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32話

「何とか終わったな。事情聴取が出来れば良いけど」

「そうだね。マロ、まずは全員に治癒魔法をかけて」

 旦那さんとシンちゃんが倒れている獣人達の様子を見ている。その横で言葉もなく、ぐったりしているユウキ達。

 ユウキはカリーナちゃんから色々渡されたりしているから、少しは元気そうに見えるけれどさ。

「お疲れ様。オリバーさんが頑張ってくれなかったら、何人かは死んでいたかもね。アルジェント、オリバーさんに何か甘い物を渡して」

「凄かったですよ、オリバー様。甘い果実水をどうぞ、ドライフルーツもありますよ」

 アルジェントに凄いと言われて照れているオリバーさんを残し、サーリアと一緒に難しい顔をしている旦那さん達に近づく。

「話出来そう?かなり衰弱しているみたいだけれど」

「どうかな…死なない程度に回復したとは思うけれど」

 旦那さんと話していたら気がついた獣人達がこっちを見る。


「おねがい…ヒイロ…わけて」

 近くでしか聞こえないくらい弱々しく言われた言葉に、一斉に渋面になる私達。この獣人達は中毒症状が酷いみたい。

「どうしようか?オリバーさんとユウキ達が見ているよね」

「何をするにしても、こっちを見ない状況にしたいね」

 私とシンちゃんで内緒話をしていたら旦那さんも参加してきた。

「シン、何とかならないか」

「うーん…じゃあね、フミとサーリアとジョニーに、頑張ってもらおうかな?」

「何をするのか知らないが、怪我人が出ない程度にしてくれよ?」

「大丈夫だよ!多分ね」

「多分、ね…やれやれだ」

 ニヤリと笑うシンちゃんに旦那さんが溜め息をつく。そしてシンちゃんが手のひらサイズの魔法陣をいくつか作り、こっそりとユウキ達の後方に配置する。

「さあ、出ておいで。サモン、小悪魔各種」


 シンちゃんが小声で召喚すると魔法陣からインプ、ミニデーモン等がたくさん湧いてきた。疲れて座り込んでいるユウキ達を取り囲む。

「クッ!こいつらどこから!」

「まずいわね…ケイ達と分断されたわ」

「ユウキ様、私達はどうなってしまうのですか?」

「カリーナは俺が守る!」

「オリバー様…」

「落ち着くんだ、カリーナとアルジェントを中心にして円陣になるんだ!」

 急に湧いたように見える相手に騒ぎ出すユウキ達。そこにオリバーさんの指示が飛ぶ。良い判断だと思う、流石は騎士団長だな。

 そして何も伝えていないのに、瞳を潤ませながらオリバーさんを見るアルジェント。良いよ?ナイスだよ!その調子で注意を引いてね。


「ねえシンちゃん、ちょっと弾幕薄くない?」

「やっぱり?三倍ぐらい追加しようか、ついでにエリュトロンも呼び出そう」

「三倍かあ…追加の小悪魔は赤いのかな?そしてエリュはこき使われて、忙しいねえ」

「僕の下僕だからね!そして色は変わらないよ?」

 ヒソヒソと話す私とシンちゃんに旦那さんが肩を竦めていた。

「旦那さん、ユウキ達のフォローに入って。念の為にマロとジョニーも一緒にね。向こうはガチで戦闘になるからさ?ユウキ達には回復が必要でしょ。こっちは私とサーリアでいくよ」

「わらわもあっちが良いのう。とはいえ、シン、ちゃんが何をするのか興味がある。付き合うのじゃ」

 サーリアが自然にシンちゃんって言えるまでは、まだまだ時間がかかりそうかな。それにしてもバトルの方がいいとは、エルフって血の気が多いのかな?

