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もう一度あなたと


「困ったわ……」


ダイニングテーブルに座りながらお母様が深くため息をついた。


私はダイニングの机を掃除していたが、話に入ると怒られるため、気づかないフリをしてテーブルを拭いていた。

すると、テーブルでフルーツを食べていたお姉様が尋ねた。


「何が困ったの?」


その問いには後からやってきたお父様が追加するように言った。


「凰条家に次に会う日を決めたいと言われてるんだ。まさかここまで気に入ってもらえるなんて……」


お父様も深くため息をつく。


「零、なんとか凰条家の縁談に行ってくれないか?」


「そうよ。この前会って思ったけど、凰条家の権力はかなりのものよ。繋がりがもてればうちの経営も右肩上がりになるはずよ」


「だーかーら!私は行かないって言ったでしょ!?凰条家が大きいのは分かってるけどぉ~派手さがないのよね!ブ男じゃないって言ってたけど、遠目で見ればマシってだけでしょ?あたしは行かないから!」


断固としてお姉様は縁談を受ける気がないようだった。


「はぁ……仕方ない、また澪を出すか。でもこれがどれだけ持つか……」


私は内心嬉しかった。


また凰条さまに会うことが出来る……!


また一緒にお話出来るんだ!

嬉しいけれど、顔に出さないようにしないと。


そう思っていた時、お姉様からの視線を感じた。


「なんか、澪嬉しそうじゃない?」


怪訝な顔を向けられる。


「いえ、決してそんなことは……」


私は口角が上がるのを必死に収めた。


いけない。

お姉様は私が嬉しそうにすると、それを壊そうとしてくるところがある。


表情は見せないで、静かに慎ましく凰条さまにお会いするんだ。



そして凰条さまと約束の日。

鏡の前で、私はそっと頬にパウダーを乗せた。


ほんのりと色づいた頬に、淡いピンクの口紅を添える。


洋服もいつもは買ってもらえないけれど、凰条家に会うのにみすぼらしい格好は出来ないとのことで、零お姉様用に買っていた服をプレゼントしてもらえた。


これから凰条さまに会えるのが楽しみで仕方ない。


心が弾んでいるのも自分で分かった。


「……今日は、なんの話をしよう」


無意識にそう呟いた時、零お姉様が洗面所に入ってきた。


「ちょっといつまで洗面所を使ってるの!?退いてくんない?」

「すみません、お姉様……」


「何浮かれてるのよ、あんたは私の代わりのクセに」

「浮かれてなんて……」


とっさに否定しようとするけれど、それ以上は何も言えなかった。


言わない方がいい。


「お姉様は今日もお出かけになるんですよね」


「そうね、お父様に捕まったら無理やりデートに行かされるし?」


私はその言葉を聞いてほっと息を撫で下した。


もしお姉様の気が変わって凰条さまに会いたいと言い出したら、私は今日彼に会えなくなってしまう。


「……なーんか、気分悪いのよね」

「えっ」


「ううん別に」


お姉様が何かを言っていたけれど、その言葉は聞こえなかった。


準備ができると車の用意もされていた。


「いいのですか?」


私のために出してくれる車なんて今まで一度もない。


「御堂家の人間が送りも無しなんて思われたら恥ずかしいでしょ!仕方なくよ!」


お母様は言った。


そして、車に乗り込むと約束した場所まで向かうことになった。


ドキドキしながら車を降りる。

すると、凰条さまの姿が見えた。


──ドキン。


今日もステキだ……。


佇まいがカッコよくて思わず見とれてしまう。


今日はお父様もお母様もいない席だ。


少しは自分のことも話してみてもいいだろうか。


そんな期待をしながら、話しかけに行こうと足を踏み出した瞬間、誰かが私の手をとった。


「……っ!」


その相手を見て私は目を見開いた。


「零お姉様……どうして」


どうしてここにお姉様がいるの?




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