光の翼
俺は、このひたすら目的の場所に駆けた、ただそれしか考えていない。なぜミスティさんがあの男達を追跡していたか分からない。けれどそれを俺に教えないとはいただけない。もしなにかあるのだったらなぜ俺に言わない。この三か月間で一緒にいた仲じゃないか。それを思い出すとムカつき出した。
ピシッピシッ
「!!!!」
俺は、荒野を駆ける中青い炎の噴出先から何かが迸る音が聞こえるように感じた。だけどそんなことは今は関係ないことだ。俺の頭には前に進むことしか入ってない為に体の違和感なんて全く気にしていなかった。
そして、しばらく駆けるとあっという間に渓谷前に辿り着いた。そこに辿り着くと昼間の雰囲気と、うって変わり妙に風が涼しく感じ月が不気味に出ているのが嫌な予感が感じる。
俺はその中で、馬車が通った後を見つける、状態を見るからに真新しい奴だ。予想だがロシェの馬車に間違いないだろう。
「ミスティさん、ロシェいないのか!?」
俺は、声を上げ確かめる。だが、しばらく経過しても何の変化がない。いや、そんなはずはない。情報によるとここにいるのは間違いないんだ。
俺の力は、炎しかないから感知系の魔術は備わってないからな。だが、その時、
渓谷の南東の方角つまりあの黒の大地の方に、白い弾幕が打ち上げてるように見えた。恐らくアレは、ミスティさんが放ったものに違いない。
そう思いながら俺は、その方角に向けて青い炎をまき散らした後に、それに向けて加速した。
渓谷の岩場を刹那に潜り抜け俺は、再び黒の大地に会いまみえた。しかも今回は、真夜中なのでより不気味
さが孕んでいた。
そして、よく見るとその大地の一歩手前に、人影らしいものが見える。恐らくミスティさん達と思っていいだろう。
「アルマさんこっちッスよーーーーーーー!!!!!」
俺が、その場所に気づくと再び白い弾幕をはりつめ、隣にいたロシェは声を上げピョコピョコと跳ねていた。俺は、無事を確認すると一息を入れそちらに向かうことにした。
「ミスティさん、ロシェ無事だったか?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「うっうっなんだこれは?ほどけねぇ」
俺がその場所にたどり着くと屈強な男達の集団は、蒼色の術式の上でロープに縛られて動けない状況に見える。その男達は、低い声で魔術でそれを外そうとしてるようにしているが、それしきの力では、彼女の力を解く事が出来ないだろう。俺は内心笑いながら、ミスティさんに声を掛けた。
だけど、ミスティさんとロシェは焦点を合わさずポカーンと口を上げて俺を見つめていた。
「な、なんだよ、二人とも、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「アルマ・・・・・・これなに・・・・・・・?」
「???何をいっているんだ」
「ったく知らねえぞこんな奴らいるなんてよ。それになんだこの銀髪の女は、気持ちわりぃ羽を生やしやがって。こいつら本当に人間かよ」
「羽?」
縛られてる男達が言った意味が分からなかった。羽だと!?みんな俺の事をじっと見やがって、まるで俺が羽を生やしてるみたいな感じじゃないか。そう思うとミスティさんは、いつの間にか術式で大鏡を目の前に出現させてる。
「アルマ君、今の君の姿をよく見て」
「姿?って・・・・・・・・・え?何だこれ」
「はあ~~~君ったら自分の姿を確認せずにここまで来たんだね」
ミスティさんがため息をこぼすのも当然だろう。なぜなら今の俺の姿には、青い粒子・・・・・・いや、マナの波動のようなものが羽の形として噴出されていたのだ。
その羽の形は、光のようにきらめかせ、天使の羽根のように美しく広げ、それを噴出させる蒼色は、悪魔のように不気味に帯びていたのだった。
「なんでこの姿に・・・・・・・?」
「それはこっちが聞きたいくらいだよ。」
「いや、俺はただお前達が何かあったか分からないからすぐに駆け付けただけだけど。この有様じゃ意味がないな」
「フフン、私達の為に心配して来てくれたんだね。ありがと」(チュ)
そう、ミスティさんは俺に近づきほっぺにキスをした。けど周りにロシェや男達がいるので照れるからは、すぐにそれを服で拭い俺は拘束されている男達に注目した。
「せっかくお姉さんがサービスしてくれたにつれないなぁ」
「う、うるさいな。それよりなんでこいつらを拘束してんだよ」
「・・・・・・・彼らは、ここの結界を蹴破り村の高価な宝を盗もうとした盗賊団だよ。」
「宝を!?」
