔ですね。この獣人達は可愛い我が子達のエサにするつもりなので、一人残らず攫っていきますね」

「そんな事はさせないよ?ハリケーンショット、改良版!」

 シンちゃんが獣人達(偽)の近くに矢を撃ち込む。獣人達(偽)を囲むようにして、外側に向けた暴風のドームが出来る。


「まあ、なんて意地悪な子なのかしら。連れて行くのが難しくなったわね…これで打ち消せないかしら?(チラッ)」

 適当に言いながら弱っている獣人達を、転移の魔法陣へと連れて行くエリュトロン。目配せをされたサーリアが、暴風のドームを大鎌で軽く攻撃する。

 かなり激しい音はするけれど、シンちゃんが維持をしているので変化は見られない。

「これは!なんて頑丈なのかしら。子供だと思っていたのに実力者なのね」

 場を盛り上げるセリフとは対照的に、焦った表情になるエリュトロン。向こう側からは台風みたいな音と、ミニデーモン達の悲鳴が聞こえてきた。

 後少しだとか言っているユウキ達の声も聞こえ始めた。エリュトロンの作業が間に合わないかも?慌てて走り寄って獣人達を押し込むのを手伝う。

 シンちゃんとサーリアは既にドームの左右に別れて、警戒態勢のポーズをし始めた。手伝えよ!と内心でツッコミを入れる。

 私は作業しながらエリュトロンに小声で最後の仕上げをお願いする。

「エリュ、コピー達の前で立ちはだかる私と戦ってね」

「了解です。最終的にはケイ様に弾き飛ばされて、捨て台詞と共に帰れば良いですね?」

「バッチリ!じゃあ、始めようか」

 最後の獣人を押し込んでポーズを取った時に、旦那さん達が走り込んできた。良かった、何とか間に合ったよ。心臓に悪かった。


「嫁さん、無事か!後ついでに、サーリアとシンも」

「フミ、ひどくない?頑張って獣人達を守ったよ?僕」

「ケイ以外はこの扱い…くうう、ドSな感じが良いのう」

「二人共、ずいぶんと余裕じゃない?少しは助けて欲しいな、ハアッ!」

 いつも通りの皆に笑いそうな私は打ち合わせ通りに、襲いかかってきたエリュトロンを軽く弾き飛ばす。

「あら、一人位は仕留めている予定なのに。これは困りましたね」

 綺麗に着地をして本をパラパラと捲りながら、エリュトロンが困った顔をする。

「その紅い髪は?お前、前に見た事があるぞ。確か…エリンギ!何をするつもりだ、ガードナー・ファイブ!」

 キリッとキメ顔でユウキが言うけれど、カリーナちゃんとアルジェント、ドワーフ二人を除いた全員がコケた。

 あ、アルジェントがとても苦しそう。本当は知っているのに、知らない体だから笑えないんだよね。

 そして自分に対して剣先を向けるユウキに、青筋を浮かべたエリュトロンは口元が少し引きつっている。

 うん、気持ちは良くわかるよ。エルトロン位ならまだしも、エリンギて。三文字しかあっていないし食べ物だよ。しかもオリバーさん達は、それすら知らないはずだよ。


「私はエリュトロンです。言葉を使い始めたばかりの赤ちゃんなんですね?三文字だけでも…よく頑張りまちたね?勇者ちゃん」

「何だと!馬鹿にするな!あの時と同じだと思うなよ、喰らえ!」

 ユウキを挑発するエリュトロンと、見事に引っかかって斬りかかるユウキ。

「うわああぁ!た、助け…」

「ほ、本当に赤ちゃんなんですか?…コホンッ!前と同じ手に引っかかるだなんて、勇者失格では?」

「アウッ!あの時見たパターンとほぼ同じじゃない。もう、やだー!」

 バクンッ!という感じで足元からポップした魔物にマルカジリ!されたユウキ。あまりに簡単に引っかかったせいで、全員が無言になる。

 そして演技が甘くなって、一瞬だけど素が出るエリュトロン。ユウキをビシバシと鍛えようと、内心で溜め息混じりの私。

「ちょっと!丸飲みされちゃったわよ!」

「早く助けた方が良いと思うが?」

 シャロークとワフソンは武器を構えて魔物に斬りかかるけれど、耐久力が高いのか効いていないかな?

 オリバーさんは眉間を揉みながら頭を振っていて、カリーナちゃんとアルジェントは絶句しているね。


「わらわがスパッといこうか?」

「中身まで斬れるといけないので、自分が行きますにゃあ。やれやれですにゃあ…フンッ!」

 大鎌を振り上げるサーリアより先に、ジョニーが魔物の腹部を大剣の腹で強く叩く。ナイス判断!

「グ、グキュウウウゥ!」

 叫び声をあげた魔物はユウキを吐き出した。うん、鎧はボロボロで服は一部が溶けたか。

「わあ、たいへん。はやく、いやさないとね(棒)」

 すっごい棒読みだなあ。シンちゃんはもう少し真面目に取り組もうか。ユウキについてはマロが軽く回復させて、適当な服と鎧を渡しているから大丈夫かな。

「あらあら…せっかく捕まえたのに。横取りはいけません、ねっ!」

「させないよ!って、相変わらず謎な本だよね?それ、ちょうだい?」

「貴重な本なので差し上げるわけにはいきません、ねっ!」

「キシャーッ!グゲエエ!」

「おっと、危ないなあ!いきなり魔物出さないでくれる?」

 何の魔物か確認しないまま斬捨ててエリュトロンに文句を言う。ガキッ!とかギンッ!とか、掠めるとマズそうな音を響かせて、激しく打ち合う私達。

 本なのに斬りつけると金属音がするんだよね。複製とか出来ないのかな?転移させた本物の獣人達について報告を聞く時に教えてもらおう。

 あまりに激しいせいか誰も手が出せないみたい。召喚された魔物は一応皆でやっつけているみたいで、こちらに邪魔は入らない。

 皆から死角になった時にパチッとウインクすると、エリュトロンは小さくサムズアップで返してくれた。

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