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青百合戦記  作者: 夕凪
運命を紡ぐ蒼炎編
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見覚えがある人間

俺は、これからこの体の主を演じながらリュミエールと一緒に朝食を食べることにした。俺は誰かを演じた経験は、無いが、彼女が見せた記憶を頼りに演じ始める。幸運なことにリュミエールの方は、それに対して何も気づいてなかったのはよかった。どうやら俺は、うまく彼女を演じることができたようだ。



俺は、朝食を食べながら彼女に疑いを掛けられない程度でこの村の事について聞く。この村の名前はチャチャル村と言ってイグニトス国の東の外れにあるノルド山の山間部にある村で、この山にはこの村以外の人は恐らく存在しないと言われている。

人口は500人くらいの少数でしかも成長した若者のほとんどが村から出ていくのでこの村の人口は年々減少している。

そして外部からの関わりも少なく、都市と比べたらおかしな風習はあるがのどかで生息する魔物もそんなに強くない平和の村だと彼女は言っていた。あいつらが来るまでは・・・・・・・



今から1年前突然今までにない濃い霧を発生させ、同時に今ではほとんど表舞台には現れない魔族の襲来だ

魔王の名前はギルリスが率いる魔族達がこの地を制圧してきた。その霧のせいでこの山全体が完全に隔離されてしまったようだ。

そいつらは、まず手始めに村民の数人を惨殺して、この地の支配者は我々だと示していた。

それに対して立ち向かう村民もいたが魔族の圧倒的な強さに構わずにはりつけにされ村民の前で燃やして処刑しまったようだ。

まあ流石にこの話は朝っぱらでしかも朝食中でする話じゃないが、この場面の話をする時は、二人とも朝食を済ませたから大丈夫だ。



そして、この村民の処刑でこの村の人口の二割が減り、魔族からはある誓約を要求してきた。その内容は「三か月に一度500キロに及ぶ食料と5~10歳未満の幼女の生贄が必要だと。これを飲めば今後一切村の人間には手を出さない。ただし、そちらから手を出した時を除く。」と示されたようだ。



この条件は村民にとってはきつすぎると言われている。

なぜならこの村では高齢化が進み逆に出生率は皆無に近い数値になっていており当時の5~10歳未満の子供は二十人も満たなかったらしい。

その制約のせいで今までに4人の子供が犠牲になり外部からの支援もないこの村の食料も尽きかけていた。



この村に出ようとしても霧のせいで行方不明者が続出していて、この村は鳥籠に囚われている小鳥のような状況になっていた。

魔王ギルギスは、今も俺らを虐げられるのをこの村から見える深い山間の古城にて眺めているようだ。



俺は。この話を聞いてますますこの村を救いたい気持ちが強くなっていた。何もしていない村民に構わずに虐殺するとかひどすぎると思った。俺の元は内気のオタクだが正義感は人一倍持っているとから救いたいと思いたいが、残念ながら今の無力の力ではなにも出来ないようだ。


この話をした後にリュミエールはなぜ今頃この話をするのと質問されたが、適当に理由を言うとあっさり納得していたようだ。あっさり納得されると逆に不安になるけどまあいいか。





そして、この話を終え朝食を片付けた後俺達は、家の食料が尽きかけるので買い物に行くことにした。当然妹だけでこんな霧の中に行かせたくないから俺も準備を付いていくことにした。


「あれ?姉さんも付いていくつもりなの?」

「はい?あなただけでは、こんな濃い霧に行かせる訳にはいけません。それに何より人手は必要でしょう」

俺は当然のようにアルマリアの振りをする。



「でも、傷の跡が・・・・・・・」

「平気です。しばらく安静したおかげで治りました」

俺は傷が治ったことを彼女に示すために右腕を振り回してアピールする。


「はあ、分かったよ一緒に行こう」

リュミエールはため息をつき、はんば呆れながら許しをくれた。

俺達は家を出る。俺が家から出ることを確認すると、リュミエールは家の扉に向けて片手を広げる。そして、扉から緑色の魔法陣が一瞬だけ浮き出て消えてしまった。そして、ドアノブをガチャガチャと引いてちゃんと閉まっているか確認する。どうやら家に鍵を掛けてるようだ。


「へえ、ちゃんと鍵を掛けてるんですね。えらいです」

「まあ、他の人達はあまり掛けないんだけど一応ね。この濃い霧のせいで外部からの食料の提供もないし、収穫もいい結果がないから、食糧不足の危機に瀕してるから村内の盗みが多発してるからね。仮に入ってきてもうちはオジサンだけが働いて収入が低いからあまり取られる物はないけどね」

彼女はそう言いながら俺達がこれから行く退路を魔法で霧を晴らしてくれた。

「じゃあ行こうか。姉さん」

「はい」

こうして、妹との買い物が始まった。




俺達二人は、濃い霧の中で晴れてる所を頼りに進んだ。リュミエールの魔法のおかげで霧は晴れているが、それでもこの霧の中では何が起こるか分からないから一応周りに注意を配る。

「リュミエール。これから何を買うのですか?」

「え~~~と確か肉と野菜は確かニンジンとジャガイモしかないから玉ねぎとかも欲しいね。姉さん、今夜の夕食何か欲しいものとかあるの?」

欲しいものかう~~~んないなぁでもパッと浮かぶものはあれかな?



