アルマ
神との対話を終えた俺は、その後気持ちを変えて食事にすることにした。正直不安感もあるが、今は空腹を満たした方がいいと思い食を満たした。
その後リュミエールは家に帰ってきて、俺が目覚めているのを見ると心配して抱き着いてくれた。
その中で俺は、アルマリアという本来この人生を歩むはずだった人間を演じるのをこれで終わりにしたかった。彼女の人格はこの世にいない。俺に出来ることは彼女の分まで精一杯生きてくだけだ。
正直リュミエールに本当の事を言うのは抵抗ある。真実を知ると彼女の心は壊れる可能性がある。だけどそれでも・・・・・・・真実を知らなければならないのだ。俺は、リュミエールと関わる中で、それを言える機会を疑った。
そして、時間が過ぎ夜を迎え空は無数の星が輝いてる中、リュミエールは自室に戻り、寝る準備をしようとする。俺は、今妹の部屋の前にいる。打ち明けるならこの部屋で話すのは適格だろう。そう思いながら深呼吸をして最後の演技をしてノックする。
コンコン
「リュミエールですか・・・・・・・私ですけど少しいいですか?」
「姉さん?うんいいけど」
許可を取り扉を開ける。すると、リュミエールは部屋の奥で窓を開け空を眺めていた。そして後ろを振り向き、俺を迎える。
「姉さんいらっしゃい。どうしたの」
「え~~~~~~とですね。実は話したいことがあったんですけどいいですか?」
「うんいいよ。どうぞ」
俺は部屋に入り、緊張しながらもリュミエールに近づく。
「星を眺めてたのですか?」
「うん。そうだよ。だって久しぶりだもん。こんな美しい空が見えるのが・・・・・・・」
「確かにそうですね。しばらくの間、霧のせいで見えなかったですもんね」
「姉さんのお陰だよ」
「私のお陰ではありません。ミスティさん達騎士の方々やこの村人が団結したからこそです」
「そんなに過小評価しなくていいよ。だって姉さんはこの村の救世主だもん」
「救世主ですか・・・・・・・・」
「そうだよ。今朝だって、村長さんから今までの事を謝りたいからって家に押しかけて来たもん。今は姉さんが寝てるからって追い返すのが大変だったんだもん」
「あの、頑固おやじの村長さんがですか?ははははははははついこの前は厄介者扱いされたのに天の平を返してますね」
「姉さんそんなこと言っちゃ駄目だよ。すべては村を守る為に仕方なく取ったことなんだから仕方ないよ」
「そうですね。では後日挨拶しましょうか」
この俺が救世主か・・・・・・今までそんなこと言われたことないからこういう時はどう返せばいいか分からなかった。
「あのね・・・・・・・・姉さん私ね、やりたいことを見つけたの」
「やりたいこと」
リュミエールは、空を見上げ呟いた。
「私、近いうちに、王都の魔術学校に編入したいと思っているの」
「え?」
「実はこの村を援助にしてきた人の中に学園関係者の人が声を掛けてくれてね。学園の編入を進めてくれたの」
「いつそんな話を・・・・・」
「姉さんが寝てる間にね・・・・・・・・もちろんおじさんからもそれを喜んで進んでもらえたの・・・・・・私もっといろんなことを知りたい。この世界には私の知らない技術と人達がいる。私は、それを身に付けて、今度は私がこの生まれ育った村を守りたいと思ってるの」
「・・・・・・・・そうですか。良かったじゃないですか。目的があって・・・・・リュミエールは昔から魔術の才能が有りますから王都の学園に付いていけると思いますよ」
「えへへ、ありがとう応援してくれて、それで姉さんには目的はないの?」
「目的か・・・・・・・・」
正直俺の目的は、理不尽な理論を持つ神への反逆だ。それ以外は普通に旅をしてリュミエールと同じように考えてる。だけどそれを打ち明ける前に、彼女に真実を伝えないと・・・・・・・
「すいません。リュミエール実はそれを話す前に伝えたいことがあります・・・・・・・・・・」
「何?伝えたいことってもしかして母さんの形見の短剣を無くしてしまったこと?別にそれは気にしてないよ」
「それもありますが、それ以上に重要なことがあります」
俺は、表情を変え素に戻る。批判されても何をされてもいい。ただ、今まで騙したのを謝りたいだけだ。
「悪い。リュミエール今お前の前にいるのはお前の知ってる姉じゃないんだ」
「え?」
予想通りリュミエールは、口を開けて驚きを見せていた。正直言う俺も辛い。
「簡単に言うと俺は、アルマリア ピュールシュと言う人間じゃない。俺は『移り変わり』を行った。彼女の前世の人格だ」
「それじゃあ・・・・・・・姉さんは?」
