12話
一日中食べ歩きや買い物を堪能した翌日。シーディーアの町はずっと賑やかな状態が続いている。
「まだ見ていないお店とかあるのに。戻るのかあ」
後ろ髪を引かれている私をシンちゃんが引っ張る。
「ほら、行くよ。お金を稼がないとね」
「まあ、ね。昨日は結構派手に使った自覚ある」
寝る前に計算して驚いちゃった。食べ物に小物や服にアクセサリー等、合計で金貨三十枚を浪費していたから。でも後悔はしていない。お買い物は楽しいからね。
ユウキとカリーナちゃんにお小遣いを渡して、数日後に戻ると伝える。問題が起こると困るからサーリアは連れて行く。
「ユウキ。エンシュアさんに頼んで冒険者ギルドに行け。町の周りで弱い魔物狩りの依頼を受けて、経験値を少しでも増やすんだよ」
「ああ、もちろん頑張るぜ。クラーケン討伐で三十五になったけれど、塵も積もればだよな」
先は長いなあと思いながら別れた。オリバーさんはバン国王に用事があると言うから一緒に行く。
「さて、出発しますか。旦那さんよろしくね」
「了解。懐かしき王城へ我らを誘いたまえ、エスパシーオ・ヴァンデル」
集まって立つ私達の足下に魔法陣が現れて、エレベーターに乗っているような浮遊感と共に景色が一変する。
「本当に便利な魔法だな。使える者は少ないと聞くが騎士団の魔法部隊に覚えさせたい」
そうなれば色々出来るからだろうな。でも、かなり大変だというのは黙っておこう。
「急で申し訳ないと思っているけれど謁見の申請をした方が良いよね?」
「ケイ殿達ならば必要ない。そこのお前、陛下に取次を頼む。さあ、行こうか」
テキパキと指示を出すオリバーさんについて行く。あっという間に謁見の間へ通された。
「此度の働きはうんぬん…よって、働きに見合うなんたら」
大臣らしき人物が長い話をしているけれど、適当に聞き流しながらバン国王の様子をさり気なく観察する。
ユウキが同席していないからバン国王は笑顔でマリナ王女は不機嫌だ。
「以上である。詳細は後ほど伝えよう」
大臣の話がやっと終わった。そう思っていたのは私達だけじゃないみたい。
「何故ユウキ様は一緒ではないの!引き離そうと企んでいたら反逆罪で投獄よ!説明しなさい!」
バン国王より先にマリナ王女が凄い剣幕で言ってくる。本人以外は微妙な表情なのに気がついていないよね。
「理由を申し上げますので発言の許可を頂けますか?」
「良いわ、言いなさい」
質問の時点で許可無く発言しているけれど気付かれない。それにしてもお父さん、ちゃんと淑女らしい教育してくれませんか?
少し非難がましい視線を向けると、思い切り明後日の方を見られた。やれやれと思いながら言う。
「勇者様は現在レベルアップの為に魔物狩りをしておられます。レベルが上がれば沢山の人々を助けられますし、ひいては世界を救う事に繋がります。マリナ様に平和な世界をプレゼントする為に奮闘中なのです」
追い付けないだろうけれど私達と差が有り過ぎて困るのよね、とは言わない。あくまでも世界の為、マリナ王女の為と説明する。
「私の為に?何て素敵!」
微妙に違うよ?世界の為だからね?夢見がちだからチョロいな。機嫌が良くなったのかマリナ王女からそれ以上何かを言われる事は無かった。
そしてやっぱりと思っていたけれど、バン国王もエルフについては殆ど情報を持っていなかった。どれだけ引きこもり種族なんだろう。
「では下がって良いぞ。ああ、オリバーは後で儂の部屋に来るようにな」
バン国王の言葉で謁見終了となる。再びオリバーさんについて行くけれど、誰からも咎められなかった。
「今回はかなり感謝している。ダッテン伯爵が統治しているシーディーアは、我が国で一番大きな港町だからな。長引くと国の財政に影響してしまう、本当に助かった」
私室でそう言いながら結構な枚数の、金貨の入った袋をプレゼントしてくれるバン国王。一人一袋だから太っ腹だね。
「さて、詳しい報告を聞こうか?謁見で話した内容が正しいとは思えんからな」
言葉を額面通りに受け取らないのは流石だ。娘さんにも同じように教育して欲しいですね。
「実はですね…ガードナーファイブだけではない、第三勢力の存在がありました」
「邪悪な化け物で知性豊かだったので非常に手強かったのですにゃ」
「僕達以外は命の危険があったから避難してもらいました」
「クラーケンは頑張ったのですが、第三勢力については恥ずかしながら自分は役に立ちませんでした」
次々発言する私達にバン国王の表情が険しくなる。
「手強かったと言ったが仕留めたのだろう?問題ないな?」
そう言って欲しいと顔に書いてあるけれど、バッサリ斬り伏せる事になるんだよね。悪いのは私達じゃないよ?
