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陽神装甲ソルテラス〜特撮ヒーロー異世界で神話となる〜完全版  作者: ソメヂメス
ダイチ ロクジョウの町で冒険者となる
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ソルテラス、悪の秘密基地を叩き潰す

 新しい迷宮に挑んだ3組のパーティーは誰一人として帰って来なかった。


 翌日、ギルドマスターのコムさんがロクジョウの町に滞在するCランク以上の冒険者を招集する。


 ギルドの会議室にBランクが2人とCランクの冒険者が俺を入れて11人集まった。Bランクの内の1人はムタミの館の住人のナッシュさんでCランクの中には一緒にグレムリンを討伐したハマーがいる。


 円卓を囲んで並べられた椅子に全員が座って待っていると、ギャバン卿とコムさんが入室して挨拶と今日の会議の開催理由の説明をする。


「みなさんはご存知だとは思いますが、新しく発見された迷宮に挑戦したパーティーが3組が完全に消息を絶ちました。若手で伸び盛り、中堅で堅実、Bランクを混じえたベテランパーティーで実力は十分な人達です」


 新しく発見された迷宮は危険度が不明なため1日で切り上げるのがルールだ。3組とも守らないようなパーティーではないので何らかのトラブルがあったと考えるのが妥当だ。


「新迷宮はロクジョウの町から近く、街道からそんなに離れていません。危険なモンスターや罠もしくは魔道具があった場合、町の住人や旅人の脅威となりえます」


「そこで精鋭部隊を編成し迷宮を調査することを提案する、命の保障の無い危険な任務の為報酬ははずもう。立候補者はおらぬか?」


 やはり3組の実力あるパーティーが消息不明になっているだけあって、すぐに手を上げる者はいない。だが俺は自分が発見した迷宮なので立候補する、1人でも行くつもりだ。


「未知への探求には危険が伴うけど、恐れていては新たな発見をすることは出来ない。誰も帰らない迷宮の謎に挑戦しようかな」


「危険なモンスターや魔道具があるとすれば放置出来ないな、俺も同行しよう」


 ナッシュさんと、もう1人のBランク冒険者「ムササビ」の2つ名を持つザシャムさんが名乗りを上げた。ギャバン卿も行く気満々だったがコムさんに全力で止められていた。


 準備と関係各位との連絡の為、調査開始は明日の早朝に決定した。若手の冒険者たちが中心となって俺たちの為に白虎亭で壮行会を開いてくれた。


 早朝、ハヤテを走らせ湿地帯の迷宮入り口に到着した。中に入るのは俺とナッシュさんザシャムさんの3人だがサポートと連絡の為に、会議に参加した全員が迷宮入り口に集合していた。


 全員、装備を整えるとナッシュさんがギャバン卿に水晶のような魔道具を渡す。どうやら通信機のようだ。それと前に使った鳩になって伝言する魔石を渡す、いざという時に援軍を呼べるようにだ。


 おれを先頭に螺旋状のスロープを慎重に降りて行くと、金属製の観音開きの鉄扉があった。ザシャムさんが扉とその周辺を念入りに調べる、どうやら罠は無いようだ。


 扉を開くと幅が5メートルほどの長い廊下になっていて両サイドに2メートル間隔くらいで武器を持った兵士のブロンズ像が置かれている。30メートルほど行くと、また観音開きの鉄扉がある。


 廊下を進んで行くと突然ブロンズ像が動き出し、俺たちを包囲する。全てが剣や槍等の武器を持っておりジワジワと包囲を狭めていく、その数は20体以上だ。


「ブロンズゴーレムか、魔法が効きにくいしこの数だと厄介だな」


 ザシャムさんの言葉に対しナッシュさんが冷静に分析する。


「幸い制御クリスタルが剥き出しだね、ダイチ君なら一撃で砕けると思うけど、どう?」


「隙があれば楽に出来るな、後は全部倒さなくても正面のやつだけ片付けて先に進むというのはどうかな」


「よし! それでいこう、隙は俺がつくる!」


 ザシャムさんが廊下の奥に向かってダッシュする、武器を構えたブロンズゴーレムの頭を踏み台にして鉄扉の方に飛び越えていく。「ムササビ」の2つ名はこれが理由か。


 ザシャムさんの方に注意を向けた隙に、正面のゴーレムのクリスタルに刀を振るうと意外と簡単に砕け散って、ゴーレムは動きを停止する。コイツらの動きは鈍いから立て続けにクリスタルを叩き割り、ナッシュさんと共に走り抜け扉にたどり着く。


