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指圧ポーションで魔機人形もみほぐし医療観光

作者: 猫治
掲載日:2025/12/12

そのツボを押す時、異界への門が開かれる。



俺は最近、国が指定する大学で3年以上学んで、ついに指圧師の試験に合格した。これでまた、俺の大好きな場所を生き返らせることができる。


俺は駅から離れた住宅街でマッサージ店を営む家族のもとに生まれた。父と祖父が指圧師で母と祖母がアシスタントだ。地元の評判も良く客足が絶えないお店だった。だが、ある日祖父が病に倒れた。そして、現在闘病中だ。更に、祖父が倒れた翌日に父は交通事故で体が麻痺してしまった。それで指圧師を失ったうちの店は店じまいとなった。そこで、だ。この俺にかわりの指圧師となる使命が生まれたのだ。つまり、白羽の矢が立ったのだ。俺はようやく約束を果たし、家業を継ぐ。


「あら、おかえりなさい。」


母だ。父と祖父が倒れて以来、笑顔を見てないが今日は笑っている。俺はうん、ただいまと返した。


「よかったじゃない。父さんもおじいちゃんも喜んでいたわよ。」


そうか。それは良かった。みんなはお店をやることを求めていると言うことだ。


「ゆびと、明日からお店できそう?」


祖母だ。指人と言うのは俺の名前だ。指圧師一家ぽいだろう?


「もちろん。」


僕は即答した。そうだ。ついにお店を生き返らせることができる。



---

それは大きく黒曜石みたいに滑らかな体で、ひびの間がほんのり光っていて綺麗だった。

顔は仮面のように整っていて、目の赤い光も落ち着いた雰囲気。

背中の石板がゆっくり回っていて、まるで古代の装置を見ているみたいだったよ。

そんなものがうつ伏せになって、誰かを乗せている。巨体の上に人が乗っている。一体何をしているのだろうか。よく見ると、その人は俺と瓜二つだった。




ーーー

そこで途切れ、スマホのアラーム音で我に返った。夢なのか…。まぁ、いいや。


寝室をあとにし、食卓に向かう。食卓にはカツ丼があった。


「朝からヘビィ~…。」


俺は呟いた。朝に揚げ物食えるのは白いご飯の上に唐揚げをのせて食べる人だけだろ!と言うノリツッコミまでも頭によぎった。


「指人。こっちに来なさい。商いとは戦いなのです。この戦いに勝つためなら、私たちはどんなこじつけの願担ぎでもするのだ。」


「おばちゃん…」


「お母さん、そのくらいにして。指人はスマホが友達の超現代っ子だから。昨日だって…」


「やめてぇ~!!」


危ない。俺の一種の暗い歴史のようなものが公開されるところだった。


「温かいうちに食べよ。冷めたら美味しさ激減だから。」


俺は誤魔化すように食事を促した。





ーーー

2階の居住区から降り、一階のあの時のままの店内に入る。この場所に指圧師として入ると不思議と力が沸く。俺が資格を取った時点で営業再開のアナウンスをしたから今日から予約が満パンだ。朝から晩まで働くことになる。


「指人、お店を始めるよ。」


母が閉ざされた入り口に終止符を打った。


「いらっしゃいませ。」


3人で声を合わせていった。復帰後の初めての客は常連だった杉田のおばちゃんだった。いつも祖父を指名していた。


「指人ちゃん、こんなに立派になって…」


目がうるうるしている。だけど、この年にもなってちゃん付けは恥ずかしい。杉田のおばちゃんはこれ、お祝いと一歩さんへのお見舞いねといって祖父に紙袋を渡していた。その後、杉田のおばちゃんには着替えてもらった。その間に俺も準備する…

ここから、始まるんだ。全部。俺の日常が再び!





