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10話

「アッハハ!本当に出たし!周りの奴らが謳うアレ向けの賛美歌も鬱陶しいし、流石に精神力を削られるね!」

「嫁さん、SAN値保護の為にわざと強がってない?」

 現れた親玉を前に自棄気味に笑う私に旦那さんの指摘が入る。

「別に、そういう事じゃないよ。確かにデカいし気持ち悪いけれど、正気は保てる自信ある」

「それじゃあ…単に面倒で楽しくないと思っているね?」

「正解。コイツさ?こっち側に属していないから、どんな攻撃が通るのか不明だよね。そして船と乗組員を守りながら戦うのも大変だよ。まず、倒す事が可能かな?」

 私の言葉に全員がうんざりした表情になる。

「イカの次はタコですかにゃ…食材ならば歓迎する所ですがにゃ」

 ジョニーがハフッと溜め息をつく。気持ちは良く分かるよ。

「ねえ、ケイ。あれってダで始まってンで終わる名前だった?」

「そうそう、良く知っているねシン。丸くて三個から五個で串に刺してあるんだよ」

「えー?僕が知っているのは音楽だよ?」

「ケイ様、それはダンゴですにゃ」

「シンのはタンゴだな。二人共、現実逃避はその辺にしような」

 シンちゃんと私がふざけると、ジョニーと旦那さんがツッコミを入れてくる。だって面倒過ぎてさ…というのは口に出さなかった。仕方ないから真面目に考えよう。

「畏怖セヨ、我ヲ讃エヨ。小サキ者ヨ」

 そいつは聞いているだけで嫌な気分になってくる声で喋る。

「タコの癖に生意気だな、誰が小さき者だって?」

「シン、落ち着きなって。どっちが格上か理解させるんでしょう?」

 いくら神扱いをされている存在だとしても、喧嘩を売る相手を間違えるのなら三流だと思う。シンちゃんを宥めながら魔法鞄を漁って武器を持ち替える。

 日本刀は斬る事には向いているけれど、斬れるのか不明な相手に使って刃こぼれなんて嫌だ。胸の高さまである大きなメイスを構えて宣言する。


「推定名とある神話の神様のタコ殴りタイムに突入します!繰り返します、タコ殴りタイムです。間違って仕留めないようにしましょう!総員、戦闘開始!」

 皆は私の合図で好きなように仕掛けていく。図体がデカいから狙い放題だ。

「愚カシイ、我ニ挑ムトハ。脆弱ナル者共ヨ、砕ケルガ良イ」

 威圧感が増した気がするけれど、怯えたり発狂したりするような普通のメンバーじゃない。お互いに邪魔にならない場所で攻撃をする。

「斬ってはいけないようなので、こんなのはいかがかにゃ?目指せホームランですにゃ!」

 そう言ってジョニーは大剣の腹でフルスイングをした。バチイィン!と凄い音がして、とある神様の顔が一瞬歪む。

「ナイスショット!あ、ちょっと違ったかな?僕は弓がメインウェポンだからな…アレを使おうかな」

 笑顔で楽しそうに魔法鞄からバカでかい弓と矢?を取り出すシンちゃん。鏃の代わりに鉄球がついていて、矢羽根の代わりに鎖がついた矢?をつがえると旦那さんに声を掛けた。

「フミ、お願いがあるんだよ。この鉄球に強力な風の魔法をかけて欲しい。持続時間は長い方がベスト!」

「繰り返し打ち込むつもりか?禄な事考えていないな…厚き壁を穿て、エアリーショット!向こうの抵抗力にも左右されるけれど、五十発位なら持続すると思う。切れたら教えてくれ」

