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陽神装甲ソルテラス〜特撮ヒーロー異世界で神話となる〜完全版  作者: ソメヂメス
ダイチ ロクジョウの町で冒険者となる
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スタッフ達の今と恵子の計画

 加賀美 大地がパンゲルアに召喚されて間もなく1ヶ月になる。日本の街はすっかりクリスマスムードだがソルテラススタッフの仕事はまだまだ終わらない。撮影は終了したが編集作業はこれからが大詰めだ。スタッフによっては撮影後の作業の方が忙しい。


 音響サブチーフの清水 由美は効果音の編集作業に追われていた。音響スタジオでBGMや効果音、挿入歌等を映像に合わせて編集していく。


「うん! このペースだとクリスマスも編集で忙しいって、予定無しの言い訳が出来る」


 言い訳をする相手もいないのだが、物語もクライマックスなので音響は手を抜けない。効果音やBGMがお粗末だったら作品がシラけてしまうからだ、由美のプロ意識は極めて高い。


 区切りの良いところで手を止めてスマホを手に取るとSNSのグループトークに1件、個人に2件未読がある。とりあえずグループから見て見ることにした。


 ソルテラス女子会……「20日実家でホームパーティーを開きます、家族とアントニオは海外旅行なので気兼ねなく参加してね。ケータリングで費用はアントニオの奢りだから参加費無料です……香織」


「ん〜頑張ったら予定開けられるかな? 参加しますっと」


 ケーコ……「大地くんの異世界生活の動画が結構貯まったんで、一緒に見に来ませんか?サッちゃんも呼んで楽しく見たいです」


「わーい! 行く! 行く! 差し入れ何がいいかな?」


 柿本……「明日、仕事の事で重要な話があるので編集作業の間に時間を作って下さい」


「なんだろう……心臓に悪いよぉ」


 翌日、柿本プロデューサーに音響スタジオの近くの喫茶店に呼び出され話を聞く。「陽神装甲ソルテラス」が好評で後番組も特撮ヒーロー物で決定したこと、由美を音響チーフに抜擢したいことを告げられた。


 別の意味で心臓に悪い話しだった、所属は制作会社であるがキー局の番組で音響チーフになれば間違い無く給料も待遇も上がる。


「ソルテラス」は業界関係者やマニアの間で効果音の評価が非常に高く、音作りは由美がほとんど1人で手掛けている事からの抜擢であるが、20代で女性のチーフとなれば音響の世界では異例の出世である。嬉しいがプレッシャーで胃が痛くなりそうだ。




「今日、清水さんにもオファー出したよ、受けてくれそうな感じだったけどチーフって言ったら戸惑っていたな」


 脚本家の小浜が行きつけの小料理屋でプロデューサーの柿本が熱燗をチビチビ飲みながら話す。メイン脚本家の小浜 忠、プロデューサーの柿本、チーフディレクターの杉内 初美がカウンター席に並んで語り合っている、この3人は「陽神装甲ソルテラス」の後番組も引き続き担当することが確定していた。


「去年まで下積みだったからね。制作会社所属といっても去年サブチーフに抜擢されて正社員になって一年で音響チーフよ、頭がついて行かないのは当たり前だわ。20代の女性としては異例の出世なんだから嬉しさ半分、プレッシャー半分よ」


「由美ちゃんの実力だけ見ると妥当な待遇だと思うよ。柿Pの人材発掘する目は正直言って超能力に近いものがあるからね」


 小浜はソルテラスの制作陣の中では唯一のビッグネームだ、彼と柿本の付き合いは長い。80年代、学園ドラマを中心に脚本を手掛けていた小浜だったが、デビューして10数年後スランプに陥っていた。


 そんな時、柿本が自身の初プロデュース作品のメイン脚本家に小浜を選んだ。それも小浜が得意とする学園ドラマとは方向性が全く違う社会派サスペンスだ。


 畑違いの脚本に戸惑いがあったが、登場人物の心理描写が繊細な小浜なら絶対に良いものが書けると柿本に熱心に説得され、スランプ脱出の切っ掛けになればとオファーを受けることにした。


