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陽神装甲ソルテラス〜特撮ヒーロー異世界で神話となる〜完全版  作者: ソメヂメス
ヒーロー番組の主演が人生の転機すぎた
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加賀美 大地 生存報告会という名の飲み会

 カウンターとテーブル席を合わせて16人が定員の居酒屋マンボウ。料理が美味いと小さいながら評判の店だが今日は貸切だ。男女6人ずつで12人が集っているが合コンではない。


 一週間前「陽神装甲ソルテラス」の打ち上げパーティーに参加し、加賀美 大地が光に包まれて消えた場面に居合わせたメンバーと大地の関係者だ。


「みんな忙しい中集まってくれて本当にありがとう。宮下君から話は聞いたと思うけど行方不明になっていた加賀美君の消息が分かった……って言えるのか? 正直言って冗談にしか聞こえないし誰が信じるんだよこんな話し!」


 チーフプロデューサーの柿本が挨拶しながら頭を抱える。みんなの目の前で消えた大地が異世界に召喚されていて、ソルテラスに変身してデーモンを必殺技で倒したと聞き「そうだったんだ無事で良かったね」って言える人間なんてまずいない。


「でも柿P、大地君が光に包まれて消えたって時点でだれも信じてくれないと思うよ。とりあえず当事者がみんな集まったんだからビールでも頼もうよ」


 メインの脚本家である小浜 忠が生中を注文すると集まった面々が次々に好きな飲み物を注文しだす。みんなに飲み物と先付けが行き渡りひとまず乾杯だ。


「じゃあ無事に収録を終えたソルテラスと加賀美 大地君の無事を祝って乾杯!」


 チーフディレクターの杉内 初美が元気に乾杯の音頭を取りグラスを合わせると、各々一気に飲み干しおかわりを注文したり料理を頼んだり談笑したりして普通の飲み会になっていた。


「話しだけだとやっぱり信じられないと思うから資料を用意したわ。店長、ちょっとモニター借りるわね」


 居酒屋マンボウはオンラインゲームのオフ会に使われることが多いので(3割は店長主催)PC対応の大画面テレビが設置されている。恵子が会場をマンボウにしたのはこのためだ。店主も口が硬く信頼出来るので芸能人のお忍びにも使われている。


 恵子が店のモニターにPCをつないでいる様子を見ながら年配の男性が柿本Pと杉内Dに声をかけた。


「なあ、あの姉ちゃんがケーコって娘か? 女っ気の全く無い大地が珍しく女の話しするからどんな娘か気になってたんだよ」


 声をかけたのはこの集まりでは唯一ソルテラスのスタッフでは無い人物だ。大地が所属するNAPの代表で往年のアクション俳優である万場 剣一である。


「そうですよソルテラスの特殊効果と設定にも関わっている宮下 恵子さんです。同年代のスタッフや若手役者でよく遊びに行ってたから仲良くなったのかな」


「この作品、少数精鋭だからかスタッフとキャスト距離が近いのよね。柿本さんが気位の高い人や変なこだわり持った人を入れなかったのが勝因だと思うわ」


「大地は真面目で面倒見がいいから結構うちの女共にモテるんだよ。なのにあいつ全く女に興味無い感じだから、ホモなんじゃないかって言いだす奴もいたくらいなんだが、なるほどなぁそういう訳か」


 アクションとスタントの事務所なだけあって、ウチの女優や研修生の女子はみんなスレンダーな体型か筋肉質だからなー、とタユンタユン揺れる恵子の胸を見て「あいつオッパイ星人だったのか」と、呟き1人で納得していた。NAPの中で加賀美 大地は巨乳好きだと広まるのはアッと言う間の話だ。


 大地はもともと女性が苦手で、明るく裏表の無い恵子となら気楽に話せるだけなんだが性癖としてはまともなので支障は特にないだろう。本人が知らない間に大地は「オッパイ星人」にされてしまった。


