屈辱のデート【御堂零side】
澪と入れ替わった私は、ショッピングモールの入口付近で、凰条一真を見つけて駆け寄った。
服も澪が着ていたものを脱がせて私が着た。
そしてメイクも限りなく澪に似せた。ぱっと見て私たちの違いが分かる人はいないだろう。凰条一真を見つけて駆け寄っていく。
「お待たせしました」
声色も昔から似ていると言われていた。
声だけだとお母様とお父様は区別がつかないくらいだ。
口調も、仕草も、歩き方も、ほぼ違和感がない。
凰条一真は、ごく自然に微笑んだ。
「大丈夫だ」
今日この日がやってくるまで、私たちは凰条家の周辺を見張っていた。
澪と凰条一真が同時に出かけた時が合図だった。
私たちの車であとをつけて、作戦を実行する。
まさか家を見に行くとは思わなくて驚いたけれど、チャンスはいくつもあった。
その中で人があまりいないインテリアショップで作戦を実行することにした。
チャンスは一度きり、失敗はできない。
「お腹も空いてきただろう。さっき言ってたレストランで食事でもしようか?」
こんなふうに凰条一真に笑顔を向けられたことはない。
いつも厳しい目つきで見下ろすような視線を向けられるだけ。
澪にはこんな優しい顔を向けるんだと思うと苛立った。
なんであいつの方が優遇されないといけないの。
ああ、腹が立つ。
私が優遇されて当然なのに。
そう考えていて、はっと我にかえった。
いけないわ。澪になりきらなくちゃ。
私は澪の柔らかい雰囲気を意識しながら、ふんわりと微笑んだ。
「あの……一真さん!私、行ってみたいところがあるんです」
「どこだ?」
「BARに行ってみたくて……」
私が伝えると、凰条一真は少し意外そうな表情を浮かべた。
「……キミがBARに行きたいなんて珍しいな」
一瞬、私の中に焦りがよぎる。
「違う雰囲気を味わってみたくて……それに一真さんと一緒になるにはお酒も飲めた方がいいかなと」
「無理する必要はないよ。でもキミが行きたいと言うなら車を停めて行こうか」
「はい……!」
私は頬を赤らめるような表情を作り、照れたように笑った。
こうして凰条一真はまんまと騙されてくれたようだった。
よし、これで計画通り。
このまま凰条一真を酔わせてホテルに誘い出す。
そして既成事実を作ってしまえば、澪はもう戻れない。心の中でニヤリと笑みを浮かべながら、私は凰条一真の腕にそっと触れた。
「行きましょう」




