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陽神装甲ソルテラス〜特撮ヒーロー異世界で神話となる〜完全版  作者: ソメヂメス
ダイチ ロクジョウの町で冒険者となる
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冒険者ギルドへ、豪傑ギャバン卿

 昨日は程よく運動(盗賊退治)したし銭湯でリフレッシュ出来たのが良かったのか気持ち良く眠れた、朝陽が気持ちいい。


 朝食はバランさんと冒険者ギルドに行く途中の市場で食べることにした。宿の朝食よりも市場の屋台のほうが安くて美味くて量が多いらしい、この世界の市場にも興味があるし楽しみだ。


 昨日用意していた水を飲んで、軽くストレッチと筋トレをしてランニングをする。石畳と石壁、石造りの建物と木造の建物が混在する町だ。異国情緒たっぷり(異国じゃなくて異世界か)の街を散策がてら走るのはとても楽しい。


 早朝のため人通りは少ない、時々荷物を運ぶ人や巡回中の兵士とすれ違う程度だ。広場に来ると屋台の仕込みをしている人や生鮮品を持って来る人達で賑わっていた。朝市の準備をしてるみたいだな。汗を拭いて服を着ているとちょうどバランさんが迎えに来た。


「朝から鍛練をしてるのか? ダイチの力だと必要ないとは思うが」


「毎日の日課だからやっておかないと落ち着かないんだ」


 出来たら剣の素振りや武術の型とかもやりたいんだが、街中でやると物騒なので遠慮しといた。


「訓練がしたかったらギルドに訓練所があるから登録したら使えるようになる、とりあえず朝飯に行こうか」


 バランさんとさっきの広場に行くとワゴンに新鮮な肉や魚、野菜などの生鮮食品が並び、屋台の用意が出来ていた。簡素な椅子と台が並べられ、その周りを様々な料理の屋台が囲んでいる。東南アジアのホーカーセンターみたいな感じだ。


 いろんな料理の屋台が並んでいて目移りするが俺は蒸籠蒸しの屋台の前で足を止めた。中華街で嗅いだ覚えのある香り、米の匂い! 中華チマキじゃないのか?


「兄ちゃんテマクを知ってるのかい? ファカサゼン連邦の東部でよく食べられるサモって穀物の料理なんだがコッチじゃ馴染みが無くてな。ファカサゼン出身の獣人や半獣人たちには人気なんだが」


「とりあえず2つもらうよ、他にサモを使った料理ってあるのか?」


「ここの屋台じゃウチのテマクくらいだな、ファカサゼン東部の料理なら商業地区の南西にある白虎亭が有名だよ」


「ありがとう、そのスープもくれないか」


 朝食は中華チマキにそっくりなテマクと具だくさんのワンタンスープだ。テマクは二種類あったので両方頼んだ、1つはチャーシューのような肉とキノコで、もう一つは葉物野菜の漬物と銀杏みたいな木の実だった。ワンタンスープも野菜たっぷりで美味い。やっぱり朝はしっかり食べないとな、バランさんはコメに馴染みが無いらしく野菜サンドと肉の串焼きだった。


「美味かったな、今度は白虎亭って店探してみようかな」


「白虎亭なら昨日行ったジュリーの店なんだが、店主のインパクトが強過ぎてみんなジュリーの店って言ってるな。ファカサゼン東部の料理は馴染めない奴もいるが出稼ぎだけで無く地元のファンもいていつも繁盛しているな」


 確かにジュリーさんの第一印象は強烈だもんな。昨日の件もあるし今度、黒猫姉妹の様子見も兼ねて行ってみよう。白虎亭ってそのまんまの名前だな。


 食事が終わるとバランさんの案内で冒険者ギルドに向かう、町の西側の外壁沿いに石造りで敷地面積が広い建物と木造の二階建ての建物が並んでいる。石造りの建物の奥にはボルダリングやアスレチックや運動場の様な施設がある。


「ギルドの本部は王都にあるんだが事務仕事と対外的な交渉や各ギルド支部の取りまとめがほとんどだ。冒険者の管理、育成、教育の中枢部はこのロクジョウのギルドにあるんだ」


