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陽神装甲ソルテラス〜特撮ヒーロー異世界で神話となる〜完全版  作者: ソメヂメス
ダイチ ロクジョウの町で冒険者となる
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闘神ソルテラス

 オリアーティの襲撃の翌々日、ギャバンは疲弊してベッドに横たわっている。バンパイア化の宝玉の魔力に対抗した為に気力を使い果たし、肉体の変化を気合いで抑え込んでたので身体的ダメージも深刻だった。


 普通の人間なら数秒で心身ともにバンパイアロードに変化させる強力な魔道具の効果に気合いだけで対抗したこの男にとっては化け物いう言葉も褒め言葉にしかならないだろう。


 今回の犠牲者は傭兵4人がバンパイア化の後に討伐された他に死亡者は0だった。バンパイアに噛まれた人間も少なからずいたがソルテラスの聖なる光による浄化によって救われた。


 ギャバン自身もバンパイア化直前で聖なる光に救われたのだ。もはやギャバンにとってソルテラスは世界を救済するために天から舞い降りて来た闘神以外の何者でも無いのである。


 今、ギャバンには会って話を聞きたい人物がいるのだが現在は面会謝絶状態である。一刻も早く回復するために栄養のあるものを食し、薬草茶を飲んで身体を休めている。




 事件の翌日は厳戒態勢が解かれておらず、一般人の外出と町の出入りは制限されていた。バンパイアの生き残りの有無、被害の状況の確認などで騎士や役人、調査依頼を受けた冒険者以外は町を歩くことは出来なかった。いつも賑やかで活気のあるロクジョウの町とは思えない静けさだ。


 その翌日の昼過ぎにようやく厳戒態勢が解かれて商店や飲食店が営業を開始し、町に活気が戻り始めた。


 そうなると大衆は酒を酌み交わしながら噂話に花を咲かせるものである。今回は一般人の被害が皆無であった事と無敵の英雄であるギャバン卿がピンチに陥ったこと、神の戦士の活躍で町が救われたことが話題の中心だった。


「聞いたか!?今回のバンパイアの襲撃、コーガ王国を滅ぼした黒幕の仕業らしいぜ!」


「コーガとツゲの領土を焼け野原にした禁呪の用意までしてたって話しだぜ。やっぱり門を攻めに来たバンパイアを撃退出来たのがデカイよな」


「自力でバンパイア撃退出来たのは冒険者ギルドと騎士団だけみたいだ。兵士も傭兵も神の戦士の助けが無かったら門を突破されてたと思う。被害者や傭兵がバンパイア化しかけていたのを聖なる光で治したらしいよ」


