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湧水の玉

ほんわかした空気を漂わせたまま商館へと着きドアをノックする。

そして少しするとひとりの男性が出てきた。


「ご予約は?」


ずっしりと重く響く声。

その筋骨隆々な見た目と相まってさらに近寄りがたさを増している。


「え、えっと……」


先ほどまでのほんわかした空気が一転。

僕が緊張とそれ以外のなにかによって固まっていると、まさに助けに船!あの人が来てくれた。


「ギール、私のお客さんをあまり怖がらせないでくれ。」


心に希望の光が差し込んだ様だった。


「……ヴィ、ヴィルノスさんっ!」


歓喜のあまり涙が出そうになる。

いや、出そうなだっただけで出てはないよ?



「いや、怖がらせようとしてるわけじゃないんですけど……」


ギールと呼ばれたその男はしょんぼりとしたオーラを漂わせながら悲しそうに言った。


この様子を見るに、本当は優しい人なのだろう。



「シルヴァ様、ルルナ様、リリィ様、今日はどの様なご用件で?」


おっと、ギールさんを気にかけているところじゃなかった……あれ?そういえば湧水の玉だっけ?それってどうなったのかな?ついでに聞いてみるか。


「今日素材を売りに来たのと、この前の湧水の玉ってどうなりましたか?」


「シルヴァ様申し訳ありません、どの支店に聞いてみてもあのアイテムの情報が得られず今現在も調査中でございます。」


「…………実はその、湧水の玉がもう一つあるのでその二つで色々試して値段を決めてもらうというのはどうでしょうか?」


「こちらからは願っても無い申し出です…が本当によろしいのでしょうか?こちらとしても問題が起こらない様に万全を尽くしますが、万が一ということもあります。」


まぁ、壊れたりしたらその時考えればいいし、またスライム狩ってればそのうち落ちるかもしれないしね。


「大丈夫ですよ。鑑定の方よろしくお願いします。」


「かしこまりました、それではこちらに。」


ヴィルノスさんについて行くと前回とは違う部屋に通された。

入ってくる際のドアは分厚くとても丈夫そうで中は広く、作業場なのだろうか様々なものを直したり作ったりしていた。

その部屋の一角にとても異様な雰囲気を出している場所がある、商談用の高級机と椅子が並べられた場所だ。

ルルナさんとリリィと僕はそこに通されて前回と同様にドリンクメニューを渡された。


「私は、紅茶の無糖でお願いします。」


やっぱり大人だなルルナさんは。


「私は、たっぷり砂糖を入れたミルクティーをお願いします。」


さすが妖精さん、メニューに無いものを平然と頼む。

しかもドヤ顔でっ!!


「僕はジンジャーエールでお願いします。」


「かしこまりました、それではただいまお持ちいたします。」


さすがヴィルノスさん、メニューに無いものを頼まれているのに普通に対応する、こうなるとどこまでいけるのかちょっと見てみたい……。

それにしても今回はちゃんと注文できてよかったな、コーヒーの無糖とか飲めないし!


注文したドリンクはすぐに来て商談が始まった。


「それでは、まず素材などの鑑定の方から始めさせていただきます。」


僕とルルナさんはアイテム一覧から、売却予定アイテム一覧に飛んで売却予定のアイテムを2つづつ出す。



〜売却予定アイテム一覧〜

・イノシシの肉×5

・イノシシの毛皮×10

・イノシシの牙×5


双暴牙の鬼猪のアイテムはあまり勿体無いので売却は見送った。


次にルルナさんがアイテムを出す。



〜売却予定アイテム一覧〜

・イノシシの肉×5

・イノシシの毛皮×5

・イノシシの牙×5

・双暴牙の鬼猪の牙×2


前回の猪戦では、ルルナさんのアイテムドロップ率が良かったらしく山分けということでルルナさんからアイテムをもらうことになってしまった。

でもなんか申し訳ない気持ちもありもらうアイテムは一番状態の悪いものを貰ったからルルナさんの今回の売却アイテムは全部状態がいいはずだ!