「ありがとう、フミ。それじゃあいくぞ!」

 旦那さんに魔法をかけてもらって嬉しそうなシンちゃんが放った特別製の矢が、とある神様にめり込む。素早く鎖を引いて二射目を放つシンちゃん。

「火力が高くない方法か。数で押しますか。エアリアルボム、乱れ撃ちヴァージョン!」

 拳大に圧縮した空気の塊を大量に撃ち込んで破裂させる旦那さん。あれはチクチクと痛くて鬱陶しいだろうな。

 とある神様は今までは遭遇するだけで相手が廃人になっていたから、まさか戦うなんて微塵も考えていなかったに違いない。だって、驚きで対応が遅れているからね。

「グヌ、コノ程度デ。我ヲ滅スル事ガ出来ルトデモ…」

 思うわけがない。滅するつもりがないしね。とある神様も墨なのかブレスなのか判断出来ない反撃をしたり、足を伸ばして私達を捕まえようと頑張っている。

 その動きに合わせて船が盛大に揺れるのがネックかな。メイスで連撃というかタコ殴りにする為には、しっかりとした足場が欲しい。


 そうだ、何も甲板に拘る必要はないよね。

「旦那さん、今から連撃いきたいんだよね。アイツの周りに氷と土の魔法でドーナツ状の足場を作って」

「はあ?弾幕薄くしても良いなら出来るよ」

「ダメ!弾幕は維持して欲しい」

「制御が面倒なんだよ?何かご褒美がないとな」

 旦那さんがご褒美を要求してくるので少し考えてから耳打ちする。

「絶対だからね?やっぱり無しは泣くからね?それじゃあ頑張りますか!」

 私が提示したご褒美に満面の笑みを浮かべて足場を作る旦那さん。

「どんなご褒美なのかは秘密!大人のお楽しみさ」

「ねえ、ケイ。誰に向かって話しているのさ?お子様な僕でも理解出来るように説明しておくれよ」

「シン様、突っ込んではいけませんにゃ。色々引っ掛かりますからにゃ、それこそ大人の事情ですにゃ」

 明後日の方向に話す私にシンちゃんが突っ込んできたけれど、ジョニーが止めてくれたので放置する。ほどなく足場が出来上がったので早速飛び移る。

 数メートルはあるだろう氷の上に固い土の層がある。これなら強く踏み込んでも大丈夫そう。

「さあて、準備も出来たし。そろそろいきますかね!まずは、一発目!」

 足場からとある神様の足を駆け上って、メイスで横っ面を張り飛ばす。

「グハッ!ヨクモ、小娘ガ!」

「はいはい、鬼さんこちら。ハッ!」

 振り抜かれる足をかいくぐって、最初と反対側を斜め下から打ち上げる。

「グオオ!一度ナラズ二度マデモ!」

 数本の足で押し潰そうとしてくるけれど、既に私は斜め後ろに移動している。

「やっぱり円形の足場って良いね、そおれっと!」

 空中に飛び上がってからのフルスイングをする。ドガッ!という音と一緒に結構な反動が返ってきた。とある神様は数瞬動きが止まっていたから、良い具合に決まったのだなとわかる。

