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青百合戦記  作者: 夕凪
運命を紡ぐ蒼炎編
4/39

偽りを演じる役者

その後俺は、妹(仮)が作ってくれた夕食を部屋で食べ、眠りにつく。そして俺は夢の中で不思議な体験をする。





・・・・・・・・・・・なんだこれは?

俺は目を覚める。そしてパッと周りを見る。そこは辺りが緑で覆われた妙な空間にいる。音も人の気配もない何一つない世界で以前体験した暗闇で声のみが聞こえる空間と異なる世界であった。


なんだこれは・・・・・・

俺はその訳も分からない世界から動き出そうとすると頭が強度がある鈍器で撲られたような感覚が走った。



頭が痛い。何なんだ?これは、あまりの痛さと息の苦しさで俺はもがいた。

痛くて痛くて死にそうな感覚が俺の体に走る。まるで拷問と思うような痛さだ。だけど不思議とその痛みを止めたくない気持ちがある。別に俺はMではないが、それを受け止めたいと体が反応するからだ。

俺はそう思いながらその痛みを耐えた。



俺はしばらくその痛みを耐える中で不思議な何かが体内から流れ込んでいく感覚があった。それはまるで温かいと同時に懐かしさも感じた。だがその感覚がこの痛みを和らいでくれる。頭がぽわぽわする。

まるで脳内麻薬のような感じがする。


そして痛みが完全に引いたとき、俺はしばらく頭をからにして何もない空間に倒れこむ。

すると、頭からゴウゴウと風が吹き荒れる音が響く。

あまりのうるささで目を開けると、その音は止み脳内からあるビジョンが流れ込んだ。



それは、激しい雨が降り続いている中、とある墓場である二人の少女が傘を刺し墓の前に立つ。いずれも外国人で長髪の茶髪が目立つ。しかもその風貌ふうぼうからしてこの二人は姉妹と思っていいだろう。容姿は不思議とどこかで見たような感じはするが、中学生くらいの少女とその妹がが墓の前で花を添えている。その二人は険しく今にも泣きそうな顔であった。二人は黒い正装で青い百合の花を添え、お辞儀をする。そして声が聞こえる。



「グスッお母さん・・・・・・・お父さん何で死んでしまったの?約束したでしょ必ず帰ってくるって」

その妹がしゃがみぐすりと涙を流す。どうやら両親を無くしてしまったようだな。


「泣くんじゃありませんリュミエール。いつまで泣いても父さんと母さんは戻ってきませんよ。」

今度は姉の方が妹にハンカチを渡そうとする。だが、妹はその手を払い、姉が持ってたハンカチがあたかも地面に落ちた。

「アル姉さんは何で悲しくないの?二人が死んだんだよ。どうして普通にいられるの?・・・・・・」

「それは・・・・・・」


妹の問いに沈黙する姉・・・・・・・ん?アルにリュミエール?そうかこの映像はあの姉妹の過去の映像だったのか。だとすると、あの姉の方は今俺の姿になったいるアルマリアってことか?俺がそう思うとさらに話は続く。



「確かに悲しいです。だけど落ち込んだら二人は帰ってきますか?このイグニトス国は隣国である帝国よりも圧倒的差がありましたがそれでも父も母はそれにおくせずこの国の為に前線として立ち向かい・・・・そして功績を残して犠牲になった・・・・・・・・・だけど、おかげで貧しいこの村は国から資金を援助してもらえて豊かになりました。それは誇らしいことです」


