ヲタッキーズ35 盗まれた魔法爆弾
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"が秋葉原の平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第35話"盗まれた魔法爆弾"。さて、今回は魔法庁が輸送中の核廃棄物が白昼堂々と強奪されます。
事件の裏に闇の魔法復活を狙う陰謀があると見抜くヲタッキーズですが、無敵の必殺技が異次元人に破られてしまい…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 消えたトレーラー
松住町架道橋の近くには、24時間営業のファミレスがあって、御成街道を逝くトラック野郎達のちょっとした憩いの場となっている。
「せっかく秋葉原に来たンだ。タマには"おかえりなさいませ御主人様"ってのに、行ってみないか」
「こんな真夜中に開いてる御屋敷ナンかあるか。ソレにこのコロナときちゃ、スク水や彼シャツなんて拝めるハズもねぇ」
「え。今時のメイドって、そんなサービスもやってんの?!」
聞くのも恥ずかしい会話が大声で飛び交うw
「どーせGPSで見張られてる身だ。ハデにやってやろーぜ!」
「でも、そろそろ下りが混みだす時間だ。先にトレーラーを出しておく」
「そうか。街道に出たトコロで待っててくれ」
ファミレスの階下は駐車場になっており、男は会計を済ませ大型トレーラーに乗り込む。
狭い駐車場から公道へと器用にトレーラーが出る光景はマルで蛇が巣から出るみたいだ。
「マレイは?」
「お前がトイレに行ってる間に先に出た。街道で待ってる」
「すまん。追いかけよう」
ところが、残るふたりが乗り込む軽機動車はエンジンをかけるやエンストでつんのめるw
「まったく!おい、トーキーを貸せ…マレイ!先導車が故障した。そこで待て」
「…」
「マレイ!どーした?大丈夫か?返事をしろ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
キッチリ240分後、サイレンを鳴らしたパトカーが御成街道架道橋の下へ続々と集結スル。
「万世橋警察署ラギィ警部ょ。責任者は?」
「私。魔法庁のラミル」
「魔法庁?アンタ、魔女?で、何しに来たのょ?コッチは、核廃棄物ジャックって聞かされてルンだけど」
いぶかりながらも事情聴取を始めるラギィ。
魔女?のラミルは、何も答えズついて来るw
先ず先導車の運転手から事情聴取。
「トレーラーが消えたのは?」
「4時間前」
「え。何で通報が遅いのょ!探す気あンの?」
ココでラミルが割って入る。あ、彼女は黒のライダースーツで…魔女的コスプレはナシ←
「核廃棄物の管轄は原子力規制協議会だから警察へ通報の義務はないわ」
「で、盗まれた途端に警察の"管轄"になるンじゃない!」
「未だ盗まれたとは…」
「放射性物質でしょ?秋葉原のヲタクへの警告は済んでるの?」
「ソンなコトをしたらパニックになるわ。トラックを見つける方が先ょ。場所がわかれば避難もしやすいハズ」
ソコヘ同じく黒いライダースーツ女子がやって来てコレ見よガシにラミルに耳打ちスル。
「審議官、ニューロリアンからです」
「ラブホの名前みたいだけど、核廃棄物の隔離プラントのコトだからwちょっと失礼」
「勝手にして」
ケータイしながら席を外すラミル。
警備の制服組が大きく舌打ちスル。
「警部、魔法庁は核廃棄物が消えたのを隠蔽スル気ですょ?」
「そして、内密に処理して自分の手柄にするワケね。魔女って利己的だわ」
「でも、1つ間違えれば大ゴトだ。警部、魔女の宅急便、じゃなかった、巻添えは勘弁ですょ」
ラミルが戻って来る。
「消えた核廃棄物は、魔法庁の所管で極秘に輸送中だった。付近の封鎖が終わったのは、失踪の約40分後」
「遅くね?ヤル気あンの?」
「首都高の検問で捕まるカモしれない」
「捕まらないカモしれない。ソレに積み荷を移し変えてたら?」
「ソレはナイと確信してる」
「信じる女はダマされる」
「移せば放射能が漏れる。現時点で空間線量の検出値はND」
「ねぇ。何で魔法庁が核廃棄物ナンか輸送してンの?本業で食べて行けないから原子力発電を始めたとか?」
「秘密保持レベルの低い貴女には、何も話せナイわ」
「何ソレ!その核廃棄物って輸送容器に入ってれば安全ナンでしょうね?警察にも知る権利がアルんだけど」
「輸送用の密閉容器は、安全基準を満たしてる…でも、必ずしも安全とは言い切れない」
「出たぁ!安全神話の崩壊って奴?で、実際のトコロ、放射能漏れってアルの?ナイの?」
「仮にあっても安全なレベル。とにかく!放置されれば危険なの。そもそも世の中、絶対に安全ナンて存在しないし」
「…仮にコレが核ジャックだとして、犯人の目的は?」
ラミルは表情ひとつ変えずケロッと答える。
「恐らく…汚染爆弾」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻のジャドー司令部。
ジャドーは"リアルの裂け目"から落ちコボれた異次元人からアキバを守る秘密組織だ。
その司令部は、パーツ通りの、とあるゲーセンの地下深く秘密裡に作られ、日夜敢然と…
「重力子ゼロモードになってK分のM3乗…
と言う事は、まさに予測範囲内ね」
「良かった。恩に着るょ」
「あ、待って!」
「え。ヤメてくれょ?」
「いやン。ちょっち待ってょ」
司令部のダマヤ分析官が示す方程式を一緒に検証スルのはヲタッキーズ科学顧問ルイナ。
あ、ヲタッキーズはスーパーヒロイングループでジャドーと契約してる民間軍事会社だ。
「どうしたんだ?ねぇ何を考えてンの?」
