【妹は〇〇】
「あっれー?おにぃ、緊張してんの?きゃっはー、ウケる♪」
アハっと言わんばかりに手を口の前で広げ、彼女はゆっくりと体の上で跨る。
「なぁにぃ?その目……何のつもりだぁとか言いたそうだね」
身を乗り出して、彼女は自分の胸をこちらの胸に当てるように覆い被さってくる。
ドクンドクンと脈が鼓動を打っているが分かる。こちらとしては、平常心を保つので精一杯というのが現状である。
「そんなに緊張しなくても良いんだよ、おにぃ。おにぃはただ、真衣にされるがままで居れば良いんだから……ね?」
耳元で囁くように言う彼女の声は、妙に妖艶さを持っていて背筋に電気が走る。
色っぽく、あざとさを兼ね備えている彼女ならば、そのぐらいは造作もないだろう。
これだけで終われば、こちらとしても身が楽なのだが……そうは問屋が卸さない。
「アハ〜、逃げようたってそうはいかないからね?」
完璧にマウントを取られてしまっている以上、身動きを取ろうとしても取ることは出来ない。
身動きを取ろうとしても、馬乗りにされている時点で手遅れである。だがこちらとしても、このままやられたままというのは面白味に欠ける。
「……ひゃっ、な、なになに?何で真衣が上だったのに下になってるのかなぁ!?あと、どうしておにぃが真衣の手首を掴んでるのかなぁ!?」
真っ赤に染まった顔と共に声を出し、されるがままに押し倒された彼女の姿が視界に広がる。
側から見れば犯罪の犯行現場と思われるかもしれないが、ここは家で誰も居ないのがこちらを有利にする。
そしてそれは、彼女との間にある状況。精神的にも優勢になるというのが、個人的にこうする理由である。
「お、おにぃ?か、顔が近いんだけど……真衣とおにぃは兄妹だから、キスとかしちゃ、ダメなんだよ?」
ややキョドッている様子でそう言ったが、さっきまでの余裕さが皆無となっている。
だがしかし、そんな状況でも彼女は目を逸らそうとしない。それどころか、何かを期待しているようにも思える目をしている。
「っ……」
そしてそんな仕草の彼女を楽しみながら、そんなやり取りを一日中繰り広げたのだった。
「……おにぃのバカ。つ、次は真衣がおにぃを手の上でコロコロしてやるんだからっ!!覚悟しててよね!」