「お前の姉さんの人格は、あの日青い百合を取りに行った際に崖に落ちて死んだ。その代わり俺がこの体を借りてこの世界に目覚めたんだ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「そして、俺は夢の中で俺の来世の人格である、アルマリアに言われたんだ。『妹を守れ』ってそれで俺は思ったんだ。お前の姉さんは自分を犠牲にして俺をこの世に目覚めさして救うことだってな。それ以降俺に出来ることは偽りの人格を演じながらギルギスを倒すことしかできなかった。本当はずっと前から言いたかった、だけどそれは出来なかった。俺は怖かった。もし真実を知って泣き発狂して死なれると約束を破ってしまうからな」
「じゃあ・・・・・今打ち明けようとするの?」
「演じる中で俺が偽ってもお前を喜ばすのは無理だと後から思ったんだ。そんなことをしてもアルマリアは喜ばない。例えお前が俺に恨まれてもそれを受け入れることにしたんだ」
「・・・・・・・・・・・・・」
リュミエールは、しばらく沈黙して顔を俯く。そりゃしょうがないだろうな。俺が言うのもあれだが九歳にしてそれを全部受け止めるのは無理だなっと思う。
そしてしばらくしてリュミエールは、顔を上げる。
「そう・・・・・・・・・・ははははははは道理で可笑しかったと思ったんだ。」
彼女は涙を流し高笑いする。どうやら予想通りそれが受け入れなかったようだ。俺は悔しく目を逸らす。
「リュミエール・・・・・・・」
「真実を言ってくれてありがとう。確かに貴方の言う通り受け入れるのは時間が掛かると思う。だけど私はそれでも前に向かって歩かなければいけないの・・・・・・」
彼女の辛そうな顔を見て俺ももらい泣きし、そして彼女が少しでも安心できるように抱き着いた。
今の俺は、こいつの姉じゃない。それでも、俺は、非力ながらもこうすることしかできなかった。
「姉さん・・・・・・暖かい」
「俺はもうお前の姉さんじゃないんだ・・・・・」
「姉さんは、どんな姿になっても姉さんだよ。時間が経とうとしてもそれを受け入れて見せる」
「リュミエール」
俺は、しばらくリュミエールを抱擁した。
そして落ち着いた所で・・・・・・・俺とリュミエールはベットの上で背中を合わして座る。なぜならお互い泣きじゃくっていたから顔を見るのが恥ずかしくて見れなかったからだ。
「落ち着いたか・・・・・・・」
「うん・・・・・・・・・後一つ聞いてもいい?貴方の人格って男だったの」
「そうだ・・・・・・・・俺は、生前男だった」
「やっぱりかーーーーーーーーだって喋り方が男ぽかったんだもん」
「嫌か?」
「だって私達教会の中でい、いかがわしいことをしてたんだもん」
「あ~~~~~~あれか確かに衝撃的だったな」
リュミエールは、俺の人格が男だってしると教会でキスをしたり胸を揉んだりしたことを思い出し後悔していた。
「まさかこんな形で男の人とキスをするなんて・・・・・・・」
「奇遇だな。俺もこんな形でファーストキスされるなんて思わなかったよ。それにリュミエールがこんな積極的に姉にキスをしようとするなんて思わなかったよ」
「うわ~~~~~~ん言わないでよ」
「もしかして姉に無理やりするのは初めてじゃないな?」
「・・・・・・・・・そんなことないヨ」
嘘だ・・・・・・・・・・だって棒読みだし
「本当か?」
「ん~~~~~~~~そうよ。あれは最初じゃないよ。いけないことだけど今まで何回も姉さんの唇を無理やり奪ってオッパイ吸ったこともあるもん」
「もしかして、お前同性が好きなのか?」
「ち、違うよそんな事するのは姉さんだけだもん」
「そうか」
俺は、立ち上がり向こうを向いてるリュミエールに顔を合わせる為に腰を下ろす。当然リュミエールは驚き後ろに下がった。
「ど、どうしたの」
「じゃあキスしてよ」
「え、何で?」
「だってお前姉さんの前では普通にしてたんだろ。だったら今してみてよ」
俺がなぜそのような行動を取ったのかと言うと彼女を励ませる為に意地悪したかっただけなのだ。
「・・・・・・・・・・分かったわよやればいいんでしょ」
リュミエールは、抵抗気味で嫌々キスをしようとする。そして
チュ
額にキスをしてくれた。そして、リュミエールは少し距離を離れる。
「はいこれでお終い」
「え、唇は?」
「うるさいな!!別に額にキスしたんだからいいでしょ。後貴方に言っておきたいことがあるの」
「ん?」
「姉さんはどんな姿になっても姉さんだからこれからもそう呼んでもいい」