「え~~~とですね。それじゃあグラタンとかが食べたいですね」

「グラタンかーーーーーーちょうどチーズとほうれん草もなかったからそれにしようか」

「はい」


俺は特に理由はないが、なぜか脳裏にグラタンを浮かび出ていたので、それを口にしてしまった。

別に好きでもないが今夜の夕食はそれにすることになった。





しばらく歩くととある店にたどり着いた。外見はとてもボロい木造小屋でとても食べ物が売ってるように見えない建物だ。

綺麗好きではないがこんな外見で食べ物を売ってたら虫唾が走ると思う。俺が、バイトで小屋を綺麗にしてやろかと思う。


「姉さんまずは、鶏肉類を買いに行くよ」

リュミエールはそう言って肉屋?に入る。

普段このような世界の町や村の店には露店が並んでいるのだが、恐らく霧のせいでは、まともにあきないが出来ないから中で商売をやっているらしい。


汚いはとにかく俺も中に入る。


「失礼しま~す。誰かいませんか?」

恐る恐る中に入ると意外と綺麗にしており、商品として置かれている、肉も薄いビニールで綺麗に内包ないほうして、綺麗に棚に置かれていた。



「へえ、中は綺麗にしているんですね」

「姉さん、しっ、それ毎度言うけどうっかり声出さない」

「あっそうでした」

リュミエールに注意されて俺は、口を塞ぐ。てか、アルマリアって同じことを何回も言われる奴なんだ。

ドジっ子枠も入ってもいいのかな?



「ハイハイいますよっておやおや誰かと思えばピュールシュ姉妹じゃないか。いらっしゃい」

店の奥からエプロンをした店員らしいオッサンから出てきた。良かったオッサンも思ったより不潔じゃない。

てか、ピュールシュ?そうか俺らの名字か今気づいた。



「二人ともありがとうこんな小汚い店に来て」

「とっいうかこの村にここしか肉屋はないんですけどね」

「じゃあ他にあったらそこに行っちゃうつもりかい」

「そうかなーー」

「酷いなあ。こんなにサービスしてくれたのに」

「冗談ですよーーーー」

リュミエールとその肉屋の店主は何気ない話をしている。俺はそれをジーと眺める。


「アレ?アルマリアちゃんじゃない聞いたよ。崖から落ちてケガしたって大丈夫かい?」

「ええ。大丈夫ですよ」

そのオッサンは、俺に視界があって声を掛ける。俺はそれなりの対応を見せる。



「相変わらずベッピンさんだねえ。あのガイさんの姪っ子ってのが信じられないよ」

「はは。ありがとうございます」

「まあ、姉さんは母さんにだからねえ」

「確かにリリーさんにそっくりだ」

俺の顔が母親のリリーって人に見えるらしい。写真かなんかあったら見たいものだ。



「ねえアルマリアちゃん・・・・・・・」

「ダメだよおじさん」

「え?なにも言ってないのに」

オッサンが何かを言おうとしたらリュミエールがきっぱりと断った」



「どうせ、よかったら王都にいる息子の嫁になってくれないかとか言うんでしょ。ダメだよ。姉さんは渡さないよ・・・・」

「でも、小さい頃息子とよく遊んだんじゃ・・・・・」

「ダ!!・・・メ!!・・・・姉さんの相手は自分で決めるの。ねえ姉さん」

「はい」


リュミエールの高い声で俺どころか肉屋のオッサンもビビり。一瞬静かになった。しかしあの断りよう、あいつはは、姉思いどころかシスコンに近いんじゃないか?



