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【完結】決戦世界のダンジョンマスター【書籍一巻発売中】  作者: 鋼我
六章 慢心という名の落とし穴
154/207

設定資料・国家

ちょっと最近上手く書けないので、リハビリに。

 決戦世界には大小さまざまな国家が存在する。この世界にある以上、その存在は盤石とは程遠い。最大国家であるアルクス帝国ですらも、滅亡の可能性は存在する。


 今回はそれらの国家について、規模ごとに解説していく。なお、この場に限り存続力という表現を使用する。文字通り、どの程度その国が存続できるかを表す。



存続力0 国未満


 知性ある者達の集団。互いに支え合う共同体の事。所属する人数は三百未満まで。形態はさまざまで国家に所属しない村や集落、物資を求めて放浪する部族などがあげられる。


 人数や物資が少ない為、存続力は高くない。突飛な戦闘力を持つ個体が所属している場合はそこそこあるが、それだけで集団を守り切れるわけではない。


 これに所属する者たちの生活は困窮している。明日の食事や寝床にも困る事が多いだろう。よりよい明日を望む事すら難しい。


 モンスターや他の武力集団による襲撃を受ければ、たちまち瓦解の危機にさらされる。単体で存続または発展するのは、よほどの運が無ければ望めない。


 作中ではミヤマダンジョンに合流する前の「燻る熾火氏族」が該当する。



存続力1 小国


 指導者、武力、支配地域、そして法を確保するに至った集団。小国が成立することはそれほど珍しい事ではない。ある程度の統率の取れた傭兵団が、周辺住民をまとめ上げる。その後学識のある者を呼び寄せ、本拠地を定めれば最低限の形は整う。


 決戦世界には、どの国家も所有を宣言していない土地というものはあちこちに存在する。その土地が知られていなかったり、あるいは支配者が滅んだり。ドラゴンなどの強力なモンスターの支配地という場合も散見される。


 最後はともかく、そういった土地を確保できれば小国は成立する。もちろん、国家を継続できるかはまた別の問題である。


 小国に所属する者たちは、最低限の衣食住を確保できるだろう。そうでなければ集団として機能できないだろうから。王やその周辺のみが、多少マシな生活を送れる。しかしそれは長く保証されるものではない。


 作中では該当する組織は存在しない。内乱時のバルコ国は、各貴族がこのような状態に陥ってはいた。



存続力2 国


 小国の寄り合い所帯。あるいは突出した組織が他勢力を武力併合して誕生する。この時点でやっと国家としての体裁を取れるようになる。


 ある程度広域の土地を確保するため、ダンジョンと接触する確率が高くなる。友好的な関係を結べたのならば、交流によって国の発展は加速する。失敗したり敵対すると帝国が介入して国は滅亡する。


 ダンジョンはさておくとしても、国内外の交流と流通は必要に迫られ活発となる。経済の動きは豊かさと争いを生むだろう。国家という組織のかじ取りは、いよいよ複雑困難となっていく。


 貧富の差は大きくなるもの、市民はやっと人生というものを実感できるレベルの生活を送る事が可能になる。生まれ、学び、成長し、結婚し、子供を育て、老いて死ぬ。財産を蓄え、子に継承する。


 貴族は、体裁や礼節というものに気を配れるようになる。余裕が生まれ、慢心して身持ちを崩す者も現れるようになる。


 崩壊前のセルバおよびバルコ国がこれに該当していた。現在両国は復興中であるが、それでも存在力1以上ではある。



存続力3 大国


 周辺国家を圧倒するほどの戦力および経済を保持するに至った国家。ここまで成長すれば、少々の事件では滅亡したりはしない。あくまで少々、であり複数重なったりすると容易に傾いたりもするが。


 このレベルになると複数のダンジョンと交流を持っていたりする。国家としては良好な関係を保つが、地域やダンジョン同士となると話は異なる。人が三人集まれば派閥ができるという。それぞれが強力な戦闘集団であるダンジョンが、常に仲良くやって行けるかと言えば否である。


 自分たちと繋がりのある地域の為に、争い合うのも珍しい話ではない。それが自分のダンジョンの発展に繋がる事もあるのだからなおさらだ。


 この様に国内に争いの火種を抱えるのも大国の特徴だ。分裂して国や小国が乱立するのもよくある話である。様々な権力者が政治の綱引きを始め、ともすれば国の屋台骨をへし折る事となるだろう。


