人物紹介 七章
ラウキアン
エルフ少年。晩夏の森のアルウム氏族、その族長の親戚。具体的に言うと父親が族長の弟となる。歴史ある氏族の子。過去には何人もの英雄を輩出しおとぎ話や吟遊詩人の歌になっている。
由緒正しい立派なエルフの家柄であり、外の世界に出るのはこれが初めて。新しくできたアラニオス神の聖地へ派遣された彼がみたものは、エルフ以外が住む光景。それだけでも目を疑うのに、地下にはダンジョンがあり奥底にはダークエルフが住んでいるというではないか。彼は激怒した。周囲の大人や供回りが止めるのも聞かず、責任者であるというヒトの男に食って掛かった。
しばしの問答の末に、ラウキアンはアラニオス神の前に座らされていた。神域だとは聞いていたが、まさか影であったとしてもその姿とお声を聴くことになるとは思ってなかった。あと、なんでダークエルフも同じように座らされているかもわからなかった。
そして直々の御言葉でたしなめられた。良くよく言い含められた後、解放されたと思ったら父上が怒鳴り込んできて、同じように座らされていたのは申し訳ないと思った。
この特異な環境に適応するのには時間がいると思ったのだが、そんな猶予は与えられなかった。あれよあれよと目まぐるしく起きる事件の数々。時にはほかの種族だけでなくダークエルフとまで手を組んで事に当たらなければいけないような問題の数々。
事ここに至って、自分の視野が狭かった事に気づかされた。森以外を見なければならないと。学ぶことは多い。他種族についても、この場についても。
大襲撃時には見習いとしてあちこちの仕事を手伝っている。彼は氏族を率いる立場になる予定だが、だからこそ下を学ぶ必要があるのだ。
ラマス
ダークエルフ少年。地下世界で分散して生活していたダークエルフの一人。燻る熾火氏族の案内によりミヤマダンジョンへやってきた。初めはダンジョンマスターを謀っていると思っていたが、その意志がないと聞いた時は耳を疑った。それは大人たちも同じだったようだが、何やら腑抜けた話を聞かされてその気になってしまった。
そう思ったのは間違いだった、と後々彼は思い知る。この地がいかに得難いか、他種族の協力が得られることがどれだけ有用か。様々な経験が彼の目を覚まさせた。アラニオス神の説教が効いている、とはダークエルフとしては認められない事だったが。
安易な企みは雑なだけ。騙すためには真実を知らねばならぬ。ダークエルフの若人は、日々知識を蓄えている。
大襲撃時は戦士たちに混ざって動いている。まだ戦力とは言えないが、それでもできることはあるし学ぶこともある。
レオナ・クロイツァー
クロイツァー伯爵家当主の少女。クロイツァー家は、ビクスラーダンジョンができた当時に縁を繋いだパトロン貴族。長くダンジョンを支えたが、その地位を妬んだほかの貴族により骨抜きにされた。
ついには議会を回すための人形として、言葉や意志を呪いで封じられてしまう。彼女の父や兄も、そのように扱われた。
ミヤマダンジョンとの一件の後、呪いを解かれる。リハビリが必要だったが、まっとうになった周囲の献身により社会復帰を果たす。現在はまだ勉強中であるが、ダンジョンを支える貴族の当主となるべく日々奮闘している。
オスカー・ビクスラー
ビクスラーダンジョンのマスター。初代の血族だが、それを知らされずダンジョンの奥底で育てられていた。前のマスターが使えなくなった(反抗するようになった)のでダンジョンマスターを継承させられた。この時オスカー自体は眠らされていた。前マスターは継承後「売却」処分された。
その後、必要な時にマスターとして振舞うように、それ以外の時は道化として働くように教育される。そんな彼が偶然見たのがレオナの惨状である。呪われて自分以上に自由のない娘を哀れに思い、自分が守らねばという思いを抱いた。
希望のない八方ふさがりの日々は、ある日唐突に落とされた天罰によって変化し始めた。アラニオス神の名を叫びながら種に変化していく悪党を見ながら、何かが変わる事を確かに感じ取ったのをオスカーははっきりと覚えている。
現在は、腐敗が一掃されたビクスラーダンジョンを運営中。色々足りなくなったが、金はあるので何とかなる。命令を聞く配下も、アドバイザーもいる。大襲撃も、防衛設備を充実させたので油断はできないが凌ぎ切れる予定。
テオ
ビクスラーダンジョン、下級貴族の血筋。便利屋として色んな工作をさせられていた。そうしないと生きていけなかったし、ダンジョンから追い出されるから。そんな努力も、ミヤマとサイゴウへの工作の失敗により瓦解する。スケープゴートのように処刑されそうになったが、更なる面倒事を押し付けられたのを起死回生の一手として利用した。
騒動が終わった後は、手切れ金を貰ってダンジョンを出た。流石にビクスラーダンジョンに残る度胸はなかった。帝都の地下街で細々と暮らすつもりだったが、ヨルマに捕まる。以後、仕事を振られることに。賃金はもらえるが割とハードな仕事にぼやかずにはいられない毎日。それでも、かつての状態よりはましだが。
ウド・フンペ子爵
ビクスラーダンジョンを支配していた委員会の一人。内部政治や商業派閥と繋がりばかり集中していて、外に対する注意は疎かだった。メインでかじ取りしていた連中は、不遜にもアラニオス神の聖地に手を出して天罰。
トップの地位が転がり込んできた所に、アマンテの糸が絡みついた。テオの裏切りもあり、あっという間に破滅一直線。乾坤一擲を狙ってミヤマの首を取りに行ったがそれも失敗。何もかも失った……のだが、捨てる神あれば拾う神あり。もっとも神は神でも彼らにとっては疫病神だったが。
ミヤマダンジョンでの奮戦を知ったオリジンが、奴隷兵として彼らを回収したのだ。本来ならば刑務所で長い刑期を過ごした後追放される予定だったが、短くなるならとこれを了承。
現在は次元迷宮で一兵士として働いている。ミヤマダンジョンを襲った時は贅肉だらけだったが、過酷な生活を数年続けた結果大分スリムになってしまった。時々死ぬけど復活させられるから結果的に元気である。
ラケルタ
大蜥蜴の亜神。生贄の娘を食べて思考を。蛇の亜神を食べて知恵を。ヒトのやさしさを食べて思いやりを得た。
地球の田舎で配下のモンスター達と信者に囲まれて暮らしている。影響地域は田舎に限定しながらも順調に広がっている。だが、そこにトラブルの話が舞い込んで……。
昼神と猫屋敷
内閣府から来た男たち。二人とも官僚なのだが、普通のコースから外れて面倒事の対処を押し付けられている。結果的にそれが、非常に重要なコネクションを作ることになるのだが……。
現在、ゲストと共にそのトラブルに対処中。
決戦世界のダンジョンマスター 終章 9/1より公開です。よろしくお願いします。