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1.巨人ブロス

ブランデンブルク冒険者ギルド「北方辺境支部」ギルド長カーク・ヴァグワルは、新しく発生したダンジョンの討伐依頼に参加して無事帰還したS級冒険者パーティ「巨人兄弟」を出迎えた。


「よぉ、お疲れさん。アルス。昨日の祝典出なかったらしいじゃねぇか。」


ダンジョンボス討伐に成功しダンジョンが消失され、一人の犠牲者も出なかった時は、領主が屋敷を開放して、祝典という名の飲み放題祭りを行う。


「誰が行くかよ、けったくそ悪りぃ。」

アルスはギリギリと歯を剥きガルルルとうなる。


ギルドの天井スレスレの、巨人族の血を引く大きな体で、アルスは禿頭をぐっとカークに近付けている。


「領主の息子にラストアタックボーナス横取りされたんで兄貴激おこっす。討伐中も飛んだり跳ねたり邪魔だったっす。」

アルスより頭ひとつ大きいロペスが、背を丸めている。

「あのピコピコ野郎。わざと最後邪魔しやがって、ぜってー許さねぇ。」


ダンジョンボスのラストアタックボーナスには、二分の一の確率でレアアイテムドロップが付くので人気が高い。しかもドロップされたかどうかパーティ表示されないので、自己申告を信じる他ないのである。


「しょうがないよ。彼、レベルも低いみたいだしドロップ確率は二分の一より更に低いだろうからね。本当に何も出なかったんじゃないかな。」

アルスやロペスの膝あたりに顔がある、小さなブロスが、アルスの膝を撫で撫でしている。慰めて、いる?


「俺がぶっ倒してりゃあ必ずもぎ取ってやったのに!」

「そりゃ災難だったな。」

憤慨するアルスの横から、背伸びしたブロスが討伐依頼書をカークに渡し、カークが終了印を押し、ブロスに返す。


「この後はピフのとこか?」

カークが受付より下にいるブロスを覗き込む。

「はい。ピフにお土産もあるので、ランチも買ってってゆっくりするつもりです。」

ぺこりと頭を下げて受付を離れるブロス。


「俺はロペスと飲み屋に行ってるぜ。しっかし、スライムなんかと仲良くして何が楽しいんだか、、。」

「じゃあな、ブロス。ピフによろしくな。」

「うん。あんまり飲み過ぎないでね。」

アルスとロペスは飲み屋街へ。ブロスは逆方向へと別れた。


ブロスが一人で歩いていると誰も彼もが巨人兄弟であると気付かない。


「よーお、ちびっこぉ。いい装備持ってんじゃねーか。」

なのでよく絡まれる。


細っこいチンピラ二人組である。細っこいチンピラ二人組でも小さなブロスなら勝てると思い込んでのそれである。


しかしブロスは、腐っても巨人。いや、失礼。


小さくても巨人。


握力は六百。ちな、アルスは一トン超えである。


「まだ僕の装備欲しい?」

「い、り、ましぇ、、ん、、」

なのでボッコボコにぶちのめされた細っこチンピラ二人組を尻目にブロスは無傷で歩き出す。


耳の下まで伸びた茶髪は軽い天然パーマでクルクルと可愛いくて、桃花眼のぱっちりとした瞳はサクランボのように赤い唇と同じ色。


こんな、少女のように愛らしい少年が、無表情でチンピラ二人組をボッコボコにする様を、周りの通行人はしっかりと見ていたにも関わらず、少年が歩き去ると、何事もなかったかのように動き出した。勝手に倒れているチンピラ二人組の図である。

「だ、れか、た、すけ、、」

息も絶え絶えに助けを求める彼等を視界に入れる者はいない。


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