「ギャバン様がバンパイアになりかけたって聞いたんだけど本当なのか!?」


「ええ、普通の人なら一瞬でバンパイアロードになってしまう強力な魔道具の力でね。ギャバン様は気力をつかって自らのバンパイア化を阻止していたらしわ」


「もうダメだっ! て時に神の戦士が放った聖なる光で助かったんだろ。バンパイア化を一瞬で治療するなんて、法力の域を完全に超えてるよな」


「正に聖なる光ね。でもギャバン様、バンパイア化を阻止するのに精魂尽き果ててしまってベッドから起きられないらしいわ」


「噂では黒幕は元ツゲ王国の宮廷魔導師オリアーティだって話だぜ」


「ウソだろ! オリアーティはコーガ、ツゲを滅ぼした禁呪で一緒に消えたんじゃないのか!?」


「それが生きてたのよ! あ、不死の怪物が生きてるのかってツッコミは無しで」


「エンリーク神殿でアリエイル様の洗礼の儀式を襲撃したという噂もあるくらいじゃぞ」


「人族至上主義者共を裏で操っていたとも聞くぜ、他にも色々悪いことやってたんじゃないのか?」


「そんで結局オリアーティは逃げたのか?」


「神の戦士が光の剣を振るったら光に包まれて浄化されたって話じゃぞ」


「ギャバン様が神の戦士の事を、闘神様って言ってたらしいぜ」




 ムタミの館の主人の個室、防音処理をされた部屋にムタミ、カムリ、キースの3人が集まっている。例の事件の一部始終をギャバンと共に見届けたのはこの3人だ。


「カムリよ、噂の広がり方はどうじゃ」


「いい感じで広がってますよ、噂って言ってもほとんど事実ですがね。酒場や市場では話題の種になってるんでもう町全体に広まっているんじゃないかと」


「ヘンに隠したり嘘入れるより真実に近いモノを噂として流すほうが町のためになる。ムタミ様はやっぱり頭いい」


 ムタミは町の住人に安心感を与えるために、真実に近い事を噂として流した。隠していることはオリアーティのバックに謎の組織が存在することくらいだ。


「それにしても闘神様か凄かったな……」


「うむ、正に闘いの神であった。町に神殿を作った方が良いかもしれん」


「ダイチは傭兵ギルドに助っ人に行ってたんだよな」


「一番劣勢じゃたから手助けに行ったらしいが、闘神様に助けられてなんとか持ちこたえたらしい。やはり魔法や法力を使える者を分散させるべきじゃな」


 2人に分からないようにキースは声を殺して笑っていた。



 場所は変わって冒険者ギルド、ここでは祝勝会が盛大に行われていた。なんと言ってもギルドのメンバーだけでバンパイアロードを撃退したのだ、大勝利と言っても差し障りの無い戦果である。


「イヤッホー! 見たか冒険者の実力を! 傭兵ギルドなんざ4人もやられてやんの!」


「自力でやったのは俺たちと騎士団だけだぜ! しかも被害無しでだ!」


 自分たちの戦果を自慢しまくる冒険者達だがBランク以上は冷静だった。


「今回の戦果と被害は単に相性の問題だろ」


「ああ、相手が重装歩兵や騎士団だったら戦果と被害は逆になっていたかもしれん」


 冒険者は様々な怪物と戦っている、バンパイアとの戦闘経験のある者も少なくない、その一方で軍隊のような組織だった集団戦や対人戦闘は得意では無い。そちらは傭兵や騎士団のほうがが得意だ。


「魔法使いや、法力の使い手が偏っていたのも戦果に影響したわね」


「今回は緊急事態だったからな、この町のトップは優秀だから次はちゃんと対策を立てるだろう」


「次ってバンパイアロードの襲撃なんざ度々あったら堪んないぜ、そういえばあの時ダイチがいなかったよな今日も来てないし」


「ダイチだったらあの時は傭兵ギルドに助っ人してたらしいぜ、幹部のバランさんと仲良が良いからな」


「今日は門の通行が自由になってすぐに馬に乗って出かけていったよ」


「2、3日神殿に行くって言ってたな」


「神殿?やっぱり噂通り高位の神官騎士なのか?」


「さあな、それよりも俺も神の戦士見たかったなー」


「闘神様だって話だぜ」


「ちょっとは苦戦するべきだったかな」


 ギルドの宴会は笑いに包まれ夜遅くまで続いた。




 どうにか普通に生活出来るレベルまで回復したギャバンは自室に傭兵ギルドの幹部であるバランを呼び出していた。


 傭兵ギルドに被害が出たのは相性が原因だとギャバンなら分かっているはずだから、お咎めでは無いと思うが一体何だろう。バランはギャバンの部屋のドアをノックした。


 ギャバンの自室は防音になっているので何か秘密の話かもしれない。部屋に入るとギャバンがソファに座っており向かいに腰掛けるように促された。


 メイドが紅茶を入れて退室するとギャバンが口を開く。


「今日は良く来てくれたのである。聞きたいことがあるのだが、まずは茶でも飲んでくれ。良い茶葉が手に入ったのである」


 バランが紅茶に口をつけたタイミングを見計らってバランが話しかける。


「ところでダイチが闘神様の化身である事をどれだけの者が知っておるのだ?」


 バランは盛大に紅茶を吹き出した。


 野郎! 狙ってやりやがったな! ギャバンを睨みつけたが当の本人は楽しそうに笑っていた。


「あのタイミングなら誤魔化す事は出来ないのである」


 バランは観念して話すことにした。


「エンリーク神殿のフランチェスコ神殿長と聖女シルフィーを筆頭に神官と神官騎士、あとは私の村の住人達ですね」


「うむ、分かった。やはり闘神様がダイチだという事は秘密にしておいた方が良いのだな」


「はい!闘神様がそれをお望みです」


 バランもソルテラスを闘神と認定したようだ。


「ならば吾輩は冒険者ダイチを影ながら支援し、地上界で闘神様が活動しやすいよう手を尽くすのである!」


「ところでギャバン様はどうしてダイチが闘神ソルテラス様の化身であることが分かったのですか?」


「太刀筋である! ダイチの太刀筋は未だ見た事が無い恐ろしく洗練されたものであった。闘神様の太刀筋と全く同じものである、神の国の剣技で間違いなかろう!」




 ダイチは自分の神格化が物凄い勢いで進んでいる事など知らずに、エンリーク神殿にハヤテを走らせる。恵子から神殿に行くようにとメッセージを受けたからだ。


 それがこの世界を変革させる第一歩であることをまだ誰も知らない。

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