「大方、この結界を蹴破る為にそこにいる魔術師を配置したのが怪しく思えてね。それでつけてみたら案の定この結界を破ろうとしてね」
ミスティさんは、結界前に歩きそれをコンコンと叩く。
「勘違いするな俺らは盗賊団じゃない。あんな人殺しの集団と一緒にするな。俺らはただの財宝漁りだ」
「どっちも物取りと同じじゃない。ましてや騎士団が管理して土地の無断侵入・・・・・これは重罪さよ」
「けっ、これだから王都の騎士団様は、けち臭いんだよ」
「ならここで吹き飛ばして跡形もなく消し飛ばしてもいいのかな?」
男の一人が口を滑らしたその時、ミスティさんは、背後に魔法陣を無数に展開させそれをその盗賊団に向けた。だがそれに対し盗賊団は怯えずに不気味なほど冷静としていた。
「はっ冗談だよ。大人しく投降するよ」
「なら、いいけどね」
「ついでに言っとくがこの嬢ちゃんも同罪だ。嬢ちゃんは俺らの目論みを知ってて引き受けたん
だからな」
「・・・・・・・・・・・・そんなことないッスよ」
「嬢ちゃん、何嘘をついてんだ?俺達はしっかり聞いたぜ。情報としての見返りで3割の約束をしたじゃねえか」
ミスティさんが術式を解除すると同時にロシェに注目する。ロシェは舌打ちをして音を立てると口を閉ざす。
「ロシェ、それ本当なのか!?」
「ロシェ、知らないならまだしも、危険区域の無断侵入は、重罪これは、分かってるね」
「・・・・・・・・そ、それは」
「ミスティさん、重罪はいくら何でも酷いんじゃないか」
「アルマ君・・・・・私は、仮にも騎士の一員なのよ。目の前に起きた罪は騎士としての誇りは、許されないんだよ。それ相応の報いを受けるのは当然だ」
「だけど・・・・・・・・」
「騎士か・・・・・・本当にクソッタレな組織ッスね」
「え・・・・・・・・・ロシェ今なんて・・・・・・・」
しばらく口を頑なに閉ざしていたロシェは、なにやら意味深な言葉を放ったのは聞こえた。だが、その時・・・・・・・・
ズシン・・・・・・・・・ズシン・・・・・・・
その何かが大地を踏みしめる音によって、今の発言だけではなく周囲の風や土煙が舞う音がかっ消されていた。空は、満天の青い星々が輝いてる中、それは、鈍い音をドンドンと響かせ近づいていた。
その衝撃で、砂塵が舞い散り、視界が一瞬だけ遮られていた。
「なんだこれは・・・・・」
「分からない。けれど警戒して・・・・」
ミスティさんの指示でなんとか平常を保ち俺は、その砂塵の奥にある何かに向けて目を向けようとする。
そして、砂塵が、収まったところでソレは、いた。
目の前約百メートル先には、周囲の岩場の渓谷の高さを優に超えるほどの大きさを誇る影で出来た巨人が現れた。大きさは、恐らく俺らの身長の二、三十倍程の大きさで恐らく全長五十メートルの大きさだと考えていいだろう。それは、頭部の二つの眼光を白く発光して光らせ俺達を、見下していた。
「ミスティさん、これって」
「ああ、最悪だね。よりによってこのタイミングだ。向こうからやってきたよ。『夜行巨人』が・・・・・・・・」
そう目の前の怪物は、夜行巨人。この渓谷の夜に生息する上級の手配魔獣だ。
そして、その巨人は、これから攻撃を仕掛けようとこの先にある黒に染まった街に向かってそれに向けて、右腕を鈍く振るう。
「来るよミスティさん・・・・・」
「分かってるだけど・・・・・・衝撃が強い」
ミスティさんは、その腕の目の前に重度の結界を張り防御をする。その攻撃は、なんとか防いだものの衝撃が凄まじく、周囲に結界を張ってる大地と俺とミスティさんを除くものが全て吹き飛ばされていた。
周囲が再び砂塵が経ちこむ中再びミスティさんに目を向ける。
「驚いたね。たった一撃でこの威力とは、噂以上だね」
「ああ、それより、ロシェとあの盗賊共は・・・・・・・・?」
「恐らくその衝撃でふっ飛ばされたようだ・・・・・。だけど心配しないでこの左目の『天眼』で一応確認したが、周囲に散らばってて全員まだ生きているよ。だがしかし・・・・・・・今はこれをなんとかしないとね・・・・・・」
そう言って俺達は、再びその巨人を見据える。巨人は奇しくも第二破である右手で俺達を叩き潰そうと攻撃を仕掛ける。
「アルマ君来るよ。この結界は、そう簡単に壊れないから良しとして、今はこの場を離れることが先決だ」
「ああ・・・・」
俺は、事前に発動した青い炎で作り出した『光の翼』を使いその場を離れる。巨人の二激目は、あの結界で塞いで、黒の街は、文字通り無傷だ。
