突然の来客
俺達はその後何事もなく帰った。俺は帰った後自分の部屋に戻り突然現れた黒ずくめについて考えた。
あの顔は間違えない志和さんだ。・・・・・・だが顔は似ついてもあんな陽気な性格じゃなかったはず、だがこの世界と俺が元いた世界は別だ。同じ顔の人間に偶然出会ってもおかしくないが、あの女は確かに俺の事を「少年」と言った。
今の俺の外見はアルマリア ピュールシュと言う女になっている。それなのに俺のことを男と認識していた。つまり俺がこの世界に来た真実を知る人間だ。
今すぐに動きたいがこの濃い霧だまともに探せない。霧払いの術を使いたいが、どうやってこの世界の魔法を使えばいいか分からない。リュミエールに手伝ってもらうのも手だが今、彼女に正体を隠してるためにうかつに手をかせない。それに下手に協力して巻き込まれても可哀想だしな。
そうどうでもいいことを考えてる内に時計を見ると6時前だ。確かこの時間はガイ叔父さんが帰ってきて夕食を食べる時間だ。
確か叔父さんの仕事は村の見張りの仕事で今日は日勤だから帰るのは確か6時ころだったけ?
急いで晩飯の手伝いをしないと思い俺は急いで一階の台所に向かおうとした。別に手伝う必要はないがリュミエール一人が晩飯を作ってるのに姉である俺が手伝わないと威厳がなくなるからだ。
中身は他人でも外見はあいつの姉だ。病弱で儀式で残り少ない命を大切に守る義務がある。だから少しでも負担を掛けないようにしなければいけないと俺は思う。
俺は一階に付き手を洗い夕食の手伝いをしようとする。
「手伝います。リュミエール」
「あっ姉さん。別にいいよ。もうできるところだから」
調理場でエプロンを掛け調理を終えようとするリュミエール。すでに出来上がったチーズグラタンが香ばしく匂わせてくる。
「すみません。なんか手伝えば良かったんですが・・・・・・」
「しょうがないよ姉さん病み上がりだからね。それに姉さんの料理は・・・・・・」
「ん?何です?」
「ううん。何でもないの。それよりこれからサラダをお皿を乗せるから用意してもいい?」
「分かりました」
リュミエールは途中で何か言おうとしたが苦そうな顔で止めた。もしかしてこいつの料理はへたくそなのか?
まあ細かいことは気にせず皿を用意をする俺だった。
「ただいまーーお前たち帰ってきたぞーーー」
「お帰りなさいオジサン」
しばらくするとガイ叔父さんが帰ってきた。俺達姉妹は、叔父さんを迎えようと玄関に向かった。
だが玄関に向かおうとすると叔父さんの他に誰かいるようだ。そしてその姿は見覚えがある。
あの黒髪の長髪にこの世界では珍しい東洋人の顔そしてその茶色と黄色の二色の瞳を特徴とした俺の正体を知るあの時の志和さん似の黒ずくめの女だった。
「オジサンその人は?」
「喜べお前達!!この方はあの王都の騎士団からこの霧について解決をしてくれる魔術師様だぞ。村長様の命でこれから数日間俺達の家に泊まることになったぞ」
「あのガイさん確かに協力すると言いましたが。術式を解くにはまだ時間が必要ですよ」
「まあまあうちの可愛い姪っ子です。ほらお前達挨拶を・・・・・」
オジサンはまるで酔っぱらった勢いのように俺達を紹介しようとする。そしてそれに呆れる謎の女。
「初めまして私は、リュミエール ピュールシュです。そしてこちらが姉のアルマリア ピュールシュです。」
「よ、よろしくお願いします」
俺は内心を押し殺しながら俺の正体を知る女に挨拶をする
「ふーーんあなたが今回の生贄のリュミエールちゃんね?」
「そうですが」
謎の女がリュミエールの顔を口付けするほどの近さに近づいてジロジロ見ている。なんかエロいぞ。
いやいや離れろやこの不審者。
「あの、何か?」
「いやいやゴメンゴメン。こんな可愛いくて素質のありそうな子を生贄を差し出すなんて村の人は見る目ないなーーーって」
「でもそれは村人のせいではなく魔族のせいです。好きで彼女を生贄に差し出しません!」
「姉さん・・・・・」
