表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

とんでもにゃい聖女さま

とんでもにゃい聖女様

作者: 氷桜 零
掲載日:2026/02/07


日に日に増えてくる魔物に、人々は頭を抱えていた。

近年では、商人の往来が減ってきている。

何とか自国で生産ができている我が国はマシだが、自給率の低い国は大打撃を受けている。

魔物の増加と狂化のせいで、支援物資を送るのにも命懸けだ。


前回の聖女様が亡くなってから30年。

次の聖女様の知らせが、今までこんなに期間が空いたことがなかった。

いくら待っても、神の啓示が降りてこない。

聖玉が光らないのだ。

世界はこんなにも聖女様を求めているのに、何故降臨なされないのか。

もしや人間の行いが、神の怒りを買ったのではとの噂が流れる始末。


教皇が光らない聖玉を見て、深くため息をついた。

踵を返そうとしたその時、眩い光が奥の間を照らした。

ついに、聖女様が降臨なられたのだ。


探さなければ。

聖女様を悪意が襲う前に、探して保護しなければ。

希望があれば、家族も大聖堂で保護するのもやぶさかではない。


教皇が興奮気味に扉を開け放ち、大聖堂中に響きそうな声で命じた。


「皆のもの!聖女様が降臨された!国中の赤子から、聖女様を探し出すのだーー!!!」


わぁぁぁぁぁーーー!!!


まずは王都から、そして地方へ捜索の手を広げる。

大聖堂が一時人手不足になる程、聖女探しのために人手を割いた。





それから一年が過ぎた。

今だに聖女様は見つかっていない。

手掛かりすら、発見できない状況だ。

教皇をはじめ、聖職者や聖騎士たち、が自分の不甲斐なさに項垂れている。


もしや赤子を隠しているのか?

それとも、村とも言えない辺鄙なところで生まれたのか?


頭を抱えながら、様々な考えを巡らせる。

だがいくら考えても、探しに行っても、全て空振り。

聖女様降臨が誤報だったのではと、疑うものさえ出てくる始末。

けれど、それはない。

確実に聖女様は、降臨されている。

何故なら、魔物の発生がやや落ち込んでいるからだ。

魔物の強さも、以前より弱くなったと言う手応えがあった。

だから、確実に聖女様はいるはずなのだ。


本当に、どこにいらっしゃるのですか?聖女様……


誰もがそう、願っている。


教皇をはじめ、聖職者たちの空気が沈んでいるので、大聖堂内の空気も重苦しいものとなっている。

そのうちキノコでも生えそうな勢いだった。




――――――


一匹の黒猫が、路地裏を我が物顔で優雅に歩く。

それも当然だ。

この黒猫は、王都の全猫のボスだからだ。

まだ若いので下剋上を狙う連中もいるが、どれほど不意打ちだろうが、一度も負けたことがない。

それどころか、怪我をしたことすらないほど強いのだ。


強い猫はモテる。

もちろん、この黒猫も例外ではない。

王都中のメス猫が夢中になっているのだが、残念なことに、この黒猫もメスなのだ。

メスからはモテるが、オスからはモテない。

ちょっぴり悲しい黒猫なのであった。


オスからはモテないが、舎弟を希望するオスは後を経たない。

舎弟ランキング戦を開催するほど、慕われている。

でも欲しいのは交尾相手であって、舎弟ではないのだが。



今日の黒猫の目的地は、路地裏のアジトではない。

表にある、人々が行き交う広場の噴水前だ。


黒猫は人間たちにも人気がある。

人間にもモテモテなのだ。

だが欲しいのは……以下略。


噴水の縁に座って待っていれば、黒猫に気がついた人間から近づいてきてくれる。

だが、一つ間違ってはいけないことがある。

黒猫は人間に媚を売っているのではない。

仕事をして、その対価として食べ物を貰っているのだ。

要はギブアンドテイクなのだ。

人間も嬉しい、黒猫も嬉しいwin-winの関係ができている。


さて、人間たちが集まってきた。

噴水の縁に座る黒猫の前に、いつの間にか行列ができていた。


さぁて、仕事の時間だニャ。


尻尾を一振り。

あら不思議。

右手にあった火傷が消えていく。


「あぁ、ありがとうございます!おネコ様!」


「ウニャ(くるしゅうない)」


肉球を額にポン。

あら不思議。

風邪で高熱だった子どもの体温が、元の体温に戻っていく。


「ネコ様ありがとう!」


「ニャア(当然だ)」


そうして長い列が途切れるまで、尻尾フリフリと肉球ポンポンは続いた。


「えぇぇぇぇぇ……マジか……」


黒猫の高性能な耳に、人間の男の声が聞こえた。





――――――


聖女捜索隊の1人であるリアムは、今回の遠征も空振りになったことに、落ち込んでいた。

皆んなが期待して送り出してくれているのに、毎回落胆させる報告しかできていない。

不甲斐ないばかりで、申し訳なくなる。


落ち込んだ気分を変えようと、王都の中を散歩していると、妙にソワソワして何処かに向かっている住人を見かけた。

他にも、怪我で動けない者や、病気で動かしてはいけないだろう者を背負った住民たちが、揃って何処かに向かっている。

ついつい気になって、リアムは後を追ってみた。


ついたのは、中央広場だった。

広場に来た者たちは、噴水前にずらりと並んでいる。

異様な光景だった。

その光景を観察していると、怪我をした者の怪我が治って元気に帰る姿や、病気だった者が元気にはしゃいだ姿で帰っていくのが見えた。

異様どころではない。


もしや、聖女様では?


そう思ったリアムは、最後まで見守ることにした。

最後の1人が帰り、ようやく長い列がなくなった時、そこにいたのは一匹の黒猫。

見たものが信じられない。

でも、これは現実だ。


いやいや、でも……


「えぇぇぇぇぇ……マジか……」


思わず言葉が漏れる。


顔を引き攣らせて黒猫を見ると、目があった。


見られてる。

すごい見られてる。


「ニャーーン!」


黒猫が大きく一声鳴くと、路地の隙間や屋根、至る所から猫たちが集合した。

そして戦利品であろう魚や肉、パンなどを分け合って食べていた。


何あれ、優しい……


ちょっとほっこりする光景を、思わず微笑みながら見守ってしまった。


パンくずすら残さず綺麗に食べ切った猫たちは、それぞれ広場を後にした。

残ったのは、例の黒猫だけ。


その黒猫が、優雅に歩いてこちらにやってきた。

リアムの手前でお座りすると……


『にゃにか、ようかにゃ?』


「うおっ!?しゃ、喋ったぁ!?」


『念話だにゃ。そんにゃことも、知らにゃーのか?』


「あ、失礼しました。」


『で、にゃんにゃ?』


可愛い……じゃない!


「えーっと、つかぬことをお聞きしますが、おネコ様の年齢は?」


『レディに、年齢を聞くものじゃにゃーのだが。にゃーは一歳にゃ。』


「やっぱりー!?見つけたー!?たぶん!」


『うるさいにゃ。』


「すみません。あの、ぜひ一緒に来ていただきたいところが……」


『どこにゃ?』


「大聖堂です。」


『あの金ピカにゃーね。いいにゃよ。特別に抱っこさせてやるにゃ。光栄に思うにゃよ。』


「はい。では、失礼します。」


『にゃかにゃか、うまいにゃね。』


「ありがとうございます!」


そうしてリアムは、推定聖女な黒猫を抱っこして、大聖堂に戻ったのだった。






短めの連載にするつもり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