「適当に避けながらやる予定。私の事は気にしないで続けてね。ジョニーもこっちに来る?おっと、危ない」

 怒りと共にメチャクチャに振り回される足を避けて皆に声を掛けた。


 小一時間後。とある神様は私の足場を浮き輪代わりにして、泣き言を言うようになった。

「モウ、勘弁シテ、下サイ…我ガ悪カッタカラ」

 小さく呟くだけでピクリともしない。私とジョニーが近距離からで、旦那さんとシンちゃんが遠距離で頑張った。

 とどめを刺さないで皆でチクチク削ったのは、ちょっと意地悪だったかも知れない。内心で反省しつつチラッとシンちゃんを見る。

「とうっ!」

「うわ、危なっ!」

 適当な掛け声で船からシンちゃんが飛び降りてくる。多分だけれど着地の事を考えていないみたいだから、受け止めてあげた。

「サンキュー、ケイは優しいね」

「優しいとかじゃないよ。シンが何も考えていないから仕方なくでしょう?」

 やれやれと思いつつシンちゃんを足場に降ろす。

「どう、少しは反省したかい?僕達の遊び場で勝手な行動をしたのは何故?」

「世界一ツガ遊ビ場ダト?貴様ハ何者ダ…外見ハ小サキ者ノヨウダガ」

「まだそんな事を言うの?ケイさん、ジョニーさん、やっておしまいなさい!」

 自分の正体に気付いていない様子の、とある神様に向かって指を突き付けるシンちゃん。何故に諸国漫遊の御老公様みたいな喋り方なのか。

 呆れ顔で見つめていると分かっていないなという顔をされる。

「シンは何が言いたいのかな?」

「マークの入った手の平サイズのアイテムを見せて、控えおろう!とかやって欲しいね」

「どうして時代劇を知っているのかは横に置くとしよう。神様だって知られないように遊ぶ予定だよね?そんなアイテム必要かな?」

 ジト目で見つめると視線を泳がせるシンちゃん。本当に適当なんだから。


「神ダト?我ヤ、更ニ上位ノ存在以外ニ?」

 少し放置したからだと思うけれど、とある神様は流暢に喋る余裕が出てきたみたい。

「君達が存在するとされている世界も、僕の管理下にあるんだよ。面倒だから説明はしない。またチクチクやられたくないなら、どうやってこっち側に来たのか目的は何か教えて」

