第二話 俺が俺を認めるまで
よろしくお願いします
「えっ?確か俺は田中と遊んでて、マッサージ機で寝てて、てかマッサージ機は?」
「なんでオレ草原に座ってんの?」
「えっ?マジでここどこ?どうなってんのぉぉ?」
「はっ、まさか異世界転生?」
転生転移、それはフィクションであって、この世には存在しないもの、架空のものだと俺はずっと今までそう思っていた。世の中には異世界から帰ってきたと言っている奴もいたが、それは大抵は嘘であると俺はずっと決めつけていた。こんなことは起こり得ない、起こらない、起こってはならないのだ。
でも一概に否定ばかりは出来ないというのもまた、事実である。
そう、この世の中には神隠しなどと言う言葉があるし、そして年に何百もの人が行方不明になっているというのもまた事実、それが全て異世界に来ていたとしたら?
考えると恐ろしい。
いや、そんなことはありえない、あってはならないはず、、なのに、俺の目の前には知らない景色、、
「いや、ありえん。やはりこれは夢だ。妙にリアルな夢だ。」
と俺は夢から覚めるために、頬をつねるが、じんわりとした痛みを感じる。
「こんなこと起こり得ない。」
と、俺が言った瞬間に、俺の中で今までの思い出が噴き出してくる。
友達
親
そして、
「俺を返してくれよ!夢なら早く覚めてくれ!俺は俺はまだ、、」
と俺は地面に頭をこすりつけた。
「はぁ、はぁ」
地面はもう、草が剥げて、土がもろに出ている。
頭上から青臭い臭いがし、手で払うと
パラパラと砂交じりの草が落ちてくる。
それを見て、俺はこんなことしてても何も変わらないと気づき立ち上がる。
「夢を、夢から醒めなければ」
夢だとは思うけれど、もしものために身を守らなければ、嫌な予感がする。
「とりま、探索しよう。その前に準備だ。」
俺は、パーカーのフードを被り紐を最大限に絞り、目だけのぞかせる。
そしてそのまま地面に寝転びゴロゴロと体をこすりつけた。
「よし、これで多少は迷彩っぽくなるだろう」
おどおどと周りを警戒しながら、まるで泥棒かのように歩く。
周りは草原で、隠れる場所もないし、身を守るようなものはない。
「これ、絶対に敵か何かが来たら死ぬな、俺」
でも、夢、夢なら死んでも、、いや、やっぱ痛いのかな?
なんて考えながらオドオドコソコソと進んでいく。
そして途中で俺はとんでもないことをしたと気づく。
こういう場合、歩いてきた道に印をつけといた方が良かったのでは?と。
そこから俺は、ウエストポーチの中から大量に小銭の入ったお財布を取り出し中に1円玉があるか確認する。目が片方しか出てないので確認しにくい。
「良かった、おじいちゃんから一円玉沢山貰っといて。おじいちゃん、ありがとう!」
と俺はおじいちゃんに感謝をして、2メートルおきくらいに1円玉を置きながら歩いていく。
ただ、今さら置きながら行っても最初の場所は分からないのだけれども。
にしても、とても罰当たり的なことをしているような、、たしか、1円玉でも捨てたら犯罪になった気もしなくもないけど、、まぁ、そこはそこは緊急事態だから、大丈夫なのかな?
とりあえず、このまま
と俺は、置きながら進んでいく、そして同時に地面を足で掘りながら進んでいくことにした。
1円玉よりも、そちらの方が目印になりそうだ。
だったら一円玉は置かなくてもいいんじゃないかって話だけど、まぁ、一応念には念をということだ。
そろそろ1円玉も無くなってきたと思っていた頃、何やら遠くに、物体が見えた。
あれは、、岩?
「あそこなら何かありそうだなぁ」
と俺はそちら側に進路を変更して、更に進んでいく。
「あれ?、何かあの岩さっきよりも遠くなった?」
更に進んでいって、(あれ)が、岩ではないことが分かった。
「あれは、生き物だ!」
俺は少し早足でそちらへと向かっていく、その際もお金と足で目印は忘れないようにした。
「羊?いや、ツノが4本ある、一体これはなんなんだ?」
襲ってはこないが、、敵ではない?