 なるほど王都の本部は会社で言う本社で、ロクジョウのギルドが研修センターと事業本部を兼ねているということか。


「ギルドマスターに話は通しているからとりあえず受付に行こうか。面接と適性検査を受けたあとにちょっとしたギルドの規則や仕事の受け方、注意事項や罰則についての説明がある」


 木造の建物の中に入ると思ったよりも清潔で明るい。荒くれがたむろして酒を煽ってるみたいなイメージだったが10代後半くらいの若者が多い。


「昔はそんな感じだったし、今でも国によってはゴロツキの溜まり場みたいな所もあると思うが先代のヤース伯爵を中心に大改革をしてな、オーミ王国と周辺国のギルドはだいたいこんな感じだな」


 とりあえず受付に行くとバランさんが受付嬢に声をかける。ギルドマスターに話を通してあることを告げると、すぐに隣の訓練所に行くように言われた。


 連絡通路というか渡り廊下を通って隣の石造りの建物に移動する。さっきの木造の建物が事務所と食堂兼集会所でこの石造りの建物が研修所らしい。中に入ると身長が2メートル近くある筋骨隆々な年配の男性が腕を組んで仁王立ちをしていた。


「久しぶりだなバラン、お主が冒険者志望の見込みのある者を連れて来たと聞いて吾輩が直々に適正検査と面接を行う事にした。若者よ吾輩はロクジョウ冒険者ギルド名誉顧問ギャバン・イザ・ヤースである」


「はじめまして私は冒険者志望のダイチというものです。ここで生活の基盤を作り自分の目的を果たすために登録に来ました」


 ん? 待てよ、苗字がヤースってことはここの領主の一族じゃないのか?


「ダイチ、この方がさっき話した冒険者ギルドの大改革を行った先代ヤース伯爵だ、今はは傭兵ギルドと冒険者ギルドの名誉顧問をしている」


 先代ヤース伯爵のギャバン卿は男爵家の次男だったが騎士として数多くの武勲を上げ領地と独自の爵位を授けられ、ファカサゼン連邦結成以前の小国や豪族の土地を統一し、その領地の統治を命じられ伯爵位と自らが拡大した領地を与えられた。


 その後も二つの隣国との外交や国防、領地の管理運営に手腕を発揮し、神殿の防衛や国境警備にも尽力してオーミ王国にヤース伯爵有りとその名を轟かせる。


 特に力を入れたのが傭兵ギルドと冒険者ギルドの大改革だ。治安の維持と住民サービスを国だけで行うには無理があるので2つの組織の健全化とシステム化を進め住民や為政者の支持を得ることに成功した。


 そしてギャバン卿は家督を長男に譲り領地運営を任せた後、傭兵ギルドと冒険者ギルドの名誉顧問となった。名前だけ聞けば名ばかりの役職みたいだが、積極的に運営に参加しギルドマスターよりも権限があるらしい。


「実はだなバランからだけで無く騎士団のロデマスやフランチェスコ卿からもお主の活躍を聞いておってな、アリエイル様とシルフィー様の救出に尽力し、神の戦士が現れるキッカケを作ったのであろう。そのような見込みのある若者は吾輩が自ら、その実力と心意気を見極めるのが良いと思いこの場を設けたのである」


 この言い方だと俺がソルテラスだって事は隠してくれてるみたいだな。バランさんもだけど約束はちゃんと守ってくれる人ばかりで助かるよ。一番バラしてるのが自分自身なんだからどうしようもないけど。


「経歴については特に聞く必要は無いバラン、ロデマス、フランチェスコ卿と信頼出来る人物が太鼓判を押す以上、余計な詮索はせぬ」


 まずは適性検査を受ける事になった、外から見えていたアスレチックコースやボルダリングを楽々クリアする。次は施設内で間違い探しや知能テストの様な問題、知恵の輪のような手先を使ったパズルをクリアする。


 記述問題も結構あったがこの世界は言語も文字も何故か英語だ。俺はしばらく海外を放浪する予定だったし機会があればスタントマンとして海外挑戦もするつもりだったので英検は一級でTOEIC950点だ。勉強しといて良かった。


