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プロローグ

2010年 7月 執筆

 倉庫と工場の間を川が流れていく。蒸し暑い機械音が、砂ぼこりで(かす)んだファミリーレストランの壁に反響して、その嫌悪感を増幅させていた。


 トラックから吐き出される排気ガスが、耳障りなディーゼル音に拡散されて、夏の暑さを引き上げた。

 一九八五年。埼玉県戸田市に支店を置く運送会社で私は働いていた。たったの一年半だけだったけれど、人生の勉強をした。多くのものを失うかわりに、多くの経験を得ることができた。


 あの時は、「そんな不条理はあるはずはない」とコーラの空き缶を蹴りあげた。


 いまは、「そんな不条理は、社会にはゴロゴロしている」と、ビールジョッキをかたむける。


 あの時は、「この土地は都心で暮らす奴らの植民地のようだ」とホンダCR―Zのアクセルを踏み込んで、新大宮バイパスを走り抜けた。


 いまは、「この土地で暮らすことが、自然なのかな」とミニバンの窓を全開にして、荒川沿いで子供と(たわむ)れている。



 あれから、二十五年。魂は八月の積乱雲のように私の鼓動を静かに、そして大きく震わせている。



つづく

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