「マズいわ。この1行が根拠レス。方程式全体が無意味になるっ!」
「何てこった!冗談だろ?」
「YES。冗談でした」←
「ヒドい!脅かすなよっ!学会発表前でウルトラナーバスになってンだw」
「ごめんなさい。でも、貴方って必ず引っかかるから面白くて」
「ソレがわかっててカラカッてるのか!」
…とか何とかイチャイチャやってると、レイカ司令官がアタフタと司令部にやって来るw
華麗なコスモルックに身を包む彼女は、沈着冷静な性格で…最近ゲイをカミングアウト←
「邪魔するわ。問題発生ょ」
「じゃあ私は…」
「あ、ルナレ。貴女にも聞いてほしいの。セシウム137ナンだけど」
「セシウム137?ウランの核分裂で生じる副産物で半減期は約30年ょね?」
「YES。ココから先は内密にお願い。OK?」
「もちろん」
「実は、輸送中に3缶、盗まれちゃって」
「え。誰か放射線、浴びちゃった?」
「とりあえず、未だ誰も」
「良かったわ」
「でも、もし浴びたらどうなるの?」
「放射線の中で浴びちゃいけないのは高エネルギーの電離放射線。まぁ弱い放射線自体は、電気製品なら、どれも出してるの。スマホ、パソコン画面、電球…」
「じゃ私達って放射線を浴びまくりじゃない?」
「YES。そもそも人類が生まれる前から地球は放射線の星ょ。で、どうして電離放射線が有害かと言うと、原子から電子を弾き出すからなの。ホラ、普通は電子って原子の周りの軌道をグルグル回ってるじゃない?」
「太陽系みたいに?」
「概ねYES。でも、高レベルの電離放射線を浴びると電子が離れてしまうのょ。すると、その原子は他の原子との結合を保てなくなる。ソレが、体内で連鎖的に起きたら、もぉ大変ょ。電子を失った原子は、分子を作れない。ホラ、DNAって長い鎖状の分子ナンだけど、細胞機能に影響してDNA鎖が突然変異を起こすワケ」
「ガンね?」
「ソレもアル。とにかく、様々な病気や免疫障害を起こすわ…で、犯人は、ソンなモノを盗んで何をスルつもりなのかしら」
「ジャドーに捜査を要請して来た魔法庁に拠れば、犯人達は汚染爆弾を作る気らしいンだけど」
「え。コレは核テロってコト?ソレにしても何でジャドーに話が回ってくるの?そもそも、何で魔法庁が放射性物質を輸送してるの?」
「うーん秋葉原で起きる"ヘンな事件"は全部ウチに回って来るのょねぇwその他の質問には私も答えられナイわ」
「なるほど…で、汚染爆弾は、核爆発とは異なり、爆発で放射性物質を飛散させて周囲を放射能汚染スル兵器のコトょ。核爆弾とは違う、毒ガスとかコロナウィルスの拡散とか、ソンなイメージ」
「拡散範囲は?」
「拡散に使う爆薬の威力次第。例えば、TNTが約20キロの中型爆弾を使ったとした場合、盗まれた放射性物質は…あれ?3缶だっけ?」
「YES」
ルイナは、何やらタブレットに打ち込み出す。
「セシウム137が500グラムとして…風や雨、地形の影響も考えなきゃ…」
「あ、今回は雨は降ってナイから無視して」
「雨はナシと…」
最後に人差し指でポンとキーを押す。
「えっと、拡散エリアは、約26000平方メートル。160メートル四方ね」
「160メートル。だいたいワンブロック?」
「爆弾が大きければ、その倍ょ」
レイカ司令官は腕組みしたママだ。
「でもね。今回の被害は、どーやらソレだけに止まらないのょ」
「え。汚染爆弾じゃなかったの?」
すると、彼女はおもむろに答える。
「恐らく…魔法爆弾」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、御成街道架道橋の下では、未だラギィ警部による運転手の事情聴取が続いている。
「今回の輸送ルートは?」
「最短距離だった」
「ルートを決めるのは誰?」
「輸送部長だ。その日の天気や交通を考えて電話で指示して来る。人口密度の高いトコロは避けるとかな」
「他にルートを知る者は?」
「いない。俺達も、ルートを知らされるのは出発の2時間前だ」
「なるほど」
「そもそも、誰が関心持つンだ。黄色地に赤い三つ葉の放射能マークをつけた容器を積んだトレーラーだぜ?誰も近づかない」
その感覚が危ないのだw
「ファミレスまで尾行して来た車とかは?」
「ない。尾行を確認するのも仕事に入ってる」
「失踪した運転手の名前は?」
「マレイ」
「彼とは親しいの?」
「何度かコンボイを組んでる」
「あのファミレスは誰が?」
「マレイだが…そもそも御成街道を行く時は、大体アソコだ。近々閉店スルと聞いて困ってルンだ」
「食事中、マレイが先導車に近づいた様子は?」
「おいおい。マレイが犯人だと思ってるのかょ?」
「いーから答えて。先導車に細工する機会はあったの?」
「う。確かに先に出たが、てっきりタバコを吸いに出たのかと…ソレも1分程度だ!ちょ、ちょっと待ってくれ!マレイはソンな奴じゃ…」
運転手が興奮して来たので休憩を入れる。
その間もラギィは部下から報告を受ける。
「マレイって奴ですけど、問題があります。約1年前ですが、薬物使用で前の会社を解雇されてる」
「覚せい剤?」
「眠気覚ましですね。長距離の運転手は良く打ってる」
「そんな奴を魔法庁はナゼ雇ったのかしら?まさか魔法使いだとか?」
「マグルです。解雇の件は、雇用記録には載ってナイみたいですね」
「警部!マレイの銀行口座です。ちょっと見てください!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
舞台は万世橋警察署の取調室へと移動。
ラギィの前に生活臭ぷんぷんオバサンw
「ご足労でした」
「無理に連れて来られたの。コロナに感染したら責任取ってょ!」
「取りません。ところで、今日ご主人は?」
オバサンはマレイの妻のようだ。
