表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました  作者: cheeery


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/35

ふたりでの生活



それから一通り家の中を見てまわると、一真さんは言った。


「食器とか細かいものはまだそろってないから、次の週末に買いにいってもいいな」


「はい、行きたいです!」


私が頷くと、一真さんは愛おし気に私を見つめ、抱きしめる。


「か、一真さん……?」


「嬉しいものだな。やはり……キミとここで暮らしていけるなんて」


「私もとても幸せです」


「今はまだ仮住まいだから、将来、キミが家を立てたいと思うならそれもいいなと思ってる。その時はふたりの希望に沿った家を建てていこう」


一真さんは優しく微笑んだ。


「はい……」


それから買い物に出かけ、この日の夕飯は私が作ることになった。


「本当にいいのか?無理しなくてもいいんだぞ?今日は新生活のはじまりで疲れもあるかもしれない」


「いえ、私が作りたいんです……今まで一真さんにはしてもらってばかりだったから……」


「そうか、それなら。キミの手料理が食べられるのは楽しみだ」


料理を作りながら、一真さんは私のいるキッチンに立って後ろから作るところを見ていた。


「あ、あの一真さん……座っててテレビ見て待っていてもいいんですよ?」


「澪が作ってくれているのに、じっと待ってるなんて落ち着かない」


「でもずっと見られたら恥ずかしいです」


私は顔を赤く染めて言うと、それならと一真さんは作った料理の洗い物をしてくれた。

キッチンに旦那さんと一緒に立っているなんて夢みたい。


小さな頃に憧れた家族像。

一真さんとなら幸せな家庭を作っていけそうだって分かって希望が溢れてしまう。


「これから澪はどうしたい?」


洗い物をしながら一真さんがたずねる。

私は今まで家の仕事を継ぐという名目で家に閉じ込められ家の手伝いをしてきた。


そんな自分に今できることは少ないかもしれないけれど、一真さんにあやかりっぱなしの生活を送るのは嫌なんだ。


「私も……自分に出来ることを探して働きたいと思っています」


「そうか……」


ずっと自分は何も出来ないと思っていた。


でもその言葉を一真さんが否定してくれた。


出来ないんじゃない。

そう思わされていただけだと。


だったら今から進んでみるのも遅くないんじゃないかと思ったんだ。


「このままだと一真さんに甘えっぱなしになってしまうと思うんです……だから自分もやれることを探していきたい」


「キミはそう言うんじゃないかと思ってた。今までやりたいこともロクにさせてもらえなかっただろう。自分の好きなものを押し殺すことがあったかもしれない。これからは澪が思うように自由にやって欲しいと俺も思ってる」


「一真さん……っ」


ちょうど洗い物が終わったのか、一真さんは水を止めた。


「ちょうどキミに提案しようと思っていたことがあるんだ」


そう言うと、どこかに行ってしまった。


しばらくすると何かの資料を持ってこちらに戻ってくる。


私もちょうど料理がひと段落ついたところで、手を洗うとダイニングテーブルに移動した。


「これは……?」


「今度うちで和服の販売を行うことになっているんだ」


凰条家はメインが自動車なものの色んな会社と提携を結んでいて、様々なジャンルのビジネスに挑戦している。


「和服……ですか」


カタログにはキレイなデザインの和服がたくさん載っていた。


「海外に向けて展開していきたいと考えているんだ。既存の和を感じるものから、流行を取り入れたものまで開発したいと思ってる。庭に植えてあった花を見て思ったが、キミはとても色彩感覚や、センスがいい。だからぜひ意見を聞かせてほしい」