「いいよ。今まで通り頼む。・・・・・・・・・リュミエール俺もう一つ伝え忘れたことがあるけど言っていいか?」
「何?」
「俺、これから旅に出ようと思うんだ。別にやりたいことはないが、とにかく第二の人生を歩みたいんだ。いいか」
「・・・・・・・・いいよ。その変わりにたまに帰ってきて甘えさせてね」
リュミエールは、最後に笑みを見せ俺のやりたかったことを応援してくれた。
その後俺達は、旅立ちの時間の間に悔いが残らぬように、村内を探検したり、狩りをも探検しこの村での思い出を残すことにした。
これからの旅路はここに戻ってくるのは少ないので、少しでも印象に残るようにこの目に焼き付けることにした。
そして時間が経ち旅立ちの日を迎えた。
俺は、事前に用意していてくれた、俺の母さんリリー ピュールシュの形見である白の衣装を着ている。
だがこの豊満な肉体のせいで最初着たときは、胸のデカさでまともに着ることが出来なかったがそこはリュミエールが服を着やすいよに縫い直してくれたのだ。だが元の原型と比べて胸元がかなり空いてて戦闘向きの服装ではなく一方的に誘惑してそうな服装になってしまったのだ。まあ俺は生前でも裁縫をできなかったしこれはこれでありだろう。
もし新しい街にに入ってジロジロ見られたその時は原型の服と同じ奴を新調することにするか。
そして俺は、叔父さんから貰ったお金をカバンに入れ、階段を降り玄関を出る。
そして玄関前にはガイ叔父さんとリュミエールが見送ろうとする。
「アル元気でな」
「ああ、叔父さんも元気で・・・・・・あとリュミエールもな」
そう言いながら俺はリュミエールの頭を荒くなでた。それに対し彼女はそれを軽く払った。
「もうそんなに強くしないでよ」
「ハハハ、ゴメンな。リュミエールも学園生活頑張れよ」
「うん。後来れ」
「何だこれ」
リュミエールから渡されのは、ガラスで彫刻された青い花のペンダントだった。
「これは?」
「私からのプレゼント。これは、この日の為に私が村の道具屋で買ったガラスのペンダントを私の魔術でスキルを追加させたの」
「スキル?」
「うん。この世界の魔術は道具や武器にスキルを一つだけ追加させることが出来るの。とはいっても一人に付き一つしか付けられないからスキルを重複することが出来ないの」
そう言えば、インヴィーが持ってた大剣『アビスサイフリート』は魔術を打ち消してたな。あれもスキルの一つなのかな。
「それに道具にスキルを付けるのは相性があるけど、私はそれを前もって調べてうまくこのペンダントにスキルを付けることが出来たよ。ちなみにこのペンダントのスキルは『自動治癒』よ」
俺は、言われたとおりにペンダントを首に掛けたが何も起こらなかった。
「・・・・・・・・・何も起こらないぞ」
「そりゃ当たり前だもん。傷をつけられてないのに付けても効果は発動しないよ」
「そうか・・・・・・しばらくこの効果を拝めるのはしばらく先か・・・・・・・・」
「姉さん気をつけてね・・・・・・・・」
「アル、何時でも帰っていいんだぞ」
こうして俺は、今までお世話になった、ピュールシュ一家に背を向ける。その中で短い時間だが楽しく過ごせたことを嬉しいと同時に悲しく感じ涙が出そうになる。
「じゃあ行ってくるわ」
だが俺は涙を押し殺し村に出る為に歩を進め手を振りながら別れる。
そして、歩き続き俺は村からの出口にたどり着く。そこには、村長を含む村の人々も俺の旅立ちを見送ってくれたのだ。
「アルマリアありがとう。お前のお陰で村は救われたこれはホンのお礼だ」
村長を含む村の人々は、お金や食料や必要な武器などをくれたのだ。
「こ、こんなにいいのか?」
「何だもっと欲しいのかだったら、もっといいものをやろうか?」
「いい。これ以上取ったら俺が魔族みたいな感じになるじゃないか」
「はは、違いねえ・・・・・・」
そう言いながら村人は達は高らかに笑い出した。俺はその光景を見て村人の顔を見て改めて思う。最初見た時の死人のような顔とは違い一人一人が生き生きとしているように見えた。
「じゃあの救世主」
「ああ、あんたらも俺が戻ってくるまで死ぬんじゃないぞ。爺さん共」
俺は、村長を含む、村の人に、握手をした後に、村を出て、この山を降りるために小道を進んだ。
「行ってしまったか・・・・・・・」
「なあ、村長、アルマリアっていつの間にか性格が男っぽくなってませんか?」
「確かにそうだな・・・・・・だけどいいじゃないか。若い者は経験することで変わるもんだ」
「いや変わり過ぎでしょ!!!」
あ、村長達にも俺が『移り変わり』したって事を言うのを忘れてた・・・・・・・まあいいか帰った時にお土産ついでに話すとするか。