「マレイ?仕事ょ。何かあったの?」
「朝からトレーラーごと失踪中」
「ど、どういうコト?」
「分かりません」
「アンタ達、探してょ!警察でしょ?浮気じゃないの?多分、北千住のキャバ嬢と…」
「恐らく積み荷を狙ったハイジャックのようです」
ココでオバサンは一気に感情を爆発させる。
「あああぁ!放射能と聞いて恐れてたけど、まさかこんなコトが起きるなんて」
「前の会社を解雇されてますょね?そして、口座にはいきなりステーキ、じゃなかったイキナリ500万円の入金がアル。コレ、何かのボーナスですか?」
「あのね。昼夜問わず運転して、眠気覚ましが必要だったのよっ。ソレなのに、会社は夫を解雇した。ずっと職につけずエラい苦労をしたンだから!」
「今、秋葉原のヲタクの命が危険に晒されてます」
しかし、感情爆発オバサンの暴走止まらズw
「でも、ソレは夫のせいじゃないわ!夫は、騙されただけなのよっ!」
「誰に?」
「取引した連中よっ」
「いつ頃?」
「1ヵ月半前。核廃棄物の輸送に反対しているNGOとか言ってた。首都高で抗議デモをスルとか聞いたわ」
「で、500蔓延防止措置じゃなかった500万円の見返りは?」
「輸送ルートを知りたいって」
「ソレで教えたの?マジ?で、彼等の名前は?」
「あのね。夫は人を傷つけるコトは絶対にしない。ただ、お金が必要だっただけ。夫も被害者だわっ!」
ココで刑事が現れ、小声でラギィに耳打ち。
「警部、マレイが死体で見つかりました」
第2章 蝕む爆弾
62分後の万世橋警察署。
「電話は匿名でした。現場は神田川沿いの神田佐久間河岸」
「夫人の言う通りマレイは被害者なのカモね」
「現場に入った鑑識の報告によると、コメカミに1発。プロの仕事と思われます」
「今度の相手は平気で人を殺す連中ね。衝動を金でコントロールするプロって厄介なのょ」
部下がタブレットのデータを読み上げる。
「マレイは、仮に殺されなくても数年の命だったようです。脊椎全体に悪性腫瘍」
「核廃棄物を運んだせい?」
「ソンなバカな。安全に遮蔽されてたハズょ。使われた銃は?」
「9ミリ。警察のDBにヒットなし。で、現場にプリペイド携帯が落ちていました。カード情報はニセでメッセージが1件。音声データも転送されて来たので再生します」
タブレットから音声が流れる。
"輸送トレーラーを預かった。20億円払えば返す。拒否すれば秋葉原で核物質を爆発させる。結果はわかるな。12時間以内に金を用意しろ。振込先は後で知らせる"
「げ。コレって身代金の要求?核廃棄物の誘拐事件かょ?着信は53分前です」
「あと11時間ね。犯人のプロファイリングは?」
「スマホからのデジタル音声なので特徴がつかめません。しかも、メッセージは圧縮されてる」
「推測で!」
「訛りはなく20〜40代の東南アジア系の男性」
「また半島絡みかしら」
「語句のニュアンスが違います。ソレに爆発させる気なら、他にも色々必要なモノがあります」
「とりあえずは、強力な爆薬が必要ね。扱ってるのは建設現場、軍事基地、化学肥料業者…リストを作って片っ端から当たって頂戴!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻のジャドー司令部。
ヲタッキーズにも召集がかかりミユリさんもムーンライトセレナーダーに変身し集まる。
ムーンライトセレナーダーは、いつもの黒のセパレート(アラサーなのに)ヘソ出しコス。
「レイカ司令官、やっぱり汚染爆弾なの?」
「あ、ムーンライトセレナーダー。今はまだ脅しだけょ」
「場所は言った?」
「秋葉原のどこか。恐らく最も被害が大きい場所ね。ねぇ科学顧問、核テロリストが何処に仕掛けるか予測できない?」
「難しいわね。でも、狙いが市街地ょね。トレーラーで運べるし」
「つまり封鎖線を突破したか、未だ輪の中にいるかょね。ますます場所の特定は困難だわw」
溜め息をつくムーンライトセレナーダー。
リーダーの窮地にルイナが助け舟を出す。
「確かに物理的には難題ね。でも、数学上は何か出来るカモ」
「え。説明して、ルイナ」
「犯人の動きを見ると、狙いを定める際に私と同じ変数を考えてるように思える。例えば、天候、風、周囲の建物、人口密度、交通の流れ…何れも短時間なら変化が少ないモノばかりょ」
「あと10時間半」
「地形レーダーの画像とかあれば狙いを絞れる。爆薬の種類も知りたいわ。それで爆発力がわかるから」
直ちにレイカ司令官から命令が飛ぶ。
「衛星軌道の量子コンピューター衛星シドレを呼び出して!ルイナのタブレットとデータリンク!」
さらに、万世橋の動きをモニター中の司令部スタッフから気になる報告が上がって来る。
「航空系スタートアップの"虹幸鳥社"から万世橋に通報が入りました。怪しい2人組が核物質の扱い方を聞きに来たとか」
「何か関係が?」
「特にセシウム137の話を聞いて来たとのコトです」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
航空系スタートアップ"虹幸鳥社"は、秋葉原駅に直結する高層タワービルの27Fにある。
神田川に離着水スル宇宙往還機"レインボーラッキーバード"を開発したスタートアップだ。
「コード5発生!パトカー全車は駅前高層タワー群へ集結せよ!」
「和泉橋12、了解。急行スル!おい、サイレン鳴らせ!」
「ココだ!駅前広場を封鎖しろ!」
通報の12分後には万世橋全パトカーが殺到、高層ビルの周囲に厳重な警戒線が張られる…
が、その警戒線を笑顔1つで楽々と突破するコスプレ美女はムーンライトセレナーダーだw
27Fに上がるとラギィ警部がハンナCEOを相手に大声で事情聴取?いやコレは取調べか?