「陛下、重要な報告があります」
「な、何だオリバーよ。そんな思い詰めた顔をしなければならん程か?」
重い口調のオリバーさんと腰が引けているバン国王。オリバーさんには色々と誤魔化して、追い返したと説明してある。
「実はですね…ネクステン王国が関係しております」
オリバーさんの説明を聞いているバン国王の眉間には深い皺が刻まれて、口元は引きつって歯軋りの音が漏れている。
「他の勇者を召喚しようとして、ケイ達でも苦労する存在を招き入れてしまうなど…容認出来る事ではないな。危険な真似は止めるよう早急に申し入れをしよう」
そう言ってくれるバン国王にお礼を伝える。ネクステン王国が言うだけで止めてくれるのか不安だけれど、どうしてもという場合はアズール達に委ねよう。
「して、ケイよ。次はどこへ向かうつもりだ?」
「馬車の改造がありますのでシーディーアで数日足止めです。ユウキやオリバーさんとは別行動で、ギルドの依頼をこなそうと思っています」
バン国王からお小遣いをもらえたけれどもっと欲しいからね。
「ふむ。その次で良いから国からの依頼を受けてくれぬか」
「内容によります、と言いたいけれど引き受けます」
何も聞かない内に返事をした私を驚きの表情で見るバン国王。多分だけれど、何を考えているのか読めないんだろうな。
「国からとはいえ必ず引き受けねばならんという事ではないぞ?」
「今は小さい異変だからという理由ではないですか?放置して大事になってから苦労したくないんです」
「理解が早くて助かる。一番北の地方にある村で大きな空の歪みが確認された。近くにある山脈は飛竜や土竜などの生息域だからな。今は何も起こっておらぬが、ガードナーファイブに利用されると厄介だ。詳細は追って知らせる」
「調べて消せるなら消せということですね」
依頼を受けた後はお菓子とお茶を頂いて帰る。
「行き先の近くが竜種の生息域でラッキー!素材を沢山ゲットしようね、旦那さん」
「そうだね、ポーション用の素材としても色々と必要だからね」
和やかに話しながらギルドに足を踏み入れる。話していたから前を見ていなかった、誰かにぶつかりそうになる。
「危ないだろうが、どこ見てやがる!」
実際にはぶつかっていない、ギリギリで回避出来たからね。
「ごめんね、次は気をつけるね」
「何だ?その誠意の無い謝罪はよ。お?良く見りゃあ良い女だな。よし今晩付き合うなら、許してやるぜ?」
暫く顔を出していない間にクズが湧いていたらしい。でも何故かそいつに向けて、近くから止めろという忠告が飛んだ。
「関係ねえ奴は引っ込んでいろ!」
「おや、君は」
「久し振りですね。おい、お前。先輩として忠告はしたからな?」
ミアちゃんに絡んで私にノックアウトされた経験のある新人君は、溜め息混じりで下がっていった。わざわざ優しいな。
「変な邪魔が入ったがどうなんだ?可愛がってやるぜ?」
「ふうん?例えばこんな風に?」
「何を?クフッ!」
