謎多き忍者
「あ、そうだ!シルヴァっちは、これ初めてどれくらいっすか?」
シルヴァっちって…
「発売日からのプレイだよ。」
それを聞くと時雨は大声を上げながら笑い転がった。
こっちは当たって真面目に答えたつもりだ。
「ちょと、もう、死ぬー!やめてくださいっすよー、もう、はぁ、もう………嘘つくならもっとわかりにくいのにしてくださいっす!」
「いや、ほんとだって!!!」
「もう~、初日プレイヤーならレベル低過ぎるし、それにリリィっちもいるじゃないすか!あ、でも買ってからあんまりプレイしてないとまだ妖精さんがいてもおかしくないっすね!」
シルヴァは自身の特殊な状況を説明した。
「ゔぅ〜、大変だったんすね………泣けてくるっす!」
説明が終わったところで時雨は涙をポロポロと流しはじめた。
表情がコロコロ変わってみてて面白い。
泣くようなところなんてないと思うけど…。
「今はもう立派にギルドマスターまでして、大きくなったんすね。」
そして何故か母親みないなことも言い出してしまった。
「あ!もしよかったらうちのギルド 雲隠ノ里 と交流会とかしないっすか?」
「それは嬉しい申し出だけど、勝手に決めちゃっていいの?」
「うちのギルドっすからね!うち、ギルマス!!っす!!」
っ!衝撃の事実に少し記憶が飛んでしまったようだ。
「なんすか〜?そのいかにも驚いたっていう顔はっ!」
「ごめん、ごめん、で、なんの話だっけ?」
「ゔ〜〜!いじわるっす〜、まぁいいっす!承諾ってことでいいんすよね?そうと決まれば善は急げっす!」
そういうと、時雨は颯爽と準備を済ませた。
「さっ、行くっすよー!」
シルヴァ達も急かされながら準備を済ませ、再度武術国家アーツノルドへと歩みを進める。
長い道のりということもあり夕方から野宿の準備をすることになったのだが、時雨の世話役?のじいさん(プレイヤー名、十二郎)の家事スキル、野宿スキルが卓越しすぎていた。
気がづけばテントが設営されていて、料理もできている。
なんでこう、出会うおじさん達はできる人たちなんだろう。
「さぁ、いただきましょう。」
じいさんが作ってくれたシチューを食卓を囲みながらみんなで食べ始める。
「美味しいですねこれ!何使ってるんですか?」
しっかりと濃く満足感のあるシチューだ、これが軽くトーストしたパンと合って絶対的な美味さだ!
「お口にあった様でよかったです。お肉はフォレストボア、ミルクとチーズは単眼牛のものです。」
おぉう、知らない素材ばかりだ………
でも美味しいからいいや。
じいさんのシチューでお腹を満たすと明日のために休むことにした。
気がつけば辺りは暗くなり上を見上げると、その夜空には綺麗な星が散りばめられていた。
「おぉ〜綺麗。」
「そうですね、シルヴァ様。」
地面に腰を下ろし空を見上げでいると、いつのまにかリリィが隣に来ていた。
リリィが隣に来て数分が経った頃、精霊たちが何かを察知したのかフワフワと飛んできた。
「はい、ちょと何いちゃついてるのよ。」
開口一番カトレアにあらぬ疑いをかけられる。
「いや、別にいちゃついてなんか、ね?リリィ?」
「…‥……。」
寡黙を貫くリリィさん。え?なに?何も…何か起きようとしていた?!
