黒に浸食された土地
「ふう~~~~~これくらいで充分だろう」
「アルマ君お疲れ」
俺達はその後、残りの『ロックビースト』を探すべく渓谷の至る所を探し出した。結局最初に飛び出してきたロックビーストがほとんどでそれ以降はほとんど見つからなかった。
ミスティさんの理の天眼でも見つからなかったってことはこれで依頼は完了したってことでいいだろうか。
で、そんな訳で余った時間で、お金になりそうなアイテムや魔物を探し回ったがどれも高値で売れるほどのアイテムなんて見つからなかったようだ。俺は、それを見てさらにため息をついた。
「どうしたのかなアルマ君?ため息ついて」
「いや、これだけやって成果は出たのか不安で・・・・」
「たぶん大丈夫だよ。何とかなるよ」
「なんとかなるってそんな平然に言うなよ。もしいい結果がでなくて野宿生活なんて絶対嫌だ」
「別に野宿も悪くないと思うけどな。旅費はタダだし自然の中で寝られるだからいいじゃない。それに君だってノルド山にいた時は普通にテント生活楽しんだんじゃない?」
「あれは、まだ宿舎での快適の暮らしが染みついてないからだ。宿屋と野宿は全然違う。まずあんたには今まで言わなかったけどあの野宿生活周囲に結界を張られたけど、テント内に虫がいてめちゃくちゃ刺されて痒くて眠れなかったんだぞ。」
「え?そうかな」
「そうだ。だから俺は今後一切野宿なんて嫌だ俺は是が非でも温かいベットで寝る」
「全く強情だね」
ほっとけ、俺は、アンタみたいなのんびり屋じゃないんだ。俺はそう思いながら地図を見ていいスポットがないか確認する。
「なあ、ミスティさんこの近辺で、珍しい獲物はないのか」
「ん~~~~確か夜場になると、上級の手配魔獣の「夜行巨人が出るって噂だけど」
「なんだそれ?報酬高いのか?」
「まあね。報酬は20万センズと高額だよ」
「マジでか。こりゃ受けるしかないな」
「その代わり滅多に現れないらしく一か月に一度出るかどうか分からないからテント生活は確実だけど」
「それは、お断らせていただきます・・・・・・」
「大丈夫だよ。その代わりものすごく強く、一流のギルドメンバーでも討伐するのに三時間かかるようだし、しかも一度出たら夜明けまでは消えないから出現報告が出たらそく問題ないらしいわ」
「なるほど、報告が来た後、馬車ですぐそこにまでここに向かって横取りすればいいって事か」
「そう言う事・・・・・」
ミスティさんはニヤリと怪しげに笑うと俺も釣られて笑う。確かに馬車でここまでくれば一時間も掛からないしおまけに俺達チートコンビがいれば即解決するだろう。こりゃ笑いが止まりませんわ。
「ミスティ殿お主も悪じゃのう」
「いやいやこちらこそ悪く見えますなぁ」
『アハハハハハハハハハハハ』
まるで悪代官気取りで渓谷内に笑いが飛び交うのは言うまでなかった。
そして空を見ると日は下降に向かって夜を迎えようとしたので俺達は、本格的にここからお暇しないといけないとな。俺はそう思っても地図に睨みを聞かせながら片付けようとした。
「アルマ君そろそろ戻らないと・・・・・・」
「そうだな・・・・・・ん?ミスティさんちょと」(チョイチョイ)
「どうしたのかな?」
俺は地図に示されているバツ印に注目し、それをミスティさんに確認してもらうため呼び出した。
「この渓谷の西部にあるバツ印ってなんだ?」
「これは侵入区域だね。ってまさか・・・・・・そこに入るつもりかな?」
「いや、ちょっくら見てくるだけだからいいだろ」
「ねえ、ちょっと待っていいから戻りなさい」
俺はミスティさんの言葉を聞かず、そこに向かう為青い炎を背中でブーストし加速しつつ向かった。
危険区域なんだろうとどうでもいい。そこには恐らく高価な素材やアイテムがあるはずだ。それに俺は強いから何とかなるだろう。
そして、俺は、炎を消してその先に足を踏み出す。そしてその次の光景を見た瞬間俺は背筋を凍りだし戦慄した。
「なんなんだ!?これは・・・・・・・」
俺が見た光景は、この渓谷から抜け出した数メートル先から、覆われている果ての無い黒の大地を目にしていた。その黒はこの世のすべてを覆いそうな漆黒色でそれを抑えるように重度の結界がその浸食を食い止めているように見えた。
そしてよくよく見るとその黒の中には無数の岩場が浮き出ているのが見える。俺はそれが何なのか前に進もうとするその時、ミスティさんが後ろから氷の刃を繰り出し俺の首元まで近づき俺の首元が刃に近づき血がポタポタと垂れていた。俺はチラッとミスティさんを見ると先程の穏やかな顔が一変し静かに睨みついていた。
「動かないで・・・・・・・」
「ミスティさん何を・・・・・・」
「ここは私達騎士団の所有区域それ以上踏み込むなら首を地に落とすよ。流石の君じゃこの至近距離では炎は仕えないしおまけに手に武器を手をしてないからこれじゃあどうする事もできないね」