半分本気の速度で顎先を掠めるパンチを繰り出す。脳が盛大に揺れたのか床に崩れ落ちた。成り行きを見守っていた冒険者達が壁際へ引きずっていく。
「よし、悪は滅びた。さあ稼ぐぞ」
見た目に騙される馬鹿が減らないなとか、前回よりも容赦ないなとか聞こえたけれど気にしない。カウンターに座るミアちゃんに挨拶する。
「ヤッホー、ミア!久し振り、モフらせて」
「にゃ、仕事終わってからなら考えます」
「いきなりそれか?うちの受付嬢は安くねえぞ?ミアも簡単に返事するなよ」
珍しくカウンターにいたアンガスが文句を言ってくる。
「どうしたの?ギルド長自らカウンターにいるなんて。槍でも降るのかな」
「言ってくれるな?今日は人手不足だったんだよ。それは横に置くとしてちょうど良いタイミングで帰ってきたな。おい、ミア」
「はい、ギルド長」
ミアちゃんは機密事項と書かれたファイルをアンガスに手渡す。
「ちいっとばかり面倒な依頼があってな。適任者がいなくて困っていたんだ。俺の部屋で話そうか」
返事も待たずにスタスタ歩いて行くアンガスについて行く。
「まあ座ってくれ。依頼内容自体は護衛がメインだから大した物じゃない、とある種族のお偉方に関係しているのが厄介でな。他にも厄介な要素がある」
「嫌な予感がするから聞きたくない。普通の依頼を紹介して」
適当に座って言う私にアンガスは顔をしかめる。
「だからよ、適任者がいないって言ってんだろう?俺でも自信が無いんだ、お前達以外なんて何人送っても…理解出来るよな?」
良くて大怪我、悪ければ死亡か。何とか回避したいな、無理かな。等と考え込む私の背中に張り付いてくるサーリア。
「何が問題なのじゃ、まだ話さえも聞いておらぬではないか。それはさておき、ギルド長はなかなかに渋い色男じゃのう」
静かにしていて欲しかったのにな。アンガスが驚いているのを見ながら、背中に手を回してサーリアを引き剥がす。
「お、おい!そのちっこいのはエルフか?まさか誘拐じゃねえだろうな?」
「人聞きの悪い事を言わないで欲しいですね。大型の魔物討伐のついでに、成り行きで、保護しただけですよ。詳しい内容はシーディーアのダッテン伯爵に確認して下さい」
静かに説明する旦那さんにアンガスの動揺が収まっていく。
「フミがそう言うならそうだろう。少しでも疑って悪かった、話に聞いた事しかない存在を見て動揺してな」
「別に気にしないよ。疑いが晴れたみたいだから帰ろうよ、ケイ。お腹空いたな」
「そうだね、帰ってシンちゃんの好きなお菓子を作ろうか」
買い物帰りの親子みたいな会話で席を立とうとしたのに、サーリアが台無しにしてくれた。
「のう、ギルド長殿。エルフに興味はないかのう?大人の刺激的な夜を過ごさぬか?」
「いやいやいや。ボン、キュ、バーンな大人のエルフなら食事位は考えるがな。お嬢ちゃんにはかなり早いと思うぜ?」
頭が痛い。気に入ったら即座に誘うサーリアが問題だけれど、自分の好みを告げるアンガスもどうなんだ?そもそもアンガス好みなグラマラスなエルフっているのかな?