 驚いたことに扉から外に出るとクリスタルを割っていないゴーレム達は定位置に戻って行った。


「近くに操縦者がいないからね。ゴーレムはそんなに複雑な命令を理解出来ないから、この廊下に侵入した者を殺せか捕らえろって命令じゃないかな」


 扉を閉めて周りを見渡すとバスケットコートくらいの広間になっていて中央に銅像が置いてある。またゴーレムかと思ったがただの銅像みたいだ、美しい全裸の男女が寄り添っている。


「これって人属至上主義霊長派のシンボルじゃないか!?」


「ああ間違い無いね、ここは迷宮じゃなく奴等の拠点だと思う。あのゴーレムの数から考えて大規模な作戦、たとえばロクジョウの町を襲撃する計画の可能性が高いな」


 えっ!? 俺、そんな危険な施設を迷宮として報告しちゃったの!? みんなを危険な目に合わせた上に3組みのパーティーを消息不明にした原因を作って、物凄くやらかしたんじゃないだうか。


「すまない、俺が迷宮として報告したばかりに……」


「いや、気にするな3組みのパーティーには気の毒だがここはある意味で迷宮よりも危険だ。早急に手をうたなければならん」


「エルフの僕にとっては、それこそ憎っくき敵の拠点だからね早速ギャバン卿に連絡をとって応援を頼もう」


 ナッシュさんは水晶球を取り出し呪文を唱えると水晶球にギャバン卿の顔が映る。


「ギャバン卿聞こえますか! 緊急事……」


 言いかけると突然水晶球にヒビが入る。


「くっ!? 妨害魔法か!? 敵に気付かれたみたいだ!ギャバン卿に異常が起きた事は伝わったとは思うが、状況は良くない」


 要するに、ここは悪の組織の秘密基地で侵入に気付かれてしまったという事か。罠や迎撃が来ることは間違いない、俺は全神経を研ぎ澄まし周囲を警戒する。


 床が振動しているような気がする、これは間違いなく罠が発動する前兆だ。俺は勘にしたがって2人に叫ぶ。


「中央の銅像に向かって走れ!急げ!」


 ここは迷宮ではなく悪の秘密基地だ、俺の直感とヒーロー役としての経験がフル回転する。ならば悪の秘密基地のセオリーが当てはまるはずだ。


 脚本家の小浜さんは、お約束の大事さについてよく話してくれた、様々な世界の要素が組み合わさって出来たパンゲルアではセオリーやお約束が当てはまる確率が高い気がする。極限状態では直感勝負! それが世界のアクション俳優、万場 剣一が創設したNAPの精神だ!


 床が崩れ堕ちていく中、2人が無事安全地帯にたどり着いたのを横目で見ながら神経を研ぎ澄ます。案の定、下には殺意満々の長い棘が敷き詰められている。


 あった! 崩れていく床と棘床の間に横穴を発見!「ムササビのザシャム」のお株を奪うアクションで崩れていく床を飛び移り横穴に飛び込む。


 上の方で「ダイチは!?」「まさか間に合わなかったのか!?」と聞こえるから俺の動きには気付いてないようだ。単独で行動できるので今はその方が都合がいい。


 ソルコマンダーを開き基地内の地図を出してみると、青い点が12個、赤い点が18個表示される。青は味方で、赤は敵、死人は黒でゴーレムとかの無生物は表示されないようだ。良かった誰も死んでない。


 ナッシュさん、ザシャムさん以外は一箇所に集められているようだ。周辺に敵が11人か、牢にでも入れられているのかもしれないな。


 先に入ったパーティーの所に向かう途中に大きな部屋があった。中に入ると、作りかけのゴーレムが数10体と培養カプセルみたいなヤツに入った気持ち悪い化け物達。


 絵に描いたようような悪の秘密基地だな、こいつらが完成して町に攻め込んだらえらいことになる。誰も見てないが変身ポーズをとって「陽着!」名乗りは省略してもいいだろう。