ーーー

「指人、次で今日最後のお客さんね。」


「了解!」


扉が開く音がした。時刻は午後七時を回り、外気が冷たかった。


「あら、猪飼さんじゃないの。」


祖母が真っ先に反応した。そう、この人は祖父が倒れた時、担当していたお客さんだった。猪飼さんが救急車 を呼んでいなければ、祖父は助からなかったとも言われている。つまりは、大恩がある人だ。俺は疲れを忘れ、再び気合を入れる。


猪飼さんの着替えが終わると、うつ伏せ担ってもらい、施術を開始する。猪飼さんはあの時と同じ十五分コースだ。その半分くらいが終わった頃、一瞬俺の意識が遠のいた。ふらつき咄嗟に猪飼さんの背中のどこかを押してしまった。


ーーーなんだコレ…?


魔法陣のようなものが猪飼さんの背中の上に現れた。それと同時に禍々しい門が瘴気のような気体を出していた。やがて、門が開いた時、俺の意識は遠のいた。






ここは…。硬いな。まるで石の上だ。冷たいし。


「勇者よ、我の願いを聞き届けてくれたこと感謝する。余はホグ帝国の王だ。現在、ホグ帝国は魔王軍の危機にひんしている。どうか、力を貸してほしい。」


なるほど。異世界もののテンプレだな。つまり俺が勇者ってことだよな。


「王。私たちの力でよければお貸しします。」


誰だ。俺の主人公ムーブを奪った奴は!

視点を下ろすと王に跪く制服姿男女がいた。


「そうか。それはありがたい。して、そこのおかしな格好をした者はどうなんだ?」


おかしな格好…?はてな。あなたの着飾った無駄の多い衣装ほど変なものはないと思うけど。

ーーー視線が俺に集まる。


「あのおっさん、あれじゃね?あの、ほら、マッサージの…。」


「あ!ツボ押しの…クスクス…。」


あの餓鬼共…。じゃなくて、俺のことだよな。


「待ってください!!王よ。召喚された勇者様たちを鑑定しました。皆様方、素晴らしい力をお持ちでした。しかし、そこの変な格好のお方は魔法も武術の適性もなく、意味のわからないスキルを持っていました。」


「ハッハハ。何を言うか。まさか、禁術の類ではないであろう。」


「それが…その『ユビツボマッサージ』…?というスキルです。」


なんだそのスキル!!スキルでもなんでもなく俺の仕事じゃねぇ〜か!