「連中の質問は、高レベルの同位体についてだったわ。ホラ、レインボーラッキーバードは原子力飛行艇だから」
「理由は言ってました?」
「SF映画の脚本を描くためだって。警察からの通達を見るまで、まるで疑わなかったわ…キャー!ムーンライトセレナーダーじゃない!久しぶり。テリィたん、元気?写メ、良いかしら?貴女になら何でも話しちゃう!」
ハンナCEOは、テロに見舞われたテストフライトで衛星軌道から神田川への緊急着水を敢行、以来"神田川の英雄"と呼ばれている。
その後、ジャドーを経て今は虹幸鳥社CEO。
「写メなら斜め上からがお勧めですょwで、連中はセシウム137に関心を?」
「そーなの。深宇宙探査機の動力源との設定だとか言ってたけど。コロッと信じちゃったわ。ゴメンね」
「彼らが触ったモノを全て教えてください」
「1人が飲み物を」
「他には?」
「あと…後ろの本棚の戦記マンガも立ち読みして行ったわ。これこれ。"スマイリーの魔女"」
「あ、触らないで!その本を指差してください!"スマイリーの魔女"って?スタンレー…じゃなくて?」
「マンハッタン計画で原爆開発中に起きた事故のマンガょ」
「その事故とは?」
「プルトニウムの半球2つを隔てていたネジ回しが落ちて半球が合体、放射線が発生したの。その時、咄嗟に体で覆って他の者を救った実話がモデルだけど、彼は…9日後に機能障害で死んだ」
「まぁ」
「ところで、ミユリ。そのヘソ出しコス、お腹が冷えない?」
「え。痛い?でも、テリィ様が喜ぶので…」
「大丈夫!お似合いょ。貴女は、私達アラサーの星ナンだから!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
昼間、ミユリさんがメイド長をやってる御屋敷のバックヤードを"潜り酒場"風に改装したらヤタラ居心地が良くなり格好の溜り場にw
で、今宵、僕が訪れるとメイド服女子が2人、何やら額を寄せ合ってヒソヒソやっているw
「あ、テリィ様」
「ミユリさんと…ルイナ?何してるの?ん、"秋葉原ヲタマップ"?ソレ、オノボリさん用だ。2人ともソンな地図、要らないだろうに」
「ダメょ出てって、テリィたん。いくら貴方でも今は何も話せないわ」
「え。ハルマゲドンなのょ?テリィ様にもお話ししなくちゃ!私のTOだし」
「ハルマゲドン?地球衝突コースの白色彗星でも見つけたの?」
「テリィたん。ソレ昭和ネタだから。ソレがわかるの、私達アラサーメイドだけょ?」
「で、何の話し?」
「昨日、核廃棄物を積んだ車がハイジャックされたのです」
「何?待って!何でニュースで流れないのかな?」
「機密扱いだから」
「知らなきゃ避難も出来ないぜ?」
「ホントかどうかもわからないのです。爆弾が…」
「爆弾?!」
「と、とにかく、場所も不明なので」
「ねぇ今すぐ車に飛び乗って西へ逃げた方が安全かしら」
「この風向きじゃ避難は無駄だな。返って、集団パニックを引き起こすだけだ。とにかく、命に関わるコトは役人に委ねちゃダメだょ。ヲタクにも生きる権利がある」
ミユリさんが僕を直視スル。
「やっぱりテリィ様のお力添えが必要カモですぅ」
「やっぱりが余計だけど、メイド服を着たミユリさんに上目遣いで頼まれたら断れないょwでも、僕はサラリーマンで物理学者じゃない。確かに勤め先が第3新東京電力だから、放射線や原子力には詳しいけど」
「ソンなコトより街に詳しいじゃない。都市密度とかも詳しいし」
「実は、魔法庁の要請でジャドーが核廃棄物を探してルンですけど煮詰まっちゃって。場所を変えてメイド服に着替えたら何か思いつくかと思って御帰宅してみました」
「ソコへ僕の御帰宅が重なったワケか。さっき、東京に戻ったばかりナンだけど(単身赴任中ですw)」
「YES。ホラ、テリィたんって"秋葉原のプロ"じゃない?そもそも、このヲタマップの作者だし」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻、万世橋警察署。
「聞いて!容疑者が見つかったわ!スタートアップ"虹幸鳥社"で採取した指紋が脱獄囚ルガソの指紋と一致した。奴は、不遇な少年時代を経て現金輸送車を強奪、5年の服役中に脱走して目下逃走中ょ。奴の仲間もくまなく当たって!至急探し出すのよっ!GO!」
「警部!神田川の遣独潜水艦作戦のブンカーから爆薬が約2キロ盗まれたとの報告です!」
遣独潜水艦とは太平洋戦争中に締結されたドイツとの技術交換で今も続いている作戦だ。
「え。いつ?」
「8日前はあったコトが確認されてます」
「C4に近づけるのは?」
「遣独潜水艦の乗組員、ブンカーに出入りスル民間業者、整備の作業員…」
「核物質を盗んだ奴等は、コレで汚染爆弾を作れるわ」
「ルガソの少年時代の保護観察官に会ってみます。里親にも当たってみます」
「保護監査官はココへ連れて来て話を聞いて。私はジャドーにC4の件を伝えるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
保護監察官は初老の男だが幼少期のルガソを良く覚えており、喜んで事情聴取に応じる。
「魔法使い系の不良は、引き取った時には、もう手遅れってのも多いンだ」
「ルガソは?」
「札付きの問題児だった。先頭に立って他の子を悪の道に誘い込むタイプ。実は、息子のマクドも仲間に引き込まれて、16歳の時に盗みで逮捕されてしまった」
「え。今も2人は会ってるでしょうか?」
「息子は、保護観察処分ながら、今は立派に校正した。遣独潜水艦に乗ってる」
「遣独潜水艦?息子さんの配属先は?」
「神田川の原潜基地。先日、南極のナチス基地から帰投したばかりだ」
「原子力U-boatのブンカーょね?実は、ソコから爆薬が盗まれたのょ!」
「何だって?」
「息子さんの住所は?」
「神田佐久間河岸」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヲタッキーズの飛ぶ系ヒロイン、マリレとエアリが神田佐久間河岸の宿舎を急襲。
ロケット兵と妖精のコンビなのでひとっ飛びだが…マクドは既に姿を消している。
「クリア!」
「こっちも」
「あら?男の部屋にしちゃ珍しいミントの香りがスルわ?何処かのメイドでも連れこんでたのかしら?」
「エアリ、ソレはシクロヘキサノンだから…ビンゴ!ほら、ゴミ箱からロウ引きのセロハンを発見!」
丸めて捨てた包装紙に印刷されてる文字は…
「間違いナイわ。ミユリ姉様、C4です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マクド宅での軍用C4の包装紙発見の報告に万世橋警察署の緊張は極限まで一気に高まる。
「やはり汚染爆弾を爆発させる気だわ」
「間違いナイですね」
「ラギィ警部!例のケータイが鳴ってます」
「スピーカーにして」
輸送トレーラー運転手マレイの殺害現場に核テロ犯が落としたケータイが鳴動しているw
「今から金の振込先を教えるからメモしろ。この通話を切ったらすぐに振り込むンだ」
「待って。12時間後の約束でしょ?まだ6時間だわ。どうしたの?何かあったの?」
「…ツベコベ言うな。コッチの都合だ。では、金を出す気にさせてやろう。1時間後に裏アキバ」
「ダメょもっと時間を!」
「また連絡スル」
電話は切れるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
核テロリストと万世橋の通話を同時モニターしてるジャドー司令部も一気に騒然となる。
「ルイナ!場所の特定は出来た?」
「まだ6時間アルでしょ?」
「ソレがナイのょ!核テロ犯が繰り上げて来たわ。今すぐ場所の特定が必要ょ!」
「まだ試すべきアルゴリズムが…待って。狙いを7つに絞った。台東区の方の秋葉原に…」
「場所は裏アキバらしいわ」
「裏アキバなら2カ所ょ。妻恋坂プラザと芳林スクエア」
「今から58分で2カ所の避難は無理ょ。渋滞になるし、そもそもラギィ達が行き着けないわ。どちらか1つに絞れナイ?」
「ソンな無茶なw実は、確率はどちらも同じなの。だから、数学で1つに絞るのは無理ょ」
おぉ僕の出番だ←
「そりゃスクエアだな」
「テリィ様?でも、ルイナはわからないと」
「僕は、いつもボンヤリと眺めてるから街の風景が頭に入ってる。だから、芳林スクエアだ」
「え。何でw」
「芳林スクエアは、周囲のビルが高い。いわゆる都会の盆地ナンだ。放射能は拡散せズ滞留スル。ヲタクの恐怖を煽るショーケースとしては絶好だ」
間髪入れズに、レイカ司令官の命令が飛ぶ!