タイミングを逃したから座り直して、追加で余計な事を言わせない為にサーリアを捕まえて耳打ちする。
「気絶するまでくすぐられたい?」
「か、軽い冗談じゃ。大人しくしておこう」
多分これで静かにしていてくれるはず…だと良いなあ。
「仕方ない、話だけ聞くよ。引き受けるかは皆で相談だからね」
「ああ、それで良い。昨日の事なんだが、追い詰められた感じのドワーフが二人依頼に来てな?」
暫くアンガスの話を聞いていたけれど正直な思いを言っても良いのなら、依頼を出したドワーフは馬鹿だと思う。
人捜しに出掛けた自分達の師匠を捜しているなんて。しかも師匠と呼んではいるけれど現役の国王らしい。ついでに師匠が誰を捜しているのか知らないというのだから呆れてしまう。
「政治に関わりそうな上に足取りが掴めていないから無理だね。僕達は数日でシーディーアに戻って、その後は国王様直々の依頼に着手する予定だもん」
「国からかよ?困ったな、危なくて他には回せねえっていうのに」
頭を抱えるアンガスには悪いと思うけれど、シンちゃんの言葉通りで今は無理だ。
「力になれなくて申し訳ない。これで失礼するよ」
「まあバン国王様に睨まれたくねえからな。仕方ないだろう、適当に誤魔化して断るさ」
アンガスが諦めてくれたから、今度こそ席を立とうとしたのに再び邪魔が入る。廊下が騒がしくてミアちゃんが何かを言っている。
「うるせえな?おい、ミア!何を騒いでいるんだ!」
部屋の入口からひょいと廊下を覗いたアンガスは、バタン!と扉を閉めて何故か私達に無茶を言い出した。
「ここで抑えているから窓から帰れ。早くしろ!」
「ここは三階じゃないか!ちっこいエルフを連れているんだよ?無茶を言わないでくれる?」
「お前達なら朝飯前だろうが、抱えて飛び降りれば良い。とにかく早く、グハッ!」
扉がバーンと開けられてアンガスが私達の方へ弾き飛ばされる。大した怪我にはならないだろうけれど、ジョニーとマロに目配せをする。
私と旦那さんが前に立ち後ろにシンちゃんとサーリアを隠す。
「ギルド長殿!ロビーでこの国一番の冒険者達が来ていると聞いた!是非とも話をしたい!」
喋っちゃったのは誰だよ?と思ったけれど、恐らくミアちゃん以外は事情を知らないだろうから罪はないな。
「あら?贅沢な素材の鎧で黒髪の女…聞いていた特徴に合致するわね。貴女がケイよね?良い所で出会えたわ、私達の話を聞いてくれるわよね」
「嫌だ、忙しい!」
間髪入れずに拒否をする私にポカーンとするドワーフ達。部屋の中にはマロの癒やしの呪文だけが流れていた。
「それなりに力を入れていたのに軽く弾き飛ばしてくれるとはな。加減っていう言葉を知らねえのか?」
掠り傷さえ残さず立ち上がったアンガスが苦言を呈していた。マロが頑張りました、みたいな顔で見上げてくるから撫でておく。
「加減等しない、常に全力で勝負よ!そんな事よりもだ、ケイ殿を説得して欲しい」
「そうよう、お話聞いて欲しいのよう」
マッチョで脳筋なドワーフとマッチョなのにオネエなドワーフに、流石のアンガスも眉根を寄せる。
「生憎と彼女達は先約があってな。悪いが他を当たってくれないか?」
「先約だと?いくらの仕事だ、その三倍支払おう」
「お金はいっぱいあるのよん」
それだけ出せば良いだろうっていう態度が気に入らないな。カチンときたのか旦那さんが手にした杖を突き付けて言う。
手にした杖にかなりの魔力を込めているけれど、ドワーフ達は気付いていない。
「国王からの依頼だから支払えるとは思えないし、金で頬を叩くやり方は気に入らないな」
ドワーフ達だけじゃなく私にも密かに少しダメージが入る。良く考えると物やお金でカリーナちゃんを釣っている自覚があります。
「優男が生意気な。魔法使いのようだが女に守ってもらわないと戦えんのだろう?情けないな」
「何だと?そこまで言うなら相手に…あ!」
「天井と仲良くなりなさいアッパー!」
「ゴホッオゥ!」
捻りを入れてほぼ真下の床すれすれから放った私のアッパーカットは、ドワーフその一の顎を捉えて打ち上げた。
バキメキと音を立てて胸の辺りまで天井にめり込んで静かになる。
「ちゃんと手加減した?思い切り痙攣しているけれど」
杖に込めていた魔力を消して溜め息をつく旦那さん。アンガスは肩を竦めて首を振り、ジョニーに肩車をされたマロが回復魔法をかけていた。
「ちょっとやり過ぎたかもね。でも旦那さんの事を馬鹿にしたコイツが悪い!一応生きているからセーフ!」
「限りなくアウトだと思うな、僕は」
のんびりと言うシンちゃんにもう一人のオネエドワーフが騒ぎ立てるかなと思ったけれど、青い顔で腰を抜かしていた。口だけだったのかな?