 PCとモニターの接続が終了し画面に画像ファイルが映し出された。


「はい! みんな注目! 大地君が異世界に召喚されたって話し、光に飲まれて消えた現場見てても信じ難いよね。だからこれを見て判断して」


 モニターに映像が映し出された、左手にソルコマンダーを装着した大地がいる。


「ソルテクター! コネクティングデバイス作動!」


「ソーラーエナジー出力最大!」


「陽着!」


「陽神装甲! ソルテラス!」


 ソルテラスの変身シーンを全員が真剣に見ていた。変身が完了したところで一度動画を止める。


「大地君の服装消えた時と同じだったね」


「それよりもあのソルコマンダーとソルテクターの質感見たか!? どんだけ金かけたらあんなの作れるんだよ!」


「CGだとしても凄すぎるよ。あのクオリティーの映像作ろうと思ったら変身シーンだけでソルテラスの全予算使い切るレベルだよ」


 そして次は戦闘シーンだ。いかにもな悪魔達をトルネードキックとフレアバスターで瞬殺する。


「やっぱり特撮やCGじゃないな。このクオリティは作れない」


「それよりもソルテラスよ! 武器とか放送されたものと同じじゃない! なんで私達が手掛けたソルテラスが本物になってるのよ?」


「そのことについては後で説明があるよ」


 ボスキャラである、アークデーモンを必殺技「プロミネンス斬」で斬り捨てた後はアリエイル王女の洗礼の儀式や後片付けをダイジェストで見た。


「ソルテラスの能力は第1話の状態だな。本編では段階的なパワーアップやサポートメカが追加されるんだけど、結構強そうな悪魔を瞬殺したんだし現状では大丈夫かな」


「その事についてはさっきの答えもあるから次の動画を見てね。感想と質疑応答は動画を見終わってから受け付けるから」


 画面には光り輝く紋章と女神像が石造りの部屋が映っている。


「大地君はこの部屋に召喚されたんだよ。敵を倒したから帰してもらおうと思ってこの部屋に来たんだ」


 恵子が補足の説明をすると女神像が強く光出し、石像だった身体が白く美しい肌になって太陽の輝きのような金髪と金の瞳をした美女になった。


 オォォォォ! っと歓声が上がった瞬間、美人の女神様がもの凄い勢いで土下座したのを見て、全員の目が点になる。その後泣きながら謝罪する様子をポカーンと見ていたが、話がこの世界パンゲルアの成り立ちや創造神ヘメラニュクス、太陽神ソルテ、地球の成り立ちと進むにつれて顔つきが変わっていく。


 そして地球がパンゲルアよりも高次元な世界であり科学理論が後付けであること、ソルテラスの力が使える理由、世界に力をつける方法、大地が地球に戻る方法に話が進む。


 そして大地がソルテ様の力を強化してパンゲルアを平和にし、地球に帰るために冒険者としてこの世界の住民になり邪悪と戦うことを決意したところで動画が終了する。


「ザックリ言えばパンゲルアっていう世界は未完成、管理者であるソルテ様も未熟で発展途上。世界に力をつけようとしたら悪いものまで呼んでしまうからそれをソルテラス、加賀美君がやっつけるってことか」


