決戦オリアーティー! 必殺! プロミネンス斬!
強烈な光を放って名乗りポーズを決めると周囲は凍りついた様に固まっている…………あれ!? 俺、もしかしてやらかした!? 一瞬心配になったがギャバン卿の絶叫で時が動き出した。
「闘神様だあぁぁぁ!! 闘神様が降臨されたぁぁぁ!! 」
えっ!? 神の使者とか神の戦士から闘いの神にランクアップしちゃう!? ギャバン卿とムタミさんは跪いて祈りのポーズでマジ祈りしてるし、カムリとキースは土下座!? いや、イスラム教の祈りみたいなポーズをしてる。さっき着替えたんだろうけど、民族衣装みたいな戦闘服着てるし文化、民族的な祈り方の違いなのか?
呑気に考えてしまったが今は敵ボスの目の前だ、オリアーティらしき男を見ると呆然としていたが、我を取り戻すと憎しみに満ちた目で俺を睨みつける。
こいつ見覚えがあると思ったらゴブリンをコントロールする杖を作っていた秘密基地を視察に来ていた奴だ。つまり謎の組織の幹部クラスだな。
「貴様がエンリーク神殿で女神ソルテの力を手に入れるのを邪魔した神の戦士なのか!?」
「そうだ! と言うことはズーランとアークデーモンを神殿にけしかけたのもお前達の仕業だったんだな!」
「ソルテの宝珠の入手に失敗したことによって計画は大きく軌道修正せねばならなくなった! 全て貴様のせいだ、その力を奪って宝玉の替わりに使ってやろう! 死ねえい!」
4人のバンパイアロードとオリアーティが一斉に俺に向かって強力な魔法を放つ!
「ブーストジャンプ!!」
10数メートル飛び上がると俺がいた地点に直径3メートル程のクレーターが出来ていた。なかなか物騒な攻撃をしてくるな、相手が体勢を整える前に反撃だ。
「フレアバスター!!」
最高到達点で後方伸身宙返り決めながら右腰のパーツを展開して、光線銃フレアバスターを構えて空中で発射するとバンパイアロードの1人に見事命中した。胸を赤い光線で撃ち抜かれたバンパイアロードは光の粒子になって消滅する。
落下しながらもう一撃!今度の奴はバリアーを張って防御したが後ろに吹っ飛んでいった。
着地の瞬間をねらってバンパイアロードの剣士が俺に切りかかるので体を丸くして着地しながら転がって攻撃を躱し、足払いで体勢を崩す。
「シャイィィィン!ナコォォォォ!!」
シャインナックルがヒットした瞬間に敵は光の粒子になって消滅した。連続バク転とバク宙で後方に移動して間合いを開け着地と同時に決めポーズを取る!
オリアーティと残りの部下2人は驚愕の表情で呆然と立ち尽くし、ギャバン卿とあとの3人は祈りポーズでこちらを見ている。
「…………なんだ? その戦い方は? 隙だらけの様でいて一切隙がなく、無駄な動きが多いのに全く無駄に感じない。まるで踊りを踊りながら戦っているようだ。しかも強化したバンパイアロードを一撃で消滅させるだと!?」
オリアーティが呆然として言うと、ギャバン卿が声高らかに叫ぶ。
「見たか!! 邪悪なるバンパイアなど闘神様の力の前には無力なのである!! 舞うように戦う事こそが神の戦い方に間違い無いのである!!」
…………神の戦いって……なんかまた神格化されそうだけどまあいいや。これは小浜さんと議論して身につけた俺流のヒーローの戦い方だ。
プロレスにしてもヒーローにしても動きには無駄が多いのは何故か?それは見せる、もしくは魅せる戦いが必要だからだ。
ただ敵を倒すだけであれば攻撃も防御も地味な物になってしまう。それだとドラマやショーとしてはつまらない。
だからと言って演出過多だと歌舞伎みたいになったり、テンポが悪くなってしまう。
全体の動きと流れを止めないで魅せる戦いをする方法を模索した結果、行き着いたのが踊るような殺陣に、バク転バク宙、側転、三角飛びなどアクロバットを取り入れたアクションだ。
万場さんから太鼓判をもらい、ソルテラスのアクションが高い評価を受けることになった要因でもあると自負している。武術の心得のある俺が使うと、ちゃんとした殺傷能力もある。