シルヴァの知らないところで何かを計画していたリリィ、だがこの計画は精霊の妨害を受け実行されることはなかった。
シルヴァとリリィの様子を見るからにシルヴァは本当に何も知らないと思ったカトレアはリリィが寡黙を貫いた後のシルヴァの説明を受け入れることにした。
「もういいわ!さ、明日もあるんだしさっさと休むわよ!」
そんなこんなでその日は終わった。
今朝は、テントを通した太陽の光で目覚めた。
まだみんな寝てる
音を立てないようにそっとテントの外に出る。
太陽の光に少しひんやりとした空気ですっきりと冴える。
「うぅ、気持ちー!」
背伸びをしながら小さな声でそう言うと、何かをしている時雨さんたちに気づいた。
「はっ!」
「まだまだですよ。」
朝から模擬戦のようなものをしていた。
忍者だけあってクナイや手裏剣、煙玉と多種多様な武器を使っている。
時雨が手裏剣を投げると同時にじいさんの足元に煙玉を投げつけ視界を奪い、その足を鎖分銅で絡めて動きを封じる。
そしてさらに追加のクナイと手裏剣。
「おぉ、すごい。」
その速さと正確さに思わず声が漏れてしまった。
これは決まっただろうと思ったが流石はじいさん、いとも簡単に対応してみせた。
煙玉の煙が風で流されるとそこには身代わりの術なのか人型の木製人形が置いてありそこにじいさんの姿は無かった。
時雨さんもわからないらしくあたりを警戒している。
自分でも周りを見て探してみるが全然わからない。
「おはようございます、シルヴァ殿。」
耳元でそう囁かれて思わず大声を出してしまう。
「うわっ!!!!!」
「きゃっ!」
驚いた声に驚いたようで時雨さんの方から可愛らしい声が聞こえてきた。
声の元に振り返ってみるとそこには先程消えたじいさんがた。
「よければご一緒にいかがですか?」
「あ、はい、是非。」
驚きすぎてそれしか出なかった。
「ちょっとー!シルヴァっち驚かさないでくださいっすよー!」
いつの間にか時雨さんも隣にいた。
さすが忍者。でも、もう驚かないよ。
ーーーそして朝練が始まった!
まずは基本の的当て。いつの間にか準備された的に向かってクナイやら手裏剣やらを打ち込んでいく。
「はっ!」
「えいっ!」
これがまた思った以上に当たらない。
いつもはバフがかかってるから当たるんだ。改めてその偉大さを実感した。
「ちっちっち!だめだめっすねー!シルヴァっちは!お手本見せてあげるっす!」
時雨さんの顔がなんだかとっても楽しそう。
「えいっ!やっ!」
さすが時雨さんだ的の中心に一発目を当てさらに寸分の狂いもなく二発目も当て的にぽっかりと穴を開ける。
「コツは1パーセントの努力と99パーセントのセンスっす!」
「あ、そう。」
そんなアドバイスにならないアドバイスをもらってからじいさんの所へ行き手ほどきを受けた。
「今日はこれくらいにいたしましょうか。」
じいさんのその言葉で今日の朝練は終わりとなった。
かなり充実した内容だったが実際はまだ一時間しか経っていないことに気がついた。
終わったちょうどくらいにうちの子たちも起きてきた。
「おはよーございます。シルヴァ様。」
「おはよう、シルヴァ!」
「おはよ〜ございます〜。」
「おはようだ、シルヴァ。」
「ビィィィ!」
「みんなおはよう。」
挨拶をすると、リリィがこちらにパタパタと飛んできた。
「申し訳ございませんシルヴァ様、起床が遅くなってしまい…」
「いいよリリィ、全然気にしないで。」
そんなやりとりをしているとじいさんがみんなを呼んだ。
「皆さま朝ごはんの準備ができたのでこちらにどうぞ。」
おかしい、さっきまで一緒にトレーニングをしていたはずだ。じいさんはつきっきりで指導してくれていたので何か作る暇はなかったはず。
さすが謎多き忍者。
「今朝は銀大鮭の七輪焼きにきのこのお味噌汁、サラダに単眼牛のヨーグルトです、どうぞ。」
………単眼牛、美味すぎだし凄すぎる。もう大好きっ!
「ご馳走様でした!」
みんなでしっかり腹ごしらえをして今日も武術国家アーツノルドへと歩みを進める。