「私なんかがいいんでしょうか?」


「また“なんか”と言ったな」


「あっ」


私は思わず口をつぐんだ。


もうクセになっているのかもしれない。

私なんかと思うのが。


「ご、ごめんなさい」


一真さんに呆れられるんじゃないかと不安になった時、彼は優しい口調で言った。


「俺は澪に頼みたい。澪の意見が欲しい。澪が出来ること、澪にしか出来ないことはたくさんあるはずだ」


まっすぐに迷いなく答えてくれる一真さんに、気持ちが晴れた。


はやくこのクセから抜けないと。そのためにも、私は自分に自信を付けることは必要だ。


「……やらせてください!」


私は元気よく返事をした。


「ああ、よろしく頼む」


それからご飯にしようということになり、広々としたダイニングテーブルに私は作った料理を並べた。


今日の夕飯はハンバーグだ。


「これ、澪が作ったのか!?」


「はい……お口に合うが分かりませんが」


自分の手料理を誰かに食べてもらうのは初めてだった。

毎回料理は、お手伝いさんで私は掃除や洗い物が役割になっていたから。


手を出すと怒られるし、私が作ったものは家族の誰にも食べてもらえなかったから。


美味しいって思ってくれるかな……。


不安になる。

一真さんに変な料理を食べさせるわけにもいかないし……。


ふたりでイスに座ると、一真さんは丁寧に手を合わせた。


「いただきます」


一真さんがそう告げると、スープをひと口すくって、口に運ぶ。


「ポタージュか、美味しい……」


ジャガイモをつぶして、作ったポタージュ。

一真さんは感心するようにつぶやいた。


良かった……。


そしてサラダを食べた後にすぐにメインのハンバーグを口にする。


すると彼が嬉しそうに微笑んだ。


「こんな料理が食べられるなんて幸せだな」

「それは言い過ぎです……一真さん」


「そんなこともないぞ?キミは料理も出来るんだな」


「初めてです……人に振舞ったのは……最初に振舞ったのが一真さんで良かった」


だって一番食べて欲しいと思う人だから。

一真さんはそれからも「美味しい」と言いながら綺麗に完食してくれた。


「あの、もし良かったら……一真さんがお仕事の日も作らせていただけませんか?」


さっきの和服のプロデュースは最初は家でオンラインで出来る仕事だと聞いた。


それならきっと時間もあるし、また一真さんの喜ぶ顔が見られるなら、私はすごく嬉しい。


「帰ってきたら、澪の作る料理が待ってるなんて俺はかなり贅沢だな。早く帰りたくなってしまうかもしれない」


「ふふ……作って欲しいものがあったら言ってくださいね」


「ありがとう、澪。キミと出会えて良かった」


一真さんはそう言うと、ちゅっと私のおでこにキスを落とした。


それから洗い物をしようと立ち上がったけれど、一真さんは私にソファーで休むようにと言って聞いてくれなかった。


「一真さんにさらせるなんて出来ません」


「これくらいはやらせてくれ。美味しい食事を振舞ってもらったんだ。当然のことだよ」


「ありがとうございます」


それから一真さんは洗い物だけじゃなくハーブティーを入れてくれた。


ふたりでそれを飲みながら、また話をして笑って。

たくさん、ふたりきりの時間を楽しんだ。


こんな幸せな時間が毎日続くんだ。


毎日幸せを感じて……私ってすごく贅沢な存在なんじゃないかと思った。



それから私たちはお風呂に入ることにした。



一真さんが先に入っていいと言ってくれて、私は寝室で一真さんが出てくるのを待っていた。


バスルームの扉の向こうから、シャワーの音が静かに響いている。

私は、乾かしたばかりの髪を指で梳きながら、ふかふかのベッドの端にちょこんと座る。


広々とした寝室は、柔らかな間接照明に照らされている。


落ち着かない。

今日……はじめて家で一真さんとふたりきりで過ごす夜になる。


一真さんは……今日の夜。

その……夜のことをするつもりなんだろうか。


この間、ホテルに泊まった時、一真さんは準備ができるまで待つと言ってくれた。


あの日はその言葉にあやかって、一緒に寝るだけで終わってしまったけど、今日はいわゆる初夜と言われる日。


一般的にはそういう行為があるのが普通なのよね……?