そして俺達は、一定な距離を保ちながら俺は、青い炎右手でかざし小手調べでそれを放つ。だけど、その一撃は、全く当たらずにすり抜けていた。
「え?どうなってんだ?」
「言ったはずだよ。夜行巨人は、太陽の魔術以外での系統の攻撃は影としてすり抜けてしまうんだよ」
「マジかよ。また魔術無効の相手かよ」
その通り、インヴィーの『アビスサイフリート』と言い俺の『青い炎』といい今回のこれといい、魔術の無効化ってこの世界にどんだけ存在するんだよ。いくら何でも被り過ぎだろ。
「だけど、さっき魔術での結界で防いだだろ」
「あれは、その結界に太陽の系統を加えさせて防いだんだよ。奴の弱点は、太陽だ。それに触れると威力は弱まる」
「マジか。だったらその太陽の魔術とやらで仕留めればいいだろ」
「・・・・・・・それなんだけど私、太陽の魔術だけは、結界術以外の攻撃系統は、全く使えないんだよ」
ミスティさんは、テヘっと舌を出しながら、それをぶっちゃける。
えええええ~~~~~~~~さっきまでドヤ顔で語ってたのに、太陽の魔術使えないとかこの状況どうするんだよ。しかもあの巨人俺らに向かってぬるりと近づいてくるんだけど・・・・・
俺はなんとか距離を保って離れるがこの巨人は見た目と比べ素早く追いつかれるのは時間の問題だ。
「アハハハハハハ私も勉強不足だね」
「勉強不足じゃないこれからどうするんだ!!!」
「勿論弱点は他にあるよ。あの巨人の両目の間にある眉間に核がある。それが奴の心臓で、それを一撃を与えると絶命するんだよ」
「だけど、俺の炎の範囲はチャチャル村と比べて広くなったがそれでも半径十メートルが限界。
そんなのこの
デカブツの眉間に一撃を加えるのは、不可能だろ」
「だけど、今の君の背中には羽が生えているのでしょ。それを使って羽ばたければなんとかなるんじゃないかな?」
何この状況で冗談かましてんだこの人?こっちは、先程羽が生えたことに知ったばかりなんだぞ。
急に飛ぶなんて・・・・・・・いや一応やってみよう。俺の『青い炎』はチートだから出来るかも知れないし試すだけやってみよう。
「まあ、とりあえずやって見るわ」
「え?」
俺は、一度ミスティさんはを解放し、砂塵が舞う渓谷前に仁王立ちし、こちらに向かっている巨人に目を向け飛べるようイメージする。
どうか飛べますように・・・・・・・・
俺は目を閉じそう念じた後俺は目を開ける。すると、妙な感覚が走った。それは、地面を踏みしめてる感覚さだ。そして視界は、砂の大地ではなく果てなく続く青い空、しかもさっきまで巨人の足しか見てなかったのにいつの間にか、あの巨人の頭部まで、羽ばたいてるのが見えた。
巨人も羽ばたいてる俺を見て警戒し、進むのを止める。そりゃそうだろうな。いくら怪物でも、今まで地を這ってた人間が空を飛ぶとか驚きを隠せないだろう。
俺は、ふと地上を見てミスティさんの様子を見下げる。表情や声は聞こえないが驚いているのは間違いないだろう。
っと、その時俺が地上の様子を鑑賞してる中、夜行巨人が俺に向かいその巨椀で握り潰そうとする。
「あ、あぶねっ」
なんなく避けたが、巨人の小指が腹部にかすったくらいだが、魔術無効の奴に掴まれたらいくら青い炎をもってしても助からないぞ。そう言えばこいつ影の体でも実物には触れるんだったな。正直油断しすぎて危うくやられそうだった。
「この野郎」
俺は、奴の次の攻撃を待たず、炎を右手にかざし、瞬時に奴の眉間先、上の上空に立つ。その距離およそホメートル。風が涼しく吹きながらも俺は、その炎を巨人に向けて放つ。
ヒィオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
手の先に放った蒼いブレスは、瞬時に鈍い音を立てながら崩れ去る廃ビルの如く崩れだし、衝撃が渓谷内に響きだす。
飛び交う土煙の中奴を探すが、その跡は見当たらない。どうやらその核とやらは仕留めたようだ。
意外とあっけなかったがこれで依頼は完了した。
そして、その崩壊する巨人から何かがこぼれだしたように見えたので俺は、空中でそれをキャッチする。
そのキャッチした緑色に変色した円盤のようなものは先程俺が破壊した巨人の核だった。
俺は、それを高価なものだと考えすぐにそれをポケットに入れ、無くさずにするようにした。
そして、俺は改めてこの荒廃した砂地を
改めて見据える。
「・・・・・・・・せっかく鳥のように羽ばたいて空中遊泳したかったけどミスティさんやロシェが心配だ一度降りておこう。
俺は、その願望を押し込めながら、不気味に放つ青いマナの翼は一度地に降り立つ事にした。