高校生が吹き出した。よし、殺そう。アイツラ殺してやる。


「クスクス…。お、王よ…彼は勇者ではなくただこの召喚に巻き込まれてしまった指圧師ではないでしょうか。にしても…ユビツボマッサージとは…」


何が面白いんだか。高校生もまだこういうところはガキだよな。


「王様。どうやら、俺は勇者ではないぽいです。かといって召喚の逆の行為はできないのでしょう。なので、俺は勇者ではなく普通にこの世界で生きていこうと思います。」


「そうか。確かにお主の言っていることは正しい。良かろう。餞別の品をいくつか用意してやろう。」




城から出た。餞別の品はかなり豪華だった。

噴水で王からの品――金貨を確認していると、近くでおっちゃん達の話が聞こえた。


「最近、魔王軍討伐だなんだとか言って軍備を拡張しているが、実は隣国に攻め込むためとかいう噂があるぞ」


……この国、やばいかもしれない。 その夜、銀貨20枚の宿に泊まり、人生初の異世界の夕食を食べて眠った。


--- 朝、一階に降りると宿の女主人が声をかけてきた。


「おはようございます。旅の方ですよね? 北の大通りに“冒険者ギルド”がありますよ。旅なら、あそこが一番安心です」


冒険者ギルド。 テンプレだけど、今の俺には頼もしい場所だ。 礼を言ってギルドに向かった。


--- ギルドの扉を開けると、武器や鎧をつけた冒険者が行き交い、活気が満ちていた。 カウンターの青年に事情を話すと、すぐに二人の冒険者を呼んでくれた。


斧を背負った屈強な男――ガンド。

弓を構えた敏捷そうな女性――セリア。


「俺はガンド。前衛だ」


「セリア。弓と索敵が得意よ」


二人が自己紹介を済ませると、自然と俺に視線が向く。


「で、あんたは? 何ができる?」


「あ、ユビトです。ええと……ツボ押しくらいですかね」


一瞬の沈黙。 ニ人は戸惑い首を傾げた。


「隣国のボア王国を抜け、さらに東のクリン王国に行きたいのです。そこまで護衛をお願いします。」


「兄ちゃん、賢明な判断だぜ。どうもきな臭いからな。」


俺は乾いた笑いで受け流した。 道中、ボア王国へ向かう途中で休息のための村に泊まった。 村人は優しく、焚き火の匂いに少し救われた気がした。


「明日の朝、森に入る。夜は危険だ」


ガンドがそう言い、俺たちは早く寝た。


--- 薄い霧が木々の間を流れる。 セリアは弓に軽く手を添えながら言う。


「この森は、静寂が合図になるの。 鳥の声が途切れたら危険の前触れよ」


ガンドも斧を担ぎながら笑った。


「あんたは無理に戦おうとすんなよ。俺たちが前に出る。」


太陽が頭上に近づいたころ、ガンドが言った。


「昼にするか!」


倒木のそばに座り、セリアが携帯鍋に干し野菜を入れて火にかける。 森にやわらかい香りが広がる。 ガンドが固いパンを二つに割って押し付けた。


「お前の分だ。思いっきり噛め」


「ありがとうございます」


スープが温まると、湯気がふわりと揺れた。 セリアが火を見つめながら俺に聞く。


「ユビト、本当に戦えないの? “ツボ押し”って、どう使うのか興味あるんだけど」


「実際にしてあげましょうか?」


ガンドが豪快に笑う。


「ははっ! いいぞ!」


――その時。 風が、ふっ、と止まった。 セリアが弓に触れ、表情を変える。


「……鳥の声が消えた。何か来るわ」


ガンドは立ち上がり、斧を構える。


「昼飯タイムは終了だ。 俺の後ろに来い、ユビト!」


森の奥で、枝が一本――パキッ、と折れた。 俺は息を呑んだ。 異世界の“本番”は、ここからだと思うんだけどな…。


現れたのは定番モンスター、オークだ。いや、実際会ってみると恐ろしいね。冒険者っていうのは。 オークを赤子の手をひねるように三枚おろしにしちゃうもん。


「終わりだな。」


ガンドは返り血を浴びた顔で振り向いた。これじゃ、どっちがモンスターか、わからない。


「お強いんですね。」


「オークなんざ、雑魚中の雑魚だぞ。こんなのに後れを取っていたら、まともな仕事も貰えん。」


そうなんですかとしか言えなかった。

その夜。俺たちは夕食を済ませたあと、焚き火を囲んでいた。


「で、お前さんのツボ押しとかいうスキルの話だが…」


ガンドが思い出したように言った。オークのせい?おかげで会話が途切れたんだっけ。


「人に施すということは回復系のスキルなのか。俺とセリアは回復魔法が使えないからな、いると助かるのだが。」


「回復魔法といいますか、どちらかと言うとバフに近いと思います。」


「バフか、それはどんなバフなんだ?」


「いろいろありますが、血行促進、疲労解消とかですかね。」


俺がそう言うと二人は吹き出した。戦いに関係ないというレッテルを貼られてしまった。俺は少し我慢できなくなった。


