墓前での決意
ミスティが俺達の家に住み着いて二日が経ちさらに儀式まであと三日になった。
状況は依然変わらぬままだ。ミスティの解析によるとこの霧は相当の魔力で練られてていて、それを発動するには、魔族では不可能とされている。
恐らくこの事件には熟練の魔術師と手を組んでいるのと彼女は言っている。
誰のかはまだ不明なのだが解析次第では後に分かるようだ。
その間に俺もリュミエールを守るためにこの世界の魔術を習得できるようにと、魔法を発動するのだが、どうも発動できないようだ。
やっぱ元の体であるアルマリアだからかそれとも別の人間がこの世界に介入してるから使えないという法則があるかわからないがいずれにしても今の俺には、この事件に関わるすべもないようだ。
そんな中、朝方朝食を済ませたリュミエール、ミスティ、俺の三人娘?は村はずれにある墓標で両親の墓参りにまいるつもりだ。ちなみにガイ叔父さんは早朝に仕事に出掛けて参加できずミスティに至ってはただの息抜きで参加するつもりだ。
準備の為に事前に買い出しを終え今から墓場に向かうつもりだ。
もちろん荷物持ちは俺だ。ちなみにこれから持っていくものは、お供え用の花と喉が渇かないように飲み物を用意している。
リュミエールによるとここから墓場まで10分程だが道中道が険しいから念のために飲み物が必要なようだ。
「うえっ吐きそう」
これから墓場に向かう時にミスティが顔を青くしてフラフラしながら吐きそうとしている。それは先程ではない、今朝からで、理由は簡単二日酔いだ。
二日前俺がミスティと大事な話をしていた後あいつはガイ叔父さんと共に朝まで飲んだらしい。ちなみに二日連続だ。ガイ叔父さんは酒に余程、耐性があるか二日連続で飲んでもケロッとしているがこの女は別のようだ。ミスティが酒に弱いのではない叔父さんが酒にものすごい強いだけだ。
「ミスティさん大丈夫?」
「う、うん、なんとか・・・・・・・オエッ」
リュミエールは、彼女にハンカチを渡して背中をさすろうとする。だが俺はそれに対して、厳しい態度をとる。
「リュミエール、ほっときましょう。別に来なくていいですよ」
「べ、別にいいじゃない・・・・・君の両親をを参るだけじゃないか・・・・・・・・・吐きそう」
「酔っ払いに母さんたちに会わしたくないです」
「酔っ払いじゃない・・・・・二日酔いだよ・・・・それに大声で叫ばないで欲しいな耳に響く・・・・・」
紙袋を持って涙を浮かべながら吐こうとする彼女に呆れてものも言えない。本当にこの人はこの霧を何とかしてくれるのか。不満でいっぱいだ。
「ミスティさん薬です。これ飲んで落ち着きましょう。」
「ありがとう・・・・・」
リュミエールはミスティに酔い止めの薬を渡そうとする。俺はため息を吐きながら彼女に水筒を渡す。
ミスティはすかさず薬を含み飲んだ。すると彼女の酔いは止まり落ち着いたようだ。
「姉さんさっきは言い過ぎだよ。せめてミスティさんに歩を合わせてあげて・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・はぁ分かりました。そうしましょう」
リュミエールにはかなわないなと俺は小言を呟きながら結局ミスティに合わせて歩くことにした。
俺は、結局ミスティを抱えながら険しい足場を歩んでいる。ちなみに花はリュミエールが持ちながら先行して霧を払いながら先を進んでいる。どうやら墓場までの距離は魔物はいないらしい。あくまで村内だから魔族が魔物に手を出すなと手引きしているから道中に魔物の一匹もいないようだ。
俺は、リュミエールに聞こえない程度に会話する。
「おい、あんた飲み過ぎだぞ」
「ごめんね・・・迷惑かけたね・・・・・酒は嗜む程度だが、あの叔父さんにつき合わされてね」
「にしても二日連続はないだろ・・・・」
「わたしこう見えても負けず嫌いでね・・・・目の前に強敵がいると戦いを挑んでしまう質なんだ」
「あんた結構脳筋なんだな」
「アハハハハハ、褒めてくれてありがとう皆からそう言われる」
