救出
「悪りぃ、またせたな」
そう言いつつ俺は状況を把握する
広場での戦闘で残りの狼の脊椎を折ったり目玉をくり抜いたり下を引っこ抜いたり…。
ありとあらゆる方法で全ての狼を殺した後、急いで4人の後を追った
強化された身体能力を駆使し、やっとの事でたどり着くと4人はちょうど休憩を終え、再び逃げようとしているところだった
しかし次の瞬間にはどこからか湧いてきた来た狼に襲われそうになっていた
内心焦りつつもそいつを横合いから蹴飛ばし今に至る
油断なくあたりを見回すが他にはいそうにない
そこまでを刹那のうちに把握して、眼前の狼と対峙する
これまでに数匹殺してるから狼型の魔物ならば心配することもない
「怪我ないか?」
先輩に問いかけると鳩が豆鉄砲食らった様な顔をしている
声は出ないが頭をコクコクと上下に振っている
意外とカワイイとこもあるんだな
今までの先輩のイメージとかけ離れた動作に思わずホッコリしながら取り敢えずは一安心
他の3人にも問いかけるが怪我はないようだ
よかった…
「話をするのも取り敢えずはこいつを殺した後だな」
独り言を呟くと紘也が声を出す
「おま、おまえ…結胤か…?」
何を言ってるんだこいつは
頭でも打ったのか?
「何行ってんだよお前、友達の顔も忘れたのか?」
軽口を叩く
すると狼が唸りながら飛びかかってきた
「ガァウッ!」
横に飛んでかわそう思ったが後ろには先輩がいる
仕方なしにいつものパターンで左腕を噛ませる
犬歯が食い込み、激痛がはしる
血が滴り落ちた
何度やっても慣れねぇな…
顔を顰めつつも目玉を殴りつける
イヌ科特有の甲高い声と共に後ろに数歩下がる狼
その一瞬の隙を逃す事なく右肩でタックルをかます
派手に吹き飛んだ狼にマウントをとり首の骨を後ろから掴む
ミシ…
軋む音
次の瞬間にはボキッと音がして骨が折れた
強化された身体能力のおかげで最初の頃よりも楽に殺すことができた
紫電を迸らせつつ再生する左手
「ふぅ…」
やっと一息ついた俺は改めてみんなの顔を見る
みんなはたった今一つの命が消えたことに放心状態になっている
そしてたった今左手に起きた事に驚愕し目をパチクリさせていた
顔を顰め、吐き気を我慢してるヤツも若干一名
「遅くなって悪いな、もう大丈夫だ」
そう言うと女性陣がパタリと座り込んだ
過度の緊張からとかれ腰が抜けたのだろう
すると紘也と航が近づいてきた
「結胤、ありがとう。」
「助かったぜ」
感謝の気持ちと共に頭を下げる二人
「気にすんな、ダチだろ?」
ニヤッと人の悪い笑みを浮かべる
そこで安心したのか、二人とも尻餅をつくように座り込んだ
「いやぁ、一時期はどうなるかとおもったよ」
「なんにせよ、助かったな。にしたって結胤、なんでお前あんな躊躇なくやれたんだ?」
紘也がごもっともな疑問を問いかけてくる
「あの狼、どう見ても人間が立ち向かえるようなモノじゃないよね」
航もここぞとばかりに便乗してきた
「いやぁ、なんか最初の一匹を殺した時に強くなったんだよ」
「はぁ!?何言ってんだよ結胤、頭平気か?」
失礼な奴だな
航も苦笑いをしている
(俺が聞きたかったの何故躊躇無く、生き物を殺せたのかだったんだが…。
普通に考えて、いきなり目の前に生き物が現れたとして、自分の命がかかっていたとしてもあんな躊躇なく殺せるものなのか?)
紘也は一人疑問に思っていた
すると結胤が自分に起こったゲームの様な事を説明し出した
最初は困惑していたがあんなものを見せられた手前、渋々と納得した四人
「まるでRPGだな。それにしても、なんでその、スキル…?を習得できたんだろうな」
なかなかに鋭い質問をする紘也
「それについては一応の仮説がある。でも今は言えない」
「なんでだ?」
紘也の質問に対して周囲を見渡す
すると、いつのまにか魔物の襲撃から逃げ出せた他の生徒たちがポツポツと見え始めていた
何処で誰が聞いてるかもわからない
おそらくこれからは、この何処だかわからない森の中でこいつらとサバイバル生活をすることになるだろう
そうすると必然的に小さく、狭いコミュニティを形成する事になる
そんな状況で敵になるかもしれない相手に塩を送るような真似はしたくない
その旨を伝えると
「お前なぁ、考えすぎだろ…?」
頷く他、3名
みんなの顔が同意の意を表していた