ログアウト
商館を出るとそこには活気で満ち溢れた人々で賑う屋台などが広がっていた。
「ルルナさん、この後どうしますか?」
なんの気なく話しかけたつもりなのだが、ルルナさんが少し気まずそうにしていた。
「シルヴァさん、この後リアルで少し用事があってもう少ししたらログアウトしなきゃいけないんです……ごめんなさい。」
いや、そんなに気を使われるとなんだかこっちまで気まずくなってしまう。
「いえ、また今度時間あるときに遊びましょう!」
「ありがとね、それじゃまた今度ね!」
そう言ってルルナさんは人ごみの中に去っていった。
……後ろ姿も綺麗だ。
「シルヴァ様、この後のご予定は?」
何故だろう、いつもより元気でリラックスした様子だ。
「特にこれといって予定はないけど…なんか行きたいところとかある?」
妖精さん接し方改革!!
今、実行の時来たれり!
「そうですね、丁度お昼時ですし2人きりでどこか高級なお店でも行きませんか?」
いや、2人きりって2人しかいないじゃんっ!
でも、高級料理ってのも食べてみたいなぁ……ヤバイ唾液の分泌量がぱない。
「よし、行くか!」
オッケーリリィ評価の高い高級料理店、
ヘイリリィ評価の高い高級料理店、あれ反応しない。
「シルヴァ様、何をいっているのですか?」
リリィがキョトンとした顔で質問をしてきた。
「……ごめん。」
???
リリィの頭の上に沢山のハテナマークが浮かんでいた。
本当にごめんなさい、ふざけすぎました。
「リリィ、オススメのところってある?」
男としてエスコートしなくちゃいけないのに恥ずかしい……。
「そうですね、プルエル・ポエロってところがいいのではないのでしょうか?様々な料理があって大変人気のお店です。」
「よし、そこにしよう。」
そしてリリィ案内の元、プルエル・ポエロに到着。
「ようこそおいでくださいました。ご予約などはされていましたか?」
え?予約?必要なの?
待って、そんなのただの高校生に分かるわけがない。
「してなかったんですけど…………」
「少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
そう言い残してタキシード姿の店員が店の奥へと消えていく。
1分も経たないうちに戻ってきた。
「お客様、大変お待たせいたしました。お席の方にご案内いたします。」
よかったー!ダメだったらどうしようかと思った。
「お席の方が、こちらになります。」
そう言って椅子を引いてくれた。
凄い、高級料理店!
「失礼します。それでは、メニューの方が決まりましたらお声がけください。」
なんか、かっこいいな。
「シルヴァ様、どれにしますか?」
「そうだな、ランチだし軽いものにしようかな。」
リリィが軽食のページを開いてメニューを渡してくれた。
嫁度高っ!!!
もしかしたら、てか、もしかしなくても良いお嫁さんになるんじゃない?
メニューには多種多様なものが載っていた。
僕はこれにした。
・サントゥーレトマトのスパゲティ
リリィはこれを選んだ。
・陽と陰の交響曲〜女神の雫を垂らして〜
・夏夜に染まる女神の泉〜星々を散らして〜
リリィさんは、きたことあるのかな?
写真とか載ってないし文字だけで判断するにはかなりの勇気いると思うよ?そのメニュー。
「すみません。」
「お待たせいたしました。お伺いいたします。」
「えっと、サントゥーレトマトのスパゲティと……」
待って!これ言うのなんか恥ずかしい。
そう思っているとほんの数秒フリーズしてしまった。
幸い気づかれることはなかった
「えーっと、陽と陰の交響曲〜女神の雫を垂らして〜、夏夜に染まる女神の泉〜星々を散らして〜をお願いします。」
なんか、顔が暑いけど、顔赤くないかな?