「じぁ、あなたが笑ったスキルの効果をその身に刻んであげますよ。ここにうつ伏せになってください。」


ガンドは俺の迫力に押され、言うことを聞いた。俺の『五分で快眠。癒しのツボ押しコース』をしてやる。 そして、五分後、ガンドは爆睡した。


「嘘でしょ!?」


セリアが驚いている。狙い通り。


「ユビト、私にもやってちょうだい。」


セリアはうつ伏せになり、待っている。女性がこんなに簡単に肌を出していいのかと思うが…。異世界の常識はわからないな。セリアには『超回復・疲労サヨナラコース』だ。


「う〜ん…あぁ〜ぬっ~」


これはあきまへん。大人な雰囲気を醸してますわ。ピンク色の明かりでよくあるBGMが聞こえる。


「ふ〜ん…あ〜ん…ふっふっ…」


これはだめだ。ガンドが嫉妬してしまう。もうやめよう。俺が押すのやめ、立とうとすると…


「もっと…シテ…」


ストライク!バッターアウト!!俺は即撤退した。それぞれガントを起こそう。俺はガントの体をさすって起こす。


「起きてください。」


「なんだ…ユビト。」


ガンドとセリアは俺のツボ押しの効果にびっくりしていた。もう、ベタ褒めだった。悪い気はしないな。


「ところで、ガンドとセリアは初めてだったんですか?マッサージ?」


「俺の故郷では…って…どうしたんですか?」


ガンドとセリアの顔が青ざめている。露骨に後ろを指さしている。なんだと思い振り返ると…


それは大きく黒曜石みたいに滑らかな体で、ひびの間がほんのり光っていて綺麗だった。 顔は仮面のように整っていて、目の赤い光も落ち着いた雰囲気。 背中の石板がゆっくり回っていて、まるで古代の装置だった。



「ユビト、こいつはだめだ…早くに、逃げろ…」


「そうだ、せめて私たちの後ろに…こいつは…こいつは…」


そんなにヤバいのか…。見た目は優しそうなゴーレムさんだけど…。そうあのトラクエに出てくる。漆黒の…。


トラクエとは。

虎とクエストの略。呪いで虎型の亜人となってしまった勇者がクエストをこなし、呪いを解くというスートリーだ。そのエリアボスのひとり漆黒のゴーレム。なかなかの強敵だ。



「ギギギッ…ソコのニンゲン………ワレにもそのマッサージとやらをしてくれ…」


ゴーレムにマッサージ…?そんな事やったことない。壊したら嫌だからお断り…


ゴゴゴッ…


無言の圧力…。セリアとガントが言うことを言うと言わんばかりに首を振る。


「分かりました。うつぶせになれますか…?」


「モチロンだ。」


巨体…三メートルほどだな。その体はゴーレムとは思えない滑らかさで動いている。しかし、漆黒で分かりにくいが、傷が多く、動くたび何がポロポロと落ちる。


「背中に乗ってもいいですか?」


とにかく大きすぎるから乗らないと押せない。


「いいぞ…」


ゴーレムの背中は驚くほど人間のような作りだった。皮膚も再現され、機械ぽさがなくまるで人間を巨大化したようだった。


「じゃ、マッサージをするので痛い場合は言ってください。」


「うむ。」


何だこれ…。硬い。とにかく硬い。岩を押しているようだ。だが、ゴーレムは気持ちよさそうだ。俺の指が持つ限り押してあげよう。




そして…

1時間後…

ゴーレムは就寝した。ゴーレムにも効くマッサージ、これはスキルのおかげなのか。ゴーレムの漆黒の体は艶を増し、新品同然になっていた。俺、すごくね?


「ユビト、これは一体…?」


「さぁ〜?」


「さぁ〜じゃねぇ~んだよ!!!なんで伝説のゴーレムがお前のマッサージを受けるんだよ!?」


「伝説のゴーレム…?」


「あんた、そんなことも知らないの?」


その後、俺はおとぎ話のような不思議な話を聞いた。このゴーレムの正体は英雄でもなく、魔の者でもなく、ただ存在し、歴史の要所、要所で現れる不思議な存在らしい。土地によっては神とあがめられ、ほかの土地では悪魔とも言われる。だが、確実に言えるのは伝説の存在であるということ。


「ガガガッ…ソコのニンゲン、アッパレでアル。」


ゴーレムは握手を求めてきた。その巨大な手は俺の手とは到底つり合わない。が、ジャパニーズスピリットでなんとかした。


「ヨシ。ワレはオマエのジュウマにナッてやろう。」


従魔!?マジか…


「ナニかフマンでも…?」


脅しなだな。全力で首を振る。そして、ゴーレムと従魔契約をし…させられ、仲間となった。


「朝昼晩の、マッサージ、期待しておるぞ。」


従魔になった途端、流暢に話し始めた。スキルを確認すると『以心伝心』というスキルが追加されていた。



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