「万世橋に連絡!芳林スクエアに避難命令を!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数分後、真昼の芳林スクエアは大混乱に陥るw
警察と消防が総出で駆けつけ、スクエアからの避難誘導に当たる。
ジャドーの爆発物処理班も出動し、放射線防護服を着用して警戒。
「芳林スクエアに危険物が置かれた恐れがあります。避難をお願いします!」
「時間はあります(ホントはナイけどw)。ゆっくり落ち着いて!」
「コレは訓練ではありません!」
慌てふためくサラリーマン、OL、親子連れが群れ無し出口がゴッタ返す。
トランシーバー片手に交通整理中の警官が寝ているホームレスを起こす。
「早く避難を!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数分の内に芳林スクエア一帯は死の街と化す。
「避難は完了した。15分前だ。しかし、金の振り込み先は何処だ?なぜ犯人から電話がない?」
「5分前にはヲタッキーズも全員退避してください」
「ジャドーの爆発物処理班のみなさんもね」
ヘルメット姿の警察や消防がハンドサインを交わし確認し合いつつ退避を開始。
入れ替わりにロボコップみたいな特殊スーツの爆発物処理班がスクエアに入る…
次の瞬間、閃光が走って大爆発!
処理班全員が焔に呑み込まれる。
スクエアの一帯に赤いキノコ雲w
第3章 ポグワーツ美術学校
荒れ狂う閃光と音響が去った後、噴煙の中をヨロヨロと爆発物処理班が引き揚げて来るw
「班長、損害は?」
「2人やられました。重体です。ヲタッキーズはドチラにおられたのですか?」
「恐らく爆弾から約30メートル」
「え。ソレでも軽傷?スーパーヒロインってスゲェ…」
「安心して!私達だって真っ暗焦げよっ!」
ガックリ崩れ落ちる爆発物処理班長を抱き起こすムーンライトセレナーダーだが…コス以外の露出部は顔も含めて黒焦げ髪チリヂリw
元々黒コスなので全身真っ黒と逝うコトだ←
「班長、しっかりして!あぁまだ耳鳴りがスルわ…」
「でも、空間線量はND。放射能も検知されナイ」
「あ、ラミル。来てたの…ププッ。貴女も私以上に…真っ黒クロスケなのね?トトロ、見た?」
ムーンライトセレナーダーが振り向くと、ソコにも等身大の真っ黒女子。
コチラも元がライダースーツの黒なので、全身が真っ黒ケと逝うコトに。
「人を、と言うか、魔法庁の者を妖怪ススワタリ呼ばわりしないでくれる?」
「そうね。ソレに真っ黒クロスケならトトロだけじゃなく千と千尋にも出てたわ(だから何w)で、とりあえず、今回は汚染爆弾ではなかったワケ?」
「YES。とゆーコトは、恐らく…」
ラミルは、真っ黒なのでマジメなのかフザケてるのか全く不明な顔して重々しく告げる。
「恐らく…魔法爆弾ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻の万世橋警察署。
「鑑識が爆発を分析した結果、現場でセシウム137は検出されませんでした!」
「またハッタリなの?犯人は、なぜ核を使わないのかしら」
「連中の行動は全て計画的です。でも、今回は12時間を6時間に繰り上げ、予告より11分早く爆破した」
「肝心の金の振込先の連絡もナイわね。もしかして、ホントは…核を使う気も、金を脅し取る気もナイのカモ」
「何かのために核テロを演出した?」
「YES。核で注意を引き、警察を思い通りに誘導した」
「では、奴等の思い通りの誘導とは?」
ラギィ警部が唇を噛む。
「芳林スクエアの避難だわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ミユリさんや関係者が全員黒焦げになってる頃、僕とルイナはジャドー司令部で待機中。
「やはり芳林スクエアだったか。ミユリさんがルイナを頼る気持ちも良くわかる。しかし、悪い気はしないね。あれ?どうしたの、ルイナ。何か心配事がアルって顔だね」
「え。ソンなコトないわ。少し動揺してるだけ」
「動揺?僕がスクエアを逝い当てたから気を悪くした?」
「YES。実は私、間違ってた。テリィたんが答える前、妻恋坂プラザと言おうとしてたの」
「そうか。でも、ソレは前提を逝っておかなかった僕が悪い。周囲のビルの高さとかさ」
「でも、間違いは間違いだわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻、芳林スクエア。
ホボ等身大の真っ黒焦げが2体、どっちがどっちだか良くわからないけどムーンライトセレナーダーと魔法庁のラミルが対峙している。
「しかし、犯人はナゼ場所を明らかにしなかったのかしら。最初から芳林なら芳林と逝えば良いのに」
「ヒントだけ与えて慌てさせたかったのょ。意外と愉快犯ナンじゃナイ?」
「うーん芳林スクエアには、やっぱり何かがアルと思うのょね。核テロリストを装う何者かが狙う何かが」
「そ、そう?どーせ人間の闇カジノやダイヤの秘密取引所とかじゃない?」
「アソコはアキバの金融街なの。周りは投資銀行や超高速取引業者とかょ。ねぇラミル。魔法庁は何か隠してる?」
「え。何のコト?私達、魔法庁は人間から愛される魔法庁を目指して日夜…」
「貴女、明らかに何処かへ逝く途中だったわょね?コレから何処へ逝くの?隠れても無駄ょ。貴女の動きは衛星軌道にいるジャドーの量子コンピューター衛星シドレから完璧にトレースされてる。人間の科学を侮らないで!」
「ぐ。あのシドレは元々…まぁ良いわ。私の行く先は…グワーツ」
「え。ホグワーツ?魔術学校の?」
「いいえ。"ポ"グワーツょ。美術学校の」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"ポ"グワーツは…スクエアの地下にアルw
ソコに逝くには、芳林スクエアにある公衆便所の男子用と女子用の壁の境目に体当たり…
「おおっ!魔法庁のラミル様、突然のお越しとは何ゴトですか?当校で修復作業中の魔法美術品の抜き打ち検査とか?」
「あ、ダンブル自動ドア校長!魔法庁が預けてる美術品は全て無事かしら?」
「モチロンですとも。当校の秘密の大金庫に…ところで。先ほどの霊気嵐は凄まじかったですね。アレだけ霊気を浴びたらテレポーテーションとか出来そうだ」
ヤタラ多弁な校長が金庫をダイヤル開錠スルと…