ミスティは半笑いする。いや、褒めてないから
「にしてもその正確なのに魔王軍に挑まないか?脳筋ならこのまま後さず考えずに突っ込むだろ?」
「流石に戦力に圧倒的差がある相手には、挑まないよ私もそこまで馬鹿じゃない」
「言えてる」
「なのになんで君は、それに挑もうとするの?何の力もないのに」
ミスティは疑問そうに確信にせまる。
「なんでかな?俺にも分からない。だけど託されたんだあいつに『妹を守れ』って・・・・・偽善と言われてもいいだけど俺は約束を護りたいんだ。それが俺がここにいる存在理由かもしれないんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
俺は胸を押さえながらミスティに決意する。
「へえオッパイ大きいくせに生意気なことを言うんじゃない?」
そう言って俺の胸を片手で揉みしだく。痛い、右胸潰れるって
「おい何すんだよ」
「私より年下の癖に私より大きくなったオッパイをいじめただけよ」
「それ俺の体じゃないしっていたたたたたた」
俺の言葉を聞かず、小悪魔的な表情でさらに強く揉みししだく。そんな事したって大きくならねえよ。
「いいから私のオッパイを大きくさせなさい」
「いい加減に・・・・」
「はあ、何やってるの?二人とも」
リュミエールが呆れた顔で見ている。会話が聞こえなければいいが・・・・・
「馬鹿なことをしないで・・・・サッサっと行こうよ。それにミスティさんこの調子なら姉さんの手を借りなくても大丈夫なそうね。」
「う・・・・うん」
そう言われると俺から離れるミスティ
「じゃあ行こうか」
そう言って先に出掛けるリュミエール。そして、ミスティは、俺の耳元に近づいて・・・・・・
「続きはまた今度ね♡」
そうウインクして呟きながら先に進む。
本当に志和さんと外見が似てるだけで性格が違いすぎるあいつ、積極的すぎてビッチぽいしそれに・・・・・・女にも興味あるんじゃないか?俺は深くそう思いながら二人の後を追った。
しばらく歩くと墓場に着いた。周りは当然霧で覆われて、視界が見えず不気味だ。
リュミエールが霧を払っていても不気味さは消えなかった。確かアルマリアの記憶でのこの墓場はそれほど不気味さはなかったはずだ。もしかして魔族が来てここの雰囲気も異様な雰囲気に包まれたのか。
「気づいているかい」
ミスティが耳元で呟く。
「ああ、これってもしかして魔族の・・・・・・」
「そうだね彼らの仕業だと思うよ。妖気でここの地形をゆがましている。それより、私達も気をつけた方がいいわね。なんせ表向きでは、村内の人間は手を出さないと言っているが、それの裏はどうなんだろうね?」
「どういうことだ?」
「だって、私はここの村人じゃないしあなたも中身は別の人間だから魔族に襲われない保証はないんだよ」
「あっそうか」
確かに俺とミスティは、ここの村人じゃない。村人じゃやなければ襲われるんだ。もしかしてこの墓場に奴らの監視があるんじゃないか?
そう思い俺は周りを見る。
「大丈夫だよ。気配では奴らはいないけど十分に気をつけた方がいいよ」
そう言ってミスティは、先に進む。俺も二人とはぐれないように先を進むのであった。
「ここか君たちの両親の墓は」
しばらく歩いてようやく俺達の両親の墓を見つけた。
墓には、文字が刻まれており、何故かその言葉は俺は読める。なるほどこれも移り変わりの影響か。
とにかくこう書かれている。
エルマン ピュールシュ
リリー ピュールシュ
ここに眠る
そして墓場には、すでに青い百合がそなえてあった。
俺達は、持ってきた花束を添えて墓場にしゃがみ手を添える。そして、俺は内心この両親にこう伝える。
『初めまして、あなたの娘さんのアルマリアの体を借りて挨拶します。東崎 有馬です。俺は別の世界からここに来てしまった人間です。あなたの娘さんのアルマリアはここにいませんが妹のリュミエールは俺が守ります。なので力を貸してください』
「姉さんどうしたのそんなに念じて」
リュミエールが声を掛ける。しまった長時間呟いてしまったのか?
