表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

寒がりの短編集

朝との別離

作者: 寒がり

 思いがけず淡い光でふと目を覚ますと、虫の鳴いているような朝が好い。


 大気はほんの少し冷たく、すがすがしい。

 自分が誰で、ここがどこで、今日がいつで。そんな事を思い出すまでの、真っ白で透き通った時間が好きだ。


 溶けている。私は、依然、このひんやりとした空気の中に拡散してふわふわと。

 夢が続いているような、ゆっくりと大気を沈み続けているような感覚。


 もう少しこうしていたい。

 大丈夫。朝はまだある。


 虫の声、ひんやりとした空気、淡い光。


 だが、鳥が鳴き始めた。意識が幾分はっきりとしてくる。


 朝の空気に溶けていたものは今度こそ凝集し、析出し、そして私になる。

 指先と指先が離れるように、朝と私は断絶した。


 今や私は他でもない私だ。私は過不足なく私に閉じ込められ、身体は重力を受けて随分重たい。


 私が確固たる私である事が、こういう朝には少しだけ寂しい。

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