アルマリアは誇らしく言った。だけどリュミエールはそれを反発し持ってた傘を放り投げた・・・・・。

「でも、姉さん。それでも二人に生きて欲しかった。ずっと一緒にいたかった」

「リュミエール・・・・・・・」

彼女が投げた傘は風に吹かれたが、後から来た男がそれをキャッチする姿が見えた。この姿は見たことがある。確かこの二人がオジサンと呼ばれる人だった。



「騒がしいぞ二人とも墓の前では静かにするものだぞ」

「オジサン」

「ガイ叔父さん来てたんですね」

「ああ、二人の墓参りをな・・・・・・」



オジサンはそう言うと墓に腰を下ろし手を合わせる。



「・・・・・・・・なあお前達。確かに二人がいなくなって悲しいのは分かる。だけどそれを誰かにぶつけちゃいけないな」

オジサンは静かにそう語る。それに対し、リュミエールは何か言いたそうな顔をしていた。



「なんだ?俺と一緒にいるのは嫌か?」

「いや、そんなことはない・・・・です」

「不安そうな顔をしてるな・・・・・・・確かに俺はあいつらのような親には慣れねえな。ましてやこの年になって結婚できない冴えないおっさんはな・・・」

オジサンはそう冗談をいいケラケラ笑う。



「いえ・・・・・そんなことないです。オジサンは・・・・」

「アル・・・・・・そういうな。俺はそんな俺を持ち上げても何も出ねえぞ」

そう、アルマリアがこれからいうことを静止するオジサン。そして腰を上げその姉妹に近づき二人の肩を両手でポンと叩き・・・・・・



「アルマリア!!リュミエールお前達は、悲しかったり怒ったりしたら全部俺にぶちまけろ。俺が全部そいつを受け止めてやるからよ」

『叔父さん・・・・・・・・』



その男の覚悟が二人に通じたか。アルマリアは今まで涼しかった表情からは静かに涙がこぼれ、リュミエールは、オジサンの大きな体に抱き寄せ泣き続いた。



その鳴き声は雨に木霊するも悲痛な叫びと思えた。そしてここで映像は消え新たなビジョンが移った。

それは、とある家が移されていた。そこには、数人ほどの老人が座っていて、そして先程より成長したアルマリアとリュミエールの姿もあった。何やら重要な話をしているようだ。

そして、その中でもより白髪目立つ年配な老人が静かに言う。その老人が喋ると誰もが注目した。どうやらあの人がこの村の長老のようだ。


「では、次の『狭霧の儀式』の生贄を決める・・・・・・・次に魔族に差し出す贄はリュミエール ピュールシュお前に決まった」

「そ・・・・・・・んな」

この反応にアルマリアは茫然とした。そしてその結果に対してアルマリア以外の村人は平然としていた。まるでこの結果が当り前だったかのように・・・・・・



「どうしてですか?なんで私の妹が」

「当り前だろ。この村の10歳未満の中で最も年配なのは、リュミエールしかいないからな」

「そうじゃ、さっさと魔族の方に渡してしまえ」

「そうだそうだ!!」


この家にいる老人が、差し出せ、差し出せと狂ったように叫びだす。その光景にアルマリアは、この世の終わりと思えるくらい表情が蒼白としていた。そして、彼女は自分の叔父であるガイに顔を向けて訴えかける。



「叔父さん・・・・・・・お願い」

彼女の眼差しが叔父さんに訴える。だが、



「すまん。俺達には、どうすることもできない・・・・・立ち向かえばこの村の仲間が犠牲になる」

叔父さんは拳を強く握り締め悔しそうにしている」

「え・・・・・・・・叔父さん嘘・・・・・でしょ。あなた言いましたよね。お前たちは俺が守るって。言いましたよね?え・・・・・あれ嘘だったんですか?ねえ、ねえ、ねえ答えて下さいよ」


アルマリアはヒステリックに叔父さんの服を掴みそのまま引っ張ろうとして訴えかけるようにしたが、その行動は、すぐに近場の男性陣に取り押さえられた。そしてそんな彼女に村長が答える。



「取り乱すな。お前は魔族から出した誓約せいやくを忘れたか?生贄を差し出せば、この霧に隔離された村は魔族や魔物に襲われない。それが奴らから結ばれた誓約だ。これさえ守ればこれ以上犠牲もなく平穏に暮らせる。分かってくれ」

「しかし・・・・・・・」

「もういいよ姉さん」


彼女が何か言おうとしたがリュミエールはそれを止めた。



「リュミエール。あなたはいいのですか。こんな事で」

「仕方ないよ。こうなることは分かってた。私さえ犠牲になれば・・・・・それでいいんだ」

「あなたは何を言って・・・・・」

「私ね。疲れたの。父さんも母さんも死んで、さらに魔族がこの村に来て大切な人が処刑された。・・・・・・・挙句あげくに前の儀式で親友だったエリゼちゃんも失った。これ以上私の前で誰かが死ぬのは見たくない。もし姉さんまでいなくなったら私は生きていけない。・・・・・・・ならいっそ私が犠牲になってこの村にしばらくの平穏をもたらせばいいの」

