始まりの村
初陣の草原でルルナと別れた僕はそのまま始まりの村へ戻り宿に泊まることにした。
宿屋:黄金のリンゴ
ここにするか。
ガラッ
宿屋の門を開けてフロントへと向かう。
そこには看板娘?若女将さん?どちらとも取れるような若くて美人な女性が一人立っていた。
「すみません。一泊したいんですけど空いてますか?」
「はい、大丈夫ですよ。ようこそ宿屋黄金のリンゴへ、一泊銅貨十五枚になります。料金は前払いでお願いしています。あと、こちらにお名前の記入をお願いします。」
僕はそこで、ふとあることに気がついた。
あれ?お金持ってたっけ?
モンスターからは素材などのアイテムしかドロップしなかったし……どうしよう。
そう僕が悩んでいると妖精さんが話しかけてきた。
「所持アイテム一覧を見てみてください。一番下にゲーム開始に配布された金貨が一枚あるはずです。」
さすが妖精さん。
もう妖精さん無しじゃ生きていけないっ!と、軽く本気で思いながらお金を渡した。
「金貨一枚からですね。……はい、銀貨八枚と銅貨五枚のお釣りです。それでは、シルヴァ様のお部屋は209号室になります。こちらがカギになります、宿を出る際は鍵をフロントはお預けください。」
「わかりました。ありがとうこざいます。」
銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚、うん、わかりやすくていいな。
「あ、シルヴァ様、食事などはどうなさいますか?」
食事。そういえばこのゲーム内ではまだ何も食べていないな、せっかくだからお願いしよう。
「それじゃあ、今日の夜と明日の朝の分をお願いします。料金はどれくらいでしょうか?」
「ありがとうございます。宿泊者様は一食無料で二食目からは銅貨三枚を頂いています。食べれないものなどがあれば事前にお伝えください。」
思ったより安いな。それにサービスもいい。
「それじゃ、これでよろしくお願いします。」
僕はお金を渡すと部屋へと急ぎいく。
ガチャ
部屋へと入ると正面の突き当たりには大きな窓、入ってすぐの右側にはトイレとシャワー室。この値段でトイレとシャワー室が部屋についてるのはかなりいいんじゃないかな?奥まで進んで右側を向くとふっかふかのベッドがあった。
ベッドへ腰を落ち着かせるとすぐさまステータス画面を開いた。
シルヴァ
レベル2
HP:MAX
(HP最大値小)
MP:MAX
(MP最大保有量小)
(MP最大放出量小)
AT:(小)
装備時(中)
DF:(小)
種族????:一定レベルまで上げたのち解放
職業????:一定レベルまで上げたのち解放
装備武器:槍(威力上昇小)
ギフト:まだ取得していません
ステータス画面を改めて見ると様々な疑問が生まれた。
「妖精さん、HPやMPとかの詳細な数字ってわからないの?」
「それはですね、運営側の意向であえて詳細な数字がわからないようになっています。数字のみで勝てる勝てないの判断しないで実際にモンスターと工夫をしながら戦って頂きたいという運営側の強い思いがあります。」
そういえばスライムに攻撃されて少しHPが減ってたけど全回してる。
「妖精さん、色々わからないことが多いから一から教えてもらえると……お願いしますっ。」
「わかりました。それでは何から説明しましょうか?……そうですね、まずはHPやMPの下にある最大値や保有量、放出量について説明させていただきます。………」
その後数十分に渡り説明が続いた。
妖精さんの話を簡単に説明すると最大値はそのまま上限という意味で、保有量は水の入ったタンクで放出量は蛇口と考えればわかりやすいと言っていた。
そして、MPを消費する行動などを撮った際に基本的に放出量が多ければ多いほど効果が高くなるらしい。
攻撃力や防御力は種族により大きく変わるらしいのだが種族が解放されていない今のところは全て(小)扱いになっているらしい。
だけどその値は基本的なもので装備や武器によって上昇させることができるらしい。
HP 、MPは時間経過でほんの少しずつだが回復していくと言っていた。
長い説明を聞いていたので眠くなってきた。
夕食を済ませたあとすぐ眠ることにした。
部屋を出て階段に差し掛かったところで鼻腔をくすぐるいい香りがしてきた。
初陣の草原ではあまり人に出会わなかったが、階段を降りるとそこには種族が様々な沢山の人達がいた。
「あ、シルヴァさん夕食にしますか?」
階段を降りたところで、忙しそうに食事を運んでいる受付をしてくれた女性が話しかけてきた。
「はい、お願いします。」
そう言って空いている席に着いた。
どうやら食事は決まったものらしくその他に食べ飲みたいものがあればお金を払い追加で注文するようだ。
席に着いてしばらく経つと料理が運ばれてきた。目の前に置かれた瞬間、その香りと見た目でよだれが溢れてきた。
〜黄金のリンゴ今日の夕食〜
・純白米のほかほかご飯
・レッドブルのステーキ
・自家製野菜のサラダ
・せんべい汁
これが銅貨三枚で食べれるのか!かなりお得なんじゃないか?それにせんべい汁はどっかの郷土料理だったし、現地に行かなくても食べれるのは嬉しいな。
その日はこのゲームでのはじめての食事ということもありよく味わいながら食べた。レッドブルは牛のステーキみたいなもので美味しかった。特にはじめて食べたせんべい汁というものはその名の通り白味噌の味噌汁に白く薄いせんべいが入っていて、汁でふやけたせんべいが絶品だった。
そのあと部屋へ戻り寝る支度をして布団に入った。
……あれ?ゲームの中で実際に寝るって思うとなんか違和感。
と思いつつも睡魔に勝てるわけもなくいつの間にか眠っていたようだ。
今朝は大窓から差し込んだ朝日によって目が覚めた。ちょうど自分の顔に朝日が当たり気持ちよく目覚めることができた。
目覚めるとすぐに窓の外を見た。外ではすでに市場の屋台などが立ち並び行き交う人々で賑わっていた。
ルルナと会うまで時間があるので食事を済ました後は市場を見て回ることにした。
ガチャ
廊下に出るとやはりまた鼻腔をくすぐる匂いが香ってきた。
僕は今度は何が食べれるのかと朝食に期待をしながら階段を降りていった。