成長
ブクマありがとうございます!
頭の中で声が聞こえた
それは幻聴などではなく、確かな意味を持った言葉だった。
「な、んだ?」
突然のことに困惑する
狼がその隙を逃す訳がなく飛びかかってきた
クソッ!
咄嗟の判断で左腕を出す
狼が左腕に食いつき、犬歯が食い込む
味わったことのない激痛に顔を顰める
「ぐぅう……」
顎の力が半端じゃねぇ
ミシミシと骨が音を立てているのがわかる
このままじゃ折れるのも時間の問題…
狼の頭を思い切り殴りつける
怯んだものの腕を離すには至らない…。
クソがッ!!
膝蹴りを喉元に繰り出す
ガツン!!
手応えはアリ
しかし、ダメージを食らってない
ミシミシ…
左腕に力が入らない
思わず冷や汗がたらりと垂れる
どうなったとしても離す気は無いらしい
だが、好都合だッ!
思わず口元を歪める
そのまま右手を上げ、人差し指と中指を立て貫手をつくる
「これでも食いやがれっ!」
そして右手をそのまま狼の眼球に突き立てる
ジュグリ
「ギャンッ!」
嫌な感触を気にすることなく眼球の裏側に滑り込ませる
ーー強膜をぶち破る感触
そのまま眼球を抉り取った
「キャンッ!!」
先ほどとは比べものにならないほど大きな声を上げる狼
やってやった…
生物の眼球は思っているより頑丈なため潰すとこよりも抉り取る方が容易い
噛まれていた左腕が離される
そこで不思議な現象が起きた
食い込んでいた犬歯が抜けたことにより、大量に出血する左腕
しかし次の瞬間、痛みで力が入らない腕を紫電が迸ったかと思いきや、みるみるうちに再生していったのだ
これが超再生ーー。
思わず乾いた笑みが浮かぶ
「ははは…」
これではまるで、ゲームみたいだ
痛みが引いて行き、傷跡が消える
これが俺のチカラ
頭の中で声が響いた時、なんとなくこの力の事がわかった
わかったというより理解させられたのかーー。
しかし、理解したからと言って、それをすぐ信じる事などできるはずもない
この状況を見るに、どうやら俺は不死身になったらしい
「ははは。とんだクソゲーだな…。」
現実逃避気味にそんな言葉を呟いた
俺が現実逃避しているとバタッと音が聞こえた
どうやら眼前の狼は、あまりの痛みに気絶したらしい
念のために首の骨を折っておく
ゴキッ
生々しい音をが響く
すると何かが流れ込んでくる感覚がし、力が湧いてくる
魔物を倒したことにより、レベルが上がったのか?
本当にゲームみてぇだな…
それにしても
最初からこんな強い魔物、ゲームバランスの崩壊もいいところだな
RPGで言うなれば、最初の街で出くわす魔物なんかじゃなく、5個か6個目の街の魔物だ
難易度設定ガバガバじゃねぇか、ちゃんとやれよ
ボーッと考えていると近くから悲鳴が聞こえた
そういえばまだ仲間がいたか
今にも食われそうになっている女生徒を、助けてやる
足を踏み込むと爆発的な加速力が生まれる
内心驚きながらも横から腹を思い切り蹴り飛ばす
ドガッ!
吹き飛んだ狼を追う
突然の事に困惑した狼だが、次の瞬間には飛びかかってくる
避けようとするも、狼に飛びかかられてしまう
俺の上に乗った狼は口をガバッと開くと噛み付いてきた
それを左手に噛ませ、致命傷を避ける
ーー激痛
顔を顰めつつ右手を無理やり口の中に入れて開かせる
指に歯が食い込むが気にしていられない
そしてそのまま大口を開けている狼の口内に腕を捻じ込み舌を引っこ抜く
ブチンッ!!
狼は倒れヒュウヒュウと息をしていた
これでコイツは窒息死するだろう
血で滲んだ腕が紫電を迸りつつ修復されて行く
バチチチチチッーー
生き絶えた狼をどかしつつ立ち上がる
体の中に何かが流れ込んでくる感覚がし、力が湧いてくる
体が軽い
これはおそらく、狼を倒したことにより、成長したのだろう
「あ、ありがとう…」
未だ何が起きたかわからない様な表情をしている
逃げろと伝えて辺りを見渡すと、まだ狼による蹂躙劇は終わっていなかった。
狼を2匹殺したことによる身体能力を使って次の標的を見つける
ーーあと5匹…ッ!!
狩が始まったーー。
お読みいただきありがとうございます
次はヒロイン出ると思います