表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱の雑用係をクビになったら、万能補助スキルで王女様たちに奪い合われました ~追放から始まる逆転冒険ライフ~  作者: 斎宮 たまき/斎宮 環


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/30

第26話 公開戦、英雄失脚の罠

 数日後。

 王都の広場に異様な緊張が漂っていた。

 貴族派閥が「真実を証明するための公開戦」を提案し、国王も民の動揺を抑えるために承認せざるを得なかったのだ。


「……公開戦、か」

 俺は城壁の上から広場を見下ろし、深く息をついた。

 民衆はすでに押し寄せ、数千人規模の人波が広がっている。

 その視線は期待と不安に揺れ、英雄と呼ばれる俺を見つめていた。


「狙いは明白ね」

 アリシアが剣を握りしめ、険しい表情で言う。

「民の目の前であなたを陥れる……アランが出てくるわ」


 リリアは眼鏡越しに広場を観察しながら、冷静に告げる。

「罠は二重三重に仕込まれているはず。相手は“英雄失脚”を狙って周到に準備している。……慎重に動かないと」


 ソフィアは両手を胸で組み、祈りのように俺を見つめた。

「けれど……あなたは必ず、真実を示せます。私は信じています」


 その言葉が胸に染み渡り、震える心を支えた。


 ◇


 やがて広場中央に舞台が整えられた。

 司会役を務める老貴族が声を張り上げる。

「王国の未来を担う者は誰か! 英雄か、それともかつての勇者か! 今、ここで明らかにしよう!」


 ざわめきが広がる中、黒い霧が舞い上がった。

 そして現れたのは、闇に堕ちた勇者アラン。

 その赤い瞳が俺を射抜き、冷笑を浮かべる。


「レオン……ようやくこの時が来たな」


 民衆から悲鳴が上がる。

「勇者様が……!」

「いや、あれは……魔族のような姿に……!」


 だがアランは両腕を広げ、声を張った。

「民よ、騙されるな! この男は卑怯な術でお前たちを洗脳している! 俺を闇に追いやったのも、この男だ!」


 怒号が混ざり合い、広場の空気がざわめきで揺れる。

 俺は一歩前に進み、声を張り上げた。

「嘘だ! アラン、自分の選択を他人のせいにするな!」


「黙れぇっ!」

 アランが大剣を振り下ろす。

 黒い瘴気の刃が広場を割り、人々が悲鳴を上げて逃げ惑った。

 俺は即座に光の結界を張り、衝撃から民を守る。


 その光景に、老貴族がわざとらしく叫んだ。

「見よ! 結界を張るふりをして民を混乱させている! やはり英雄など虚像だ!」


 群衆の一部が動揺し、恐怖が怒りへと変わりつつあった。

 ――これは完全に仕組まれた罠だ。


 アリシアが叫ぶ。

「レオン、気を取られるな! あなたが倒れれば、すべて奴らの思うつぼよ!」


 リリアが素早く魔法陣を展開し、周囲の幻術を暴き始める。

「見えた……! 観客に紛れて、貴族派閥の魔術師が幻覚を撒いている!」


 ソフィアは必死に声を張り上げ、群衆に祈りを届ける。

「どうか惑わされないで! レオン殿は真実を守る人です!」


 だが、広場の空気は危うい均衡を保ったまま。

 アランが一歩ずつ近づき、剣を俺に向けた。


「さあ、レオン……民の目の前で、俺に敗れろ。そうすれば英雄の座は俺に戻る!」


 周囲の視線が突き刺さる。

 これ以上逃げられない。

 俺は深く息を吸い、拳を握った。


「――わかった、アラン。ここで決着をつけよう」


 民衆の前、王都の広場を舞台に。

 英雄と呼ばれた雑用係と、闇に堕ちた勇者。

 宿命の決戦が、ついに始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