 フレアバスターを乱射して培養カプセルや水晶球を片っ端から壊していく。警報音が鳴り響くが御構い無しで打ちまくる。ゴーレムも命中したら砕け散る威力だ。


 なんか脆いし簡単に壊せるな。やっぱり前に戦ったアークデーモンってこの世界では相当強い魔族だったんだな。


 ほぼ破壊した頃、悪の組織の構成員らしきお揃いのマントを付けた男達が慌てて部屋に駆け込んで来た。


「なんだこれは!? 研究所が滅茶苦茶じゃないか!!」


「完成直前のゴーレムや培養中の魔法生物が全滅だあぁぁぁ! これだけ作るのにどれだけの時間と労力を使ったと思うんだ!」


「あの全身鎧が賊か! どこの回し者だ!?」


 とりあえず後でギャバン卿達に引き渡したほうが良さそうだから、殺さずに無力化しないとな。とりあえず剣で切りかかってきた奴の腕を軽く裏拳で払う。


「ぎゃぁぁぁ!腕がぁぁぁ!」


 あ! 折れた。これは手加減が難しいな、うっかり拳や蹴りを入れたら一撃で殺してしまいそうだ。


 軽くデコピン、あっ! 吹っ飛んだ! 生きてはいるみたいだ。


 そっと胸に掌底打ち、肋骨折れたな。


 軽くローキック、やっぱり折れたよ。


 ソルテラスで戦っていい人間はギャバン卿クラスの化け物だけだな、あんなのは滅多にいないとは思うけど。


 とりあえず締めすぎないように加減して4人全員縛り上げる、奥の扉を開けると休憩室か食堂のようになっていて7人の男達が警戒態勢をとっていた。


 あっ!ちょうどいいのがあるさ。テーブルの上に積み上げれた陶器の皿を、手裏剣のフォームで連続で投げる。頭部に命中すると皿が砕け散って敵は失神する、死んではいない……はずだ。


 全員やっつけると奥の扉を開ける、行方不明だった冒険者達が武装解除されて横たわっていた。全員肌の色がおかしく目に生気が無くて呻いている。


「ヒーリングライト!」


 全員の肌の色が元に戻り生気が戻る。自信は無かったけどヒーリングライトが効いて本当に良かった、結構万能だなこれ。


「呪いが解けたのか!?」


「身体が動く! 感覚も戻っている!」


「ありがとうございます! 禁呪による呪いの実験台にされていたんです、助かりました」


 とりあえず周りに敵はいないが油断は禁物だな。地図を見るとナッシュさん達が敵と交戦中のようだ。


「私の名はソルテラス、君達を助けに来た。君達を救出しに来たギルドの者が敵に襲われているので助太刀に行く。君たちは危険が無いようにここで待っていてくれ」


 そう言うと、みんな肯いたので2人の所へと急ぐ。お! 2対7だったのが2対3になっている、2人ともやるじゃないか。これは着く頃には勝負ついているかも。


 体育館くらいの大きな部屋にたどり着くと

 2対2になっていたがかなり劣勢だった。


 空中に浮かぶ球体の身体に大きな単眼と凶悪な歯が並ぶ大きな口をした化け物が頭部に生えた触手からビームを出して攻撃する。バリアーがあるらしく2人の攻撃は通じない。


 もう一体は4メートルくらいの金属製ゴーレムで中に人がいて魔法を放っている。ゴーレムと中の魔法使いの連携も見事だ。


 ナッシュさんザシャムさんも魔法とアクロバティックな攻撃で応戦しているがそろそろ限界だ。俺は目玉の化け物にフレアバスターを放つ、バリアーで弾かれたが化け物は吹っ飛び壁に激突する。


「誰だ!?」


「私は陽神装甲ソルテラス! 貴様らのゴーレムと化け物は私が破壊した。冒険者も解放し、仲間も捕らえたぞ! 大人しく武装解除した方が身のためだ」


「ふざけるな!このハイパーミスリルゴーレムとバグベアードとの連携に勝てると思っているのか!」


「ソーラーブレード!」


 有無を言わさず放った俺の斬撃は目玉の化け物をバリアーごと真っ二つにする。


「バカな!貴様ぁぁ!これでどうだ!」


 ゴーレムが殴りかかり魔法使いが電撃を放つが、呪文が終わるタイミングで魔法攻撃が来るのが分かるしゴーレムの攻撃もテレフォンパンチだ、タイミングが分かるので簡単に避けられる。


 敵の頭上にジャンプして躱し、前方宙返りしながら決め技を出す。


「プロミネンス!斬!」


 真っ二つになったゴーレムから魔法使いが転げ落ちザシャムさんに取り押さえられる。


「さらばだ!」


 目眩しのヒーリングライトを放ち走りながら変身を解除して部屋で待機している冒険者を迎えに行って、一緒にナッシュさん達と合流する。


「ダイチ! 無事だったのか!?」


「ソルテラス様に助けてもらったんだ。みんなも無事だ、ここのゴーレムや化け物もみんなソルテラス様よって破壊された」


「そうか、彼は一体何者なのだろうか」


 後始末はギャバン卿やギルドマスターに任せて俺たちはロクジョウの町に帰ることにした。

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