と思ったところで、その羊は猛スピードで走っていく。
「っ!ちょ!?」
羊が急に走ったので俺は反応が遅れ、羊に着いて行けなかった。それとお金などを置きながらだったので追いつけなかった。
「ちっ!撒かれたか」
と俺は珍しく怒りを露あらわにする。
思い返せば俺は、ひと前では怒れなかったのかも知れない。一人の時は俺は怒れるのに何故か人前では怒りを隠してしまう癖がある。それは今まで癖であって、怒れない訳ではないと思っていたのだが、それは違ったようだ。こんな状況で俺は俺という人間がどのような人間なのか、自分について少し知れたのだった。
「はぁ、それにしても、もっとしなくちゃならないことがあるだろうに」
さっきの羊は一体なんなのだろうか。羊と思っていたが、ありえないくらい角があったし、
あれは羊に似た何か、もしや新種⁉
そしたら新聞か何かに取り上げられて!
「うへは」
田中達にも自慢ができる!あの子にも!
俺はいつのまにか、この世界が現実であるかのように思っていた。
「そんな生き物、現実にいてたまるか!」
と自分に言い聞かせる。
「続きだ、続き。夢か異世界か知らんけど。」
と俺はまたお金と足で印をつけながら歩くというのを始める。
しばらく歩いていると突然地面が揺れるような感覚がした。
今さっき置いた1円玉を見ると微かに、揺れている。
「な!?何事!?地震?」
と俺は言いながら、辺りを見渡す。
すると遠くの方からこちらへ土煙が近づいてきている。
「な!?なんだあれ、、」
とにかく、あれはやばいということは、分かった。
あれに近づいたら確実に俺は死んでしまう。
いくら夢と言ったって死ぬのは嫌だ。
これからどうなるか分からない恐怖に呑み込まれそうになりながら俺は、
お金を置くのをやめ、全速力で、その土煙と逆の方向へと逃げる。
「やばい!やばい!なんなんだよあれ!怖すぎだろ、悪夢にも程があるって!」
この悪夢を見ているのはマッサージ機に当たりながら寝たのが原因か?
セグウェイで頭を打ったのが原因か?
「とにかく今は」
逃げることだけを考えないと!
俺の足音がきこえないくらいの音でその土煙は近づいてくる。
しかも段々と音が大きくなっている!
「ヤバい!ヤバい!やばいってぇ!」
走りながら俺は後ろを振り返ると、土煙の正体が分かった。
さっきの羊だ!ぁ
今さっきの羊が大量に群れをなしてこちらに向かって来る。
「く!る!なぁ!!!」
と俺は言いながら走り続ける。
いくら正体が分かったって、今さっきと状況は全く変わってない。
兎に角あの羊の大群をどうにかしなければならない。
このまま走っていても逃げ切れない。
この状況を打開できる一手を考えなければ。
考えろ
考えろ
考えろ
「そうだ、フェィントだ!」
俺はその場に止まり、大量の羊の方を向く。
緩みかかっていたパーカーのフードを一気にはずす。
「さぁ!かかってこいヤァ!!」
と俺は、羊にむかって両手、両足を広げて自分を大きく見せて言った。
内心はものすごくドキドキしながら羊達がやってくるのを待つ。
めちゃくちゃ角があって滅茶苦茶怖い。
その地響きと共に俺の鼓動が速くなるのを感じながら俺は最後まで、ギリギリまで待つ。
そしてギリギリまで近づいてきた時に、俺は真横に向かって全速力で走った。
「成功ダァ」
見事、羊達はスピードに耐えきれず、まっすぐ進んでいく、そして俺だけは横に向かって走ったから、そのまま走ったら羊達を撒ける。
今その戦法が成功したのだった。
「やるじゃん!俺!」
と俺はその綺麗な空に向かって言うのだった。
ありがとうございます!
言い忘れましたが、最初の方は修正版しかなかったので途中までは修正版で急に原作版へと切り替わりますがご了承ください