「ほぉ、双暴牙の鬼猪のアイテムですか……凄いですね。それにどれも状態がいい。」


今回は売却するアイテムも少なくすぐに査定が終わった。


「シルヴァ様、ルルナ様、買取価格はこちらでどうでしょう。」


差し出された紙を見てみる。



〜買取価格詳細〜

・イノシシの肉×5:銅貨15枚

・イノシシの毛皮×10:銅貨20枚

・イノシシの牙×5:銅貨15枚


計銅貨50枚



ルルナさんも買取額に満足した様で満面の笑みだ。


「これで大丈夫です、ありがとうございました。」


「私も大丈夫です。ありがとうございます。」


「ご満足いただけたようで何よりです。」


ヴィルノスさんはそう言うと湧水の玉を出した。


「それでは、こちらの方で湧水の玉の効果を試したいと思います。」


僕たちは言われるがままついて行き作業場の隣にある部屋へと通された。


「シルヴァ様、魔力を少しづつお流しください。」


台座の上に乗せられた2つの湧水の玉に手をかざし少しづつ魔力を流していく。


この湧水の玉の効果は 魔力を流すと水を出す。

と言ったシンプルなものだ、だがこの2つの湧水の玉は効果は同じだが外観は全く違う。


魔力を流し少しすると全く同じタイミングで水が染み出してきた。

それを用意していたコップに集める。

半分くらい溜まったところでヴィルノスさんに鑑定をお願いする。


「ヴィルノスさん、お願いします。」


まずは売却予定だった方から出た水を渡す。

見た目は至って普通の水だ。


「かしこまりました、それでは少々お待ちください。」


ヴィルノスさんが鑑定を始めると鑑定を行う際の魔力に反応して水が輝き出した。


「シルヴァ様、残念ながらこれは普通の飲料水でした。ですが、水を出す際に必要な魔力放出量は最も効率が良いとされるクリエイトウォーターの10分の1、かなりのものです。」


ただの飲料水と聞いた時は少しがっかりしたけどクリエイトウォーター?って魔法よりコスパがいいらしい!内心は高額査定を期待してみる。


次に外観が華やかな方から出た水を渡す。

この水は魔力を感じなくても淡く光っている。

見るからにすごそうだ!


「それでは、鑑定を行います。」


鑑定を行う際の魔力に反応してその輝きがさらに増す。


「これは…………」


あのヴィルノスさんからは想像ができない様な顔をして驚いている。


「それでは、効果をお伝えします。この水は微量の魔力を宿しており毎日飲み続けることで魔力保有量、魔力放出量の上昇が期待できます。この水を出す際に必要な魔力はクリエイトウォーターの5分の1です。」


多分凄いことなんだろうけどあまり実感がわかない。

どちらかというと隣にいるルルナさんの方が興奮している。


「シルヴァさんっ!っっっ」


興奮しすぎてルルナさんの声が出ていない。

しっかりしてよルルナさんっ!


「シルヴァ様、直ちに査定額をお調べしてきますのであちらの方で少々お待ちください。」


「は、はい。」


先ほどの場所へ戻りドリンクを飲んで待つ。

数分としないうちにヴィルノスさんご戻ってきた。


「お待たせいたしました、こちらが査定額の方になります。」


差し出された紙を見てみる。


〜査定額〜


湧水の玉 魔力水:金貨×30

湧水の玉 飲料水:金貨×5



!!!!!

あれ?見間違いかな?

もう一度見てみるがどうやら見間違いではなかった様だ。


「ヴィルノスさん、この額ってあってますか?」


「もちろんでございます。」


ヴィルノスさんがなんとも気持ちのいい笑顔で答える。



少し考えて湧水の玉飲料水の方のみを売ることにした。

金貨30枚は魅力的だけど、自身の強化のために使いたいしね。


「ヴィルノスさん、湧水の玉飲料水のみの売却でお願いします。」


「かしこまりました。」




無事商談を済ませ商館を後にする。


商館を出る頃には丁度お昼ごろで、あたりの屋台などが賑わっている頃だった。


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