自然と頬が熱を帯び、シーツをぎゅっと握る。


心臓がドキドキしてる……。


――ガチャ


すると寝室のドアが開いた。


思わず顔を上げると、まだ少し濡れている髪をタオルで拭きながら、一真さんが寝室へと入ってきた。


白いシャツに黒のパンツというラフな格好。

それなのに、Tシャツから見える立派な筋肉からか、普段よりも色気を感じてしまう。


一真さん、なにを着ててもカッコイイ……。


「退屈じゃなかったか?」

「い、いえ……!」


思わず背筋を伸ばし、ぎこちなく微笑む。

一真さんはそんな私の様子に気づいたのか、クスッと小さく笑った。


「緊張してるのか?」

「そ、そんなこと……」


言いかけて、視線を彷徨わせる。

意識しないようにしようと思っていたのに、どうしても意識してしまった。


「澪」


不意に名前を呼ばれて顔をあげると、一真さんからのキスが降ってくる。


「んっ……」


肩にかかる髪をそっと指でなぞられ、その指先の熱に、心臓が大きく跳ねた。


「一真さん……」


好きだ。

一真さんのことが大好き……。


お互いに見つめ合うと、一真さんは照れたように目を逸らした。


「このままじゃやめてやれそうにもなくなる。タオルを置いてくるよ」


一真さんの言葉に今日も彼は私との行為を待とうとしてくれたことが分かった。


背中を向けて、部屋を出て行こうとする一真さん。


「ま、待って……」


私は慌てて彼の手をとった。


「澪……?」


「わ、わたし……もう準備は出来てます」


だんだんと小さくなっていく声。

声が震えているのが自分でも分かった。


その震えを聞いてなのか一真さんは優しく頭を撫でた後、私を落ちつかせるように言う。


「頑張ろうとしなくていい」


一真さんの優しさが嬉しい。

でも今日は……。


「あ、あの……私……一真さんと、シたいです……」

「澪!?」


まさか私の口からそんな言葉が飛び出すとは思っていなかったのか一真さんは目を丸めた。


「ご、ごめんなさい……はしたない事を……」


焦ってすぐに謝ると、テンパっている私に優しく声色で尋ねる一真さん。


「本心か?」


私はこくりと頷いた。


「……それは可愛すぎるな」


一真さんは困ったようにつぶやくと、ゆっくりと私をベッドに押し倒した。


向かい合って、バクバクと音を立てる心臓。

すぐに彼が私の耳元で名前を呼ぶ。


「澪……愛してる」

「私もです……」


返事を聞くとすぐにキスが落ちてきた。


一真さんの唇が、そっと触れ優しいキスをする。


「ん……」


それを数回繰り返すと、一真さんは唇を離しふわりと微笑んだ。


「……嫌じゃないか?」


その囁くような声に、私は小さく首を横に振る。


嫌なはずがない。

むしろ、もっと……私も一真さんのことが知りたい。


そんな風に思った瞬間、もう一度唇が重なった。


先ほどよりも深く、甘いキス。


「……んっ……」


熱を帯びた温もりが、じわじわと唇から全身へと広がっていく。

最初は触れるだけのキスが次第に深くなって思考を溶かしていく。


「はぁ……っ、は」


頭がクラクラする。

キスってこんなに気持ちいいものなんだ。


酸素を取り込むのがやっとで、口を開いてもすぐにまたキスで埋め尽くされてしまう。


「……はっ、ふ」


触れるたびに胸が高鳴ってくすぐったいような、心地よい痺れが背筋を走った。


それから一真さんはゆっくりと私の服を脱がせた。


「澪……」


低く甘い声が耳をくすぐり、私の心をさらにかき乱す。


優しい愛撫に何度も伝えてくれる好きだという言葉。

その全部が思考をドロドロに溶かされるくらい、気持ちがよくて、酔いしれて、愛おしくて……私は、目の前の快楽に身を委ねた──。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