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ルルナさんとの1日 Part3

いい香りに誘われながらお店に入ろうとドアを開けるとさらに濃い匂いが全身を包んできた。


「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」


「えーっと、2人?でお願いします。」


「?はい、かしこまりました。それではこちらへどうぞ。」


どうでもいいことだがこの時ふと僕は、妖精は1人に入るのか?と疑問に思ったが小さいし飛んでいるのでどちらかというと1匹?かなと勝手に考え勝手に結論を出した。


案内された席に着くと早速どんなメニューがあるのかを確認した。


なんともたくさんの種類の料理が載っていた。

めちゃくちゃ悩み悩んだ末にやっと答えを出した。


・きりたんぽ

・いものこ汁

・仁手古サイダー

・甘味噌アイス


お昼ということもあり軽めのチョイスにした。

ルルナさんはというと


・きりたんぽ鍋

・りんごジュース


のみだった。少食なのだろうか?

料理を頼み料理がくるまでの間ルルナさんに色々な質問をしてみた。


「ルルナさん、みんな妖精とかみると驚いたりするけど理由とかわかりますか?」


「えっとですね、妖精達って初心者をサポートするためにじゃないですか?ですので妖精をいつも傍に連れていると初心者と思われて舐められることがあるんですよ。なので妖精を連れている人が少ないんです。」


僕の妖精さんの前で言いにくかったようですこし申し訳なさそうに話してくれた。

その後も話を聞くと、ルルナさんも最初は妖精さんを連れていたらしくそのせいで獲物を横取りされたりしたらしい。

それに、妖精は8日したら自動で消えてしまうがその前にお別れすることができるらしく、かなりの数のプレイヤーがお別れしているらしい。

そんな話を聞いて妖精さんを改めて大切にしていこうと思った。


でも初心者って、このゲームの発売したの今日じゃん!と心の中でツッコミを入れる。


そんなところで料理が届いた。


きりたんぽはちょうどいい焦げ目がつきその上から食欲をそそる香りの味噌がかけられていてとても美味しそで一口食べてみると熱々のきりたんぽに少し甘い味噌がたまらない、どんどんと食が進む。

いものこ汁は、旬のキノコに野菜、芋などがふんだんに使われていて心が落ち着くような味できりたんぽととても合う。

仁手古サイダーは見た目が可愛いビンに入れられて出てきた、コップに注ごうとビンに触れるととても冷やされていて注いで一口飲むと濃いものを食べた後にはちょうどいいサイダーの味でスッキリした味わいだった。



ルルナさんの料理はというと…


少し大きめの器にきりたんぽと野菜などが入った汁の様なものでこれをきりたんぽ鍋というらしい。

とても美味しそうに食べていたので美味しいに違いない。

りんごジュースも濃い透明感のある黄色でとても飲みやすそうだった。

最後に妖精さんように頼んだ甘味噌アイスは妖精さんには量が多かったようで多半分くらい余していた物を貰った。

バニラアイスの爽やかな味と甘味噌の包む様な味わいが絶妙にマッチしてとても美味しかった。


完食後に少し食べ休みをしてから店を出る。

もちろん僕のおごりだ。

ルルナさんは自分で払うと聞かなかったが次また行くときに奢ってもらうということになった。次も一緒に食事をする予定を自然に作る、さすがだろ?


