第二十話 対照的存在
よろしくお願いします
私とイオキの関係、それはお兄ちゃん達とはまた違う、いや一段階上の仲であった。
しかしそれがずっと続くであろうとは私は思っていなかった。
がしかしこんなにも早く私とのお別れが来るとはこの小さな私は思っていなかったのだった。
「アイカお姉ちゃん、笑顔になった!」
と、イオキは子供らしいニカッとしたまるで太陽のような笑顔で私に向かってそう言った。
その笑顔は多分、大人は絶対に出来ないであろう何も濁りのない純粋な笑顔だった。
「そりゃ!イオキったら、お兄ちゃんに怒って、逆に泣かされて帰ってくるんだもん!嫌でも笑っちゃうよ!」
と、私はまた思い出し笑いをしながらイオキに言う。
「私!そんな変なことしてないもん!」
そう言ってイオキは頬っぺたをぷくっと膨らましてそう言う。
「ごめんって!イオキは何も変なことしてない!私を庇ってくれたんだよね?」
と言って私はイオキの目線に合わせてそう言うと、イオキはまたあの笑い顔をして機嫌を直す。
なんとも単純と、私はまた違う意味で笑いそうになる。
「やっぱり!笑顔になった!」
と、イオキも喜んでいたその時、イオキを呼ぶ声がした。
「どうしたのかなぁ、お兄ちゃん、イオキを呼んで、、」
イオキは私以上に不思議な顔をしていた。
「イオキ、主人がお前《達》を呼べと」
え?なんでイオキを?
「なんで?なんでイオキが呼ばれるの?」
と私は必死になってお兄ちゃんに聞く。
「イオキだけじゃないエイカもアイツらも」
そのイオキだけじゃなくエイカもと私は聞き、さらに疑問が増える。
なんでエイカも?
エイカはイオキの次くらいに私と仲のいい少女だった。
彼女はイオキとは違い私と同類、つまり主人のお気に入りで、みんなの輪から少し離れている存在だ。
しかし私とは少し違いエイカはそれに気づいていないし、皆も彼女に気付かれない程度に、距離を置いているのだった。
ある意味、それに気づくときになったら一番辛い。
「え、なんで?なんで?」
と私は更にお兄ちゃんに聞き詰める。
「お、俺にもわかんねぇよ、俺はただ呼べと言われただけで、それも主人から直接言われたわけじゃねぇ、だから俺にも、全くわかんねぇんだよ!ごめんな?アイカ」
と、このお兄ちゃんは私に何故か気を遣ってそう謝りながらそう言う。
このお兄ちゃんは優しい方のお兄ちゃんだ。なので私も話しかけやすかった。
「うん、ごめん私こそ、きっと!たいしたことないよ!」
と私はお兄ちゃんに気を遣わせるので謝って笑った。
そしてイオキは、トボトボと下を向いてたまにチラチラと私の方を向いて行く、
それとは対照的にエイカはお兄ちゃん達に手を繋いでもらって一方的に話をしながら向かっていく。
そして最後に私の方を向く。
「行ってくる」
と、笑顔で彼女はそう言った。
いや、エイカは私に言ったのではない、私達全員に言ったのだった。
そう、彼女は私たち全員が大好きなのだ。
その二人の小さな背中は、まるで生と負(生と死)を見ているように対照的だった。
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