「戦いの神かどうかは分からぬが、このままでは勝目が無いことは事実として受け入れよう」
オリアーティが落ち着いた面持ちで言うが相手は邪悪なバンパイアだ、油断せずに戦闘体勢を取る。
「だが! 失敗を重ねた私に後がない事もまた事実! この身が滅ぶ事になろうとも貴様だけは倒す!!」
オリアーティは左右に立っていた部下の頭をそれぞれ片手で鷲掴みにして指を食い込ませると、ドス黒い瘴気を全身から放ち始めた。
血走った目で呪文を唱えると2人のバンパイアロードが黒い煙のようになってオリアーティに吸収される。
呪文を唱え続けながら、赤黒く凶々しい色の球を額、胸、両手の甲に埋め込んで行く。埋め込んだ宝玉の周りにドス黒い血管が浮き出ていて気持ち悪い。
「ガアアァァァァァァ!! ブラッディィィ!! アァァァマァァァァァ!!」
ドス黒い瘴気が弾け、そこに現れたのは身長が2メートル以上で筋肉質にビルドアップされた身体に、コウモリをモチーフにした造形の赤黒い鎧を身に纏ったオリアーティだ。
今回のボスキャラ登場だな。
「ブラッディーアーマーの使用には大量の魔力とエネルギーを使う! 私の寿命を縮めた罪は重いぞ!貴様を殺した後には町中の人間の血を吸い尽くしてくれるわぁぁぁ!!」
赤黒い瘴気がオリアーティの前に集まると、血のような色をした槍と斧を合わせたような武器になった。たしかハルバードっていうやつだ、それならば決着をつけるのはこれしか無いだろう。
左腰のパーツを右手で取り外し、先端を左の掌で押さえて抜刀するように離していくと光の剣が形成されていく。
「ソーラーブレイド!」
光の剣が形成されると上、左、右に円を描くように振って中段の構えで止めてポーズを取る。
俺はソルテラスとしてこの世界に来た、だから劇中と同じように戦うんだ。名乗りポーズの時もそうだったが気合いが伝わっているせいか動作のたびに効果音が出ているような気がする。
オリアーティが目からビームを出してきたので横っ飛びで躱して一気に間合いを詰めるが、リーチの長いハルバードを横薙ぎに振るうので横に転がって避ける。
間合いが離れたのでビームと火の玉を連続で放ってくるが俺は前進しながら避けて間合いを詰めていく。ハルバードを俺の間合いの外から上段で振り下ろしてきたがソーラーブレイドで受け止める。
力で押し切ろうとしてきたが、体を逸らして重心を崩すと簡単に背後に回り込めたのでオリアーティの背中にソーラーブレイドを一閃する。
「ぐああぁぁぁぁ!? バカなぁぁぁ!? ブラッディアーマーがこんなに簡単に切り裂かれれるなんてぇぇぇ!?」
赤黒い鎧はソーラーブレイドの一撃にアッサリと切り裂かれ黒い煙を上げている。普通のバンパイアは通常攻撃で、バンパイアロードはシャインナックルでアッサリ消滅するから太陽の力を宿すソルテラスは奴らの天敵と言っても良さそうな存在なのだろう。
オリアーティが半パニックでハルバードを振り回してきたのでハルバードに対しソーラーブレイドを横薙ぎに振るうと斧の部分が飛んで行き奴の背後に落下する!
「ヒイイィィィ! もうだめだぁぁぁぁぁ!!」
すっかり弱気になったところでトドメだ! ソルテクターの目が光り胸の電子パーツがリズム良く点滅する!
「プロミネンス!!」
ソーラーブレイドを一回転して振りかぶると刀身の輝きが増して力がみなぎる。
「斬!!」
縦一文字に切ると、刃の通った跡が光のラインになって輝いている。オリアーティは目を見開き呻き声を出しながら全く動けない。
俺はオリアーティに背を向けてソーラーブレイドの刃をを左手で押さえて刀身を収める。そして柄を回転させながら左腰に収めて大きく決めポーズを取ると、輝きが広がっていっていきオリアーティは弾けて消滅した。
見たか! これが正真正銘のソルテラスの必殺技「プロミネンス 斬」だ!
敵のボスを倒したら速やかに撤収だ! ブーストジャンプで飛び上がり最大出力、最大範囲のヒーリングライトで目眩しをして人のいない所へダッシュ。
あとは傭兵ギルドに戻ってバランさんの助っ人をしていたと話を合わせてもらおう。完璧だ!