「おいアル言い過ぎだぞ」
俺は咄嗟にその女に否定をする。思念で反論したんじゃない。村の事情を知らないこいつに腹が立ったからだ。
それに対しヒョイっと離れる不審者。
「分かってる。分かってる。怒らないでねお姉ちゃん」
そして茶色い右目を瞑ってウインクをする。この女言動もそうだが元いた世界の俺の彼女に似ている所が余計腹立つ。
「あ、自己紹介が遅れたね。私が勇翼騎士団魔術隊所属のミストラル ウィン プレシアドよ。ミストラルは長いからミスティって呼んでね」
「よろしくミスティさん」
ミスティと呼ばれる女は挨拶を終えると妹に握手をする。
「ほらあなたも」
そしてその握手は俺の方に向かった。俺もそれに対応すべく睨みながら握手をする。
「よろしくお願いします。ミスティさん」
「こちらこそアルマリア君」
奴は怪しげで様子を伺っている顔をしてで君づけ・・・・・・・確信した。こいつは何か知ってる。
挨拶を終えガイ叔父さんは、ミスティに泊まる部屋を案内をする。その部屋は、この俺の部屋の隣だった。
結構ぼろいのに部屋数はあるんだなと俺は内心そう思いながら俺は彼女の荷物を運んだ。
荷物は黒い鞄に中に数冊本が閉まっておりどうやらこれでこの霧の謎を解明するつもりだろう。
運ぶ途中でこっそり抜き取ろうとしたが術式らしきもので鍵を掛けており開けられない状況だ。
とりあえず本を抜き取ることは諦めることにした。
荷物を運び終えこの4人で食事をすることになった。
「ほう・・・今日はチーズグラタンかぁ。久々だな。」
「えへへ。姉さんが今日食べたいって言ってたから」
「でも殆ど彼女に任せきりでした・・・・・・」
「まあいいんじゃないか?アルは病み上がりだしな。休んだ方がいいぞ・・・・・・・・・・・」
叔父さんは目を泳がせながら震えている。しかも小さい口調で「もう作らなくていいぞ」って言ってんぞやっぱこいつ料理超へたくそじゃねーーーか。
「それよりおなかが空いたから食べようよ」
「あ、ミスティさんが待ってるじゃあ食べようか」
「そうだな。では・・・・」
『いただきます』
こうして食事は始まった。
俺達は夕食にありつくことにした。
リュミエールが作ったグラタンはとても美味しくこんな美味いものは元いた世界では滅多に味わえないくらいの上手さだ。ましてや、台所でこの人数で食べるのは久々な感じがする。元いた世界で最後に家族で食べたのっていつだっけ?それさえ覚えてないくらい久々だ。
「これは美味しいもんだね。王都では滅多に食べられないよ」
「ありがとう。ミスティさん」
そして、ミスティもリュミエールが作ってくれたグラタンのようだ。どうやら彼女の料理は王都出身のミスティも認める程の腕だったようだな。
いやいや俺はあいつの事を警戒してたんだ。あいつは俺のことを知っている。前に敵ではないと言ったがそれは信用できない。とにかくあいつの事を知らないと・・・・・
と思いながら俺はミスティが食べながら話してることを聞き耳にせずミスティの事をじっと見ていた。
食事を終え俺達姉妹は片づけをすることになった。ちなみに叔父さんは部屋の書斎で読書をしながらくつろいで自分の入浴を待っていて、ミスティはどうやら自室でゆっくりしているのだろう。
俺は皿洗いに専念している中リュミエールが声を掛けてきた。
「姉さんここはいいから後はゆっくり休んでていいよ」
「え?まだ途中ですが」
「いいの。後は私がやっておくからお願い」
「分かりました。じゃあお言葉に甘えます」
彼女の恩に免じ俺は台所を後にし、目的であるミスティの部屋に向かった。
二階に上がり俺は彼女の部屋の前に立つ。緊張したので少し深呼吸をしてドアを軽く叩いた。
「ミスティさんいますか?」
「ん?なーーに」
彼女の声がする。
「あのアルマリアですが、少しお話があるのですが大丈夫でしょうか?」
「・・・・・・んーーーいいよ上がって」
少し沈黙したが彼女の許可は得た。俺は真実を知る者の扉を開けた。