「何も入ってナイ!全て盗まれた?そんな。嘘でしょ?鍵はかけたハズだ。爆弾騒ぎで避難する前に」
「え。ダンブル自動ドア校長、貴方も避難したの?」
「だって、万世橋警察の方がスゴい勢いで…」
「魔法使いのアンタが人間と一緒に逃げてどぉすんの?!」
「そぉでしたぁ!で、どうしましょう。何もかも盗まれた。修復中の美術品全部」
「正確には?」
「ロンギヌスの杖、組分け坊主、賢者の椅子、逆転腕時計、赤カバンの囚人、プーカジャイ…あぁコレだけ揃えば"名前を思い出せないあの人"が復活してしまう!」
「ソレが狙いか!でも、とりあえず、総額は?」
「だ・か・ら!金額より魔術的価値の問題なんだってば」
「ソコを無理にお金に換算しないと人間がヤル気を起こしません」
「なるほど。うーん多分20億円近く…」
「何だ。放射性廃棄物の身代金と同じかょw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
この期に及んでラギィ警部がジャドー司令部を訪問して警察との合同捜査を申し入れる。
「万世橋警察署のラギィです。芳林スクエア近くの不動産屋がルガソの顔を覚えてました。2ヶ月前、ルガソは自分の名前で近所の地下室を借りてる。恐らく、ソコが奴等のアジト。あと、マレイの小切手を振り出したのもルガソだとわかりました。でも、何のために?ルガソの目的がイマイチ不明です」
「魔法庁のラミルょ。先ずルガソは魔法使いなの。芳林スクエアの避難が終わるのを見届けてからプーカジャイを盗み"名前を思い出せないあの人"を復活させるつもりだったと思われるわ」
「えええええっ!魔法史上最凶の魔法使いである"名前を思い出せないあの人"の復活を?犯人は、核テロリストじゃなかったの?」
「YES。闇の魔術の復活を願う魔法使い達だわ」
「ジャドー司令官のレイカです。もはや警察の手には負えませんね…特殊部隊"チーム6"に出撃命令!ロケット弾の弾頭に塩を装填、全員銀の弾丸を携行!対魔法・対魔術戦、用意!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
路面からイキナリ地下に降りる階段がアル。
階段の左右から音もなく忍び寄る特殊部隊。
「発砲の際はプーカジャイに気を付けろ。斜め前から撃つと不幸になるぞ!」
「了解」
「訓練と同じだ。落ち着け!」
先に階段を降りた赤い放射線防護服の男達がサムアップのサイン。
入れ替わりに完全装備のジャドー特殊部隊が地下に降り突入準備。
「よし、行くぞ。スリー、ツー、ワン!突入!」
「ジャドーだっ!杖を捨てろ!両手を見えるトコロに!」
「全員、腹這いになれ!床に伏せろ!」
銀の弾丸を装填し、塩弾頭のロケットランチャーを構えた特殊部隊が突入!
床置きソファーでくつろいでた魔法使い達に杖を構えるスキを与えズ強襲w
「2人来い。急げ。こっちだ」
赤い放射線防護服の男達が後に続き、奥の倉庫を調べて頷く。
直ちに特殊部隊はドアを爆破、銃を構え突入スルも中はカラ。
「くそっ」
「核廃棄物の容器がナイ!」
「セシウムは何処だ?」
突入隊長が魔法使いの胸倉を掴んで吠える。
「俺を見ろ。核廃棄物はどこだ?」
「人間、何を言ってるんだ?」
「立て、来い。お前は終わりだ」
第4章 バブルの頃に萌えた想い出
ジャドー司令部に引っ立てられたルガソだが、一応魔法使いなので魔法庁のラミル立会いの下、魔法陣の中での魔法裁判が開廷スル。
検事役はレイカ司令官。
「ルガソ。貴方の罪状は殺人、核物質の強奪、爆破。運がよくても終身刑ょ」
「そりゃ物騒だな。まるっきり中世の魔女裁判と同じじゃナイか。人間め、進歩がナイ」
「核廃棄物が何処にあるのか言いなさい。ココはジャドーの軍事法廷でもアル。真実追求のためなら拷問も許されるコトを申し添えておくわ」
「わかった。ならば、見返りが欲しい」
「言ってみて」
「先ず天井に描いてアル魔法陣から釈放しろ。魔法使いにも自由がある」
「魔法庁のラミルょ。却下。ありえない」
「では魔法爆弾の出番だな」
「何?」
「俺にプランBが無いとでも思ったか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時に別室では共犯の取調べも進む。
「先ず我々は共犯ではないし、子分でもナイ」
「じゃ何だ?対等のパートナーか?」
「トンでもない。我々は魔法使いの弟子だ」
「デュカスの交響詩かょwとにかく!C4爆薬はお前の任地から盗まれてる。マクド、あと運転手も殺してるから死刑は免れないぞ」
「ぼ、僕は現場にいなかった…」
「それでも共犯だ。でも、核廃棄物の在り方を言えば検事に減刑を口聞きしてやる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、その日は魔法廷で特段の進展はナイ。
肩を落として"今日のふりかえり"を実施。
「弟子達を脅してみたけど、怯えてはいるけど、何も話さないわ」
「ルガソもょ。ただ、奴だけは取引スル気が旺盛だわ」
「うーん今まで連中が核物質を移した、と考えて動いて来たけど、もし違ってたら?」
「盗んだトレーラーに未だ載せたママとか?」
「そーか。移したと思わせてるだけ?」
「となると、未だブツは封鎖網の中ね?」
「…でも、うーん煮詰まったw」
「御帰宅スル?三密に気をつけながら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
今宵の"潜り酒場"は女子は全員メイド服w
ラミルもレイカもルイナも…あ、僕は私服←
「放射能の追跡法を調べた。航空機と地上に取り付けたセンサーから三角法で位置を割り出せる。でも、アレって、実は核廃棄物じゃなかったりして。ねぇラミル?」
「テリィたん、鋭い。実は"核廃棄物"ではなく"魔法廃棄物"なの。ただ、放射能と成分が似てるから、いつも僭称してる。そうすれば、魔法のイメージも崩れないし。ホラ、魔法って使うと廃棄物が出ますナンて、余りにも夢がナイでしょ?で、漏れてる"霊気能"も"放射能"ってコトにするワケょ。ホント便利だわ、原子力って」←
「どーゆー便利だよっ!ソレに何ナンだょソノ"霊気能"って?」
その説明はラミルで…ピンストライプのメイド服ナンだが…良い!良いょ!萌え萌えだ!