 ドラマは大ヒットし小浜は再び一線に復帰することが出来き、様々なオファーを受け人気脚本家になり名声を得る事になる。柿本が主人公に抜擢した舞台役者も大ブレイクして今では大御所俳優となり映画、ドラマ、バラエティーで大活躍だ。


 その後も数年に一度、柿本のプロデュースするドラマの脚本を手掛けるがホームコメディー、法廷ドラマなど初挑戦のジャンルばかりを持ちかけてくる。小浜は一度、柿本に何の意図があって違うジャンルのドラマの脚本を持ちかけるのかを聞いてみた。


「小浜さんは人間を描くのが上手い作家さんだからジャンルはあんまり関係無いと思っています。それなら色々な世界で生きる人間を描がいたほうが面白いじゃないですか」


 柿本は表面的なものではなく本質を見抜く目を持ち、偏見やこだわりが無く、慣習やシガラミを気にしない。柿本が見出した有名俳優、監督、脚本家は数知れない。それでいて本人には良い番組を作りたいという意識しかなく、出世や名声には全く興味が無い。心底嬉しそうな顔で「僕はテレビが大好きなんですよー」が口癖だ。


「ヒットドラマを作る名コンビが特撮ヒーローを撮るって事で業界の話題を掻っ攫って、しかも数字も上げて若手の発掘までするんだから。柿本さん本当に超能力あるんじゃないですか?」


「やめてくれよぉ、僕は只のテレビ大好き人間だからね、付き合いの長い2人にエスパー扱いされるなんて心外だよ。だいたいブレイクしたのは彼等の実力であって僕はたまたま起用しただけだよ」


「柿P、自分が業界で神の目って言われているの知らないのかい?今回のソルテラスは「神の目最大出力」って関係者だけでなくマスコミや評論家も絶賛してるよ」


「神の目はやめて欲しいんだけど。最近、若手女優や元アイドルが色目使って来て鬱陶しいんだ」


 最近数が多く、あまりにも鬱陶し過ぎて迫ってくるタレントの所属事務所にクレームの電話を入れるのが日課みたいになっている。


「清水さんもだけど伊藤君やヤノケン、宮下さんも掘り出し物だったわね、伊藤君は引き続きチーフカメラマンのオファーだしたら即答でOKだったけど、ヤノケンと宮下さんはどうするのかしら?」


「ヤノケンは大物映画監督からもオファーが来ていて、かなり悩んでるよ。宮下さんは加賀美君の件でそれどころじゃ無いみたいだし」


「やっぱり今回はKARAKOちゃんと大地君が1番注目されたかな。KARAKOちゃんアイドルグループの楽曲提供やアニソンのオファーが殺到してるらしいよ」


「加賀美君だって異世界に行って無ければ海外放浪の旅に出る予定だったけど、行けたかどうかあやしいわよ。NAPに問い合わせと出演のオファーが殺到してるのを、もう日本にいないからって断わってるみたい。いたら押し切られてたかも知れないわよ」


「万場さんが、ゴリ押しやマスコミに屈する事はまずないけどね。それにしても柿Pよく大地君見つけたねぇ、芸歴こそ長いけど無名だったのに」


「なんか知らないけど、光る物があったんだよね。スタントや脇役ばかりだけど場の雰囲気を良くするし、すごく面倒見がいいんだよ、ソルテ様に召喚されのもその辺が理由かも知れないね」