店を出た後はこのゲームの醍醐味、モンスターを狩に行くことになった。

もちろん初陣の草原……と行きたいところだけどルルナさんの提案で今回は草原の向こう側にある 魔獣の森 に行くことになった。

この魔獣の森はその名の通り獣型のモンスターが出てくるらしく素材がドロップしやすいらしい。

もちろん初陣の草原のモンスターより手強い。

それと、稀に比較的高レベルのモンスターが出現。




初陣の草原エリアを抜け、魔獣の森エリアに到着。

事前にこのエリアの説明を受けていたので現地での妖精さんの解説はない。



森を歩いていると木の上からのいきなりの投てき。

間一髪というところで避けれることができたが、間髪を入れずの二撃目。

避けきれずに右肩に被弾、幸いなことに見た目よりダメージが無いようでHPゲージは5%ほどの減少で済んだ。

敵の姿を確認することができた、敵は猿の様な姿のモンスターで既に次撃用の石を構えている。

そこで妖精さんの説明が入る。


「あのモンスターは、トロウモンキーです。投てき攻撃を主な攻撃手段としていて投てき物は生息環境により変動します。雑食です。」


「ありがとう、妖精さん!」


成り行きとはいえ自分が敵の注意を惹きつけている間にルルナさんが弓を構えていた。

ルルナさんが〈鷹の目〉を発動して矢を放った。

食事の際にギフト〈鷹の目〉の効果について教えてもらったが結構使いやすい効果内容だった。


〈鷹の目〉

・使用中は使用者の眼が紅く輝く事によりモンスターのヘイト値上昇

・攻撃の命中率の上昇

・クリティカル率上昇

・パーティーを組んでいる時のみ戦況を俯瞰的に見ることができる


矢はてきの眉間に吸い込まれる様に一直線に放たれる。

敵は、手に持っていた石を投げ矢を撃ち墜とそうとするが到底当たるわけもなく矢は眉間に突き刺さった。


バランスを崩し木から落下、そのまま絶命しまるで体が砂でできていたかの様にサラサラと崩れていった。

そしていつものようにドロップ品を回収する。


取得アイテム一覧

・トロウモンキーの毛皮

・トロウモンキーの主牙

・ギフト取得の書〈投てきの心得〉


ギフト取得の書という激レア感溢れるアイテム。

妖精さんに聞いてみると内容によってはこれ一つで国が買えるほどのアイテムだそうだ。

これを持っていると書の内容のギフトを取得していない状態でそれに書かれている事を戦闘中に行い続けることで対象のギフトを取得できるようになるらしい。

取得済みの場合はギフトの効果が強化又は新しい効果が追加されるらしい。

この場合は戦闘中に投てき攻撃をして一定回数的に命中させる事でギフト〈投てき〉を取得できるようになるらしい。


ひとまずアイテムの山分けは後にしてさらに奥へと進む。


微かに地面が揺れ始めドドッドドッっという音が近づいてくる。

その音は森の木々をなぎ倒しながらこちらへ近づいてくる。数秒後、姿を確認することができた。

イノシシの様な姿で到底イノシシの物とは思えない立派な牙、地面からの高さは目測だけでも3メートルはある。

武器を下段に構え相手が近づいてくるのを待つ。

その間にルルナさんがポイントギフトで俊敏を付与してくれた。

揺れが大きくなり少し足元が不安定になる。

かなりのスピードでこちらへ近づいてくるその巨体。

距離約15メートル、10、5、今だっ!


「はあっ!」


下段に構えていた武器を突進してくるタイミングを見計らい牙に添わせて左上段後方へと相手の突進を受け流す。

上手く受け流せた様で相手の進路が少し曲がり大木に衝突した。

ダメージが入ったかと思った矢先そのイノシシはこちらへと向き直しまた突進をしてくる。

大木を見ると今にも千切れそうなほどにダメージを受けていた。


「シルヴァ様、あれは双牙の猪です。ですが通常の個体より大きいですね、多分ですが順調に成長を続けて上位個体の双暴牙の鬼猪になる一歩手前の個体でしょうく。今までで一番の強敵です。頑張ってください!ちなみに雑食です。」


かなりの強敵の様だ。

ルルナさんも矢を放ち援護をしてくれてはいるがダメージが入らない。当たってはいる、だが矢が分厚い皮や筋肉に跳ね返される。

またも突進で近づいてきたところに今度は姿勢を低くし顎の下から槍を突き刺す、そのまま反転し双牙の猪の突進力を利用して投げ飛ばそうとするが少し浮いただけで投げ飛ばすまでは至らなかった。

槍を刺した感触も浅かった。

だが、バランスを崩させた事で今まで以上のスキが生まれた。双牙の猪が振り向く前に背後からの刺突、今度は深く刺さった。

さらに回転を加えて奥深くまで刺す。

痛みに耐えられなかったのか双牙の猪が呻く。

深く刺したところで繊維に添わせ槍を下ろす、そのまま槍を抜き一旦距離をとる。

間髪入れずルルナさんの矢撃。

正面は頑丈だが背面は比較的柔らかい様で放物線を描きながら垂直に落ちてきた矢はそのスピードを上げながら一気に突き刺さった。

そこで今までの様な猪突猛進的な動きが一転して落ち着いた様に振り返った。

その顔は赤黒く染まりまるで鬼かと思う様だった。

変わったのはそれだけではない、牙も先程より隆々として心なしか少し全体的に大きくなっている。

最も変わったのは殺気。

先程までは捕食のための殺気だったが今は怒りによる殺気。

ただ殺す。

だが、怒りに飲み込まれない冷たい殺気。


「シューー……ブギャーーッ!」


いきなりの咆哮。

突如どこからともなく先程まで戦っていた双牙の猪の半分くらいの背丈のイノシシが5体出てきた。

再度咆哮をあげるとイノシシ達が突進してきた。

次から次へと突進をしてくるので休む暇がない。


ドッ!


