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30話

「え?こんなにもらっても良いのか?」

「そうよね、実際に討伐したのはシンちゃんでしょう?」

「シャロークの言う通りだが、金はあって困るものではないからな。ありがたくもらっておこう」

「船内の安全確保しかしていないが…まあ、いいか」

食堂にやってきたオリバーさん達は渡された金貨の量に驚いていた。一人当たり三十枚だったからびっくりしたらしい。

「シーサーペントの売却益がそこそこあったの。それに気絶するまで魔力を提供してくれたじゃない?だから気にしないで」

私の説明にワフソンとシャローク、ユウキが微妙な表情になる。

「提供?あれは無…ガフッ!な…何でもない。さて、これからどうするんだ」

無理やりだったと言おうとしたワフソンの脇腹に、容赦のないシャロークの肘がはいる。分け前が減らされるとか考えていたりするかな。

それを見たカリーナちゃんはユウキが余計な事を言わないように、こそっと何かを耳打ちしている。納得したような表情になるユウキ。

それを見て思ったのは、きっちり尻に敷かれているなっていう事だった。


「これからについて相談したいんだが…予定から少し遅れてしまうが陸路に切り替えたい。どうだろう」

合流前にジャンケンで負けた人が話す事になっていたから、旦那さんが船を降りようと切り出す。ちなみにストレート負けで少し呆然としていたのは内緒。

「陛下の依頼で少しでも早く調査に向かわなければいけない。それは理解していると思っていたが?」

私達はオリバーさんが文句を言うだろうと予想していた。旦那さんは慌てることなくアルジェントに目を向ける。

「申し訳ありません、オリバー様。私がお願いをしたのです。どうにも嫌な予感がしたものですから」

ちょっと怯えた表情を作り胸の前で手を組んだまま話すアルジェント。

「アルジェント殿が?ゴホ、ゴホン…何故と聞いても?」

潤んだ瞳で上目遣いは効果抜群みたい。オリバーさんは咳払いをして何かを誤魔化そうとする。

「オリバー様、私の事は気軽に呼んで下さい。理由ですが…何か…良くない事が起きると思うからです。気のせいならば良いのですがもしもの時、馬車で進む方が海の上よりは対応が楽だと思いまして…」

アルジェントの言葉に皆が難しい表情で黙り込む。そして空気を読まないのはやっぱりユウキだった。

「それってさ、シーサーペントが来たから思ったのか?」

チッ!ユウキめ、意外に鋭いな。アルジェントは上手く言ってくれるかな。


「勇者様の疑問については、いいえ、と言わせて下さい。あれは偶然だと思います。何者かが仕組んだとしたら、同じ船に乗っているでしょうから。それは自殺行為ではないでしょうか?もしもそうであれば考えが足りないとしか」

オリバーさんにやったように潤んだ瞳で、ユウキをじっと見つめながら話すアルジェント。ああ…それはダメだよ?嫌な予感がするよ?

「そんなに怯えなくても君は俺が守るさ。心配なら添い寝を、フギャアアアアア!」

「先を続けて下さい、アルジェントさん。ユウキ様には私から伝えます」

アルジェントの策に引っかかったユウキは、カリーナちゃんにシバかれて沈黙する。良く見るとカリーナちゃんは立派なメイスをマロに返している。あ、借りたんだね。

「カリーナ。いくら勇者が丈夫とはいえ淑女の心は忘れない方がいいぞ」

「やだ、私ったら。つい…なるべく気をつけます」

カリーナちゃんの尻に敷かれて、鉄拳制裁もあるのに学習しないよね。まあ色々気付いちゃっても困るし、うるさいのが静かなのは助かるから話を進めちゃおう。

「話を戻すね?私達はアルジェントの意見に賛成するよ。海中の相手には対抗手段が限られちゃうからね。その影響で守れない人が出るのは、ちょっとね」

私がそう言うと、オリバーさんやワフソン達が考え込む。カリーナちゃんは理解出来ていないだろうな。


「荷物はもう残っていないはずだが、本当に陸路で行くのか?」

「まあ、色々考えがあるんだよね。船長さん達も仕事終わったら、無事にシーディーアに戻ってね。それじゃあ」

「おう、気をつけてな!野郎共、出航だ!」

陸路で行く事にした私達は港で船長さん達を見送る。食料品など必要な買い物を終わらせてから、馬車に乗り込んで街道に出ようとする。

「本当にそっちの馬車で良いのか?一応場所には余裕があるが?」

「場所に関してだったら間仕切りしていないから大丈夫!アルジェントもいるから」

「むう、そこまで言うなら任せるが。何かあれば相談してくれ」

「了解。ありがとう、オリバーさん」

私達とアルジェントが一緒の馬車に乗る事には、何も言わなかったオリバーさん。何故かサーリアについては何度も確認してきた。

「オリバーはもう少し人を信用するようにした方が良いのじゃ。わらわほど信用出来る者はおらぬぞ?」

「どの口が…いや、まあ…とにかく相談は受け付ける」

途中まで言ったオリバーさんは身の危険を感じたのか話を打ち切った。この口じゃ!とか言って、飛び付かれたくなかったんだよね?

「色々とごめんね?ちゃんと相談するから。それに面倒をかけるなら、お仕置きするし?」

チラッとサーリアを見ると、アルジェントの後ろに隠れてプルプルし始めた。それを見て納得したのか、オリバーさんは御者台に陣取った。私達の方はジョニーが手綱を握る。

「まずは近くの村とかを目指して出発!」

シンちゃんの合図で馬車が動き出す。

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