「いえ、父さん、と母さんに挨拶しただけです。あなたを守るのは私だけって」
「姉さん・・・・・・・・そんなこと言わないで重すぎるよ」
リュミエールは、赤くなって、目を背ける。何を勘違いしてんだ。
「それに力を下さいって。そうすれば奇跡は、きっと起こる。私はまだ諦めてないですよ。魔王を倒して、この山に再び青い空を拝めると思いますから」
「姉さん・・・・・・・」
「やだなんか泣けるじゃない」
なぜか涙を浮かべるミスティはほっとき俺はリュミエールにそう決意した。
「ねえリュミエールちゃんちょっといい?この青い百合珍しいね?」
ミスティは、墓前にすでにそなえてあった青い百合に注目する。
「ん?珍しいんですかそれ?」
「当り前だよ。こんな色合いをした百合の花何て見たことないよ」
確かにな俺もこんな色をした百合なんて自然では見たこともないな。確か俺の知識では確かそれは、元いた世界でもそれは存在しないんだったな。他の遺伝子を導入して作るとか聞いたことあるな。科学の力で作られた花それが青い百合だ。無論それは百合だけではなくバラや胡蝶蘭も遺伝子をいじって作ったらしいな。
とにかく自然でそれを見るとすごいことだ。これを学者に見せると学者方がパニックになるのが目に見えるぞ。
「この青い百合はなぜかこの地域の性質の関係で生えてくるの。だけどそれは昔の話今はこの霧や魔族の妖気でこの花は、あまり見かけなくなったの」
リュミエールは、しょぼくれた顔をする。
「大丈夫ですよ。私がもう一度探して見せますよ確かにあまり見えなくなりましたが、前みたいに偶然見つかったりする。こともある。だから、心配しないでください」
俺はリュミエールの頭をさする。
「姉さん・・・・・・・それもいいけどいい加減仕事したらどう?」
リュミエールは、急に口調を変える。え?仕事何俺なんかしてたの。つかさっきの感動の場面からなんか嫌な予感がするんだけど
「はい?」
「はい?じゃないの。怪我はもう治ったんでしょいい加減狩りを始めたらどう?」
「狩り?」
「はああああああああ、姉さんいつまでニート気取るつもりなの?もう5日も休んでいるんだよいい加減そこらの獲物を捕まえてきなよ」
リュミエールは普段と違うギャップで突っ込んでくる。っていうか俺の仕事、狩りをやってたのね。
後異世界まで来てニートは止めて心が痛む。
「分かりましたよ。行けばいいんでしょ」
「あーーー嫌々でいった。今日成果なかったら家に上がらせないからそういう覚悟で言って来て」
「はい・・・・」
俺は叫びまくるリュミエールに負けて渋々返事をする。ここ仮にも墓場なんだから静かにしろよ。
っていうか狩りって何何をすればいいの。
「大丈夫。後で私が教えてあげるから」
ミスティは、また耳元で甘い言葉でしかも乳を揉まんとするばりのいやらしい手つきでそう言う。
はあ、もう嫌だ。
カンカンカンカンカンカン
その時鐘の音のようなものが、周りに響きあった。
「何なの?」
「これは緊急招集の鐘だわ。つまり何かあったようだわ」
リュミエールはそう言う。
「もしかして私の事がバレたんじゃ」
「とにかく今すぐ村に降りましょう」
「分かった姉さん」
そう言うと墓場を後にし、急いで村まで、走り続ける。
頼む、何も起こりませんようにと俺は内心そう願った。