 どうでもいい事を考えている内に旦那さん達が移動する。そのタイミングで更にミニデーモンが追加された。これでお互いの様子は確認出来ない。

「お待たせしました。何をすれば良いでしょう?」

 『窓』からエリュトロンが現れて小声で聞いてくる。向こうに聞こえるように即興で演技してもらおうと、シンちゃんと決めていた。


「この獣人達を天空城へ移動させたいんだ…アレの中毒症状が酷くてさ」

「確かに酷いですね…私が連れ帰るという事でいいですか?獣人達のコピーは必要ですか?」

「誤魔化しの為には必要だね。エリュは察しが良くて助かるよ。後で僕が何とかするから隔離しておいて。それからね?一芝居お願いしたいんだ」

 シンちゃんとエリュトロンが獣人達について話をする間に、私はサーリアと打ち合わせ。

「サーリア。私達も一芝居するよ。分断された片側に強敵が現れたという体で」

「ふむふむ…ユウキ達に聞こえるようにじゃな?」

「そうそう。エリュの準備も出来たみたいだからね…始めようか」

 普段は隠している殺気を少しだけ開放する。それに合わせてシンちゃんが転移の魔法陣を描きながら叫ぶ。

「ケイ、サーリア!注意して、何か来る!」

「何じゃ、この邪悪な気配は!嫌な予感がするのじゃ!」

 ノリノリなサーリアに邪悪とか前振りされて、エリュトロンがちょっぴり涙目。頑張れ!エリュ!と思いつつ、私も芝居に入る。

「危ない、サーリア!」

 呼ばれた本人は笑いそうになるのを我慢しながら、大鎌を私の剣に打ちつけて効果音を演出している。ジョニーが察してくれたのか、わざと大声で聞いてきた。


「シン様、ケイ様、大丈夫ですかにゃ!強者の気配ですにゃ!」

「強者だと?チッ!まさか、あいつらか!なるべく早くケイ達の援護に行くぞ!」

「嫁さんなら大丈夫だ。今は自分達の事を考えろ!」

 ユウキの言葉に旦那さんの指摘が飛ぶ。ミニデーモンで見えないからと、声を殺して笑い転げる私達。

「あら、完璧な不意打ちだと思ったのに。簡単にはいかないのですね」

 そして口調を変えたエリュトロンが行動開始。

「簡単に当たるわけがないでしょ?確かエリュトロン、だったよね?あの時の怪我は回復しちゃったのか…残念」

「馬牧場の時ですね?とても痛かったのですよ?そうですね、仕返しをしましょうか」

 話す内容は険悪な雰囲気だと思ってくれるはず。でも実は二人でせっせと粘土の人形を沢山作っている。

 その横でシンちゃんが魔法鞄から取り出した指揮棒を振り始めた。それに合わせてミニデーモンが寄声をあげる。

「ギシャア!」

「ガアアァ!」

「威勢だけは良いのう、魔界?に送り返すとするか。さあ、かかってくるのじゃ!」

 更にサーリアが元気に叫ぶ。でも戦うわけじゃない。私から借りた剣と大鎌をぶつけたり、ミニデーモン達に大鎌を叩かせたりしている。


 ちょっとそこの小悪魔ちゃん達?リズミカルに叩いちゃダメ!演出ってバレちゃう!なんて考えている内に獣人達と同数の人形が出来る。

 次の作業は獣人達から毛を引っこ抜いて人形に貼り付けていく事。か細い声でイタッ!とか、鬼!とか聞こえるけれど、全部無視させてもらう。

 ちなみにユウキ達側からは何やら必殺技名とか、シャロークのオネエ言葉なのに、野太い怒鳴り声とかが聞こえる。

「デビルバスター!どうだあ!」

「いい度胸ね?覚悟は出来とんかあ!」

 ユウキはひねりが足りないし、シャロークはオヤジが出ちゃったのかな?

「小さな傷でも甘く見てはダメですよ。今すぐ癒やしますね!皆さんファイトです」

 可愛い声はマロだね。癒されるなあ。アルジェントとカリーナちゃんは何しているのかな?応援かな?

「囲まれたか…だが、問題ない。螺旋斬!」

「喰らうですにゃ、餓狼黒牙斬!」

 おお?オリバーさんとジョニーが頑張っているね。

「結構な数を減らせたな、残りはまとめて吹き飛ばす。皆、下がるんだ。巻き起こる流れは…」

 向こう側から旦那さんの声が聞こえて焦る。あれは風と水系統を混ぜた内容の詠唱だったような記憶が?

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