「先程はすみませんでした。誰も引き受けてくれないのです。伏して懇願するので話だけでも聞いて下さい」
二時間程してから目を覚ましたドワーフその一と、天井の穴を塞いでいたその二は床で土下座をしていた。つい殴ってしまった手前話だけ聞く事に。
「自分はワフソンといいます。一カ月程前に我等の師匠であり一族の王であるガウディエ様が、人捜しに行くと玉座を空けてしまったのです」
「私はシャロークよ、よろしくねん。元からふらりと出掛ける事はあったけれど、これ程長い期間は初めてなのよう」
皆で心当たりを捜したけれど見つからず、国内には居ないとみなして側近二名を捜索に派遣するに至ったらしい。
それにしても簡単に事件解決出来そうな名前のくせに、さっきの行動を振り返るとダメな側近だな。
「師匠って何の?というかさ、国王の自覚あるの?その人」
バッサリと斬り捨てるように聞くと困った顔になるワフソンとシャローク。
「自覚はあると、良いな?」
「きっとあるに違いない?」
側近からこんな事を言われてしまうとは。
「面倒くさいから受けたくないなあ」
そう思ったら旦那さんに肩をチョイとつつかれた。
「何?」
「口に出ているからね?ノーノー本音、建前プリーズ」
「おう?ちょっと失敗したね。まあ、細かい事は気にしないで。説明した通りで私達は数日でシーディーアに戻らなきゃいけないよ?受けるにしても五日が限度かな」
うっかり口にしていた本音に微妙な顔をしていたワフソンとシャロークは、五日と聞いて肩を落とす。行方知れずの人を捜すには少な過ぎるからだ。
本音を言うとユウキとか、召喚を止めないネクステン王国とか、世界を守る旅?とかで忙しくなければ見つかるまで付き合っても良い。
ドワーフが作る装備品は良い物が多いから報酬にせしめるのも可能。私としても惜しい部分はあるんだよね。
「短くても良い。力を貸してもらいたい。集めた情報ではこの街から一日半の山に向かったと聞いている。往復する間の護衛を頼みたい」
護衛と言うワフソンの言葉に首を傾げる。場所は知っているけれど、私達が必要な程危険な魔物はいなかったはず。
「あー、俺が説明する。さっき適任者がって言ったよな?レベルが低い奴だと危ないって言ったな?」
話に割って入るアンガスに頷いてみせる。
「最近になって採取に出掛けて死体で見つかる冒険者が複数報告された。調べてみたらポイズンピーコックの亜種が住みついたらしい」
「あの魔物はそんなに強くないよ?毒だってDランクのポーションで完全に防げるし」
毒の羽を飛ばしてくるとか弱い毒ブレスとかが攻撃手段の、派手な見た目のクジャクだったはず。大きさも普通のクジャクより少しだけ大きいくらい。
「亜種だって言ってんだろう?大きさは五倍程度になっているし動きも速い、更に問題なのは毒が強い事だ。戻ってきた調査員はAランクポーションを飲んでいたのに瀕死だった」
アンガスの部屋はしんと静まり返った。上級の回復魔法を使える仲間か、Sランクのポーションを持っていないと襲われたら全滅覚悟になる。
「だからあ、私達も困っていたのよう。その魔物が住みつく前に向かったと思うから、ガウディエ様が居た痕跡を見つけないとダメなのよね」
苦い顔で黙ったままのワフソンと指をモジモジしながら言うシャローク。私はやっぱり面倒だったと思いながらお茶を飲み干した。