「平たく言えば"怨念"を出す能力ね。人間は、霊気を少量吸い込むだけで、体中の組織が破壊される。もし長時間被曝すれば、深刻な障害が出て、即"歩く幽霊"になるわ」
「"歩く幽霊"?可愛いメイド服を着て、良くソンなコト逝えるなw」
不用意な発言でカウンターの中のミユリさん(地味メイド服w)から刺すような視線ビームw
「最初、吐き気を感じるけど、次第に収まり回復したと思い込む。でも、実はソレは単なる猶予期間で、1週間後には精神錯乱が始まり、死に至るわ」
ため息。でも、ソレって…
「ねぇ共犯も捕まえたのょね?中には魔法使いに雇われた人間の子分もいたんでしょ?」
「YES。まぁマクドも魔法使いの弟子を僭称してるけど」
「じゃ人間に聞きましょ?」
割って入るのはルイナだけど…アリスメイドだょカワユイのう。ブリキ男でお供したいw
「でも、ルガソを恐れて誰も口を割らないのょね。散々脅したンだけど」
「ねぇ別々に揺さぶりをかけてるみたいだけど、思い切って一緒にしてみたらどーかしら?」
「え。こーゆーのは別々にして、孤立させた方が効果があるのょ。取調べの鉄則w」
口をとんがらせるのはラギィだけど…ミニスカポリスだっ!今宵はメイド服縛りなのに!
「わかってるわ。でもね、全然違うやり方もアル。囚人のジレンマを利用するの。ゲーム理論と言って複雑な状況で最善の結論を導き出す数学理論ょ。犯人は2人とする。共に自白しなければ1年の刑。一方が話せば、その人は無罪。相手は5年。共に自白すれば、それぞれ2年の刑。つまり、相手が信じられない場合、自白が最善の策なの」
「うーん奴等は話さないわ、恐らく」
「ソレは、他の2人の立場を知らないからょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝の魔法廷@ジャドー司令部。
魔法使いとその弟子達は、全員が呼び出され一堂に会する。
周囲を完全武装の特殊部隊が取り囲み裁判長席にはレイカ。
「OK。やり方を変えるわ。彼女はルイナ。人間の誇る数学の最高頭脳ょ。ちゃんとお話を聞いてね」
「え。何なんだ?」
「黙ってろ、ルガソ」
ルイナが進み出る。意味なく白衣だが昨夜のメイド服の方が好みなのは言うまでも無い←
「今日は、貴方達一人一人を数学的な立場からリスク評価するわ。協力するか否かの選択肢とリスクを数字にスルわね」
「姐ちゃん、霊気を浴びて煉獄に落ちるリスクも勘定してくれ」
「黙れといったろ、ルガソ」
「良い?先ず魔法使いの弟子のみなさんを魔法使いと人間にカテゴリー分けスルわ。そして、それぞれに属性ごとの数値付けを行うの。年齢、犯罪歴、家族…」
「おい待て、姐ちゃん!家族に何の関係があるンだ?」
「刑務所に入りたくないと言う動機付けになるわ。大丈夫ょルガソ。家族の無い貴方にはゼロを代入しとくから」
傍らのマクドに何かを囁こうとして、ラギィに頭を叩かれるルガソ。
さらに、全員の視線も一斉に浴び、サスガに首を竦め大人しくなる。
「はい。計算出来たわ。コレで良しと。数学こそ人類の英知だわ。マクド、貴方のリスク評価は26.4。魔法使いの弟子のみなさんは概ね11.3〜17.8。ルガソのリスク評価は3.7」
「だ、だ、だ、だから何だ?」
「有罪になり1番損をスルのはマクド。得をスルのは親分のルガソね」
「その通り。でも、野郎ども、耳を貸すな!マクド、俺を見ろ!」
「これは事実ょ。魔法使いのみなさんは数学と余り縁がナイでしょうが、全ては数字が証明してるの。ねぇマクド。貴方は若くて前科もナイ分、失うモノは最も多いのょ?立派なお父さんもおられるしね」
「マクド!貴様は既に悪魔と契約したんだ。今さら何を言っても無駄だぞ!」
「魔法庁のラミルです!魔法庁の魔法廷なら悪魔との違法契約を無料でクーリングオフ出来るの!私達、人間から愛される魔法庁になりたい!貴方に寄り添うわ」
「マクド!俺の話を…」
「君のお父さんと話した。お父さんは君を愛しているぞ!君は、必ず校正出来る!今がソレを証明する、唯一のチャンスだ!」
「…わかった。全て話します!ルガソ、なぜ運転手を殺したの?約束が違うじゃないか!」
「マクド、貴様を殺す」
「おい!ルガソを連れ出せ!最凶の魔法陣の中にブチ込め!」
「待て!俺も話す!俺達魔法使いは、数字に弱いンだが…ソコのエラい女のセンセ!俺の16.8って、やっぱり損ナンだろ?」
「モチロンょ。自白が断然お薦めね」←
「エラい女のセンセ、12.7は何処まで自白スルべきかな?」
「待って。今、お姉さんが計算してあげるわ」
魔法使いの弟子達は総崩れとなり、ルイナの計算結果を待って次々と自白宣言が相次ぐ。
ガックリ膝を折るルガソに裁判長席を降りたレイカがツカツカと歩み寄って耳元で囁く。
「コレが私達のプランBょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「輸送トレーラーは"霊気能廃棄物"を積んだママ、神田川沿いにある廃工場裏のスクラップ置き場にカモフラージュしてある」
「ちくしょう!どーりで衛星軌道から探しても発見出来なかったハズだ。直ちに"チーム6"を…」
「待て。現場にはミラーって女がいる」
「ソレは魔法使いの弟子の1人です。リストに名前がある。やや?彼女は"リアルの裂け目"から落ちこぼれた異次元人だ。特殊能力は…反射?」
「おいおい。まさかルガソの情婦?」
「いや。ルガソはゲイだ」
「とにかく出撃!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
20分後、ジャドー全部隊が廃工場裏のスクラップ置き場に集結スル。
放射能改め霊気能防護服を着た特殊部隊、変身済みのヲタッキーズ。
白昼堂々の全力出撃だ!