 そういったトラブルを回避できるのであれば、大国での生活は安定したものになる。市民は多少なりとも贅沢や娯楽という物に触れることができるだろう。専門的な技術や学業を修めるのも夢ではない。


 貴族の生活はきらびやかなものになっていく。見栄を張る必要が強くなっていくともいう。比例して、保有するべき戦力もまた増えていく。優秀な戦士や魔法使いなどを抱える必要も出てくる。


 そして王ともなれば、その権力と戦力は国内でも突出したものとなる。そうでなくては国をまとめられないからだ。帝国製の武器や魔法などを保有する場合もあるだろう。


 セルバおよびバルコ国の東にある国家がこれに該当する。ブラントーム侯爵家もこのレベルであるが、防衛力に限っては存続力4に匹敵する。



存続力4 城塞国家


 ドラゴン、亜神、巨人、三大侵略存在の襲撃を想定し防衛できる国家。国土および経済が大国より劣る場合もあるが、防衛力はこちらの方が上。いかに大きな国であってもこれらを撃破できなければ滅びるのみである。


 街づくりや国土の整備も防衛を第一に考えている。ダンジョンも積極的に利用する。そうしなければ滅びると分かっているからだ。


 この域に入ると市民も防衛意識が強くなる。個々人の武力の向上、いざという時の避難経路の確認や持ち出し物の準備。襲撃後の復興に関する考えなど。襲撃は来るのが当たり前、それに対応するのも当然。そのような認識を強くする。


 貴族や王族も同じだ。例え他国に笑われようと防衛第一の国造りを進める。そのように動かない国は消えていくことを知っているからだ。


 ダンジョンとの繋がりを強くすることから、必然的に帝国とも交流を活発化させる。それが経済を活性化させ国を支えていく。ハイロウの流入も必然的に増え、英雄と呼べるような戦力も常駐するようになる。


 歴史や伝統といった言葉に重みをもたせられるのは、この領域になってから。一度の大襲撃も越えられないようでは話にならない。


 作中で登場しているのは、南の大島。大商人にして大魔導士、エルダンの冒険仲間であるラニが住まう場所である。



存続力5 ダンジョン国家


 国と防衛の主軸、どちらもダンジョンを据える特異な国家。大抵において、国の発生からダンジョンが関わっている場合が多い。


 アルクス帝国からの技術や人員の流入が必然的に増える。一般的な国家とは隔絶したそれらは、発展と防衛に大きく寄与する。その分、依存度合いも増えるので場合によっては国ごと乗っ取られる危険性もある。


 帝国貴族の戦力と経済力は、国や大国レベルである事がざらにある。ダンジョン国家と言えども際限なく利用していれば彼らの要求を断れなくなるだろう。


 ダンジョンは、この世界において最高の防衛設備である。元々その為に生み出されたのだから当然なのだが。その為ダンジョン国家の存続力はその成長に合わせて上昇していく。


 ダンジョン国家での生活は、ほかのそれとはまったくの別世界となる。舗装された道路、衛生的な水道および下水処理、安定した食料供給、遅延のない運送、高い医療技術、最新の魔法技術、異次元のダンジョン設備。民も貴族もこれらの恩恵にあずかる事ができる。安全に、モンスターや侵略存在の脅威から守られて。


 こんな場所で生まれ育てば、たとえハイロウであっても愚か者として育つ。そうしない様にするのがダンジョンマスターの仕事なのだが……。


 当然ながら、ダンジョンの滅亡は国家のそれとほぼイコールとなる。帝国の協力も失われる為、多くのアドバンテージが消滅する。解体されて小国が残れば幸運と言えよう。


 ダンジョンはめったな事では外的要因で滅んだりはしない(発生一年未満の初期を除く)。大襲撃等も、存続力5ともなれば十分乗り切れる。なので問題は内部に発生する。ダンジョンがもろくなる原因は、ほとんどの場合はマスターの代替わりによって発生する。


 代替わり後のダンジョンは、内部組織の権力争いが激化する。次のダンジョンマスターは誰か。いつ変わるのか。そういった事柄が常について回る為、運営に支障をきたすようになる。平均三代から五代目あたりで、ダンジョンは内部崩壊する。