 ソルテラススタッフの中心人物3人は後番組の企画も開始しなければならない中、大地の事も気にかけるのであった。




「ケーちゃん、来ったよぉ! はい、お土産の万石屋のフルーツタルト。朝から並んで来たよ、あとで切って食べようねー」


 恵子の部屋に幸子と由美が集まっていた、大地の最新映像を見るためだ。結束力の高いソルテラスのスタッフの女性陣の中でももこの3人は特に仲がいい。今日は恵子の呼びかけで幸子と由美がプライベートで呼ばれた。幸子はスケジュールを合わせて、由美は編集作業をフルパワーで終わらせてやって来た。


「ユミさん異世界の画像楽しみにしてたし、みんなに言う前に私の計画を2人に聞いてもらいたくて。2人共、忙しいのにゴメンね」


「いいよケーちゃん、また音楽で食べて行けそうになったから忙しくても充実した毎日さ、それに大地の異世界生活も楽曲制作にいい刺激になるんだよね」


「リアルファンタジーだよ!仕事なんてあっという間に終わらせて飛んで来るに決まってるじゃない」


 パソコンを操作して画像を出す。まずは冒険者ギルドでのギャバンとの模擬戦だ「この渋いおじさま何て言ってるの?」教養のある恵子と父親がイギリス人の幸子はともかく由美は英語があまり分からない。字幕が欲しいと思いながら時々2人に通訳してもらう。


「うひょぉぉぉ! おじさま凄いぃぃぃ、必殺技出してるよぉぉぉ!ギルドマスターはハーフエルフのイケメンだぁぁ」


 その後、ホビットと犬獣人と一緒に採取と猿の討伐をして初仕事を達成、二刀流の冒険者と共に時計台に住み着いたグレムリンを退治して、冒険者の装備を整えて、町の住民になるところをダイジェストで見る。


「大地のヤツ、異世界でも相変わらず誰とでも仲良くなれるなぁ」


「大地君がいると不思議と周りが纏まるんだよね、初音さんも言ってたよ裏表両方で正にこのドラマの主役だって」


 異世界の画像にかぶりつく由美は置いといて、2人は大地の話しをする。大地にはナチュラルに人を導く力がありパンゲルアに召喚されたのはそれを世界の発展にに活かしたいからではないか。天照大神がソルテのために大地を送り込み、恵子にアマテラネットを託したのは何か意味があるに違いない等、話しをしていると迷宮発見のところにたどり着く。


 事件解決までを見た後、激昂した由美が興奮状態でまくし立てる。


「なんなの! 人族至上主義って!? ナラちゃんやクマ獣人ファミリー、ナッシュさんやその他の亜人さん達みんなの敵よ!! 大地君! 1人残らずプロミネンス斬でぶった斬っていいわよ! むしろやっちゃえ!」


「ちょっと! 由美さん落ち着いて!」


「見ての通り大地がやっつけて中心人物や協力者みんな罰は受けたから!もう 終わったから!」


 興奮した由美を落ち着かせて、万石屋のフルーツタルトを切り分けて食べる、常に行列が出来るだけあって美味しい。そして恵子が本題に入る。


「今回の事件を解決してポイントが大量に貯まったんだけど、温存しておくつもりだったんだよね」


「前に考えがあるって言ってたやつだね、具体的には聞いて無いけどポイントがいっぱいいるんだよね」


「うん、でもブーストジャンプとブーストダッシュを使える様にするよ。これからの事を考えると機動力を上げる必要があるかもしれないから」


「もしかして人族至上主義真人類派に対抗するため?」


「うん、何をするか分からない連中が暗躍してるから必要だと思って。テロリスト相手にはスピードが必要だから、それに町を救ったら計画を実行に移せるくらいポイント貯まると思うんだよね」


「ところでケーちゃんが考えている計画って何? 内緒なの?」


「アマテラネットで調べたら出来る見込みがありそうだから2人には言ってもいいかな」


 恵子が2人に話した計画は驚くべき物だった、しかしそれが出来れば間違いなくパンゲルアを劇的に変えることが出来るだろう。


 全ては大地のこれからの奮闘次第ではあるがパンゲルアとソルテが変革する日はそう遠くないかもしれない。

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