「トレーラーの轍だ」
「ココからでは遠過ぎて放射能、じゃなかった霊気能の計測は不可能です」
「サイズからして、あのスクラップの山に間違いありません!」
特殊部隊の指揮官が指差す先に、廃車や廃スクラップの野積みの山。
包囲網を閉じ、完全武装の隊員が各種武器を構えて慎重に接近スル。
「注意しろ。トレーラーの確保を最優先」
「全員、配置完了」
「突入スル。3つ数える。スリー、ツー…ヤバい!離れろ!」
次の瞬間!
突如スクラップの山からトレーラーが飛び出し特殊部隊を蹴散らして逃走!
包囲を突破するトレーラーの後にひっくり返りデングリ返ってる特殊部隊w
加速し一気に突破を図るトレーラーの前に、腰に手を当てひざまづく人影…
ムーンライトセレナーダーだ!必殺技"アキバライザー"発射スタンバイ!
次の瞬間、オヘソから図太い光が迸り出てトレーラーの運転席を直撃…ん?一部が反射してムーンライトセレナーダーへと跳ね返る?
ボムッ!
あぁwまたまたミユリさんは…真っ黒焦げ←
「ミラー!トレーラーのエンジンは破壊された!もう逃げられない!投降しろ!」
「来ないで!下がるのょ!さもないと容器を自爆させるわ!」
「落ち着け!」
「嫌ょ!私に命令しないで!」←
トレーラー後部の荷台が傾き出す。
滑り落ちかける魔法廃棄物の容器。
「わかった止めて!ミラーさん、お話ししましょう。真っ黒焦げでわからないカモしれないけど、私はムーンライトセレナーダー」
「私はミラリーヌ。私をイカせて」
「え。貴女、ゲイなの?」
「ゲイはルガソでしょ。で、彼は?」
「口を割ったわ」
「ウソょ。ルガソが話すハズがない」
「じゃあ何故ジャドーがココを包囲してるの?あら、大丈夫?気分が悪いの?吐き気?まさか更年期障害?いつから?」
「なぜ症状わかるの?更年期じゃナイけど」
「霊気ょ。異次元人にも影響スル。赤ちゃんを産めないカラダになるわょ?」
「もう産んだし。ソレに前より気分は良くなってる」
「え。シングルマザー?でも、ソレは猶予期間ょ。直ぐ手当てしないと魂が腐って死ぬわ。ジャドーの救急ヘリが5分で来る。急がないと助からないわ。子供には元気な母親が必要ょ?」
「ギブアップ!私、負けましたわ(回文)」
「OK。ゆっくり出て来て。手を見えるトコロに出して。そのママ手を上げて。そぉよ。ゆっくり車から降りて膝をつくの」
しかし、トレーラーの運転席から出たトコロでミラリーヌは地面へと崩れ落ちてしまう。
「お医者様に…」
「わかったわ。直ぐに連れて行く」
「貴女の"アキバライザー"強烈だった。反射し切れなかった…」
「私の必殺技を返したのは貴女が初めてょ。ソレに全量返されてたら、私も真っ黒焦げじゃ済まなかったカモ」
「ムーンライトセレナーダー、恐るべし。でも、ありがと」
「私もありがと。みんなにありがと」
TV版エヴァの最終回?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
梅雨の切れ目の青空だ。
池袋の魔法学園がアキバへと進出した結果、電気街に復帰した"後輩"の姿もチラホラ。
事件が片付き、今回華麗なメイド姿を見せてくれた面々と魔法学園に御帰宅した帰り道。
「しかし、魔法使いも異次元人も、数式にはカラキシ弱いンだな。ルイナの無茶苦茶な計算結果を誰も疑わないナンて」
「え。テリィたん、ヒドいわ。無茶苦茶?みんな、今の聞いた?銀行が相互信用の債務リスク診断に使うリスク評価に基づいて評価したのに!」
「まぁまぁルイナ。大事なのは彼等が貴女の数学を信じたコトでしょ?」
「そぉよ。盗まれた"霊気能廃棄物"も回収出来て、魔法庁サイドとしては、今回の結果には大満足だわ」
「しかし、ルイナ。貴女、賞も取れる名演技だったわね?」
「だ・か・ら!立派な数学で詐欺じゃないし演技でもナイの。ラギィ、警察の人にソンな言われ方をされたくナイわ」
「まぁまぁ。でも、ミユリさんの必殺技を跳ね返したミラリーヌだけど、爆発的な胸部曲線のオーナーだったょね?」
「え。テリィたん、何ソレ?新型サイボーグが出現とか、そーゆーニュアンスかしら?」
「テリィ様はね、彼女が巨乳だったって仰ってるの。まさか、あの膨らみの裏がシルビーバルタン星人みたいに展開して反射ミラーになるなんて。お陰で私の必殺技が破られて大ショックだわ」
結局、ミユリさんだけが…御機嫌ナナメだw
でも、今回2度黒焦げ髪チリヂリになったミユリさんだけど、バブルなソバージュのイケイケ姐さんみたいで、実は萌え萌えだったけどw
「数字と逝えば、御帰宅代は1人¥2000だょ」
「おっと今は持ち合わせがナイの」
「あ、細かいのが…」
「今回はTOの奢りと逝うコトで」
「それこそ詐欺だょ。いつもじゃないか。ひどいメイド達だw」
おしまい
今回は、海外ドラマでよくある"魔法使い登場編"で"名前を思い出せないあの人"の復活を狙う魔法使い、彼等を追う魔法庁のエージェント、エージェントに協力スル天才数学者、女警部、主人公の必殺技を破る異次元人などが登場しました。
さらに、ヒロイン・敵方双方のゲイ模様、魔法と科学が両立する世界観、ヒロインの無敵の必殺技を破られるなどの伏線も張ってみました。
海外ドラマで舞台となるニューヨークの街並みを第3次コロナ宣言が蔓防に切り替わる秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。