イノシシ達の対応をしていると今まで後ろで動かなかった双牙の猪が突進をしてきた。

ただの突進ではない、スピードに緩急をつけてこちらがタイミングを合わせられない様にしている。

至近距離からの急加速。

間一髪っ!とは行かず左足を負傷してしまった。


HPゲージ30%減少


一撃でこれか、後三撃受けると確実に死ぬな。

心の中でそう思いながら次の行動に移る。


「ルルナさん、僕が双牙の猪の気を惹いている間に様々な所に矢を射って一番柔らかいところを教えてください!」


「わかりました!」


そう言うと複数の矢を一気に放つ。

あルルナさんにあんなギフトはなかったはず、ルルナさん自身のプレイヤースキルか?

そんなことを思っていると矢が敵に降り注いだ。

やはり正面の当たった矢は全て跳ね返されてしまった。

再度弓を構えて双牙の猪の後ろに回り先程より多い矢を放つ、あの時よりは柔らかくないが正面の硬さと比べると雲泥の差だ。

放たれた矢は全て命中するが浅い。

だが両後脚の関節に刺さった矢は深く刺さり一方は貫通していた。


「シルヴァさん、関節部分が比較的攻撃が通りやすいです!」


シルヴァはそう言われ関節を見てみると後脚の関節には矢が刺さっていた。

矢が刺さったことにより突進のための溜が出来ずにいる。

その状態の双牙の猪を守る様にイノシシ達が周りを囲み始めた。


「「「「「プギャー!」」」」」


イノシシ達が咆哮をあげると今度はそのイノシシ達の3分の2ほどの大きさのイノシシ達が計10体出てきた。

双牙の猪をイノシシ達が守りイノシシ達に呼ばれた小イノシシ達が突進で休みなく攻撃を繰り出してくる。


「プギッ!」


突進のタイミングに合わせ関節部分への刺突。


双牙の猪同様に関節が弱いらしく、小イノシシ達は関節に対しての刺突により関節を負傷し動けなくなりただ威嚇の鳴き声だけを出している。

小イノシシ達を1匹ずつ確実に倒したところでやっとイノシシ達が出てきた。先程の小イノシシ達とは比べ物にならないくらいに連携が取れているがルルナさんの複射撃により怯んだ所に僕が槍で関節を貫く。

数分とかからずに全滅させることができた。

残りは双牙の猪のみ、双牙の猪は火事場の馬鹿力で立ち上がり今までとは比べものにならないほどのスピードで突進を繰り出してきた。

なんのひねりもないただスピードと自重に任せた突進。

簡単にとどめを刺すことができた。

双牙の猪が倒れた後今回の戦闘で倒した敵全てが一斉に砂の様に崩れていった。


取得アイテム一覧

・イノシシの肉×10

・イノシシの毛皮×13

・イノシシの牙×7

・イノシシ厚毛皮×5

・イノシシの希少肉×3

・双暴牙の鬼猪の大牙×2

・双暴牙の鬼猪の毛皮×3

・双暴牙の鬼猪の高密度骨×1

・双暴牙の鬼猪の牙×4


計16体の討伐にしてはかなりドロップしたと思う。


自分もルルナさんもHPやMPはまだ戦うには問題のない程度はあるが、気力がゼロに等しいので今日はもう村に帰ることにした。



村に着いたら既に夕方になっていた。

満場一致で今日は帰って休みまた明日素材を山分けしたり売りに行くことにした。


重い足取りで宿屋黄金のリンゴへと行く、宿屋につきドアを開けるといい香りが漂ってきた。

だが今日は空腹よりも休みたいという気持ちが勝りそのままフロントへ行く、よくみるとフロントにはあの時に料理を運んできてくれた少女がいた。


「すみません、一部屋空いてますか?」


出来るだけ優しい口調で話しかける。


「あ、空いています。こちらに必要事項をお書きください。」


ひとりでフロントの仕事をしている使命感?からなのだろうか、この前よりもしっかりしている。

そう思いつつ紙に必要事項を書いて渡す。


「ありがとうございます。こちらがお部屋の鍵になります。宿を出る際はフロントに鍵をおあずけください。そして一泊につき一食分の食事が無料になりますがどうしましょうか?」


「それなら、朝食でお願いします。」


「かしこまりました。それではおやすみなさい。」


看板娘?に見送られ部屋へと移動する。

部屋へ着くと装備を外しふかふかのベッドにダイブをする。




今朝は窓から差し込む光と、小鳥の囀りより目が覚めた。


朝日だ、いつのまにか寝ていたらしい。

昨日の疲れが嘘の様に取れていた。

今日もルルナさんと素材を売りに行く予定だからお腹がならない様に朝食は奮発する予定だ。

ここの料理はどれも美味しく既にこの店のファンになっていた。そして期待に胸を膨らませながら扉を開けて階段を下りていった。


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