↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
83/172

閑話② 食べ物の恨み

本日の閑話は、エルバたちの話です!

パルトとアナスタシアとの一戦から数日後。


隠れ家の1つであるアジトの部屋で、スラックは本を読んでいた。


題名は[錬金術によるスキルの構築]。


著者はノブリ=ツヴァイべロス。


200年前に生きたドワーフ族で、錬金術の第一人者として知られる人物だ。


この本はスラックのバイブルであり、心得であり、人生訓であり……聖書のような存在である。


そして、これを読むのは決まって、自分に何か課題を感じた時だった。


スラックは本の文字を目でなぞりながら、あの2人の顔を思い出していた。


エルバと同じ、兎人族のクソうさぎ。


そして、金髪のクソ槍女。


2人の顔を思い出すと、怒りが蘇ってくる。


だが、その怒りはどちらかと言えば、今は自分に向けられていた。


自分はまだまだ弱い。


錬金術も鉄鉱術も、まだまだ鍛錬が足りない。


だから、あんな雑魚どもに負けるのだ。


スラックは苛立ちから座っていた椅子を殴りつけた。



しかし、それよりも何よりもスラックを苛立たせることが起きた。


ドタバタと廊下を走って近づいてくる大きな足音を聞いた途端、スラックは近づいてくるのが誰なのかを理解する。



「スラァァァックゥゥゥ!!!!」



その声を聞いたスラックは眉を顰め、本を閉じた。


同時に激しくドアが開かれて、入ってきたのは白髪の兎人族の娘だった。



「スラァァァックゥゥゥ〜!」


「うるっせぇな!エルバ!」


「そんな怒らないでぇ〜!話を聞いてヨォ〜!」



エルバは目に涙を浮かべながらスラックに飛びついて来たが、スラックはそれを素早くかわす。



「ぎゃっ!!!」



エルバはそのまま本棚へ突っ込んで悲鳴を上げた。



「イタタタ……」



鼻をさすりながらこちらを向くエルバ。



「大丈夫か……?」



スラックがそう声をかけると、エルバは再びスラックに駆け寄った。



「チーズケーキが……チーズケーキがぁぁぁ!」



その手には小さな箱を手に持っていて、空になった中身をこちらに見せながら大泣きしているのだ。


スラックは大きなため息をついた。



「チーズケーキがなんだ!意味がわからん!」


「うぅ……チーズケーキがなくなってたんだヨォ……。せっかく、ゼルケイの街のお菓子屋さんで買って帰ってきたのに……。」



そう言って項垂れるエルバを見て、スラックはトゥウランの街から撤退した後のことを思い出した。


エルバがどうしてもと言うので、仕方なく立ち寄ったゼルケイの街。


チーズが有名だか何だが知らないが、その街でエルバはチーズケーキを買っていた。


どうやら、それのことを言っているらしい。



「あれか……しかし、何でなくなったんだ?」


「わからないヨォ〜。食べようと思って箱を開けたら、空っぽだったんだもん……。」


「……てことは、誰かに食われたんだな。」



スラックの言葉に、エルバは再び項垂れた。



「誰だよ……食べたの……」



エルバの声色が変わる。


それは怒りに満ち溢れた重たい声。



「知らねぇよ。」


「本当に……?スラックが食べたんじゃないの……?」


「俺は食べてねぇ!」



食べてないと断言すると、エルバが突然頭を上げてこちらを見る。


その眼は……マジの眼だった。



「本当に……?本当に本当に本当に本当……?」


「本当だ!俺は絶対に食わん!」


「じゃあ……誰が……?」



そんなこと知るかと言ってやりたいところだったが、今のエルバは突き放すと何をするかわからない。


本当にそんな眼をしている。


ここは一度、話を聞いてやった方が良さそうだ。


そう考えたスラックは、ブツブツと恨みの言葉を溢しているエルバに声をかけた。



「……食べそうな奴は当たってみたのか?」


「まだ……誰かわからないし……」



この組織内で、チーズケーキを食べそうな奴。


そんな奴、エルバ以外にいただろうかと頭を捻るが、ふとピンときた。



「……サヌラは……どうした?」



その言葉にエルバの耳がぴくりと動いた。


この組織でエルバ以外の唯一の女性構成員。


そして、エルバのものを勝手気ままに奪える胆力のある人物。


そんな奴、サヌラしかいないんじゃないか?


スラックはそう思ったのだ。




ゆっくり顔を上げるエルバ。


その眼には殺意がはっきりと見える。



「サァァァヌゥゥゥラァァァァァァ!!」



エルバはすぐに立ち上がり、部屋から飛び出していった。


それを見送ったスラックは椅子に腰掛けると、再びバイブルである書物を開く。



サヌラは今、いないはずだ。


別の案件で出払っているはずだから。


それを知った時、エルバはどうするだろうか。



スラックは大きなため息をつくと、開いた本の文字を目でなぞり始めていた。

食べ物の恨みって、本当に怖いですよね。

チーズケーキ、僕も好きなんですけど、エルバからは取らないようにしないとです笑


今回もご愛読いただきまして、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。