 シンちゃんを見つめていたけれど何かに気付いたらしく、いきなりキョドり始めるとある神様。

「ア、アノ、ソノ。シ、知ラナカッタノデス。スグニ帰リマス。コチラヘ来タノハ、見タ事ノ無イ穴ヲ見付ケテ、興味本位デスガ」

 必死に言い訳をするとある神様だったけれど、内容に気になる単語が含まれていた。見た事の無い穴?同じ事を思ったのかシンちゃんが私の腕にぶら下がりながら言う。

「世界を隔てている壁の穴ってさ?ブランが塞いだはずだよね?どういう事だろう」

「同じ事考えたよ。まさか他にも開いているのかな?大至急調べる必要があるね」

「面倒ですにゃ…ブランには出頭するように連絡しておきますにゃ」

 溜め息をつく私達にとある神様が恐る恐る声を掛けてくる。

「モウ帰ッテモ?」

「あ、ごめんね。後少し聞きたい事があるの。まずは私達を甲板に戻して」

「ハイ、喜ンデ!」

 妙に聞き分けが良くなったな。そんな事を考えながら甲板に戻してもらった。

「どうしたの、一緒に戻ってきて」

「ちょっと確認したい事があってね」

 不思議がっている旦那さんに言ってからとある神様に聞く。

「あの半魚人達も連れてきたの?」

 相変わらずとある神様を讃え続けている半魚人達を指差す。

「アレラハ、海ニ居タ生物ガ、変化シタ姿デス」

「なるほど。君が帰ったら元に戻る?」

「多分。自我ノ無イ生物ハ少シ時間ガ、カカルカト」

 ネタが分かったからなのかシンちゃんが面白くなさそう。

「数が多いのは元が魚という事だからかな。クラーケンは魔物だから、そのままだった可能性があるね」

「既にどうでも良くなったね?飽きっぽい性格だな、もう。後一つ、色が違う個体が居たのは?アレだけれど」


 甲板の端で今なおプルプルしているユニーク半魚人。全部把握していないよねと思いつつ聞くと、とある神様は少し考えてから答えてくれた。

「魔力ガ高ク、知性アル生物ガ居マシタ。アレハ、ソノ生物ガ変化シタノデハナイカト」

 予想外の回答に私達は戸惑った。元が人間という可能性があり、魔法使いかも知れないから。

「ねえ…まずくない?ただの村人Aさんじゃないよね」

「嫁さん、皆思っているから」

「僕としては見なかった事にして討伐」

「シン様…乱暴かと思いますにゃ」

 額を突き合わせるようにしてボソボソ話す。

「地位がある人だったら恩を売れるよね?どうせ旅の途中だしさ、送り届ける方が得かもよ?」

 シンちゃんの言葉でユニーク半魚人を一斉に見ると、ビクッとして一層怯える。

「まあ、途中までなら良いか」

「お礼をふっかけようよ」

「シン様…何でもありませんにゃ」

 元の姿に戻ったら連れて行こうかとまとまりかけた時に、旦那さんが僅かに拒否反応を示した。

「上手く説明出来ないけれどさ…厄介事の種になる気がする。誰かが命の危機に、とかではないけれど」

珍しく曖昧な事を言う旦那さん。

「うーん…フミがそう言うのは珍しいよね。仕方ないな、シーディーアに戻ったらエンシュアさんかダッテン伯爵に押し付けよう」

 何気に酷いシンちゃんの言葉に皆で頷く。

「話はまとまったよ。来た時の穴がまだ使えるなら帰って良いよ」

「ソウデスネ…マダ少シ開イテイルノデ、帰リマス」

 暫く中空を見つめていたとある神様はそう言うと、段々と姿が薄くなっていき消えていった。


 海にいる半魚人達は周りをキョロキョロ見回していたけれど、讃える相手が居ない事に気付いたらしく波間に散っていく。

「魚に戻るまでにどの位の時間がかかるのかな。さて、残るはユニーク半魚人だけだね。元はどんな顔なんだろうね」

 シンちゃんの顔には楽しみだなと書いてある。

「悪趣味だね…あれ?何か縮んでいかない?気のせいかな」

 怯える素振りがなくなった半魚人は、甲板にペタリと座り込んでいる。その身長が小さくなっていくように見えた。

「まさか、子供?自我が弱いから影響を受けやすいけれど、正気に戻るか分からなくなってきたな」

「怖い事言わないでよ旦那さん。お宅のお子さんを保護しました、妙な事を口走りますが元気です。とか言えないじゃない」

「僕の外見と大差ないサイズになったね…あ、姿が変化するよ」

 冷や汗を流しながら思いの外小さい相手を見守る。女の子の姿が半魚人の姿とダブって見えた。一瞬眩しい光に包まれた後に一人の幼女がキョロキョロしていた。

「これは見なかった事にしたいですにゃ…まさかエルフとは」

「魔力が高いわけだよ。親はどうしたのかな」

 シンちゃんとジョニーが渋い表情になる。私と旦那さんも似たような顔だ。

「エンシュアさんは預かってくれると思う?ダッテン伯爵でも良いけれど」

「無理じゃない?嫌な予感はこれか」

 私達はぼんやりとしている幼女を観察する。シルバーブロンドの巻き毛が見事だな。服はちゃんと着ているけれど踊り子風だから違和感が半端ない。

 エルフの里とかから誘拐されて、どこかで競りに出されるはずだったとかかな?ロリコンな金持ちオヤジには受けるだろう。


「まずは正気か確認しますか。ねえ、貴女のお名前は?」

「名前?サーリア」

 ちゃんと返事があるし名前も言えた。後は住んでいた場所を聞けば良い。

「どこから来たの?場所を教えて」

 サーリアと名乗ったエルフの幼女は首を横に振る。

「どんな事でも良いよ?」

「…からない、分からないのじゃ!何も覚えていないのじゃ、ここがどこなのかも。わらわは名前位しか覚えておらぬ!」

 ハイ、記憶喪失きました。しかも口調が子供にしては妙だし王族とかだと嫌だな。送り届けて捕まるとか洒落にならない。

 記憶喪失なんて定番過ぎるでしょうと思うか、とある神様に関わってその位で済んだのはラッキーだったと思うか意見が分かれそう。

 ルビー色の瞳に涙を滲ませて私を見上げてくる姿は可愛らしいけれど困ったな。

「嫁さん、ちょっと待って。持ち物から何かしらの手掛かりは得られないか?」

「あ、その手もありか。荷物は?ちゃんと返すから見せて欲しいな」

 サーリアちゃんは小さな猫型ポシェットをギュッと握り締めている。これはまた見事に警戒されているわ。

「大丈夫だよ。君をお家に返してあげたいだけなんだ、ね?」

 ニコッと笑って優しく言う旦那さん。

「出たわ、人たらし。前世はこの笑顔と口調にコロッといく後輩達、主に女子が多くて大変だったわ」

「人聞きが悪い事を言わない、別に間違いはなかったでしょう」

「そうだけれどね」

 じっとこっちを見ていたサーリアちゃんは、ポシェットを差し出してくる。中には金貨が数枚入っているだけで、情報が得られそうな物はなかった。

 しかし妙だな?小さな女の子が持つには大金じゃないかな?