「運動能力と器用さ頭の軟らかさ、記憶力はすごいな。魔力は無いようだがあれは資質だからな、能力的には優秀だな文句のつけようがない」


 再び外に出て芝生のグラウンドの様なところに来た。台があり様々な木製の武器が並んでいる。ギャバン卿は刃渡りが150センチはありそうな大剣を手に取る。


「これより模擬戦で実力を見せてもらう、相手は吾輩である。得意な武器を手に取るがよい」


 俺は今使っている剣と同じくらいの大きさの木刀を選んだ。やっぱり片刃の長剣が一番使いやすい。


「それではこれより模擬戦を開始する。コムよ開始の合図を頼む」


 ギャバン卿のキャラの濃さで存在感薄いけど確かこの人がギルドマスターだったような気がする。日も高くなりギャバン卿が直々に模擬戦を行うということで結構ギャラリーが集まっていた。


「始め!」


 ギャバン卿は大剣を中段に構え、物凄いプレッシャーをかけてくる。まったく隙が無いがこのまま何もしなければ状況は動かない。俺は剣を左手で持ったまま一気に間合いを詰めてギャバン卿の喉元に鋭い突きを放つ。


 ギャバン卿が大剣で受け流す、見事な技術で俺の剣を流し終わると同時に横薙ぎの鋭い一撃が繰り出される。


 俺は身を低くして斬撃を躱すと同時に下段から上に向かって剣を振るうとガキィィィン! と木製武器同士とは思えない音を立て大剣で受け止められた。


 一旦後ろに跳びのき間合いを広く取り構えを一旦解く。ギャバン卿も体勢を整えて再び中段に構えニヤリと笑うと、ギャラリーから歓声が上がる。


「あいつ何もんだ!? ギャバン卿と互角に打ち合ってるぞ!」


「なんであんな鋭い横薙ぎの一撃をしゃがんで躱せるんだ!? 木剣とはいえあんなの食らったら首が吹っ飛ぶぞ!」


 外野の声を聞き流し、ギャバン卿もが嬉しそうに言う。


「やるでわないか! 構えを変えたということはこれから本領発揮だな!」


「ギャバン卿に通用するかは分かりませんが本来のスタイルで行きます!」


 俺は片手に長剣を無造作に持ち、無防備にギャバン卿に近づく。ギャバン卿の間合いの手前で急加速しながら剣を振るい、同時に横に飛ぶ。


 ギャバン卿は剣を受け、体勢を崩さずに俺の次の動きに対応する。最小限のまったく無駄の無い動きで隙を見せない。


 俺は一気にギアを上げ加速する。縦横無尽に動きながら縦横斜めに剣を振るい、突きも混じえてフェイントも入れる。それをギャバン卿は全て受け、躱し、反撃をする。


 まだまだ加速するぜ! ギャバン卿も凄まじい闘気でこちらが少しでも隙を見せると鋭い反撃をくり出す。


 お互いの剣が凄まじい勢いでぶつかり合い間合いを離した瞬間、大上段に大剣を構えたギャバン卿の闘気が爆発的に膨れ上がった。


「ソニックソード!!」


 凄まじい剣圧が俺に向かうが感覚を研ぎ澄まし横っ跳びで躱す。背後で柵が吹っ飛んだみたいだが気にする余裕は無い。そのまま一気に間合いをつめる!


「そこまでぇ! そこまでぇ! そこまでぇ!」


 ギルドマスターのコムさんが割って入り試合を止める。


「コム! せっかくよいところであったのに邪魔立てするか!」


「これはあくまで適性検査ですよ! ソニックソードまで出して殺す気ですか!」


「ダイチの実力であれば死にはせん! 必ず躱すか受けるかするはずだ! 実際、見事に躱したではないか!」


「これで適性検査は終わりです! ダイチくん事務所に来て下さい会員証を渡して必要書類の記入と規則等の説明をしますので」


 コムさんの指示に従い事務所に向かう、どうやら無事に冒険者になれそうだ。

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