そして暫く歩き、昼頃に出たはずなのに気が付けば日が落ちようとしていて、周りは茜色に染まっており気づけば山を完全に下り今ノルド山前の小さな村にたどり着いた。ホントに良かった。こんな暗い山の中では死ぬほど野宿何てしたくないよな。
やっぱり早く着いたのは幸運にも道中で魔物に一度も出会ってないのが早く着いた理由かな。まあそりゃそうだ。あの時最後の『青い炎』であの山にいる魔物をすべて消し去ったからいないのは当たり前か・・・・・
そして俺は改めて今まで過ごした山を改めて見上げる。あの村でのギルギス達魔王軍に激倒を繰り広げたのが本当に懐かしく感じる。そう・・・・・これから新たな旅が始まるんだ。そう思いながらあの山をしばらく見上げ続けた。
その後俺は改めてこの村の
周囲を見渡す。周りには屈強な男達や異種族達が沢山の馬車を用意しているのは見える。どうやら明日の朝にチャチャル村に新しく補給品の運搬を準備しているようだ。確かに山に下りる時も何度も馬車と出くわしたしそうだろうと俺は思った。
「まあとにかく村にたどり着いたんだ。早く宿屋に行こうか」
俺は周りの事を気にせず山下りの為疲弊した体を癒すために宿を探そうと再び足を動かそうとする。
そう俺はこれから異世界ライフを楽しみながら長い時間をかけて技術を学びながら『青い炎』をならして近い未来に神に復讐をしてやる。まあ出来るかどうか分からないがやって損はないだろうな。時間はたっぷりとある。『為せば成る』だ。
「ねえ君これから宿に行くんでしょ?なら私も一緒に同行してもいいかな?」
俺はその懐かしい声を聞くと瞬時に振り向く、目の前には王都に招集されたはずのミスティが立っていた。
「ミスティどうしてここに?」
「アハハハ驚いたでしょ?」
ミスティは普通に笑いながら俺に近づく、その一歩一歩が進むたびに何故か俺は警戒する。
「それは、君を監視しに来たんだよ」
「監視?」
「そう上からね。あの事件で君はどうやら上に目を付けられたからね。君と親しみが深い私が重要任務として君の動向を見張るようになったんだよ」
「上って誰だよ?」
「勿論有翼騎士団の上層部・・・・・だよ」
ミスティは、怪しげな口調でそう言った。くそ、これもお前の引き金か神。俺が密かに神の領域に侵入を恐れてミスティを監視に付けやがった。こんなんじゃ俺は神に殴りかかるのが夢のまた夢になってしまうじゃないか。
「どうしたのかな?アルマリア君」
そう言いながらミスティは俺の手を握り引っ張りながらどこかに連れ去られる。
「なんだよ!!どこに行くんだよ」
「そりゃ、宿に決まってるでしょ・・・・・・・そんなに警戒しなくていいよ。君がしばらく大人しくしてくれればいいことだし。それにこの慣れない世界で一人で行くのは不安でしょ。だったらお姉さんが一緒に連れてあげる。大丈夫だよその内慣れる。私がこの旅の中で君の心の闇を晴らしてあげる。いいよねアルマ君」
俺は、ぞの最後の一言で何故かミスティが志和さんに重ねて見えてしまった。ただ名前を短く読んだだけなのに実際に志和さんに呼ばれたかのように懐かしく感じてしまう。
なるほど有馬とアルマリア名前が似てると思ったらこういう為かよ。ミスティが俺に接触したもう一つの理由は俺に奇跡は起こるって事を伝えたかったんだろ。
神・・・・・お前の企みは気が食わないがそれに乗ってやろうじゃないか。
「分かりましたよ。一緒に行きましょうか。ミスティさん・・・・・」
どうも夕凪です。どうやらやっと一章が終わりました。
本当は一章は最初は10万文字以下で書きたかったんですけど、調子に乗りすぎて無駄に余計なシーンを書いてしまいました。
やっぱり「チャチャル村防衛線」と言う主人公よりサブキャラを活躍させることが要らなかったかな。
でも今回の話はあくまで顔見せで、アルマ、ミスティ、フェインズ、ミリーニャの四人の主要人物は後の話で活躍したかったからです。
まあそれが現実になるのは大分先の話でそれまでにこの話を続けたらの話ですけどね(笑)
さて長かったですけど次回は新章突入タイトルはまだ仮名ですけど一応決まってます。
第二章のタイトルは『強欲蔓延』です。
物騒なタイトルですけど一章よりマイルドに構成しています。
今度はなるべく話を固まって早く次の章に進みたいと思います。
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指摘があれば治したいと思います
では失礼します。