「メニューの確認をさせていただきます。サントゥーレトマトのスパゲティ、陽と陰の交響曲〜女神の雫を垂らして〜、夏夜に染まる女神の泉〜星々を散らして〜でお間違い御座いませんでしょうか?」
「はい、大丈夫です。」
どんな料理が出てくるのかちょと気になってきた。
リリィの方を見ると羽をパタパタさせニコニコ ウキウキしながら時折ヨダレを拭うような仕草も見せる……絶対きたことあるよね?ここ。
さすが高級料理店、料理が出てくるまでそこそこ時間がかかった。
「大変お待たせいたしました。サントゥーレトマトのスパゲティのお客様……陽と陰の交響曲〜女神の雫を垂らして〜のお客様……夏夜に染まる女神の泉〜星々を散らして〜のお客様、ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。」
「それでは、ごゆっくりお楽しみください。」
目の前にはとても美味しそうなトマトスパゲティと綺麗だけどよくわからないナニカ。
夏夜に染まる~は深い青色のかき氷に星を模したものが乗っている。
「ねぇ、リリィ…夏夜はなんとなくデザートってわかったんだけどその陽と陰の奴ってなんなの?」
リリィが呆れた顔をしてこちらに目を向けた。
「これはですねラーメンと呼ばれるものですよ!」
いや、自分の知ってるラーメンと違う。
リリィがお皿の上に載っている物をどかして麺を見せてきてくれた。そこには少量だか汁のようなものも見えた。
うん、確かにラーメンだ。
……ん?いや、待って、やっぱり来たことあるよね絶対に。
色々自分の中で無理やりに納得をさせてリリィの方を見るとそこにあったはずな料理が跡形もなく消えていた。
胃にブラックホールでも飼ってるの?
「ごちそさまでした。」
そう言って机の上で寝てしまった。
まぁ、可愛いから仕方がない。
よし、自分の食事に集中しよう!
「いただきます。」
色が濃いのに見た目ほど味は濃くなく食べやすい。
スパゲティ自体に工夫がなされているのか、トマトソースがよく絡んでとても美味しい。
「ごちそうさまでした。」
いや〜、満足。
すごく美味しかった!!!……でもやっぱり黄金のリンゴ亭で食べるご飯の方がなんかあったかくて美味しい。
やっぱりまだ高級料理店は早かったのかな?
「すみません。」
「はい、いかがいたしましたでしょうか?」
「お会計をお願いします。」
「かしこまりました。サントゥーレトマトのスパゲティ、陽と陰の交響曲〜女神の雫を垂らして〜、夏夜に染まる女神の泉〜星々を散らして〜以上で金貨1枚と銀貨2枚になります。」
覚悟はしてたけど、想像を軽く超えてくる。
やるねっキミッ!
お会計を済ませてリリィを起こす。
「リリィ帰るよ。」
リリィはまだ寝ぼけているようで、僕の肩に乗ってきた。
癒し。可愛い。女神。妖精。
この状況になるならまた来ても良いと思った。
リリィを落とさないように注意して歩き始まりの村の中心にある噴水の前までやってきた。
「リリィ、おはよう。」
「あ、シルヴァ様………おはようございます。」
だんだんと意識がはっきりしていたようで赤面している。
こんな時に言い辛いな。
そんなふうに思っていた時にリリィの方から話しかけてくれた。
「シルヴァ様、今日のデート楽しかったですね。また今度、2人きりで行きましょうね!」
デート……だったらしいです。いや、嬉しいよ、こんな可愛い子とデートだなんて。
……男子高校生を舐めたらいけない、すぐ本気にしちゃうよ?
「そうだね、僕も楽しかったよ。でもごめんねリリィ、僕もそろそろログアウトしなくちゃいけないんだ。」
リリィの瞳に涙が溢れてこぼれ……ないっ!
リリィは涙を堪えて言葉を放つ。
「シルヴァ様、はじめての冒険はどうでしたか?辛いことや楽しいこと、様々あったと思います。また戻って、この世界で楽しく笑い遊んでてくれることを願いこれを送ります。」
何も起きずに数秒がたった。
ピロンッ
メールが届いた。
メールのやり取りをしてるのはルルナさんだけのはずだったけど、もうログアウトしちゃったはずだし……???
[フェアリーズギフト]
そう書かれたメールを開く。
親愛なる私のご主人様へ、今までのお礼の気持ちを込めてこれを贈ります。
称号:妖精達の隣人
メールの画面がいきなり輝きそのメールは消えていた。
透かさずステータス画面を見る。
何もないはずの称号欄に1つの称号があった。
ドンッ!!!
いきなりの衝撃。
リリィが飛びついてきたらしい。
飛びついてきリリィを優しく抱いて
また、絶対戻ってくるよ。
と約束を交わした。
別れを惜しみながらもログアウトボタンを押す。
本当にログアウトしますか?
YES or NO
YES