確かにミスティさんの言う通りこの状況じゃいくらチートの俺でもどうする事も出来ない。腰に下げてる銅剣を手にして反撃したいのだがその前に首を落とされそうだから降参するべく手を挙げた。
「分かった、降参だ降参、勝手にここに来て悪かった。だけど一つ教えてくれないか。ここは何なんだ?」
「その前に抵抗させないように武器をすべてこちらに預からせてもらうよ」
俺はミスティさんから銅剣を含む道具をすべて没収され、枯れた土に正座させられたがそれでも彼女は氷の刃を解かなかった。
「これならいいわね・・・・・・じゃあ教えてあげるよ。これはねすべてある病原菌が原因なの」
「病原菌?」
「そう、名前は『黒蝕病』この黒の大地はそれによってもたらされたものなの。それは、数年前にこの地で蔓延された奇病の一つでそれに感染されたものは黒に染まるものなよ」
「え?それどういう」
「アルマ君、この黒に覆われた大地を見てどう思う?」
「え?一つ思うのは、この台地には、なんかうまく言えないけど家とかの建造物があるからまるではるか昔に村があった・・・・・・ってまさか」
俺は、脳内から導きだした仮説を呟くと同時に背筋が凍った。まさかそんなことがあっていいのか・・・・・・・
「そうこれ全てがかつて大きな街で、草木も満ちていてそれはそれで賑やかな街だったって聞いたらしい。だけど突如発生された『黒蝕病』の影響で人や動物などの生命があるものは黒く染まり溶け出し体液と化しそれは全てを侵食する勢いだったんだよ。幸いにも現地にいた魔術師のお陰でそれを未然に防ぐことが出来たが被害は膨大でこの街の人口の九割は黒の大地に変わったのよ。で、その後はいろいろあって現状では有翼騎士団の管理下においたのよ」
「これ全て・・・・・・人の体液が混ざりこんだ者・・・・・・」
「うかつに触ったらそれが感染して君も感染者になるから気を付けて・・・・・・」
「っというわけでお姉さんが分かり易く説明したんだからここからさっさと立ち去りなさい。ここは夜になると危険な場所になるからね・・・・」
そう言ってミスティさんさんは氷の刃を閉まった。
「ねえ、ミスティさんさん一ついいか。その奇病の原因や治療方法はあるの?」
「ううん、今現在は発生条件も治療方法も分からない」
「もし俺の炎ならそれを解決できるんじゃないか?」
「アルマ君今なんて・・・・・・・」
「だから俺の炎があればここにある街の人は報われるんじゃないか。じゃなければこの地にずっと刻まれているのは可哀想すぎる」
「だから何?今すぐここにある人達の命を解放したいと・・・・・君はいつから神にいや偽善者になったのかな?」
ミスティさんは再び静かな怒りで俺に威圧を掛ける。
「君に出来る事なんて何一つない。魔術師と騎士団が長い時間でその奇病を君の炎一つで解決したくない。それにこれは数百年前に発生した奇病よ。それ以降発生した事例なんてない。なんでそんな事をいうの」
「な、なんでだ。何で俺はそう言おうとしたんだ?」
俺の今言った言葉は分からなかった。何で今俺はこの病気を青い炎で解決しようと思ったんだ?だいたいかつての人達が黒い体液で混ざってもその魂があるか分からないのに何で俺はその中に魂があるって分かるんだ。そもそも俺は、目に入った人間を救うタマなんかじゃない。それなのになんで俺は、こんなおかしな事を言ったんだ。俺はもう自分で自分が分からなかった。
「・・・・・ルマ・・・・んア・・・・・・・マン」
「アルマ君!!!!!」
「はっ」
俺は、ミスティさんの叫びで気が付き、身体中から冷汗が滴り落ちて現実世界に戻った。
「どうしたのかな。アルマ君さっきからボーとして」
「ご、ごめんミスティさん・・・・・俺どうやらおかしくなったようで、早く帰りたいな・・・・・・」
「分かった。じゃあお姉さんに捕まりなさい。おぶってあげるから」
その後俺はミスティさんに捕まり渓谷の入り口まで戻った。
俺はその間にミスティさんに斬られた首筋を再度確認するように指で傷口をなぞろうとするが、その傷口は、無く完全になかった。
どうやら、リュミエールに貰った首飾りの効果は本物だったようでそのスキルって奴は、捨てたものじゃなかったらしい。
話は元に戻るがあの後は散々だった。
なぜなら帰る途中に偶然渓谷を通った商人の馬車に乗せてもらって俺達が泊まった村の宿屋までに乗せてもらったのだが、その途中ミスティさんに抱きつかれて無理矢理イチャイチャされたのは言うまでもない。
「ねえ、アルマ君おっぱいパフパフしていい?」
「断る、自分のでやればいいだろ!?」
「そこまて自分のおっぱい大きくないからアルマ君に頼んでいるのいいでしょ?いまなら斬られた首筋を舐めて治して上げるから」
「いやいいよもう治ったし」
「いや、遠慮しなくていいんだよ。それレロレロレロレロ」
「ちょっ・・・・・やめ」
俺は、治ったはずの首筋をおっぱい揉まれながらいやらしい舌で舐められた。
ああ~~~~あの時後ろからチラッと見た馬車を乗りこなしてる商人のオッサンの同情の顔は痛々しかったなぁ。