 シナリオライターである小浜氏が簡単にまとめると、美術スタッフである矢野 健太と音響の清水 由美が食いついてきた。


「これって剣と魔法の世界ですよね! 魔法とかモンスターっているんですか?」


「人間以外の知的生命体は? エルフはドワーフは? 獣人とかはいないのかしら?」


 食い気味に2人が聞いてくると恵子がPCを操作し、スケルトンを聖魔法のようなもので駆逐する神官達の映像が流れる。


「すげー! スケルトンだぁ! 聖魔法でやっつけてる。負傷者の傷が治癒魔法でふさがっていってる!」


「むこうでは法力って言うらしいよ。あと動画には無いけどデーモンは魔導師が呼んだらしいから魔法も存在するよ。じゃあ次は2つ流すから続けてみてね」


 恵子は健太に説明しながらPCを操作して再び動画を流す。まずは街道を行く画像で道行く人達の中にエルフやホビット、獣人や半獣人がいる画像だ。


「エルフ……ホビット……ケモミミ、ケモ尻尾……」


 由美の鼻息が荒いのは無視して次の動画に移る。大地が盗賊団から黒猫姉弟を救出するシーンだ。


「ちょっとそのアングルじゃ乳首が見えな……いてぇぇえ!」


 スパーン!!……不適切な発言をする健太の後頭部に杉内Dのスリッパがクリティカルヒットする。


「卑猥にならない程度に色気がある、いいカメラアングル」


 カメラマンの伊藤さんは動画のカメラワークに好感触だ。


「黒猫姉弟! 無茶苦茶可愛いい最高……」


 由美のテンションがおかしいところで、万場が冷静に恵子に尋ねる。


「姉ちゃん、盗賊退治の時の大地の身体能力と反応速度異常じゃないか? ちょっとありえないレベルだぞ」


「それは地球が高次元の世界だから地球から来た大地君は全ての能力が相対的に上がるんです」


「宮下君、この動画が作り物でないことは分かった、映像のプロがこれだけいて見破れないんだからね。ところで君はこの画像をどうやって入手したんだ?」


 柿本Pの質問にみんなが凍りついた。確かに普通に動画を見て納得していたがこの動画の存在は確かに異常だ。そして恵子が今までとは違う真剣な表情と口調で話す。


「これからがこの集まりの本題です。これを見て下さい」


 モニターにはアマテラネットというブラウザーのようなものが映されていた。


「アマテラネットは大地君の召喚にこちらの世界の天照大神が手助けした事によって融通されたソルコマンダーを通してテレビ電話やメールのやり取り、ソルコマンダーやソルテクターの強化が出来るツールです」


 恵子の説明を全員が真剣に聞く。


「私の部屋でしか使えないかと思ったけど大丈夫みたい。私はこれを使って大地君と既に接触しソルコマンダーも強化しています。でも向こうの世界とつながるにはポイントを消費するんです」


 今はポイントがほとんど空の状態だが大地が活躍すればいくらでも貯まるらしい。そこで恵子はポイントを多く貯めて大地、ソルテ様とスタッフ一同をテレビ電話で引き合わせ対策会議をしようと言うのだ。


「宮下君、みんなで話し合いをしたとして何かあるのか?」


「上手く保証はありませんがソルテ様自身の能力の引き上げと大地君との相互連絡機能の強化をするのに考えがあるんです」


 柿本Pは少し考えて口を開いた。


「だったらここにいる全員は難しいとは思うが、宮下君の招集があればいつでもここに集合出来るようにしてくれ。出来れば今日来れなかった者にも声をかけてほしい」


「内容聞かなくて了承しちゃっていいんですか? みんな忙しいから無理かもしれないって思ってたのに」


 恵子は目に涙を溜めて言う。


「大地さんが帰って来るならゲームの時間削ってでも来ます」


「俺も!」「私も!」「他の人にも声かけるわ!」「呼ばれたら仕事サボる!」


「ありがとう……みんな」


 恵子の涙腺が崩壊しそうになった時、不意に万場氏が話す。


「そうそう柿本さん、大地が消えた件だけど、どこにも発表してないよね」


「ええ、どうしたものかわからないんで」


「じゃあ元々ソルテラス終わったら海外放浪の旅に行く予定だったし、うちでそう発表しとくよ。プライバシー重視の為、マスコミに行き先と連絡先は公表しないって事で」


「世間的にはそれでOKだね。宮下君、何かか必要な事かあればいつでも僕らを頼ればいい、加賀美君に無事に帰って欲しい気持ちはみんな一緒だよ」


 話がひと段落してみんなそれぞれ談笑しながら酒や料理を楽しむ。


「良かったね、ケーちゃん」


「ありがとう、サッちゃん」


 恵子に声をかけたのはソルテラスの主題歌の作詞作曲とボーカルを勤め、BGMの作曲もするシンガーソングライターのKARAKOこと本名武内 幸子だ。恵子とは親友である。

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