「分かった。分かった。俺の負けだ。まけるやるから勘弁してくれ」

「ありがとう。おじさん。じゃあとりあえずこれとこれを下さい。」

「はいよ、合計850センズね」

おっさんは彼女の声で負けたか、料金をまけるってもらった。その影響か彼女はやや高級そうな鶏肉をパパッと購入する。当然その荷物持ちは俺だ。



「まいどありーー」

俺達は、肉屋を出て次の店に行くことにした。しかし誰かと買い物に行くなんて久々の感じがする。ましてや仮とはいえ、人生初で妹と一緒に行くなんて、元の世界で妹がいない俺にとっては嬉しい限りだ。



「あ。あと、チーズだけだから、姉さんはここにいて」

リュミエールは、チーズを買うために、最後の店に入った。気づくと俺が持ってる荷物はてんこ盛りで、先程八百屋で買った大量の玉ねぎが入った袋プラス鶏肉と果物でバランスを保つのに精一杯だ。

はやく帰ってこないかなーーーーー



リュミエールが店に入って数分が経った。彼女はいまだに戻って来ない。辺りは、彼女の霧払いの魔法が解け濃くなっている。それと同時になんか寒気がする。

その時、予感が的中したか、急に強風が吹いてきた。その影響で持ってた玉ねぎが強風で吹き飛ばされていた。俺は、なぜか無意識にその場を離れ、二次災害でさらに荷物がさらにこぼれないように対応しながら、転がっている玉ねぎを追いかける。この時たかが玉ねぎ一つで追いかける俺は後悔することになる。



玉ねぎを拾うことに成功したが気づけば、周り一面は霧で覆われて周りがい見えない。どうやら今いる場所が分からなくなったようだ。

「どこだ?ここは」

俺は素で声を出す。周りが全く見えない。とりあえずこの状況を何とかしないと・・・・・



「おーーーーい誰かいませんかーーーーーーーーーーー」

大声を出そうとするが一向に返事がない。玉ねぎを追って結構走ったが、たぶん村は出てないと願いたいもんだな。今の俺は、武器も魔法も使えない奴だ。この状況で魔物と出会ってみろ。一発でゲームオーバーだ。




「・・・・・・・・・・・・・・・・」

俺は、とりあえずダメもとで、片手を広げ霧を払うように念じる。

しかし予想的中で何も起こらない。くそこんな事ならリュミエールがどうやって霧を払ったかよく見ればよかったと後悔した。




「ふふん、どうしたのかな?そんなところに突っ立て?」

俺は、声の主の方に顔を向ける。その主は黒い装束しょうぞくまとっているから怪しさマックスだ。



「誰ですか?」

「まあ、そんなに警戒しなくてもいいよ。私は的じゃないよ」

そう言って、黒装束は右手で手を広げそう静かに言った。


「じゃああなたは・・・・・」

「とりあえず・・・・・霧は払うよ」

気が付くと周りの霧が晴れていた。そしてその黒装束はさらに近づく。



「おかしいな・・・・・この村出身の人間は、この時の為に霧払いの魔法を習得してるはずなんだが」

疑問そうにそいつは言う。



「まあいい。それよりお礼はないのかな?せっかく助けてやったのに」

「あ・・・・・・ありがとうございます」

俺はとりあえずその黒装束にお礼を言う。怪しいとは言え助けてもらったんだ。お礼は言わないと。



「それより君はどこに行くつもりだい?」

「あっそうでした・・・・・ってここはどこですか?」

霧が晴れても俺が今いる場所が分からない。



「はあ、・・・・自分の村の出身なんだから覚えとこうよ」

「すみません」

「それとも元々この世界の人間じゃないから分からないのかな?」

「え・・・・・・今なんて」

この世界の人間じゃない?だとこの人は俺の事を知っているのか。



「ねえさ―――んどこーーーーー」

リュミエールの声がする。どうやら俺を追って探しているようだ。



おっと連れが来たようだね・・・・・・私は、ここで失礼するよ」

黒装束はどこかに退散しようとする。その前にあいつから何かを聞かないと・・・・・



「待ってお前は・・・・・・・」

「じゃあね・・・・・少年」

黒装束はローブを外し素顔を見せその場から消えだした。いやそれよりも俺はこの顔に見覚えがある。口調や髪型は違うがあの長い黒髪に茶と黄二つの瞳をした女性でこの世界にはいない東洋人の顔。間違いないあれは元の世界にいた俺の彼女志和しわさんだ。

しかも少年ってやっぱり彼女は、何か知っているんだ。



「姉さんやっと見つけた。探し出したよ。どこに行ってたの?姉さん?どうしたの何もない所にじーと見つめて・・・・・」

遅れてリュミエールは俺の方に向かう。リュミエールは俺に声を掛けるが俺は彼女の言葉に耳が入らなかった。

なぜなら先程いた黒装束の女性で頭がいっぱいだ。



「姉さん何泣いてるの・・・・」

俺は自然と涙が出てきた。当然だろう。顔はそっくりと言え彼女にの女性に出会えたんだ。おまけに俺の正体も知っている。こんな嬉しいことはない。



「志和さん・・・・・・・・」

俺はそう呟き、何もない霧の世界をしばらく見続けることになった。









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