 このような事はダンジョンメイカーグランドダンジョンコアとしても遺憾であるため監査部に調査と指摘をさせたり、侵略存在の支配する世界への逆侵攻に参加させて刺激を与えている。


 しかしながら、自滅するダンジョンは比較的まだましだ。最悪なのは自勢力の拡大のために他国に侵攻を始める場合だ。これによってほかのダンジョンの成長や防衛に悪影響を及ぼすようでは、放置はできない。


 この場合、オリジンは速やかにかつ密やかにダンジョンの排除に動く。その手段は様々。国家で内乱を起こさせたり、商業派閥(大蜘蛛)を使ったり。アルクス帝国の内乱を利用して始末することもある。最近は凄腕のドルイドを雇用できるようになったので、ピンポイントにマスターのみを暗殺したりもしている。


 このように、ほかとは根本的に別のウィークポイントが存在するのがダンジョン国家である。



存続力10 アルクス帝国


 世界最古にして最大のダンジョン国家。あらゆるダンジョンの支援も行うこの国家は、決戦世界の要である。


 三千年蓄えた知識、技術、物資。さらにハイロウという特殊な人材。これらを活用することでほかのダンジョンは極めて短時間で戦力化が可能。長期的な成長を考えなければ、粗製ダンジョンを大量配備することもできるのだ。


 防衛という点で、ここより強固な場所は決戦世界では存在しない。騎士鎧に外見を偽装したパワードスーツに身を包んだ守護騎士団インペリアルガード。個人でドラゴンを倒せる英雄達。魔法大学で研究開発した新魔法。一般人ですら、常識を超えた戦闘力を保有している事が珍しくない。


 これらの戦力を移動させる手段も各種取り揃えている。東西南北に延びる列車の線路。飛行船による空路。少数ではあるが、動力を備えた船すらも存在する。加えてダンジョン間を繋ぐ転送装置がある。


 大襲撃で各地が多少の損耗を被った事はある。しかしこれまで、帝都が陥落した事は一度もない。なんといっても、かの地には始まりのダンジョンがある。オリジン自慢のモンスター達は亜神に匹敵する。加えて、本人の戦闘力も神の領域に到達している。現人神の呼び名は伊達ではない。


 帝国および帝都での暮らしはダンジョン国家以上に別世界だ。文化および技術レベルが地球以上であるから、あらゆる質も高いものとなっている。……しかし、他国とはある点において大きな問題がある。


 帝国臣民には、強さが求められるという点だ。それは武力でもいいし、魔法でもいい。それらが無くても金を稼げるならば力があると認められる。無能無力であってもいいが、何かしらの労働はして当たり前。足手まといなどはもってのほか。先天的、または後天的なハンデ? 帝国の技術があれば大概何とかなる。なので働け。


 貴族や武人は挨拶のように決闘する。ちょっとしたもめ事も決闘で解決する。理由がなくても決闘することがある。


 かつてミヤマは「上品な蛮族共」と帝国を評した。これは的を射ている。知恵も技術も能力も金もある。自分たちが蛮族であるという自覚もある。それがアルクス帝国である。


 こんな国家であるから、内部には争いの火種があちらこちらで燻っている。ダンジョンを求めるハイロウ達は勢力争いに余念がない。商人たちは帝国の巨大経済の波に乗って利益を求める。各地のダンジョンは力を蓄えるために切磋琢磨する。ダンジョンを乗っ取って自分たちの国を手に入れるという内乱は、最近起きて鎮圧された。が、同じ思いを抱く者はそれなりに居るのでまた時間が置けば再び発生するだろう。


 弱い人間には、生きにくい国である。だが当然だろう。ここは決戦世界であり、帝国はその中枢だ。この星、この世界は人のものではない。生きる場所ですらない。決戦場なのだから。


書籍化情報

出版社:ぶんか社様 レーベル:BKブックス 発売予定日 4月5日


https://twitter.com/tendou011/status/1634121290247438336

こちらにて、キャラクターイラストを公開しております。よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 戦時国家ですらなく戦場に居座ってるわけでひどい話だ
[一言] 絶賛戦争中の敵国と接する国境にある砦で酒呑んでグダグダしてる奴いたら蹴り出すよね。
感想一覧
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