「見せてくれてありがとう。返すね」

 旦那さんがポシェットを返そうとしたら、ガシッと手を掴むサーリアちゃん。何やらニコッというよりニマッと笑う。


「なんと優しい、良い男なのじゃ!どうじゃ、わらわと遊んでみんか?」

 いきなり何を言い出したのか理解が追いつかない。全員がポカーンとしてしまうがお構いなしに喋る。

「恥ずかしがる事はない、わらわがリードしようぞ?色々な技を知っておるからの。必ずや昇天させてみせよう」

 どう贔屓目に見ても絶壁に見える部分に、旦那さんの手を導こうとしている幼女。

「ていっ!切り離しかーらーのー奪還!」

「痛い!何をするのじゃ」

 旦那さんに注意を促すよりも先に体が動いていた。上からチョップを落として手を離し、旦那さんと私の立ち位置をクルリと入れ替える。

「旦那さんに触らないでくれる?急にどうしたのかな?」

「ちょっと位良いではないか、ケチだのう。良い男が居たらアプローチして閨に誘う。普通の事で急ではないぞ」

 価値観というか感覚が違いすぎる。ユウキの女の子版という事かな?とにかく幼い子には早いと教えなければ。

「普通って何?と考え込みそうだけれど、子供が考える事じゃないのは確かだと思うよ?」

「子供?誰の事じゃ」

 疑問顔でこっちを見るサーリアちゃん。君の事だよ、お嬢ちゃん。頭痛いと思いながらゆっくりと話す。

「サーリアちゃん以外に居ないでしょう?」

「無礼じゃのう。熟れてお色気満点の熟女を捕まえて、子供じゃと?」

 今度は私が疑問を感じる側になった。熟女って何才からだったかなとか、色気ってツルペタスットン!にもあるのかなとか考える。


「ねえ、ジョニー。十才位で熟女ってカテゴリーに入るのかな?」

「詳しくは知りませんにゃ。少なくとも三十程度からではないですかにゃ。落ち着いて下さいケイ様、見た目は幼女ですがエルフですにゃ」

 ジョニーの言葉で機能停止になりかけていた脳が働き出す。そうだった、エルフだった。

「年齢を聞いても良いかな」

「確か、九百才になったばかりじゃ。どうじゃ?小娘には醸し出せない色気じゃろう?」

 熟女どころか人間に換算するとお婆ちゃんだよ。けれど目の前で無い胸をドヤッと張っているのは、紛う事なき幼女だ。

「ということでな、そこの男を差し出すのじゃ。なあに怖くはないぞ、天井のシミを数えているだけの簡単なお仕事じゃ。あーんな事や、そーんな事をして楽しもうではないか」

 現実逃避しそうな私を無視して旦那さんに躙り寄る変態幼女。思考が遅れているけれど反射でブロックに入る。

「待てや、こら!この人は私の旦那さんだ」

「そうなのか?じゃあ、貸してくれぬかのう」

「ダメに決まっている!他を当たれ」

「その男が良いんじゃ!ちょっと経験した事のない世界に案内するだけじゃ!」

「そんなの私と経験済みだから間に合っています!」

 低レベルでギャアギャア言い合う私とサーリア。ジョニーの近くまで非難した旦那さんからは、溜息と呟きが漏れていた。

「ラノベでエルフをエロフって表現する場合があるけれど、これは絶対に違う気がする」

 内心で旦那さんに同意しながら、絶対にエンシュアさんかダッテン伯爵に押し付けようと決める。港に戻るまで旦那さんを死守しようと構えながら、サーリアを指差して宣言する。

「とにかくだ、旦那さんには指一本触れさせないからな!分かったか、この変態ロリババアエルフ!」

 離れた場所でシンちゃんが転げ回って笑っていた。

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