「リュミエール」



リュミエールの言葉に誰もが悔しそうにしていた。俺でも分かる。この村の人間は皆村民の事を家族と思っている。その家族が死んだらかたき討ちしたいと思っているはず。だけどできないんだ。村の力をもってしてもその魔族には勝てないと村人は悟り始めたんだ。


「大丈夫だよ。姉さん。姉さんなら母さんみたいな炎が扱えるよ。それでいつの日か、彼らの王ギルリスを倒してあげて・・・・・」


彼女は悲し気な顔でそう言うとビジョンは消える。声だけが聞こえる。










『私は強くなる。妹を守る。どんな姿になっても守り抜く。例え、この体が滅んでしまっても・・・・・・・・あの子は私にとってはかけがえのないもの』


『今の私は何も出来ないけどあなたなら出来る。なぜなら貴方と私は元々は一つだった存在だから・・・・・・

お願い。あの子を救ってあげて果てのない暗闇をすべて燃やし尽くしてあげて・・・・・』










そう言い残すと声は聞こえなくなり景色も段々と明るくなる。

「おい待てよ。あんたは誰だよ。もしかしてアルマリアか?お前は何なんだよ。俺に何をさせたいんだよ。元々一つって何だよ。なあアルマリア答えろよ。」

俺は夢の中でもがきながら叫びだし声の主に訴えかける。だが、景色は晴れ気づくと夢から覚めた。




目を開くと見覚えがある天井があった。そして俺は体を起こすとあの木造の部屋にいた。


そして俺は体中を触る。やっぱり股間に生えてるあれもないし、胸もめちゃくちゃデカいし触ると柔らかい感触がする。そして俺は試しに頬をつねる。

「痛い!!」


どうやら俺が女になって異世界に来たのは夢ではなかったのか。俺はそう思いながら部屋の引き出しにある手鏡で女いやアルマリアになった俺を昨日見たいに見つめあう。


「なあ、お前は何を知ってんだ?」

俺は、そう呟きながら先程みた夢を思い出す。あの夢はどうやらこの体の主アルマリアが体験した出来事を鑑賞したようだ。そうすることで、今の状況を分かり易く彼女は説明したかったんだと思う。

どうやら俺はこの村に起ったすべての元凶である魔族のギルマを倒さないといけないらしい。それが恐らくこの異世界に転生した理由のようだ。



しかしそれを見せたとしても俺には戦う意欲がないなぜならどうやってそいつを倒すか分からないからだ。普通異世界転生するなら女神がチート能力を与えるのが当たり前だが、生憎俺は、それを教えてもらってない。俺はこれからどうすればいいんだ。そう思った瞬間



「姉さん朝食ができたよ。食事今から持っていくよ」

この部屋の下の階から声がする。どうやら妹のリュミエールのようだ。俺はあえてアルマリアの振りをする。なぜならもし今いる姉が別の誰かだと彼女が思うと間違いなく発狂する恐れがするからだ。

そうなると、なんか可哀想だから夢で見た彼女の言動を思い出しながら演じる。



「分かりました。今すぐ降ります」

「姉さん体大丈夫なの?」

「平気です。心配をおかけしました」

「そう、待ってるね」


ふう、どうやら彼女からすると違和感がなかったようだな今の振りは。

振りが終わると俺は、急に疲れを感じた。

それにしてもアルマリアって妹にも敬語で喋るんだな。真面目と言うかなんて言うかおかしな奴だな。



そして俺は、再び手鏡で自分を見つめ、身だしなみを確認し、部屋のクローゼットからこの世界の服装を確認して、下を脱ぐ。

やっぱ精神は男だから脱ぐと照れてしまう。そして体中に巻かれている包帯をのけて服に着替える。

そして再び手鏡で体中を見るどうやら完全に傷口が消えたようだ。

そして机に置いてあったメガネをかける。


「これで身だしなみは完璧だ。さあ早く飯を食うか」

俺はそう思いながら下に降りて妹の顔を拝む。これから空の中身を演じながらこの世界で目的を果たすために。









明けましておめでとうございます。新年一発目の更新です。よろしくお願いします。

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